意見書対応の重要性◆ 第6弾

-商標の中途受任引き受けます!

難しそうな案件でも、是非登録しておきたいという思い入れのある商標は、登録の可能性が少しでもありそうなら、きちんと反論しましょう。登録になることが結構あります。

特許庁から拒絶理由通知をもらうと、ああダメなんだと直ぐにあきらめていませんか。

おかしいなと思ったら、積極的に意見書を提出して反論すべきです。審査官を説得すれば登録してくれます。

今まで意見書の具体例をケース1からケース50まで、50件ほど挙げてきました。

掲載した意見書等はその時々の状況に応じた具体的な対応であって、置かれた環境と情報の中で、限られた時間内に作成し、提出したものです。今読み返してみると別の書き方もできたと思われるケースも多々ありますが、当時としてはベストを尽くしたつもりです(いかに審査官を説得するかに腐心してきました)。

今回は、ケース51~60を紹介します。

ケース51 本願商標:「Fruits Friends/フルーツフレンズ」×引用商標1,2:「フレンド」「Friend」4①11

1.出願番号 商願2001-35673(審判

        ( 不服2002-1528)

2.商  標  「Fruits Friends/フルーツフレンズ」

3.商品区分 第29類:加工果実,冷凍果実,果実入り乳製品,果汁入り乳製品

4.適用条文  商標法第4条第1項第11号

5.拒絶理由 「Fruits Friends/フルーツフレンズ」は「フレンド」」「Friend」に類似する。

6.審判における反論(請求の理由)

  【手続の経緯】

 出     願       平成13年 4月17日

 拒絶理由の通知       平成13年12月21日

     同 発送日       平成13年12月26日

  意  見  書       平成14年 1月 7日

  拒 絶 査 定       平成14年 1月 8日

   同 謄本送達       平成14年 1月10日

  【拒絶査定の要点】

  原査定は、「この商標登録出願は、平成13年12月21日付けで通知した理由によって、拒絶をすべきものと認めます。なお、出願人は意見書において種々述べていますが、本願商標は「Fruits Friends」「フルーツフレンズ」の文字を表してなるところ、構成中の「Fruits」「フルーツ」の文字部分が、指定商品との関係において、商品の品質、原材料を表示するものであり、「Fruits」と「Friends」、「フルーツ」と「フレンズ」を常に一体のものとして認識しなければならないとする理由はありませんから、自他商品の識別標識としての機能を有する部分である「Friends」「フレンズ」の文字に照応して、「フレンズ」の称呼をも生じます。これに対し、引用の各登録商標は「フレンド」の称呼を生じますから、本願、引用両商標は、「フレン」の音を共通にし、語尾において「ズ」の音と「ド」の音の差を有するとしても微差であり、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは、聴感が相似る称呼上類似の商標といわざるを得ず、かつ、指定商品も類似のものを有しています。また、出願人は登録例をあげて、本願商標は登録されるべきであると述べていますが、これら登録例は本願とは事案が異なり参考にはなりません。したがって、さきの認定を覆すことはできません。」というものであり、従って、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、同法第15条の規定に基づき、拒絶をすべきものと認めるというものである。

引用商標1登録第2564142号(H05.08.31登録)「フレンド」(31D01

引用商標2登録第4426206号(H12.10.20登録)「Friend」(32F04

  【本願商標が登録されるべき理由】

  然るに、本出願人は、意見書において、本願商標はあくまでも一連一体の商標であって、引用商標とは類似しないことを主張したにもかかわらず、かかる認定をされたことに対しては納得できないところがあり、ここに再度ご審理を頂きたく、審判を請求する次第である。

(a)本願商標の構成

  本願商標は、願書の商標登録を受けようとする商標に表示したとおり、欧文字と片仮名文字とで二段に「Fruits Friends/フルーツフレンズ」と書した態様からなり、指定商品を第29類「加工果実,冷凍果実,果実入り乳製品,果汁入り乳製品」(類似群:32F0431D01)とするものである。

 そして、本願商標は「フルーツ。くだもの。」を意味する「Fruits/フルーツ」の文字と、「友だち。友。」を意味する「Friends/フレンズ」(複数形)の文字とを組み合わせて二段書きした態様であって、上段の欧文字は「Fruits」と「Friends」との間にやや間隔を開けた態様ではあるが、下段は片仮名で「フルーツフレンズ」と一連に書した態様である。

(b)引用商標の構成

  これに対し、引用商標1は、片仮名文字で「フレンド」と書した態様からなり、昭和34年法第31類「食用油脂、乳製品」(31D01を含む)を指定商品とし、また引用商標2は、欧文字で「Friend」と書した態様からなり、第29類「加工野菜及び加工果実,冷凍果実,冷凍野菜,加工卵」(32F04を含む)を指定商品とするものである。

(c)審査官の認定に対する反論(本願商標と引用商標との対比)

(c-1)

  審査官は、本願商標は「Fruits Friends」「フルーツフレンズ」の文字を表してなるところ、構成中の「Fruits」「フルーツ」の文字部分が、指定商品との関係において、商品の品質、原材料を表示するものであり、「Fruits」と「Friends」、「フルーツ」と「フレンズ」を常に一体のものとして認識しなければならないとする理由はないとしている。

 しかしながら、2つの語句を組み合わせて「Fruits Friends」と横書きし、その下段に片仮名で「フルーツフレンズ」と一連に書した本願商標のような構成態様の場合には、たとえ、本願商標中の「Fruits」「フルーツ」の文字が、指定商品第29類「加工果実,冷凍果実,果実入り乳製品,果汁入り乳製品」との関係にあって、その原材料名を表す文字であったとしても、本願商標はその「Fruits」「フルーツ」の文字のみから成るものではなく、あくまで「Friends」「フレンズ」の文字と結合した「Fruits Friends/フルーツフレンズ」の態様として把握されるものであり、「Friends」「フレンズ」の部分が単独で識別されるようなことはない。

 本願商標は、あくまで「Fruits Friends/フルーツフレンズ」で1つの商標であり、分断されて認識されるものではない。「Fruits」と「Friends」、「フルーツ」と「フレンズ」とは常に一体のものとして認識されるものである。

  然るに、これら引用商標1,2は、本願商標と指定商品が同一又は類似するものであることは認めるにしても、本願商標の「Fruits Friends/フルーツフレンズ」と両引用商標の単なる「フレンド」「Friend」とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても類似することのない非類似の商標であり、本願商標は決して商標法第4条第1項第11号に該当るものではないと思料する。

  以下、その理由を詳細に述べる。

(c-2)

 即ち、まず外観において、本願商標は前述のように欧文字と片仮名文字で二段に「Fruits Friends/フルーツフレンズ」と書してなるのに対し、引用商標は単に片仮名文字や欧文字で「フレンド」や「Friend」と書してなるものである。

 それ故、二段構成で且つ「Fruits」「フルーツ」の文字を有する本願商標と、単に一段で横書きしただけの「フレンド」ないし「Friend」からなる引用商標1,2とでは、外観上明らかに相違し、両者類似することはない。

(c-3)

 また、観念において、本願商標は前述の如く「フルーツ。くだもの。」を意味する「Fruits/フルーツ」の文字と、「友だち。友。」を意味する「Friends/フレンズ」(複数形)の文字とを組み合わせて二段に横書きしたものであり、従って、その態様より、全体として、「フルーツの友」の如き観念を生じさせるものである。

 つまり、2つの語句を組み合わせて上段に「Fruits Friends」と横書きし、下段に片仮名で「フルーツフレンズ」と一連に書した本願商標のような構成態様の場合には、たとえ、本願商標中の「Fruits」「フルーツ」の文字が、指定商品第29類「加工果実,冷凍果実,果実入り乳製品,果汁入り乳製品」との関係にあって、その原材料名を表す文字であったとしても、本願商標はその「Fruits」「フルーツ」の文字のみから成るものではなく、あくまで「Friends」「フレンズ」の文字と一緒になった「Fruits Friends/フルーツフレンズ」が全体として、上記した特定の観念(くだものの友)を生じさせるものであり、それ故、本願商標は「Friends」「フレンズ」の部分が単独で識別され且つ観念されるようなことはない。本願商標は、あくまでも「Fruits Friends/フルーツフレンズ」で1つの商標であり、分断されて認識されるものではない。欧文字の「Fruits」と「Friends」、及び片仮名文字の「フルーツ」と「フレンズ」とは常に一体のものとして認識されるものである

  これに対し、両引用商標は、単に「フレンド」や「Friend」の文字からなるものであり、あくまでも「友」を意味する言葉でしかない。これでは、一体何の友なのか定かではなく、ましてや本願商標の前記「フルーツの友」の如き観念を生じさせるものではない。

 よって、本願商標と引用両商標とは、観念上も紛れることのない、非類似の商標である。

(c-4)

 そこで、次に称呼の点につき検討する。

 本願商標「Fruits Friends/フルーツフレンズ」は、前述の如く、

(a)前段と後段が軽重の差なくバランスよく配された態様であること、

(b)下段の片仮名文字は全体の読みを表すべく一連に書されていること、

(c)全体としてまとまった特定の意味合い「フルーツの友」を観念させるものであるから、全体を一つのまとまりとして認識し、称呼するのが自然であること、

 更には、

(d)称呼上重要な位置を占める前段部分の「Fruits」「フルーツ」を省略して発音することは通常あり得ないと考えられること、

(e)全体として一連に称呼して語呂がよく称呼しやすいため、一連に称呼するのが自然であること、

等の理由から、本願商標は分断することなく常に全体を一体の商標と捉え、一連に「フルーツフレンズ」とのみ称呼されるものと思料する。

 この点、審査官殿は、本願商標中の「Fruits/フルーツ」の部分は、指定商品との関係にあって要部を構成せず、従って「Friends/フレンズ」の部分のみに識別力を生じ、本願商標より単に「フレンズ」の称呼も生じるとして今般の拒絶理由通知を発したもののようであるが、その認定は如何にも短絡的である。過去の審査例を見ても、「Furuits」「フルーツ」の文字を要部の構成要素としている商標は数多く存在している。

(c-5)

 例えば、御庁の電子図書館における商標出願・登録情報検索によって過去の商標登録例を検索してみると、本願商標の指定商品と同じ類似群である「32F04」の商品分野において、「FRUIT」「フルーツ」の文字を含む商標「FRUIT+○○○」「フルーツ+○○○」と、含まない商標「○○○」とは、下記の如く、多数並存しているのが分かる。 

A.登録1665849「FRUIT GAL\フルーツ ギャル」(サンヨー缶詰)(第1号証)と、

 登録2345072「ギャル」(明星食品)(第2号証)。

B.登録1738027「FRUITS LAND\フルーツランド」(味の素ゼネラル)(第3号証)と、登録4044832「ランド」(日清製粉グループ本社)(第4号証)。

C.登録2176794「物語」(朝くら)(第5号証)と、

  登録2427846「FruitStory\果実物語」(百瀬孝夫)(第6号証)。

D.登録2578587「CARNIVAL\カーニバル」(明治製菓)(第7号証)と、

  登録4449272「フルーツカーニバル\果物カーニバル」(キューピー)(第8号証)。

E.登録2723697「サン」(石橋工業)(第9号証)と、

  登録4492971「フルーツサン\FRUTSUSAN」(扶桑化学工業)(第10号証)。

F.登録3348351「メール/MAIL」(森永製菓)(第11号証)と、

  登録4441487「フルーツメール」(サンヨー堂)(第12号証)。

G.登録3352888「SHOWER\シャワー」(森下仁丹)(第13号証)と、

  登録4371977「FRUIT SHOWER\フルーツ シャワー」(第14号証)(キッコーマン)。

 また、同じく本願商標の指定商品と同じ類似群である「31D01」の商品分野において、「FRUIT」「フルーツ」の文字を含む商標「FRUIT+△△△」「フルーツ+△△△」と、含まない商標「△△△」とは、下記の如く、多数並存しているのが分かる。 

