意見書対応の重要性◆ 第7弾

-商標の中途受任引き受けます!

難しそうな案件でも、是非登録しておきたいという思い入れのある商標は、登録の可能性が少しでもありそうなら、きちんと反論しましょう。登録になることが結構あります。

特許庁から拒絶理由通知をもらうと、ああダメなんだと直ぐにあきらめていませんか。

おかしいなと思ったら、積極的に意見書を提出して反論すべきです。審査官を説得すれば登録してくれます。

今回は、ケース61~70を紹介します。

             2018-02-16 S.Ogawa

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  ケースNO.          目     次                  適用条文

   ケース61:本願商標「エステロボ」…………………… 3①3,4①16

   ケース62:本願商標「カムイコタン」(審判…………… 3①3

   ケース63:本願商標「メディアバッグ」×引用商標「メディア」4①11

   ケース64:本願商標「ペロイドケアー」(審判…… 3①3,4①16

   ケース65:本願商標「CelluliteVanish/

            セルライトヴァニッシュ」(審判3①3,4①16

   ケース66:本願商標「MINI+/ミニプラス」×引用商標「Minipla」4①11

   ケース67:本願商標「Designers DeskTop」(審判3①6,4①16

   ケース68:本願商標「ToningBath/トーニングバス」

           3類(審判3①3,4①16

   ケース69:本願商標「ToningBath/トーニングバス」

           5類(審判3①3,4①16

   ケース70:本願商標「ADSYS」

      ×引用商標「ハドシス」「HADSYS」他(審判……4①11

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ケース61 本願商標:「エステロボ」 

1.出願番号  商願2004-14913

2.商  標   「エステロボ」

3.商品区分  第11類:業務用の痩身用機械器具,他

                第44類:美容,理容

4.適用条文    商標法第3条1項3号、第4条第1項第16号

5.拒絶理由  単に商品(役務)の品質(質)を表示するにすぎない。

6.意見書における反論

(1) 拒絶理由通知書において、審査官殿は、本願商標は、仏語の「esthetique」の略語であり、「全身美容法」の意味を有する「エステ」の文字と、仏語の「robot」の表音と認識され、「ロボット」の意味を有する「ロボ」の文字とを一連に「エステロボ」と普通に用いられる方法で書してなるものであり、その指定商品(指定役務)との関係では、全体として「全身美容法を行うロボット」の意味合いを認識させるものであるから、これを本願の指定商品(指定役務)中、例えば「全身美容法を行う業務用の痩身用ロボット、全身美容法を行うロボットを用いた美容」等、前記文字に係る商品(役務)に使用するときは、単に商品(役務)の品質(質)を表示するにすぎないものと認められ、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品(前記役務)以外の商品(役務)に使用するときは、商品(役務)の品質(質)の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当すると認定された。

  しかしながら、本出願人は、本願商標「エステロボ」は特定の具体的観念を生じさせない造語であって、本願指定商品に付して使用しても、決して商品(役務)の品質(質)を認識させるものではないと考えますので、前記認定には承服できず、以下に意見を申し述べます。

(2) 本願商標は、願書に表示した商標見本からも明らかなように、片仮名文字で一連に「エステロボ」と書した態様からなるもので、且つ、指定商品及び指定役務を第11類の「業務用の痩身用機械器具,その他の美容院用又は理髪店用の機械器具(いすを除く。)」、及び第44類の「美容,理容」とするものであります。

 然るに、本願商標の「エステロボ」は、審査官殿もご指摘のように、成る程「エステティック」の略語である「エステ」の文字と、「ロボット」を意味する「ロボ」の文字とを組み合わせたものであり、その言葉の意味合いから、指定商品(役務)との関係において、全体として「全身美容法を行う業務用の痩身用ロボット、全身美容法を行うロボットを用いた美容」等を間接的に表示ないし暗示させることになるのかも知れません。

 しかしながら、そうだからと言って、本願商標「エステロボ」が直ちに商品・役務の品質表示用語と理解されるものではないと考えます。

 本願商標「エステロボ」は、あくまでも「エステティック」の前3文字「エステ」と「ロボット」の前2文字「ロボ」とを抽出して連結した特定の具体的観念を生じさせない造語商標であり、その文字から「全身美容法を行うロボット」等を間接的にイメージすることはあるとしても、そのことが直ちに商品(役務)の品質(質)等を普通に表示する言葉ということにはならないと考えます。

