開発のヒント】

ブレイクスルー思考                            

(1)  ある企業から、なかなかアイデアが出ない。何か技術開発のよい手立てはないものか?という相談を受けたことがある。

 そのときは、「おもむろに各自研究開発を行うのではなく、開発の責任者が、先ずは会社としてどのような製品を世に出し、どのような製品で会社を成長させたいのか?将来のあるべき会社の姿を描き、そのためにどのような製品を世に出し勝負していくのか?会社としての方針を示すべき。」というようなことを申し上げたことがある。

 目標を設定しないで、開発の部署が各自おもむろに何かを研究していても今ある技術の改良に走ってしまい、将来の会社の屋台骨になるような新規な技術や製品は生まれない。

 

 但し、貴社は永年付き合いのある特定の企業からの発注を受けて製品を製造し納めている企業であり、特許出願件数自体もまだまだ少ない状況なので、先ずは今ある取引を継続できるように、特許出願の件数自体をある程度増やしておいた方がよい。ちょっとした改良や工夫でも、特許権を取得できるものは取得しておいた方がよい。知財(特許権等)が無いと、同等の製品をもっと安く作る企業が現れると、そちらに発注が移ってしまう虞れがある。先ずはそのことを防ぐためにある程度特許権を確保しておく必要がある。永年の取引関係にある納品先の企業からの発注が他社に逃げないように、ちょとしたアイデアでも特許取得できるものは取得しておいた方がよい。「特許権があれば、他社にその製品の製造を発注することはない。」と言うようなことを申し上げた。

 

(2)  しかし、これだけではその場しのぎの改良であり、企業を飛躍的に発展させる新技術の開発としては十分ではない。これでは、今ある技術の延長線でしかなく、そこからは斬新でユニークな世間を驚かすような製品は生まれない。

 一体どうやって、会社の今後の屋台骨となるような斬新な製品の開発ができるだろうか?どうアドバイスしたらよいだろうか?と思い悩んでいる矢先、TOTO相談役(元会長・社長)木瀬照雄氏の「市場を創る逆転思考」(東洋経済新報社2014年4月17日発行)と言う書籍に出会った。

 

 その中に製品開発のヒントになると思われる思考法「ブレイクスルー思考」(ジェラルド・ナドラー氏と日比野省三氏が確立)の紹介があった。また、その思考法を実践したTOTOの商品開発にまつわるエピソードの紹介があった。実に参考になった。大変面白く読ませていただき、今のユニークなアイデア商品を生み出し業界をリードするTOTOがあるのは成る程そういうことだったのか、と感心させられた。

 「開発のヒント」を考えるに当たり、参考になると思い、ここに紹介する次第である。

 

(3) この本の中で木瀬氏は、「世の中にあふれる経営戦略論は、過去の成功事例を整理したものであり、過去の遺産の分析は、何かを考えるときの参考や効率化の一助になるが、自分達ならではの固有の解決策や、生活文化を変えるようなユニークな解を導き出すことはできない。大切なのは、未来を見据えて考えることであると主張する。

 例えば、「クレームに対応して機能を改良するのは対症療法に過ぎない。過去の延長線上で考えているだけである。そこから離れて、そもそもこの商品は何のために存在するのかから発想できれば、思考は具体的な未来へとつながっていく。こうありたい、という未来から逆算して物事を考える。その手がかりとなるのが、「ブレイクスルー思考」だ」と言うのである。

 

(4) TOTOで木瀬氏が経営企画を担当していた1996年~1997年頃、日本の住宅設備業界は低迷を続けていた。従来の方法は通用しなくなり、現状を打破するには、それまでとは違う新しい発想が必要だったようである。

 そこでTOTOは、後に社長になった当時の重渕雅敏副社長のもとでジェラルド・ナドラー氏と日比野省三氏が確立した「ブレイクスルー思考」を導入したとのこと。

 これは、「根本の目的を把握したら、あとは通念にとらわれずに発想するという方法」であり、今ある技術をどう使うかを考えるのではなく、先に「こうしたい」を決めて、未来からの視点で新しい価値を提案する」ということだそうだ。

 

(5) この書籍によれば、TOTOの各製品開発担当者たちは、この思考法に従い、実現できるかどうかは度外視して、理想の風呂やキッチンについてのアイデアを出し合ったとのこと。

 「キッチンチームでは、1000個以上のアイデアが出て、そこから31のコンセプトを導き出した」とのこと。

 「ウォシュレット」の事業部も、かなり熱心にこの思考法に取り組み、5、6チームに分かれて、「こんな『ウォシュレット』があったらいいな」という理想を語り合ったとのこと。

 「自分で掃除してくれればいい」、「しゃべったらいい」、「夜中に光ったらいい」、「勝手に蓋が開いたらいい」など、当時としては荒唐無稽で夢のようなことを言っていたようであるが、その中で、「10年後はここまでできる。3年後はここまでできる。これは今すぐできる、とスケジュールを考え、実際の開発につなげて行った」とのことである。

 「未来の商品を見据える努力をした結果、夢のような機能が今ではいくつも実現している」ようである。

 

(6) なお、木瀬氏は、「課題の種」を作ることの重要性も次のように述べている。

 「ブレイクスルー思考とともに重要なのは、「課題の種」を作ることです。今すぐには解決できなくても、将来解決しなければならない課題を明確にしておくと、解決のための軸と方向が決まってきます。課題を常に頭の隅に置いておくのです。単なる思いつきで商品開発をするのではなく、未来への種を作ってずっと考え続けていると、いつか開花するのです。」                               

 以上、TOTO元社長・会長木瀬氏の提唱する「未来からの視点で新しい価値を創造する」という思考法を紹介いたしました。今ある製品をより使い勝手よく改良することはもちろん大切なことですが、よりインパクトのある商品を世に送り出そうと考える場合には、「ブレイクスルー思考」が大変役立つと思います。TOTOはこの思考法で、業績を回復したようです。

 

 以上、開発のヒントになるかと思いTOTOの商品開発の手法を紹介いたしました。詳しくは、「市場を創る逆転思考」(木瀬照雄著・東洋経済新報社・2014年4月17日発行)をご覧下さい。

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