登録1487032「パスポート」(鐘淵化学工業)(第15号証)と、

  登録2334873「フルーツパスポート」(森永乳業)(第16号証)。

登録1701326「メイト」(共同乳業)(第17号証)と、

  登録2637975「フルーツメイト」(大日本製糖) (第18号証)。

登録1859789「キッス」(明治乳業)(第19号証)と、

  登録3369173「フルーツキッス」(森永乳業)(第20号証)。

登録1959467「ジョイ」(日新化工)(第21号証)と、

  登録2608494「ジョイ\フルーツJOY」(興真乳業)(第22号証)。

登録2213450「RESORT\リゾート」(ヤマハ)(第23号証) と、登録2334874「フルーツリゾート」(森永乳業) (第24号証)。

登録2691987「ファーム\FARM」(森永乳業)(第25号証)と、

  登録3096206「FRUITFERM\フルーツファーム」(高砂香料工業)(第26証)。

  これらのことから言えることは、これら各商標の審査において、担当審査官は、「FRUIT」や「フルーツ」の文字部分にも商標の要部としての地位を認めて審査しているということである。具体的に言えば、これら「FRUIT+○○○」「フルーツ+○○○」や「FRUIT+△△△」「フルーツ+△△△」の商標を、常に一体不可分の商標として取り扱い、全体として要部認定しているということである。

 つまり、担当審査官が、仮に「FRUIT+○○○」「フルーツ+○○○」や「FRUIT+△△△」「フルーツ+△△△」の商標のうち、前段の「FRUIT」「フルーツ」の文字部分を識別性のない部分であると判断し、後段の文字部分○○○や△△△にこそ商標の識別性(要部)がある、などと判断して審査していたならば、これら並存登録商標のうち、後願に係る商標(第2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26号証)は、それぞれに対応する先願登録商標(第1,3,5,7,9,11,13,15,17,19,21,23,25号証)の存在によって、全て拒絶されていたはずである。

 然るに、拒絶されることなく登録されているということは、「FRUIT」「フルーツ」の文字にも商標としての識別性(商標の要部)要素を十分に認め、あくまでもこの「FRUIT」「フルーツ」の文字を含めた商標全体として一体不可分の1つの商標を構成する(そしてその場合には全体として商標の要部を構成する)と判断し、審査したからに他ならない。

  審査官は、拒絶査定の中で「これらの登録例は、本願とは事案が異なり、参考にならない」と認定しているが、同じ類似商品群を指定商品とし、構成中に「フルーツ」「FRUIT」の文字を含む商標の登録例が、本願商標を審査する上で全く参考にならない訳がない。その様なことを言ったのでは、何のための商標審査か分からない。今までの審査実務に束縛されることはないにしても、それなりの理由があってこれら多くの登録並存例が存在するのであるから、この事実を全く参考にならないとして無視するのはどうかと思う。全く考慮することはないとしたら、それは商標の審査を自ら否定するに等しい。この商品分野において、「Fruits」「フルーツ」の文字も自他商品識別力認定の基礎になっていることを十分肝に銘ずるべきである。

  そして、本願商標と引用商標1,2の関係も、これら数多くの並存登録商標同士の関係と軌を一にするものであって、本願商標の「Friends」「フレンズ」の部分のみをとらえて、称呼され、観念されるようなことはないはずである。

(c-6)

 さらに又、類似群32F04(加工果実,冷凍果実)の商品分野において、以下のような商標が存在する。

 1. 登録0992264「ワインフレンド」(国分)(第27号証)、

 2. 登録0992265「ウイスキーフレンド」(国分)(第28号証)、

 3. 登録2433467「ミルクフレンド」(カルビー)(第29号証)、

 4. 登録2504964「ツナフレンド」(アスカフーズ)(第30号証)、

 5. 登録2619970「パンフレンド」(ヱスビー食品)(第31号証)、

 6. 登録3234741「パスタフレンズ」(中島薫商店)(第32号証)。

  これらの商標は、それぞれ、前半の「ワイン」「ウイスキー」「ミルク」「ツナ」「パン」「パスタ」と後半の「フレンド」の組み合わせ商標であることが容易に理解できるが、今回の審査官のような見方をすれば、前半の「ワイン」「ウイスキー」「ミルク」「ツナ」「パン」「パスタ」の文字は、指定商品との関係にあって、その原材料ないしは加工方法等を表すと言うことになるであろう(例えば、ワインやウイスキー付けの加工食料品、ミルク入りの加工食料品、パスタの如く)。つまり、審査官のような見方をすれば、これらの商標は、前半の「ワイン」「ウイスキー」「ミルク」「ツナ」「パン」「パスタ」の文字に識別力はなく、従って商標の要部は後半の「フレンド」にあり、単に「フレンド」の称呼を生ずると言うことになる。

 もし、そうだとすれば、今回の引用商標2の「Friend」は、これらの商標と類似と言うことになり、そもそも登録適格性がなかったことになる。また、これらの商標同士の並存も疑問と言うことになる。しかし、現実には、引用商標2は登録第4426206号として平成12年10月20日に登録されているし、これら第27~32号証の商標も並存登録されている。

 また、類似群31D01(乳製品)の商品分野においても、以下のような商標が存在する。

 7.登録1081927「TEAFRIEND」(キョウブ商事)(第33号証)、

 8.登録1098262「COFFEEFRIEND」(同上)(第34号証)、

 9.登録1139107「モカフレンド」(ミヨシ油脂)(第35号証)。

  これらの商標も、それぞれ、前半の「TEA」「COFFEE」「モカ」と後半の「FRIEND」「フレンド」の組み合わせ商標であることが容易に理解できるが、今回の審査官のような見方をすれば、前半の「TEA」「COFFEE」「モカ」の文字は、指定商品との関係にあって、その原材料を表すと言うことになるであろう(それぞれ、茶入りの乳製品、コーヒー入りの乳製品、モカ入りの乳製品等を表す)。

 つまり、審査官のような見方をすれば、これらの商標は、前半の「TEA」「COFFEE」「モカ」の文字に識別力はなく、従って商標の要部は後半の「FRIEND」「フレンド」にあり、単に「フレンド」の称呼を生ずると言うことになる。

 もし、そうだとすれば、今回の引用商標1の「フレンド」は、そもそも登録適格性がなかったことになる。また、これらの商標同士の並存も疑問と言うことになる。しかし、現実には、引用商標1は登録第2564142号として平成5年8月31日に登録されているし、これら第33~35号証の商標も並存登録されている。                                   

 然るに、これら引用商標1,2が拒絶されることなく登録されているということは、この引用商標1や2の先願に係る前記第27~35号証の商標を一体不可分の商標と判断したからに他ならない。また、第27~35号証同士も別法人により互いに登録されていると言うことは、やはりこれら各商標を一体不可分の商標と判断したからに他ならない。

 本願商標も前段部分に原料表示的な文字を有するが、これら第27~35号証の商標と同様に一体不可分の商標と判断できるものである。

 以上の次第であるので、本願商標は、あくまでも、片仮名で読みを振ったように「フルーツフレンズ」とのみ一連に称呼されるべきものであり、引用商標の称呼である単なる「フレンド」とは、類似することはない。

  【むすび】

 このように、本願商標は、全体としてまとまった特定の意味合い「フルーツの友」を観念させるものであるから、あくまでも全体を一つのまとまりとして認識し、称呼・観念されるとみるのが自然である。たとえ前段が指定商品との関係で原材料名を表すような意味合いがあったとしても、一つのまとまった意味合いを観念させる商標を分断して、「Friends」「フレンズ」の部分のみを要部と捉えるような見方はあり得ないはずである。このことは、過去の多くの審査例からも明らかである。

 以上の次第でありますので、本願商標と引用商標1,2とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても、紛れることのない非類似の商標であると思料します。

 よって、本願商標は充分に登録適格性を備えたものであり、「原査定を取り消す、本願の商標は登録をすべきものである」との審決を求める次第であります。

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(参考)ケース51の「審決」

当審の判断 】不服2002-1528

   商願2001-35673拒絶査定に対する審判事件について、次のとお

  り審決する。

結 論

   原査定を取り消す。

   本願商標は、登録すべきものとする。

理 由

  1 本願商標

   本願商標は、「Fruits Friends」の欧文字と「フルーツフ

  レンズ」の片仮名文字を上下二段に書してなり、第29類「加工果実,冷凍

  果実,果実入り乳製品,果汁入り乳製品」を指定商品として、平成13年4

  月17日に登録出願されたものである。

  2 引用商標

   原査定において、本願の拒絶の理由に引用した登録第2564142号商

  標(以下「引用A商標」という。)は、「フレンド」の片仮名文字を横書き

  してなり、平成2年8月24日に登録出願、第31類「食用油脂、乳製品」

  を指定商品として、同5年8月31日に設定登録されたものであるが、その

  後、同15年5月6日に商標権存続期間の更新登録がなされ、同15年5月

  21日に第29類「食用油脂,乳製品」とする指定商品の書換登録がなされ

  、現に有効に存続しているものである。同じく、登録第4426206号商

  標(以下「引用B商標」という。)は、「Friend」の欧文字を標準文

  字で書してなり、平成11年9月24日に登録出願、第29類「加工野菜及

  び加工果実,冷凍果実,冷凍野菜,加工卵」を指定商品として、同12年1

  0月20日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

  3 当審の判断

   本願商標は、上記のとおり、「Fruits Friends」の欧文字

  と「フルーツフレンズ」の片仮名文字を上下二段に書してなるものであると

  ころ、上段の文字の中央部に若干の間隔が設けられているとしても、構成各

  文字は外観上まとまりよく一体に表現されていて、しかも、全体より生ずる

  「フルーツフレンズ」の称呼も、よどみなく一連に称呼できるものである。

   そして、たとえ、構成中の「Fruits」(フルーツ)の文字が、「く

  だもの」を意味する語であるとしても、かかる構成においては特定の商品又

  は商品の品質、原材料を具体的に表示するものとして直ちに理解できるもの

  ともいい難いものであり、また、「Fruits」(フルーツ)と「Fri

  ends」(フレンズ)の両語の間に観念上の軽重の差があるものともいい

  難く、むしろ構成全体をもって一体不可分のものと認識し把握されるとみる

  のが自然である。

   そうすると、本願商標は、その構成文字全体に相応して、「フルーツフレ

  ンズ」の称呼のみを生ずるものと判断するのが相当である。

   したがって、本願商標より、「フレンズ」の称呼をも生ずるとし、そのう

  えで、本願商標と引用各商標とが称呼上類似するものとして、本願商標を商

  標法第4条第1項第11号に該当するとした原査定は妥当ではなく、取消し

  を免れない。

   その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。

   よって、結論のとおり審決する。

        平成15年 9月11日

                 審判長  特許庁審判官 野本  登美男

                      特許庁審判官 井岡  賢一

                      特許庁審判官 和田  恵美

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ケース52 本願商標「Earth Desk/アースデスク」9類×引用商標「EARTH」

1.出願番号 商願2003-22332

2.商  標  「Earth Desk/アースデスク」

3.商品区分 第9類:実験台,その他の実験用機械器具

4.適用条文   商標法第4条第1項第11号

5.拒絶理由 「Earth Desk/アースデスク」は「EARTH」に類似する。

6.意見書における反論

(1) 拒絶理由通知書(発送番号197630)において、審査官殿は、本願商標は、登録第4429693号の商標「EARTH」(以下、引用商標という)と類似であって、その商標に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号の規定に該当し、登録することはできないと認定されました。

 しかしながら、本出願人は、本願商標と引用商標とは、外観,称呼および観念のいずれにおいても類似せず、取引者・需用者に出所の混同を起こさせるおそれのない非類似の商標であると思料しますので、斯かる認定に承服できず、以下に意見を申し述べます。