 本願商標は、あくまでも、特定の具体的観念を生じさせない造語商標であって、決して品質表示用語ではありません。抽象的にそのようなものを思い浮かべさせる、あるいは印象付けるということと、具体的にその商品(役務)の品質・内容等を表示するということとは、別物であると考えます。

(3) そしてまた、本願商標を構成する「エステロボ」の言葉は、例えば、業務用の痩身用機械器具等の取引に際して、美容業界などで普通に用いられている言葉ではありません。ましてや、「エステティックを行うロボット」を意味するとしても、それが具体的には一体如何なるロボットを意味するのか、判然とはしません。つまり、一体如何なるエステティックをどのような手段・方法により執り行うロボットであるのか、判然としません。これは、具体的にそのようなロボットが実在しない或いは実在しても普及していない現状において、当然のことかも知れませんが、「エステロボ」の言葉から、取引者・需要者が具体的な品質・内容等を思い浮かべることができないとしたら、それは品質表示用語であるとは到底言えないことを意味します。

 一般的に、エステとは、所定の養成講座或いは研修等を終了したエステティシャンと呼ばれる専門技術者によって施術される全身美容と認識されており、ロボットにより施術が行われる形態のものとは理解されていませんし、現実にロボットによるエステなど聞いたことがありません。

 したがって、上記のように本願商標の「エステロボ」が「全身美容法を行うロボット」を間接的に表示するとしても、それが具体的に如何なる商品・役務を表すものなのかは定かでない現状において、取引者・需要者をして、直ちに指定商品(役務)の品質(質)を表示するなどということは到底考えられません。

 このように、「エステロボ」は具体的には特定の観念を生じさせない造語であり、しかも「エステロボ」が普通に品質表示として用いられている事実がない以上、取引者・需用者が、例えば、業務用の痩身用機械器具に商標的態様で「エステロボ」と書してある文字を見て、これを品質表示であると認識するとは思えません。むしろ、一般的には、「エステロボ」という商標名の製品等であると認識するはずであります。そうだとすれば、本願商標「エステロボ」は充分に識別標識として機能し得る商標であります。

(4)ところで、本願商標に係る指定商品(役務)と同じ類似群09E25,42C01の商品(役務)分野において、本願商標を構成する「エステ」や「ロボ」の文字を含む過去の商標登録例を見ると、例えば、以下の様な登録商標が存在しています。

 A.登録2008119「ロボサッカー」第9 業務用遊戯ロボット他

 B.登録2656749「ミンチロボ」第9 挽き肉加工機械器具他

 C.登録3187551「エステバス」第42類 入浴施設の提供,美容他

 D.登録4091148「Mud Esthete/マッド エステ」第42 美容

 E.登録4254809「波動エステ」第42類 美容,理容

 F.登録4258109「モバイルエステ」第11類 業務用の痩身機械器具他

 G.登録4622616「ESTHELASER/エステレーザー」

   第11類 業務用美容機械器具他

 H.登録4727404「エアーエステ/Air Esthetic」

    44類 美容,理容他

 もし仮に、審査官殿のような考え方に従うのであれば、Aの「ロボサッカー」は「サッカーをするロボット」程度の、Bの「ミンチロボ」は「挽き肉を加工するロボット」程度の、Cの「エステバス」は「全身美容を行う風呂を用いた美容」程度の、Dの「Mud Esthete/マッド エステ」は「泥を用いて行う全身美容」程度の意味合いを生ずるということになるのでしょう。また、Eの「波動エステ」は「波動を用いて行う全身美容」程度の、Fの「モバイルエステ」は「携帯用全身美容機械器具」程度の、Gの「ESTHELASER/エステレーザー」は「全身美容法を行うレーザー器具」程度の、Fの「エアーエステ/Air Esthetic」は「空気を用いて行う全身美容」程度のそれぞれ意味合いを生ずるということなると思われます。

 そして、その意味合いからすれば、これらを、その指定商品(役務)について使用するときは、審査官殿の考え方に従えば、これに接する取引者・需用者は、単に該商品(役務)の品質(質)を表示するにすぎないと認識することになって拒絶と言うことになるのでありましょうが、現実にはその様な認定はなされず、上記A~Hの全てが登録されております。

 このように、審査官殿のような見方をすれば、一見、商品(役務)の品質(質)表示的な商標と思われるものであっても、実際には、本願商品(役務)と同一又は類似の分野において、拒絶されることなく登録されている例は多数にのぼります。