(2) まず、本願商標は、上段の英文字と下段の片仮名文字で「Earth Desk/アースデスク」と二段併記して成るものであるのに対し、引用商標は英文字で単に「EARTH」と横書きして成るものであります。

 然るに、両者は、外観上明らかに相違し、類似することはないと思料します。

(3) 次に、観念の点についてみると、本願商標の「Earth Desk/アースデスク」は、その上段部分において、「大地。地球。接地。」等の意味を有する「Earth」の文字と、「つくえ。事務机。」等の意味を有する「Desk」の文字とを結合して「Earth Desk」と表したもので、全体として、特定の意味を持たない造語商標であります。また、その下段部分は、上段の欧文字部分「Earth Desk」の読みを表すべく一連に書した片仮名文字「アースデスク」であります。

 したがって、本願商標は、全体として、例えば、「接地つくえ。」などの意味合いを暗示させることはあるかも知れませんが、あくまでも造語商標であって、特定の具体的観念を生じさせない商標であります。

  これに対し、引用商標は、「EARTH」の英文字からなるもので、「大地。地球。接地。」等の特定の観念を生じさせるものであります。

 したがって、本願商標と引用商標とは、観念上も類似することのない非類似の商標であります。

(4) そこで、以下、称呼の点につき検討します。

 (4-a) 本願商標は、上述のように、上段の英文字部分が「Earth」と「Desk」との間にやや間隔を空けた態様ではありますが、左右に軽重の差なく、全体として「Earth Desk」とまとまりよく書され、しかも、下段には、その上段の読みを表すべく、片仮名文字で「アースデスク」と一連に書されております。それ故、本願商標は、この態様より、一連に「アースデスク」とのみ称呼されるとみるのが自然であります。

 この点に関し、審査官殿は、本願商標の後段である「Desk」の文字部分を一般名称的にとらえ、前段である「Earth」の部分にこそ商標の要部があるとみてこれを抽出し、単に「アース」と称呼される場合もあると判断して、登録第4429693号商標「EARTH」を引用してきたのだと思います。しかし、このように、本願商標の「Earth Desk/アースデスク」から、その「Earth」の部分のみを抽出して称呼するというのは、如何にも不自然であります。

 例えば、本願商標と類似群(10A01)を同じくする「理化学機械器具」の分野において、(a)平成10年10月23日に登録された第4204290号商標「デスク/DESK」が存在しますが、この登録の存在は、「デスク」「DESK」の文字にも識別性を認めたことを意味します。

 そして、このことは、本願商標について言えば、その後段の「Desk」の文字部分に識別性を認めるべきこと、即ち本願商標の「Desk」の文字部分は、本願指定商品との関係にあって一般名称ではなく、商標の要部を構成し得る文字であることを示唆しています。

 本願商標「Earth Desk」は、あくまでも「Earth」と「Desk」とを一体に結合してまとまりよく配したものであって、「接地のつくえ」等の意味合いを暗示させるかも知れませんが、全体として特定の具体的観念を生じさせない造語商標であるとみるのが自然であります。今般の審査官殿のように、前段部分「Earth」と後段部分「Desk」とに軽重の差を設けて、前段部分「Earth」のみを抽出して称呼するようなことはすべきではありません。本願商標は、その様なことのないように全体的にバランスをとってまとまりよく表記しているのであり、読みも片仮名で一連に「アースデスク」と書しているのであります。

 そして又、本願商標は長音を伴う5音構成からなるものでありますが、決して冗長さを感じさせるものではなく、全体を一連に称呼して語呂もよく、一気に称呼し易いものとなっております。

 それ故、本願商標から、あえて「Earth」と「Desk」とを分断して、一方の「Earth」のみを抽出して、「アース」と単独で称呼すべき場合があるなどと考えるべきではありません。その様に分断すべき理由は全くありません。本願商標の称呼は、あくまでも一連の「アースデスク」のみであると考えます。

 これに対し、引用商標は単なる「EARTH」であり、その態様より単に「アース」と称呼されるものであります。

 然るに、本願商標の称呼「アースデスク」と引用商標の称呼「アース」とは、「デスク」の称呼の有無により、明らかに聴別でき、称呼上も決して紛れることのない非類似の商標であると思料します。

 (4-b) ところで、御庁の電子図書館(IPDL)における商標出願・登録情報検索によって過去の商標登録例を検索してみると、例えば、本願商標と同じ商品類似群10A01を含む登録商標において、

 (A)第4034274号「INTERACTIVE」(ミノルタ株式会社)と、

 (B)第4058602号「INTERACTIVE DESK」(日立製作所)とは、併存しております。

 つまり、「INTERACTIVE」と「INTERACTIVE DESK」とは、非類似の取り扱いがなされております。

 本願商標「Earth Desk」と引用商標「EARTH」とて、同様に非類似とされるべきであります。前記(B)の前段「INTERACTIVE」のみを商標の要部として抽出しなかったと同様に、本願商標前段の「Earth」のみを商標の要部として抽出すべきではありません。「INTERACTIVE」と「INTERACTIVE DESK」とが併存できて、本願商標の「Earth Desk」と引用商標の「EARTH」とが併存できない謂われはありません。

 また、同様の例として、例えば、

 (C) 1271373号「NAVI」(横川電気株式会社)と、

 (D)第4362622号「EarthNavi」(日本電気航空宇宙システム株式会社)。

 (E)第2165135号「ARTIST」(キャノン株式会社)と、

 (F)第4472211号「EARTH  ARTIST」(システムミヤワキ有限会社)なども、それぞれ併存しております。

  即ち、「α+DESK」と「α」、「β」と「EARTH+β」との関係にある商標(ただし、「α」、「β」は識別力あることを前提とします)などは、過去の審査実務において非類似の扱いがなされております。これは、共通する「α」とか、「β」とかの文字部分を抽出して商標の要部とするような認定の仕方を、過去の担当審査官はしなかったことを意味します。つまり、これら各商標の出願審査において、担当審査官は、「α+DESK」とか、「EARTH+β」とかの商標を、常に「α」や「β」と一体不可分の商標として取り扱っているということであります。

  これらの担当審査官が、仮に「α+Desk」「α+デスク」や「Earth+β」「EARTH+β」の商標のうち、「Desk」「デスク」「Earth」「EARTH」の文字部分を識別性のない部分であると判断し、他の文字部分「α」や「β」にこそ商標の要部(識別性)がある、などと判断して審査していたならば、これら登録商標のうち、(B)、(D)及び(F)の商標は、それぞれ(A)、(C)及び(E)の商標の後願であることにより、全て拒絶されていたはずであります。

 然るに、拒絶されることなく登録されているということは、「Desk」「デスク」等の文字にも商標としての識別性を十分に認め、あくまでもこの「Desk」「デスク」等の文字を含めた商標全体として1つの不可分一体の商標を構成すると判断し、審査したからに他なりません。

  本願商標と引用商標の関係も、これら(A)と(B)、(C)と(D)、(E)と(F)の各登録商標の関係と軌を一にするものであり、本願商標の「Earth」「アース」の部分のみをとらえて、称呼され、観念されるようなことはないと考えます。

 本願商標は、あくまでも、片仮名で読みを振ったように「アースデスク」であり、その様に一連にのみ称呼されるべきものであります。それ故、引用商標の称呼である単なる「アース」とは、類似することはないと考えます。

(5) 以上のように、本願商標と引用商標とは、外観および観念上類似しないことは勿論、称呼上も「デスク」の称呼の有無によって語感語調を全く異にし、聴者をして決して紛れることのない非類似の商標であると思料します。

 

ケース53 本願商標:「THE SERIES」×引用商標:「X SERIES」

1.出願番号  商願平10-38306(拒絶査定に対する審判事件)

        ( 審判平11-20987)

2.商  標   「THE SERIES」

3.商品区分  第9類:電子計算機用中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路,磁気ディスク,磁気テープその他の周辺機器

4.適用条文    商標法第4条第1項第11号

5.拒絶理由  「THE SERIES」は「X SERIES」に類似する。

6.審判における反論(請求の理由)

(1)手続の経緯

 出     願      平成10年 5月 8日

 拒絶理由の通知      平成11年 8月 9日(発送日:11年9月3日)

  意  見  書   平成11年10月13日

 拒            平成11年11月19日

  同 謄 本 送 達    平成11年12月 3日

  審 判 請 求 書      平成11年12月24日

  手 続 補 正 書      平成11年12月24日

(2)拒絶査定の理由の要点

  原査定の拒絶理由は、

『 この商標登録出願は、平成11年8月9日付けで通知した理由によって、拒絶をすべきものと認める。追って、出願人は意見書を提出して述べるところがあるが、本願商標からは、その構成に照らして、「ザシリーズ」の称呼のほか、単に、「シリーズ」の称呼をも生ずるものである。

  他方、引用登録商標は、図形と文字との結合によりなるものであるところ、該構成中の文字のみにおいても独立して取引に資される場合があるものというを相当とし、これよりは、「シリーズ」の称呼を生ずるものであること明かである。

 してみれば、本願、引用の両商標は、それぞれより生ずる「シリーズ」の共通の称呼において、彼此互いに相紛れるおそれがあるものといわざるを得ない。

 したがって、本願商標と引用登録商標とは、称呼において類似する商標である。』

というものであり、従って、本願商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に該当し、同法第15条の規定に基づき、拒絶をすべきものと認めるというものである。

(3)本願商標が登録されるべき理由

  然るに、本出願人は、意見書において、本願商標の構成態様の違いについて触れ、引用商標とは類似しないことを主張したにもかかわらず、かかる認定をされたことに対しては承服できないところがあり、ここに再度ご審理を頂きたく、審判を請求する次第である。

  なお、本審判請求書と同時に手続補正書を提出し、本願の指定商品(従って本審判請求の対象となる指定商品)を第9類の「電子計算機用中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路,磁気ディスク,磁気テープその他の周辺機器」に限定する補正を行った。また、第37類の指定役務「電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスクその他の周辺機器を含む。)の修理又は保守」については、本書と同時提出の商標登録願により、分割出願を行った。

① 本願商標の構成

 本願商標は、願書に表示した商標からも明らかなように、英語の「THE」の文字と英語「SERIES」の文字とを結び付けるために「THE」の真中の「H」を横切って円を描き、その円の「THE」と反対側の円周に沿って英語「SERIES」の文字を配置した態様から成るものである。

② 引用商標の構成

 引用商標(登録第4107681号)は、英語「SERIES」の文字に英文字「X」を図案化して、一体に構成したものである。

③ 審査官の認定に対する反論

  審査官の認定によれば、本願商標からは、その構成に照らして、「ザシリーズ」の称呼のほか、単に、「シリーズ」の称呼をも生ずるとしている。また、引用商標は、図形と文字との結合よりなるものであるところ、該構成中の文字のみにおいても独立して取引に資される場合があるものというを相当とし、これよりは、「シリーズ」の称呼を生ずるものであること明かであるとしている。

 しかしながら、このような審査官の見方は妥当でない。第9類の「電子計算機用中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路,磁気ディスク,磁気テープその他の周辺機器」等の商品分野において、「SERIES」の言葉は、その字義通り、連続・系列の意を表すもので、「連続性を持つ一連のものの称」を意味している。それ故、本願商標及び引用商標の指定商品分野にあって、「SERIES」の文字は、例えば、そのコンピュータプログラムのパッケージソフトが連続ものであることを示すに過ぎず、何ら識別力を生じない言葉である。つまり、「SERIES」の言葉自体は、本願商標及び引用商標にあって、商標の要部を構成するものではない。したがって、その言葉をとらえて、取引に資される場合はない。それ故に、互いに「シリーズ」の称呼を同一にするから両者類似するとした審査官の認定は妥当でない。商標の要部でない言葉をとらえ、その部分のみを抽出して称呼するというのは、商標の称呼認定を誤ったものである。

  本願商標は、あくまでも全体として、「THE SERIES」(ザシリーズ)ととらえるべきものであり、一方、引用商標は「X」の図案化された部分と文字部分とを一体として、例えば「X SERIES」(エックスシリーズ)ととらえるべきものである。そして、このことは、同じく図案化された「X」が用いられている同一権利者に係る以下の一連のシリーズものの商標を見れば、一目瞭然である。これらの一連の商標にあっては、むしろ「X」の図案化にこそ、共通の要部が存在するのである。

 登録第4107679号「§Xー55」第1号証

 登録第4107682号「§Xー55\XDATAーNETSTATION」第2号証

 登録第4107683号「§X\DATAーNETSTATION」第3号証

 登録第4154752号「Xーゲームプロ」第4号証 

 登録第4154765号「§X2000INN」第5号証 

 それ故に、本願指定商品分野においては、単独で要部と成り得ることのない「SERIES」の文字部分のみを抽出して、本願商標と引用商標とは「シリーズ」の称呼を共通にする類似の商標であるなどと見るべきではない。

 そして仮に、その様な見方がもし通用するのであれば、「SERIES」や「シリーズ」の言葉が単独で把握できるような形態で含まれている商標は、重複して登録されることはないであろうが、実際には、以下に示すように、多数登録されているのである。

 1. 登録第1403011号「東芝\新世紀\シリーズ」第6号証

 2. 登録第2218625号「§GATTAYガッタイSERIES」第7号証

 3. 登録第2277107号「PorTable\SERIES」第8号証 

 4. 登録第2277108号「DeskTop\SERIES」第9号証 

 5. 登録第2277109号「Cache\SERIES」第10号証 

 6. 登録第2277110号「DeskTopmini\SERIES」第11号証

 7. 登録第2641214号「自由が丘\SERIES」第12号証 

 8. 登録第2679500号「ACCESSORY\SERIES」第13号証 

 9. 登録第3323921号「建設COSMOS\シリーズ」第14号証 

10. 登録第4001095号「§GAKUEN\シリーズ」第15号証 

11. 登録第4011773号「山川\§らく丸くん\シリーズ」第16号証 

12. 登録第4011976号「§ばっちしVぶいBATCHISHISERIES」第17号証 

13. 登録第4028898号「5Series」第18号証 

14. 登録第4051522号「まるごと\シリーズ 」第19号証

15. 登録第4107681号「§X\SERIES」第20号証 

16. 登録第4161096号「PERSONAL\series\パーソナルシリーズ」第21号証 

17. 登録第4264328号「攻略!HISAGO\シリーズ」第22号証 

18. 登録第4290056号「DataMuseum\SERIES」第23号証

19. 登録第4307339号「アスキー\ツクール\シリーズ」第24号証 

 これらのことからも分かるように、「SERIES」「シリーズ」は、本願の指定商品分野において、単に「連続もの」「シリーズもの」を表示するに過ぎない言葉であり、商標の要部を構成しない。

 したがって、単に「シリーズ」と称呼しても自他商品を識別し得ない。本願指定商品のような商品を識別するためには、単に「シリーズ」では、何のシリーズなのか分からないのである。

 それ故に、本願商標及び引用商標共に「シリーズ」の称呼が生ずる(従って、その称呼に基づいて取り引きされる)とする審査官の認定は誤りである。

  本願商標の称呼は「ザシリーズ」であり、一方、引用商標の称呼は「エックスシリーズ」なのである。

 よって、両者は称呼上、類似することはない。

(4)むすび

 以上のように、本願商標と引用商標とは、称呼上重要な位置を占める語頭音ないし前段部分において、「ザ」と「エックス」の称呼上の差異があり、語感語調を全く異にする商標であるので、両者は称呼上類似することはない。

 よって、本願商標は商標法第4条第1項第11号の規定には該当せず、登録適格なものと思料します。

 

ケース54 本願商標:「ザ・SERIES」×引用商標:「X SERIES」

1.出願番号  商願平10-38307(拒絶査定に対する審判事件)

        ( 審判平11-20988)

2.商  標   「ザ・SERIES」

3.商品区分  第9類:電子計算機用中央処理装置及び電子計算機用プログラムを

記憶させた電子回路,磁気ディスク,磁気テープその他の周辺機器

4.適用条文    商標法第4条第1項第11号

5.拒絶理由  「ザ・SERIES」は「X SERIES」に類似する。

6.審判における反論(請求の理由)

(1)手続の経緯

 出     願      平成10年 5月 8日

 拒絶理由の通知      平成11年 8月 9日(発送日:11年9月3日)

  意  見  書   平成11年10月13日

 拒            平成11年11月19日

  同 謄 本 送 達    平成11年12月 3日

  審 判 請 求 書      平成11年12月24日

  手 続 補 正 書      平成11年12月24日

(2)拒絶査定の理由の要点

  原査定の拒絶理由は、

『 この商標登録出願は、平成11年8月9日付けで通知した理由によって、拒絶をすべきものと認める。追って、出願人は意見書を提出して述べるところがあるが、本願商標からは、その構成に照らして、「ザシリーズ」の称呼のほか、単に、「シリーズ」の称呼をも生ずるものである。

  他方、引用登録商標は、図形と文字との結合によりなるものであるところ、該構成中の文字のみにおいても独立して取引に資される場合があるものというを相当とし、これよりは、「シリーズ」の称呼を生ずるものであること明かである。

 してみれば、本願、引用の両商標は、それぞれより生ずる「シリーズ」の共通の称呼において、彼此互いに相紛れるおそれがあるものといわざるを得ない。

 したがって、本願商標と引用登録商標とは、称呼において類似する商標である。』

というものであり、従って、本願商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に該当し、同法第15条の規定に基づき、拒絶をすべきものと認めるというものである。

(3)本願商標が登録されるべき理由

  然るに、本出願人は、意見書において、本願商標の構成態様の違いについて触れ、引用商標とは類似しないことを主張したにもかかわらず、かかる認定をされたことに対しては承服できないところがあり、ここに再度ご審理を頂きたく、審判を請求する次第である。

  なお、本審判請求書と同時に手続補正書を提出し、本願の指定商品(従って本審判請求の対象となる指定商品)を第9類の「電子計算機用中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路,磁気ディスク,磁気テープその他の周辺機器」に限定する補正を行った。また、第37類の指定役務「電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスクその他の周辺機器を含む。)の修理又は保守」については、本書と同時提出の商標登録願により、分割出願を行った。

① 本願商標の構成

 本願商標は、願書に表示した商標からも明らかなように、片仮名の「ザ」と中黒丸との間を通る円を描き、その円の「ザ」と反対側の円周に沿って英語「SERIES」の文字を配置した態様から成るものである。

② 引用商標の構成

 引用商標(登録第4107681号)は、英語「SERIES」の文字に英文字「X」を図案化して、一体に構成したものである。

③ 審査官の認定に対する反論

  審査官の認定によれば、本願商標からは、その構成に照らして、「ザシリーズ」の称呼のほか、単に、「シリーズ」の称呼をも生ずるとしている。また、引用商標は、図形と文字との結合よりなるものであるところ、該構成中の文字のみにおいても独立して取引に資される場合があるものというを相当とし、これよりは、「シリーズ」の称呼を生ずるものであること明かであるとしている。

 しかしながら、このような審査官の見方は妥当でない。第9類の「電子計算機用中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路,磁気ディスク,磁気テープその他の周辺機器」等の商品分野において、「SERIES」の言葉は、その字義通り、連続・系列の意を表すもので、「連続性を持つ一連のものの称」を意味している。それ故、本願商標及び引用商標の指定商品分野にあって、「SERIES」の文字は、例えば、そのコンピュータプログラムのパッケージソフトが連続ものであることを示すに過ぎず、何ら識別力を生じない言葉である。つまり、「SERIES」の言葉自体は、本願商標及び引用商標にあって、商標の要部を構成するものではない。したがって、その言葉をとらえて、取引に資される場合はない。それ故に、互いに「シリーズ」の称呼を同一にするから両者類似するとした審査官の認定は妥当でない。商標の要部でない言葉をとらえ、その部分のみを抽出して称呼するというのは、商標の称呼認定を誤ったものである。

  本願商標は、あくまでも全体として、「ザ・SERIES」(ザシリーズ)ととらえるべきものであり、一方、引用商標は「X」の図案化された部分と文字部分とを一体として、例えば「X SERIES」(エックスシリーズ)ととらえるべきものである。そして、このことは、同じく図案化された「X」が用いられている同一権利者に係る以下の一連のシリーズものの商標を見れば、一目瞭然である。これらの一連の商標にあっては、むしろ「X」の図案化にこそ、共通の要部が存在するのである。

. 登録第4107679号「§Xー55」第1号証

. 登録第4107682号「§Xー55\XDATAーNETSTATION」第2号証

. 登録第4107683号「§X\DATAーNETSTATION」第3号証

. 登録第4154752号「Xーゲームプロ」第4号証

. 登録第4154765号「§X2000INN」第5号証

 それ故に、本願指定商品分野においては、単独で要部と成り得ることのない「SERIES」の文字部分のみを抽出して、本願商標と引用商標とは「シリーズ」の称呼を共通にする類似の商標であるなどと見るべきではない。

 そして仮に、その様な見方がもし通用するのであれば、「SERIES」や「シリーズ」の言葉が単独で把握できるような形態で含まれている商標は、重複して登録されることはないであろうが、実際には、以下に示すように、多数登録されているのである。

1. 登録第1403011号「東芝\新世紀\シリーズ」第6号証

2. 登録第2218625号「§GATTAYガッタイSERIES」第7号証

3. 登録第2277107号「PorTable\SERIES」第8号証

4. 登録第2277108号「DeskTop\SERIES」第9号証

5. 登録第2277109号「Cache\SERIES」第10号証

6. 登録第2277110号「DeskTopmini\SERIES」第11号証

7. 登録第2641214号「自由が丘\SERIES」第12号証

8. 登録第2679500号「ACCESSORY\SERIES」第13号証

9. 登録第3323921号「建設COSMOS\シリーズ」第14号証

10. 登録第4001095号「§GAKUEN\シリーズ」第15号証

11. 登録第4011773号「山川\§らく丸くん\シリーズ」第16号証

12. 登録第4011976号「§ばっちしVぶいBATCHISHISERIE                     S」第17号証

13. 登録第4028898号「5Series」第18号証

14. 登録第4051522号「まるごと\シリーズ 」第19号証

15. 登録第4107681号「§X\SERIES」第20号証

16. 登録第4161096号「PERSONAL\series\パーソナルシリーズ」第21号証

17. 登録第4264328号「攻略!HISAGO\シリーズ」第22号証

18. 登録第4290056号「DataMuseum\SERIES」第23号証

19. 登録第4307339号「アスキー\ツクール\シリーズ」第24号証

 これらのことからも分かるように、「SERIES」「シリーズ」は、本願の指定商品分野において、単に「連続もの」「シリーズもの」を表示するに過ぎない言葉であり、商標の要部を構成しない。

 したがって、単に「シリーズ」と称呼しても自他商品を識別し得ない。本願指定商品のような商品を識別するためには、単に「シリーズ」では、何のシリーズなのか分からないのである。

 それ故に、本願商標及び引用商標共に「シリーズ」の称呼が生ずる(従って、その称呼に基づいて取り引きされる)とする審査官の認定は誤りである。

  本願商標の称呼は「ザシリーズ」であり、一方、引用商標の称呼は「エックスシリーズ」なのである。

 よって、両者は称呼上、類似することはない。

(4)むすび

 以上のように、本願商標と引用商標とは、称呼上重要な位置を占める語頭音ないし前段部分において、「ザ」と「エックス」の称呼上の差異があり、語感語調を全く異にする商標であるので、両者は称呼上類似することはない。

 

ケース55 本願商標:「CMBoard/シーエムボード」

1.出願番号  商願2003-78024

2.商  標   「CMBoard/シーエムボード」

1.商品区分  第9類:電子計算機用プログラム  指定商品限定した)

4.適用条文    商標法第3条第1項第3号,同第4条第1項第16号

5.拒絶理由  本願商標は、全体として「コマーシャルに用いる板状の商品」程の意味合いを容易に認識させるので、その指定商品中「板状の商品」、例えば「電光掲示板」に使用するとしても、「コマーシャルに用いる電光掲示板」であることを理解させるに止まり、それ以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがある。

6.意見書における反論

(1) 拒絶理由通知書において、審査官殿は、本願商標は“「コマーシャル。コマーシャルメッセージ」を意味する略語である「CM」の欧文字と、「板」の意味を有し、例えば「スコアボード」のように「掲示板」や「板状の商品」を意味する語としても広く使用されている「Board」の欧文字とを一連に書した「CMBoard」の文字と、その表音と認められる「シーエムボード」のカタカナ文字とを上下2段に書してなるものであり、「CM」、「シーエム」、「Board」、「ボード」の語のいずれもが、広く親しまれている語であることから、全体からは「コマーシャルに用いる板状の商品」程の意味合いを容易に認識させるものです。そうとすれば、本願商標は、その指定商品中「板状の商品」、例えば「電光掲示板」に使用するとしても、「コマーシャルに用いる電光掲示板」であることを理解させるに止まるものですから、単に商品の品質・用途を表示するにすぎないものと認めます。したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがありますので、商標法第4条第1項第16号に該当します。”と認定された。

  しかしながら、本出願人は、本願商標の「CMBoard/シーエムボード」を本願指定商品に付して使用しても、決して需用者・取引者をして、商品の品質、用途を表すにすぎないものではなく、充分に自他商品識別標識として機能するものと思料するので、前記認定には承服できず、以下に意見を申し述べる。

  なお、本出願人は、本日付けで手続補正書を提出し、本願の指定商品を「掲示板」や「板状の商品」とは全く関係のない「電子計算機用プログラム」に変更した。

(2) 本願商標は、願書に表示した商標見本からも明らかなように、英文字と片仮名文字で「CMBoard/シエムボード」と二段併記した態様からなるもので、指定商品を第9類「電子計算機用プログラム」とするものである。

 然るに、本願商標は、審査官殿もご指摘のように、「CM」と「Board」の言葉の意味合いを考えれば、なるほど全体として「コマーシャルに用いる掲示板」程度の意味合いを有するのかも知れない。

 しかしながら、一般的には、今般限定した「電子計算機用プログラム」との関係において、そのような意味合いを表す言葉(熟語)として、「CMBoard/シエムボード」が理解され、確立されているという事実はない。

 「CMBoard/シエムボード」が、「電子計算機用プログラム」を表す言葉としてコンピュータ・電子・通信等を扱う業界において確立され流通されていればまだしも、そのような事実がない以上、本願商標を以て、単に品質・用途表示だと言うことはできない。

 そして仮に、本願商標を「コマーシャルに用いる掲示板」という意味に取ったとしても、それが如何なる商品を表すものなのか定かでないし、ましてや、指定商品「電子計算機用プログラム」との関係で、如何なるコンピュータプログラムを想定しているのか定かでない。

 それ故、取引者・需用者が、「電子計算機用プログラム」に使用した本願商標をみて、例えば、これは「コマーシャルに用いる電光掲示板」だとか、あるいは、「コマーシャルに用いる電光掲示板用のソフトウェア」だなどと、誰が理解するであろうか。本願の指定商品はあくまでも「電子計算機用プログラム」であり、この無形の電子計算機用プログラムにあっては、「Board/ボード」が「掲示板」ないし「板状の商品」を意味することはないと思料する。

(3) このことは、類似群11C01の商品分野において、「Board」「ボード」を用いた商標が、以下のように登録されている事実からも窺い知ることができる。

(A)登録2265121 「メガボード\MEGABOARD」

(B)登録3174832 「SMARTBOARD\スマートボード」

(C)登録4038849 「MusicBoard」

(D)登録4059464 「POWER BOARD」

(E)登録4153450 「Partitionbord\パーティションボード」

(F)登録4194389 「リモートボード\remoteboard」

(G)登録4200706 「Stationboard\ステーションボード」

(H)登録4206317 「Contactboard\コンタクトボード」

 もし仮に、審査官殿の考え方に従うのであれば、(A)の「メガボード\MEGABOARD」は「大容量用の電光掲示板」程度の、(B)の「SMARTBOARD\スマートボード」は「細くすらりとした電光掲示板」程度の、(C)の「MusicBoard」は「音楽ボード盤ないし音楽電光掲示板」程度の、(D)の「POWER BOARD」は「出力ボード盤ないし出力電光掲示板」程度の、(E)の「Partitionbord\パーティションボード」は「仕切りボード盤」程度の、(F)の「リモートボード\remoteboard」は「遠隔操作用の電光掲示板」程度の、(G)の「Stationboard\ステーションボード」は「局となるボード盤ないし電光掲示板」程度の、(H)の「Contactboard\コンタクトボード」は「交信ボード盤ないし電光掲示板」程度の、それぞれ意味合いを生ずるということになるのであろう。

  そして、その意味合いからすれば、これらをその指定商品について使用するときは、審査官の考え方に従えば、これに接する取引者・需用者は、単に該商品の品質・用途を表示するにすぎないということになって拒絶と言うことになるのであろうが、実際には登録されているのである。

  このように、審査官殿のような見方をすれば、一見、品質・用途表示的な商標と思われるものであっても、実際には、本願商品分野において、拒絶されることなく登録されている例は多い。

 然るに、これらの商標が登録できて、本願商標の「CMBoard/シーエムボード」が、登録できないとされるいわれはない。これらの商標を構成する「MEGA」、「SMART」、「Music」、「POWER」、「Partition」、「remote」、「Station」及び「Contact」など語も、我々日本人には「CM」同様に広く親しまれている語である。

 本願商標は、あくまでも「CM」「シーエム」と「Board」「ボード」が結合して一体となった造語商標であり、一般的に「電子計算機用プログラム」の品質・用途表示として流通し機能しているわけではないのであるから、十分に自他商品識別力を有し、登録適格なものと思料する。

(4) 以上の次第であるので、本願商標の「CMBoard/シーエムボード」は、既存の前記登録商標などと同様に自他商品識別力を有し、充分に登録適格性を有するものと思料する。

 

ケース56 本願商標:「SFT」×引用商標:「I-SFT」

1.出願番号  商願平10-38302(拒絶査定に対する審判事件)

        ( 審判平11-20985)

2.商  標   「SFT」(標準文字)

3.商品区分  第9類:電子計算機用中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路,磁気ディスク,磁気テープその他の周辺機器

4.適用条文    商標法第4条第1項第11号

5.拒絶理由  「SFT」は「I-SFT」に類似する。

6.審判における反論(請求の理由)

(1)手続の経緯

 出     願      平成10年 5月 8日

 拒絶理由の通知      平成11年 8月 9日(発送日:11年9月3日)

  意  見  書   平成11年10月13日

 拒            平成11年11月19日

  同 謄 本 送 達    平成11年12月 3日

  審 判 請 求 書      平成11年12月24日

  手 続 補 正 書      平成11年12月24日

(2)拒絶査定の理由の要点

  原査定の拒絶理由は、

『 この商標登録出願は、平成11年8月9日付けで通知した理由によって、拒絶をすべきものと認める。追って、出願人は意見書を提出して述べるところがあるが、本願商標は、その構成文字に照応する「エスエフティ」の称呼を生ずるものであること明らかである。

  他方、引用登録商標は、「I-SFT」の文字を標準文字で表してなるものであるところ、前半の「I」は、後半の「SFT」にハイフンを介して連綴してなることからみれば、これが後半の「SFT」と常に一体のものと把握されなければならないほどに強い結付きがあるものとも認められず、また、アルファベットの一文字は、簡単かつありふれた記号、符号の類型に属するものであるところから、上記引用登録商標は、後半の「SFT」の文字のみにおいて独立して取引に資される場合があるものというを相当とし、これよりは、単に「エスエフティ」の称呼をも生ずるものというべきである。

 してみれば、本願、引用の両商標は、それぞれより生ずる「エスエフティ」の共通の称呼において、彼此互いに相紛れるおそれがあるものといわざるを得ない。

 したがって、本願商標と引用登録商標とは、称呼において類似する商標である。』

というものであり、従って、本願商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に該当し、同法第15条の規定に基づき、拒絶をすべきものと認めるというものである。

(3)本願商標が登録されるべき理由

  然るに、本出願人は、意見書において、本願商標の構成やその採用経緯等について触れ、引用商標とは類似しないことを主張したにもかかわらず、かかる認定をされたことに対しては承服できないところがあり、ここに再度ご審理を頂きたく、審判を請求する次第である。

  なお、本審判請求書と同時に手続補正書を提出し、本願の指定商品(従って本審判請求の対象となる指定商品)を第9類の「電子計算機用中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路,磁気ディスク,磁気テープその他の周辺機器」に限定する補正を行った。また、第37類の指定役務「電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスクその他の周辺機器を含む。)の修理又は保守」については、本書と同時提出の商標登録願により、分割出願を行った。

① 本願商標の構成

 本願商標は、願書に表示した商標からも明らかなように、標準文字で一連に「SFT」と横書きした態様からなるものである。

 そして、意見書でも述べているように、本願商標は、出願人株式会社ソフトサイエンスの「ソフト」の英語表記である「SOFT」をイメージして、それを簡潔に表すために、三文字で「SFT」と表記したものである。

② 引用商標の構成

 引用商標(登録第4225990号)は、「I-SFT」の文字を標準文字で表してなるものであり、前半の「I」と後半の「SFT」はハイフンを介して連綴されている。

③ 審査官の認定に対する反論

  審査官の認定によれば、本願商標からは「エスエフティ」の称呼が生ずるということであるが、この点に関しては格別の異論はない。

 しかしながら、引用商標が「I-SFT」であるところ、これより前段の「I」の部分を省略し、後段の「SFT」の部分のみをとらえて、単に「エスエフティ」と称呼される場合もあるというのは、甚だ疑問であり、納得できない。

  引用商標にあって、「I」と「SFT」との間に「-」(ハイフン)を介在させているのは、「I」を「アイ」と明確に発音させるためであり、「I」と「SFT」を強固に結び付けるためであって、「I」を軽々しく扱うためではない。称呼上最も重要な位置を占める語頭音「I」を軽々しく省略して発音することは通常意図するはずもないし、これに接する取引者・需用者も、この「I」の文字を省略して、引用商標「I-SFT」を単に「エスエフティ」と称呼するはずもない。「I」を省略してしまったのでは、何の「SFT」か分からない。例えば、「i-mode」(アイモード)なども、「i」を省略し、単に「モード」と発音したのでは、何の「mode」なのか分からない。

 この「i-mode/アイモード」については、エヌ・ティ・ティ移動通信網株式会社により既に商標登録されているが(第4303252号:第1号証参照)、もし仮に、この商標「i-mode/アイモード」から、「i/アイ」の部分が省略され、単に「モード」の称呼も生じると判断されていたならば、この商標「i-mode/アイモード」は登録されなかったであろう。なぜなら、この「i-mode/アイモード」の出願よりも前に出願され且つ登録された第2号証の「MODE」(登録第3088601号:株式会社日立製作所)や第3号証の「MODE」(登録第4003589号:株式会社日立製作所)が存在するからである。つまり、「i-mode/アイモード」から「モード」の称呼が生じるのであれば、これは、「モード」の称呼を有する上記株式会社日立製作所の登録商標「MODE」によって、拒絶されていたはずである。

   ・登録第4303252号「i-mode\アイモード」:NTT移動通信網第1号証

   ・登録第3088601号「MODE」:日立製作所第2号証

   ・登録第4003589号「MODE」:日立製作所第3号証

 然るに、拒絶されずに登録されたということは、「i-mode/アイモード」から「i/アイ」が省略されて称呼されることはないと判断されたからに他ならない。「i-mode」はあくまでも「アイモード」なのである。

  審査官は、拒絶査定書において、前半の「I」は、後半の「SFT」にハイフンを介して連綴してなることからみれば、これが後半の「SFT」と常に一体のものと把握されなければならないほどに強い結付きがあるものとも認められず、また、アルファベットの一文字は、簡単かつありふれた記号、符号の類型に属するものであるところから、上記引用登録商標は、後半の「SFT」の文字のみにおいて独立して取引に資される場合があるものというを相当とし、これよりは、単に「エスエフティ」の称呼をも生ずるものというべきである、と認定するが、このような認定では、上記「i-mode/アイモード」が登録されたことの説明が付かない。明らかな誤解である。

 「-」(ハイフン)はあくまで両者を結び付けるためのものであり、両者を切り離すためのものではない。切り離したければ、両者間に大きくスペースを空けて記載するとか、両者の書体や大きさや位置関係を変えるとかの手だてがあるであろう。この引用商標は、あくまでも「標準文字」により一体の商標として出願され登録されているのである。

 それ故、この標準文字による引用商標中、「I」の部分だけを独立にとらえて、これを単なる記号だとか、符号の類だとか、考えること自体おかしな見方である。あくまでも「-」(ハイフン)によって一体に強く結び付けられた商標と見るべきである。しかも、「I」は語頭音にあって、称呼上最も重要な位置を占めるものであるから、いきなりこの語頭音を省略してその商標を称呼するということはないのである。

 そして、このことは、例えば、以下の登録例からも言い得る。

  即ち、富士通アイソテックの所有に係る「FIT」なる登録商標(登録第2701839号:第4号証参照)が存在するが(平成6年12月22日登録)、この登録後の平成9年11月20日に出願された「i-FIT」なる商標も、別会社である株式会社アイペックにより登録されている(第4252677号:第5号証参照)。

   ・登録第2701839号「FIT」:富士通アイソテック………第4号証

   ・登録第4252677号「i-FIT」:株式会社アイペック第5号証

  これなどは、前者の商標が「エフアイティ」ないし「フィット」と称呼されると思われるところ、もし仮に、後者から「アイ」が省略されて「エフアイティ」ないし「フィット」と称呼される場合もあると判断されていたならば、後者の「i-FIT」は登録されなかったはずである。あくまで後者を「アイエフアイティ」ないし「アイフィット」と、「i」(アイ)を省略することなく称呼されると判断されたからこそ、登録されたのである。

  然るに、本願商標「SFT」と引用商標「I-SFT」の関係も、これら「FIT」と「i-FIT」の関係と同様に非類似と見るべきであり、それ故に、本願商標「SFT」が引用商標「I-SFT」によって拒絶されるという認定に関しては納得できないものがある。

 また、「CORE/INTERNATIONAL」という商標が図形も交えて二段並記して登録されており(登録第2704765号:アイワ株式会社:第6号証参照)、これは「CORE」の文字が大きく書され、目立つ態様となっていて、「CORE」の部分より「コア」の称呼が生じること明かであるが、その登録後の出願に係るカシオ計算機株式会社の「アイコア/I-CORE/§I-CORE」(三段並記)も登録第4264427号として登録されている(第7号証参照)。

   ・登録第2704765号「CORE\INTEERNATIONAL」:アイワ株式会社

                             第6号証

   ・登録第4264427号「アイコア\I-CORE\§I-CORE」

                  :カシオ計算機株式会社第7号証

 これなども、前者の「CORE」の部分と後者の「I-CORE」の部分が本願商標及び引用商標と同様の関係にあるにもかかわらず、登録されている例である。

 然るに、これら各号証の商標が登録できて、本願商標が拒絶されるいわれはない。標準文字である引用商標「I-SFT」の称呼は、あくまでも「アイエスエフティ」であり、「アイ」を省略して単に「エスエフティ」と称呼されることはないのである。それ故、単に「エスエフティ」と称呼される本願商標「SFT」とは、語頭音における「アイ」の称呼の有無の差異があり、語感語調を異にし、両者は称呼上相紛れることはない。

(4)むすび

 以上のように、本願商標と引用商標とは、語頭音を異にする語感語調の異なる商標であって、称呼上類似することはない。

 よって、本願商標は商標法第4条第1項第11号の規定には該当せず、登録適格なものと思料します。

 

ケース57 本願商標:「jRetail@Solution」

1.出願番号  商願2003-80221

2.商  標   「jRetail@Solution」

3.商品区分  第9類

4.適用条文    商標法第3条第1項第6号

5.拒絶理由  何人かの業務に係る商品であることを認識することができない。

6.意見書における反論

(1) 拒絶理由通知書において、審査官殿は、以下のように認定されています。

『 本願商標は、商品の品番、規格等を表示する記号、符号として採択・使用されているアルファベット1字の一類型である「j」の文字を語頭に、また、単価を意味する記号で、インターネットの電子メールアドレスでも用いられる記号である「@」の文字を中間に配して、「jRetail@Solution」と書してなるものですが、その構成中の「Retail」「Solution」の各文字部分は、「小売り」「問題解決法」の意を表す語であって、指定商品との関係では「RetailSolution」の語が「小売り・流通業界のビジネス、マーケット等の問題解決手段としての情報通信システム」の意味合いで広く採択・使用されている実情も併せ勘案すれば、このようなものを本願指定商品中、前記文字に照応する商品に使用しても、これに接する需要者は、その商品が前記文字に照応することを表する語に、単に「j」及び「@」の記号を付してなると認識するにとどまり、何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものと認めます。したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法第3条第1項第6号に該当します。』

 しかしながら、本出願人は、本願商標の「jRetail@Solution」は十分に自他商品識別標識として機能し得る商標であると考えますので、上記認定には承服できず、以下に意見を申し述べます。

(2) 本願商標の「jRetail@Solution」は、その構成中より、「j」の文字と「@」の文字を取り除いた場合には、審査官殿ご指摘の通り、「Retail Solution」となり、これを一つの熟語と考えた場合には「小売り問題解決策」の如き意味合いを有し、一般的には、成る程「小売り・流通業界のビジネス、マーケット等の問題解決手段としての情報通信システム」の如き意味合いが生ずるのかも知れません。

  しかしながら、本願商標は、「j」と「@」の文字を付けることにより、「jRetail@Solution」と表現した造語商標であって、全体として格別の意味(観念)を持たず、称呼的にも、一連に称呼した場合に、「ジェイリテイル・アットソリューション」の如く、2音節に区切って称呼される傾向にある商標であります。

 それ故、本願商標は、「RetailSolution」の語に単に「j」及び「@」の記号を付した構成と言うよりも、「Retail」の語の前に「j」の文字を付けて一つのまとまりとし、また、「Solution」の語の前に「@」の記号を付けて一つのまとまりとして、それぞれを連結して一体とした造語商標とみるべきです。

 つまり、本願商標の構成態様は、「jRetail」と「@Solution」との結合商標であり、あえて分解した場合の単位は、「jRetail」と「@Solution」であると考えます。

 審査官殿の言うように、「RetailSolution」の語に、単に「j」及び「@」の記号を付しただけの商標であるなどという見方は妥当でないと考えます。本願商標はあくまでも「jRetail」と「@Solution」とが結びついて一体となった商標であって、この商標から、あえて「j」と「@」を取り除くような作業をすべきでないと考えます。本願商標は、迅速を尊ぶ通常の商取引に際し、取引者・需要者により、あくまでも「ジェイリテイル・アットソリューション」と称呼され取引される特定の具体的観念を生じない造語商標であります。

 そして、もし仮に、審査官殿の言うように、「小売り・流通業界のビジネス、マーケット等の問題解決手段としての情報通信システム」という意味を表すとしたら、それは、まさしく端的に「RetailSolution」と表現するのが普通ではないかと考えます。本願商標「jRetail@Solution」のような構成態様は、そもそもその様な意味合いを表すための普通の表現方法とは言えないと考えます。

 その意味で、本願商標は、十分に自他商品役務識別力を有するものと思料します。

(3) 過去の商標登録例をみると、

 (A)「@movie第41類「映画の上映」(第4498960号:2001.08.17登録)などが存在します。

  また、本出願人自身も、既に、以下の商標(B)(C)(D)(E)を登録しております。

  (B)「@Buy24第35類「インターネットを利用した商品の販売に関する情報の提供ほか」(第4432373号:2000.11.17登録)

  (C)「@Service24第42類「電子計算機用プログラムの提供ほか」(第4625598号:2002.11.29登録)

 (D)「@SALES24第35類「インターネットを利用した商品の販売に関する情報の提供ほか」(第4644579号:2003.02.14登録)

 (E)@EDUCATION24第41類「インターネットを利用した通信教育ほか」(第4657231号、2003.3.28登録)

  審査官殿のような見方をすれば、上記(A)は“(24時間使える)インターネットを利用した映画又は映画情報の提供”の如き、また、(B)は“(24時間使える)インターネットを利用した購買又は購買情報の提供”の如き、(C)は“(24時間使える)インターネットを利用したサービスの提供”の如き、また、(D)は“(24時間使える)インターネットを利用した商品の販売又は販売情報の提供”の如き、(E)は“(24時間使える)インターネットを利用した教育又は教育情報の提供”の如き、意味合いを想起させる普通の表現方法だということになりますので、或いは拒絶と言うことになるのでありましょうが、現実には、「@」の記号の存在によって、その様な認定はなされず、識別力あるものとして全て登録されております。

 つまり、過去の登録例をみると、「@」の記号一つとってみても、この存在によって、十分に識別機能を備えた商標であると認定されております。

 然るに、このような商標「@movie」、「@Buy24」、「@Service24」、「@SALES24」、「@EDUCATION24」が登録できて、本願商標「jRetail@Solution」が登録できないとされるいわれはありません。

(4) 以上の次第ですので、本願商標の「jRetail@Solution」は、インターネットの普及した現在においても、十分に自他商品識別の機能を発揮する商標であると確信します。

 

ケース58 本願商標「Assam Catalog Server」×引用商標「アッサム/ASSUM」ほか

1.出願番号  商願2003-80222

2.商  標   「Assam Catalog Server」

3.商品区分  第9類

4.適用条文    商標法第4条第1項第11号

5.拒絶理由  登録第2138861号商標「アッサム/ASSUM」と類似する。

6.意見書における反論

(1) 拒絶理由通知書において、本願商標は、登録第2138861号(商公昭63-081357)の商標「アッサム/ASSUM」(以下、引用商標という)と同一又は類似するものであって、その商標に係る指定商品と同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号の規定に該当すると認定された。

  しかしながら、本出願人は斯かる認定に承服できませんので、以下に意見を申し述べます。

(2) 本願商標は、願書の商標見本から明らかなように、「Assam Catalog Server」の欧文字を横書きした態様からなるものでありますが、引用商標は、「アッサム」の片仮名文字を上段に、「ASSUM」の欧文字を下段にして、「アッサム/ASSUM」と二段並記したものであります。

  審査官殿は、本願商標の構成が三つの単語からなって比較的長いことや、後二単語の「Catalog Server」がその言葉の意味として「カタログを管理するサーバー」の如き意味合いを有することから、この部分が商品の品質をあらわすと理解し、本願商標からは「Assam」の文字に相応した「アッサム」の称呼が生じると解して、引用商標「アッサム/ASSUM」(これは特定の観念を生じない造語であり、「アッサム」の称呼を生じる)を引用してきたのではないかと推察しますが、そのような考え方は妥当でないと考えます。

(3) 本願商標は多少長いとは言っても、全体がバランス良く配され、全体が一体的に把握できるものであって、「Assam」の文字のみが目立つようなことはありません。また、言葉の意味合いとして、「Assam」の文字が、本願指定商品との関係にあって全く関連性のない、紅茶の産地として有名な「インドのアッサム州」の英文字表記「assam」と同一綴りであり、また、「Catalog Server」が「カタログを管理するサーバー」程の意味合いを有するとしても、本願指定商品との関係にあって、具体的にこれらの文字が何をあらわすのか定かでありません。これらの言葉が直接かつ具体的に商品の品質内容を表示することはないでありましょうし、ましてや、「Catalog Server」の部分が品質表示と言うことはできないと考えます。

  それ故、本願商標は、全体として、ただ単に、構成文字が持つそれ自体の言葉の意味として「インドアッサム州のカタログを管理するサーバー」の如き意味合いを暗示させるかも知れませんが、商標法でいうところの特定の具体的観念を生じさせることはなく(商標法で言う観念とは、商標自体が客観的に有する意味を言うのではなく、商標を見又は称呼することにより、その商標を付した商品の需用者又は取引者が思い浮かべるその商標の意味と解します)、従って、本願商標の特に「Catalog Server」の部分が、商品の品質を普通にあらわしたものということはできないと考えます。

(4)  また、日経BPデジタル大事典等を紐解くと、「ファイル・サーバー」(File ServerLANなどのネットワークでクライアントが共有する、ハードディスクなどにあるファイルを管理するサーバーのこと)とか、「プリント・サーバー」(Print ServerLANなどのネットワークでクライアントが共有するプリンタを管理するサーバーのこと)とか、 「データベース・サーバー」(Database Server:クライアント/サーバー・システムにおいて、データベースを管理するサーバーのこと)とかは、熟語として載せられているのですが、「Catalog Server」というのは、載せられておりません。

 それ故、本願商標の「Assam Catalog Server」は、全体として特定の具体的観念を生じさせない造語商標であって、全体を一体不可分の商標として把握すべきものであります(但し、具体的に特定の観念は生じないながらも、上述の如く「インドアッサム州のカタログを管理するサーバー?」の如き意味合いを暗示させるという意味において、全体としてまとまりのある造語商標であります)。本願商標は、素直に「アッサムカタログサーバー」とよどみなく称呼できるものであり、その様に一連に称呼して称呼しにくいものではありません。むしろ、単なる「アッサム」では何のことか分かりません。それ故、多少長い称呼ではあっても、本願商標を見た取引者・需用者は、これを省略して称呼することはないでありましょう。

 以上のように、取引者・需用者は、本願商標の「Assam」の部分のみを要部と捉えて、単に「アッサム」と称呼するようなことはないと思料します。つまり、本願商標の称呼は、あくまでも「アッサムカタログサーバー」であると考えます。

(5)  そして、このことは、例えば、本出願人が、同じく第9類を指定商品として、以下に示す「Assam」の文字を含む商標を多数登録(登録査定)している事実からも伺い知ることが出来ます(以下のA~H参照)。

 A.「Assam Whois」(第4173443号、H10.7.31登録)第1号証、

 B.「Assam Internet Applets」(第4209005号、H10.11.06登録)第2号証、

 C.「Assam WebBench」(第4393720号、H12.06.23登録)第3号証、

 D.「Assam WebGuard」(第4573808号、H14.05.31登録)第4号証、

 E.「Assam HelpDesk/アッサムヘルプデスク」(第4609731号、H14.10.04登録)第5号証、

 F.「Assam anyWarp」(第4655383号、H15.03.20登録)第6号証、

 G.「Assam PotalTemplate」(商願2003-77130H16.2.9登録査定)第7号証、

 H.「Assam Reliability」(商願2003-77131H16.2.9登録査定)第8号証。

  即ち、審査官殿の見方に従って、これらA~Hの商標も「Assam」の部分のみが商標の要部であると把握した場合には、これらよりも出願が先となる今般の引用商標「アッサム/ASSUM」(第2138861号、H01.05.30登録)の存在によって、これらA~Hの商標は拒絶されていたはずでありますが、現実には、上記のとおり、全て登録(ないし登録査定)されております。これは、これらの商標から、「Assam」の部分のみを要部として抽出できないことを意味しています。つまり、これらA~Hの商標が登録されたのは、これら全ての商標は、一連の称呼のみ生ずる一つの商標であると認定されたからに他なりません(或いは、少なくとも「Assam」のみを要部として抽出できない商標であると認定されたからに他なりません)。

 本願商標も同様でありましょう。本願商標は、これら「Assam」と「Catalog」と「Server」を結合して「Assam Catalog Server」と書した、特定の具体的観念を生じさせない造語商標であり、本出願人が過去に取得した上記A~Hの登録ないし登録査定商標である「Assam」シリーズの一貫として出願した商標であります。これらA~Hの商標が登録できて、本願商標が登録できないとされる謂われはありません。同様に登録されて然るべきであります。

(6)  このように、本願商標は、特定の具体的観念は生じないものの、全体で一つの意味合いを暗示させ、且つ全体がバランス良く配置され、称呼的にも全体として一連に称呼しやすいものであることから、「Assam」の部分のみ取り出して、単に「アッサム」と称呼されることはあり得ないと考えます。本願商標の態様からして、単に「アッサム」と称呼するのは、如何にも不自然であります。全体の称呼がやや長いことは認めるにしても、全体として一つの意味合いを暗示させるとともに、全体を一連に称呼して決して称呼しにくいわけではない以上、本願商標はあくまでも全体を一つの造語商標と把握し、称呼するのが自然であります。

(7) 以上の次第でありますので、本願商標と引用商標とは、外観および観念上類似することはないとともに、称呼上も「アッサムカタログサーバー」と、単なる「アッサム」との差異があって、両者は語感語調を全く異にし、取引者・需用者をして決して紛れることはないものと思料します。

 よって、本願商標と引用商標とは非類似の商標であり、本願商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものではないと考えます。

 

ケース59 本願商標「WindyPrint」×引用商標「カラーウィンディ/ColorWindy」

1.出願番号  商願2001-18718(拒絶査定に対する審判事件)

        ( 審判2002-5962)

2.商  標   「WindyPrint

3.商品区分  第9類:電子計算機用プログラム

4.適用条文    商標法第4条第1項第11号

5.拒絶理由 「WindyPrint」は「ColorWindy」に類似する。

6.審判における反論(請求の理由)

(1)手続の経緯

 出     願      平成13年 3月 2日

 拒絶理由の通知      平成14年 3月 1日(発送日:11年9月3日)

  意  見  書   平成14年 3月 5日

 拒            平成14年 3月29日

          平成14年 4月 1日

            平成14年 4月 8日

            平成14年 4月 8日

(2)拒絶査定の理由の要点

  原査定の拒絶理由は、

  【拒絶査定の要点】

  原査定は、『この商標登録出願は、平成14年2月27日付けで通知した理由(ただし、引用商標については、引用No.1に係る登録第4094396号との関係によるものに限る。)によって、拒絶をすべきものと認めます。

 なお、出願人は、意見書において種々述べ、証拠方法として第1号証乃至第10号証を提出していますが、以下の理由により、本願商標と引用商標とは互いに類似する商標と認められるものですから、さきの認定を覆すことはできません。 本願商標は、「WindyPrint」の欧文字を表示してなるものですが、これはその構成全体をもって常に不可分一体のものとして把握しなければならない特別の事情は何ら見出せないものであるところ、その構成中、後半部の「Print」の欧文字は、「印刷する。印刷。」等を意味する親しまれた英語であることから、特にその指定商品中「電子応用静電複写機,電子計算機用プリンタ」等の印刷関係の機器との関係では、商品の内容をイメージさせるに止まる語であるといえ、その限りにおいては格別自他商品識別力を発揮する語であるとまでは認められないものです。これに対して、前半部の「Windy」の欧文字は、「風の強い、風のような」等を意味する親しまれた英語であって、その指定商品との関係では何ら商品の内容等をイメージさせる語ではないことから、自他商品識別力を十分発揮する語であると認められます。

 そうとすれば、本願商標は、その指定商品中「電子応用静電複写機,電子計算機用プリンタ」等の印刷関係の機器との関係においては、「Windy」の文字部分が自他商品の識別標識としての機能を果たすものといえ、これより生ずる称呼をもって取引にあたることも決して少なくないものとみるのが相当です。

 したがって、本願商標は、その構成文字に相応して「ウィンディプリント」の一連の称呼が生ずるほか、「Windy」の文字部分に相応して「ウィンディ」(風の強い、風のような)の称呼・観念をも生ずるものであるというべきです。 一方、引用商標は、「ColorWindy」の欧文字と「カラーウィンディ」の片仮名文字とを二段に表示してなるものですが、その構成中、前半部の「Color」及び「カラー」の各文字は、その指定商品中「カラー対応の電子応用静電複写機,カラー対応の電子計算機用プリンタ」等のカラー印刷関係の機器との関係では、単にそれらの商品がカラー対応の商品であることをイメージさせるに止まる語であるといえ、その限りにおいては格別自他商品識別力を発揮する語であるとまでは認められないものです。

 そうとすれば、引用商標は、その指定商品中「カラー対応の電子応用静電複写機,カラー対応の電子計算機用プリンタ」等のカラー印刷関係の機器との関係においては、本願商標の理由と同様に、「Windy」及び「ウィンディ」の文字部分が自他商品の識別標識としての機能を果たすものといえ、これより生ずる称呼をもって取引にあたることも決して少なくないものとみるのが相当です。

 したがって、引用商標は、その構成文字に相応して「カラーウィンディ」の一連の称呼が生ずるほか、「Windy」の文字部分に相応して「ウィンディ」(風の強い、風のような)の称呼・観念をも生ずるものであるというべきです。

 してみれば、本願商標と引用商標とは、外観においては相違するものの、「ウィンディ」(風の強い、風のような)の称呼・観念を共通にする類似の商標というべきであり、かつ、その指定商品も同一又は類似の商品と認られるものです。 よって、結論のとおり、本願を拒絶します。

 おって、出願人は、過去の登録例(第1号証乃至第10号証)を挙げて、本願商標も同様に登録されるべきである旨主張していますが、本願商標については、上記認定のとおり判断するのを相当とするものですから、仮にその結果、過去における登録例との関係で矛盾した判断になるとしても、審査の判断は、事案毎に個別・具体的になされるべきであるといえ、必ずしも過去の一部の登録例に拘束される理由はないというべきです。したがって、当該主張は採用することができません。』というものであります。

  【本願商標が登録されるべき理由】

  然るに、本出願人は、意見書において、本願商標はあくまでも一連一体の商標であって、引用商標とは類似しないことを主張したにもかかわらず、かかる認定をされたことに対しては、過去の登録例との関係で納得できないところがありますが、今回は審査官の意見も一部取り入れて、本願商標の指定商品を内容表示に当たらない商品に補正しましたので、拒絶の理由は解消したものと思料します。

 以下、この補正した指定商品を前提に、本願が登録されるべき理由を申し述べます。

 (a)本願商標の構成

  本願商標は、願書の商標登録を受けようとする商標に表示したとおり、欧文字で「WindyPrint」と書した態様からなり、指定商品を今回の補正により、第9類「電子計算機用プログラム」とするものであります。

 (b)引用商標1の構成

  これに対し、引用商標1は、上段に片仮名文字の「カラーウィンディ」を配し、下段に欧文字の「ColorWindy」を配して、上下二段に「カラーウィンディ/ColorWindy」と書したもので、第9類「電気通信機械器具(テレビジョン受信機・ラジオ受信機・音声周波機械器具・映像周波機械器具を除く),電子応用機械器具及びその部品,写真複写機」を指定商品とするものであります。

 なお、この拒絶査定時においては、拒絶理由通知段階で引用した引用商標2及び3の引用を取りやめております。これは、こちらが意見書で指摘した引用商標1と引用商標2,3とを同時に引用することの矛盾に、審査官自身気が付いたからだと思います。そして、無効理由を包含する虞のある引用商標2及び3の方をこの拒絶査定の引例から外したものと思われます(この引用商標2,3は引用商標1よりも後願である故)。

 (c)審査官の認定に対する反論

  上記したように、本出願人は、本日付けで、指定商品を本来使用を予定している「電子計算機用プログラム」に限定する補正を行いましたが、これは、拒絶査定における審査官の次の指摘を考慮してのものです。

(審査官の指摘)『本願商標は、……その構成中、後半部の「Print」の欧文字は、「印刷する。印刷。」等を意味する親しまれた英語であることから、特にその指定商品中「電子応用静電複写機,電子計算機用プリンタ」等の印刷関係の機器との関係では、商品の内容をイメージさせるに止まる語であるといえ、その限りにおいては格別自他商品識別力を発揮する語であるとまでは認められないものです。

  つまり、この審査官の指摘によれば、本願商標を構成する「Print」の欧文字は、印刷関係機器との関係においては商品の内容を表示するもので、格別自他商品識別力を発揮する語ではないということであります。よって、本出願人は、この商品内容をイメージさせる虞のある指定商品を削除し、そしてそれ以外の商品のうちでも、特に出願人が使用を予定している商品である「電子計算機用プログラム」に指定商品を限定したものです。

  このように指定商品を「電子計算機用プログラム」に限定した結果、本願商標の後半部である「Print」の欧文字部分は、前半部の「Windy」の欧文字部分同様、その指定商品との関係では何ら商品の内容等をイメージさせる語ではなく、自他商品識別力を十分に発揮する語であると思料します。

 そして、指定商品との関係で識別力を発揮する2つの欧文字部分から成る本願商標「WindyPrint」は、意見書でも述べたように、あくまでも「Windy」と「Print」とを一体に結合して同間隔に左右5文字ずつバランス良く配置し、全体として特定の観念を生じさせない一連一体の結合商標でありますので、前段部分「Windy」と後段部分「Print」には、外観的にも観念的にも軽重の差はなく、また、7音構成から成るものの全体として一連に称呼して冗長にならず、語呂もよく称呼し易い商標でもありますので、本願商標はその構成全体をもって不可分一体のものとして把握すべきであります。

 つまり、本願商標は、識別力を発揮する文字同士の結合商標でありますし、他にも前段又は後段を単独で称呼するような特別な事情は存在しないと思います。それ故、少なくとも「電子計算機用プログラム」を指定商品とする限り、「Windy」部分を抽出して、単に「ウィンディ」と称呼されるようなことはないと考えます。本願商標の称呼は、あくまでも一連の「ウィンディプリント」のみであると思料します。

  以上の次第でありますので、たとえ、引用商標1から「ウィンディ」の称呼・観念が生じたとしても、本願商標は常に「ウィンディプリント」とのみ一連に称呼・観念されるものであり、両者類似することはないと考えます。

  【むすび】

  以上のように、指定商品を「電子計算機用プログラム」に限定した本願商標の「WindyPrint」は、「Print」の欧文字部分であっても、該指定商品との関係において、商品の内容を表示するものではなく、十分に識別力を発揮する語であると考えます。

 したがって、本願商標は、常に一連に「ウィンディプリント」とのみ称呼・観念されるべき商標でありますので、たとえ引用商標1から「ウィンディ」の称呼・観念が生じたとしても、「ウィンディ」(風の強い、風のような)の称呼・観念を共通にすることはなく、両者は非類似の商標であると考えます。

 よって、本願商標は充分に登録適格性を備えたものであり、「原査定を取り消す、本願の商標は登録をすべきものである」との審決を求める次第であります。

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(参考)ケース59の「審決」

不服2002- 5962

   商願2001- 18718拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。

 結 論

   原査定を取り消す。

   本願商標は、登録すべきものとする。

 理 由

  1 本願商標

   本願商標は、「WindyPrint」の文字を横書きしてなり、第9類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成13年3月2日に登録出願されたものである。

   その後、指定商品については、当審において同14年4月8日付け手続補正書により、第9類「電子計算機用プログラム」と補正されたものである。

  2 引用商標

   原査定において、本願商標の拒絶の理由に引用した登録第4094396号商標(以下「引用商標」という。)は、「カラーウィンディ」及び「ColorWindy」の文字を二段に横書きにしてなり、平成7年5月24日登録出願、第9類「電気通信機械器具(テレビジョン受信機・ラジオ受信機・音声周波機械器具・映像周波機械器具を除く),電子応用機械器具及びその部品,写真複写機」を指定商品として同9年12月19日に設定登録されたものである。

  3 当審の判断

   本願商標は、前記のとおりの構成よりなるところ、構成各文字は全体として外観上まとまりよく一体的に表されていて、しかも、全体の構成文字より生ずる「ウインディープリント」の称呼も格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼できるものである。

   そして、たとえ構成中の「Print」の文字部分が「印刷する、印刷」等を意味する語であるとしても、かかる構成においては特定の商品の品質等を表示するものとして直ちに理解できるものともいい難いところであるから、むしろ構成全体をもって一体不可分のものと認識し把握される一種の造語とみるのが自然である。

   そうすると、本願商標は、その構成文字全体に相応して、「ウインディープリント」の称呼のみを生ずるものと判断するのが相当である。

   他方、引用商標は、前記のとおりの構成よりなるところ、構成各文字は全体として外観上まとまりよく一体的に表されていて、しかも、全体の構成文字より生ずる「カラーウインディー」の称呼も格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。

   そして、たとえ構成中の「カラー」及び「COLOR」の文字部分が「色彩」等を意味する語であるとしても、かかる構成においては、特定の商品の品質等を具体的に表示するものとして直ちに理解し得るものともいい難いところであるから、むしろ構成全体をもって一体不可分のものと認識し把握される一種の造語とみるのが自然である。

   そうとすれば、引用商標は、その構成文字全体に相応して「カラーウインディー」の称呼のみを生ずるものと判断するのが相当である。

   そして、本願商標と引用商標とは、相違する各音の音質の差、音構成の差により区別できるものである。

   また、両商標は、前記の構成よりみて外観において明らかに区別し得る差異を有するものであり、観念においても、共に造語であるから比較すべくもないものである。

   そうすると、本願商標と引用商標は、外観、称呼、観念のいずれの点よりみても、類似しない商標といわざるを得ない。

   したがって、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。

   その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。

   よって、結論のとおり審決する。

        平成16年 5月28日

                 審判長  特許庁審判官 小林  

                      特許庁審判官 岩崎  良子

                      特許庁審判官 池田  光治

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ケース60 本願商標「KJEL/ケージェル」×引用商標「KGL」

1.出願番号  商願2003-48320

2.商  標   「KJEL/ケージェル」

3.商品区分  第3類

4.適用条文    商標法第4条第1項第11号

5.拒絶理由  登録第4579450号商標「KGL」と類似する。

6.意見書における反論

(1) 拒絶理由通知書において、本願商標は、「登録第4579450(商願2001-019771)の登録商標(以下、引用商標という)と同一又は類似であって、その商標に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。」との認定を受けた。

 しかしながら、本出願人は、本願商標と引用商標とは、外観,称呼および観念のいずれにおいても類似せず、取引者・需用者をして出所の混同を起こさせることはないと思料するので、斯かる認定には承服できず、以下に意見を申し述べる。

(2)  本願商標は、願書の商標見本から明らかなように、上段の英文字「KJEL」と下段の片仮名文字「ケージェル」とを「KJEL/ケージェル」と二段併記して成るものであるが、引用商標は「KGL」の欧文字3文字(標準文字)からなるものである。

 従って、本願商標と引用商標とは、外観上類似しないことは明らかである。

(3)  また、本願商標の「KJEL/ケージェル」は、格別の観念を生じない造語商標であるが、引用商標の「KGL」も格別の観念を生じない造語商標である。

 従って、本願商標と引用商標とは、観念上比較すべくもなく、互いに非類似の商標である。

(4)  そこで、次に称呼の点につき検討する。

 本願商標は、上段の英文字部分が「KJEL」となっていて、下段にその読みを表すべく「ケージェル」と片仮名表記した態様であるところ、本願商標からは常に「ケージェル」の称呼が生じるものと思料する。

  これに対し、引用商標は「KGL」の態様より、「ケージーエル」ないし「ケイジイエル」の称呼が生じるものと思料する。

  そこで、本願商標の称呼「ケージェル」と引用商標の称呼「ケージーエル」ないし「ケイジイエル」を対比する。

 まず、本願商標の称呼「ケージェル」は、後段の「ジェ」の部分が強く発音される傾向にあり、また一連に称呼したとき「ケー・ジェル」と2音節に区切って発音される傾向にある。

 これに対し、引用商標の称呼「ケージーエル」ないし「ケイジイエル」は、各文字一つ一つが明瞭に強く発音される傾向にあり(特に、「ケ」「ジ」「エ」にアクセントあり)、一連に称呼したとき「ケー・ジー・エル」ないし「ケイ・ジイ・エル」と3音節に区切って発音される傾向にある。

  即ち、本願商標が「ケー・ジェル」と2音節に区切って、しかも「ジェ」にアクセントをもって称呼されるのに対し、引用商標は「ケー・ジー・エル」ないし「ケイ・ジイ・エル」と3音節に区切って称呼され、且つ各音節の一音目「ケ」「ジ」「エ」がそれぞれアクセントをもって明瞭に発音される傾向にあり、両者は語感語調を全く異にする。

  特に第2音目以降、本願商標は「ジェル」と短く一気に発声されるのに対し、引用商標は「ジー・エル」あるいは「ジイ・エル」と2音節に発声される点で全く異なる。そして、この違いは2音節中の1音節、あるいは3音節中の2音節の差異であり、全体の称呼に占める割合の半分以上を占めている。したがって、この差異が全体の称呼に与える影響は大きなものがあり、称呼上別意の印象を与えるに十分な差異である。

 それ故、取引者・需要者が両商標を称呼して取引する場合、本願商標の「ケー・ジェル」と引用商標の「ケー・ジー・エル」ないし「ケイ・ジイ・エル」とは、語感語調を全く異にし、明瞭に識別できるものと思料する。

(5)  殊に、本願商標の指定商品分野である化粧品等の分野においては、取引者・需要者が横文字表記(英文字やカタカナ文字表記)の商標名に慣れ親しんでおり、相当に注意深い観察力を持っている。従って、外観が全く異なり、且つ語感語調の異なる本願商標の「KJEL/ケージェル」(ケー・ジェル)と、引用商標の「KGL」(ケー・ジー・エル)(ケイ・ジイ・エル)とを混同することはないと考える。

(6) 以上のように、本願商標と引用商標とは、外観及び観念上類似することはないとともに、称呼上も、本願商標が「ケー・ジェル」と「ジェ」にアクセントをもって2音節に称呼されるのに対し、引用商標は「ケー・ジー・エル」ないし「ケイ・ジイ・エル」と各音節の語頭音「ケ」「ジ」「エ」にアクセントをもって、一文字ずつはっきりと3音節に区切って称呼される点において、全く異なる。

 このように、本願商標と引用商標とは、音節の区切りの違いやアクセント位置の違い等により語感語調を全く異にするが、短い音構成にあってこの差異は大きく、両者を一連に称呼したとき聴者をして決して紛れることはないと思料する。

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*これらは、全てこの意見書により審査官の考えを変えさせ、あるいは審判請求により登録にもっていったケースです。

  審査官も考え違いをしている場合がありますし、取引の実情から全く懸け離れたような判断を下す場合もあります。

従って、納得できなければこのように積極的に反論すべきです。審査官も正当な理由があると認めれば(「なるほどな」と思わせれば)、考えを改めるはずです。                                      

 なお、この中には審判のケース、即ち、審査官の認定は不当であったとして審判官がその判断を覆し、登録を認めたケースも多数含まれています。

                      2017-12-10 S.Ogawa

 

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