 然るに、これら「ロボサッカー」「ミンチロボ」「エステバス」「エステレーザー」等の商標が登録できて、本願商標の「エステロボ」が登録できないとされるいわれはありません。本願商標は、あくまでも「エステ」と「ロボ」が結合して一体となった造語商標であり、一般的に品質内容表示として流通し機能しているわけでは有りませんので、十分に自他商品識別力を有し、登録適格なものと思料します。

(5) 以上のように、本願商標「エステロボ」が、ある一つの商品・役務を表す言葉としてエステ・美容等の業界において確立され流通・取引されているならばまだしも、そのような事実がない以上、本願商標を以て、単に品質表示だと言うことはできないものと思料します。このことは、「エステ」及び「ロボ」の文字を含む一見商品(役務)の品質(質)表示的な商標が多数登録されている事実からも言い得ることであります。

 よって、本願商標の「エステロボ」は、十分に自他商品識別の機能を発揮する商標であり、商標法第3条第1項第3号や第4条第1項第16号に該当するものではなく十分に登録適格性を有するものと思料します。

◎ケース62 本願商標:「カムイコタン」

1.出願番号  商願平11-87575(不服2000-20486)

2.商  標   「カムイコタン」

3.商品区分  第9、42類

4.適用条文    商標法第3条第1項第3号

5.拒絶理由  商品の産地、販売地及び役務提供の場所を表示するに過ぎない。

6.不服審判における反論(請求の理由)

  【手続の経緯】

 出     願       平成11年 9月28日

 拒絶理由の通知       平成12年 9月20日

     同 発送日       平成12年 9月29日

  意  見  書       平成12年10月24日

              平成12年10月24日

  拒 絶 査 定       平成12年12月 5日

   同 謄本送達       平成12年12月15日

  【拒絶査定の要点】

  原査定は、「平成12年9月20日付けで通知した理由(1)によって、商標法第15条の規定に基づき拒絶する。なお、出願人は、意見書において種々述べていますが、さきの認定をくつがえすことはできません。」というものであり、その具体的理由は、拒絶理由通知書の拒絶理由(1)に示されたとおり、

『 本願商標は、北海道旭川市西部にある石狩川上流の峡谷のあたり一帯を表す(奇岩、怪石、深淵が多い景勝地であり、アイヌ民族の縦穴住居跡があることでも知られる。)「カムイコタン」の文字を書してなるにすぎないものであるから、これを本願の指定商品(役務)に使用するときは、単にその商品の産地、販売地及び役務の提供の場所を表すにすぎないものと認めます。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当します。』

と、いうものである。

  【本願商標が登録されるべき理由】

 しかしながら、本出願人は、本願商標の「カムイコタン」は、格別に有名な地域名でもなく、また指定商品や役務と何の関係もない地域名であることから、本願の指定商品に付し、或いは本願の指定役務の表示に使用しても、その「商品の産地、販売地」や「役務の提供場所」を表示すものということはできず、本願第9類や第42類の指定商品や役務との関係にあって、充分に商標としての自他商品識別力を発揮し得る商標であると思料する。よって、前記審査官の認定には承服できず、ここに審判を請求し、再度の御審理をお願いする次第である。

(a)本願商標の構成

 本願商標は、願書に表示した商標見本から明らかなように、片仮名文字で一連に「カムイコタン」と書した態様からなるものであり、指定商品を第9類の「写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,自動販売機」とし、指定役務を第42類の「コンピュータネットワーク上で利用可能な情報・サイトの提供,コンピュータネットワーク上で利用可能な情報・サイトの検索エンジンの提供」とするものである(平成12年10月24日補正済み)。

(b)本願商標が登録されるべき理由

(b-1)

 然るに本願商標の「カムイコタン」は、審査官殿からもご指摘があったように、「北海道旭川市西部にある石狩川上流の峡谷のあたり一帯を表す(奇岩、怪石、深淵が多い景勝地であり、アイヌ民族の縦穴住居跡があることでも知られる。)地域名」であることを否定するものではないが、この「カムイコタン」の文字を、商標的使用態様で、本願指定商品や役務に使用した場合、果たして、北海道カムイコタン製の電子部品やコンピュータその他の電子工業製品であるとか、北海道中央部、旭川市西部の景勝地カムイコタンの地で運用し・発信しているインターネット上の情報サイトであるなどと、第三者が認識するであろうか。

 単純に「カムイコタン」の商標名やホームページ名やその提供者名を認識するのではなかろうか。なぜなら、“カムイコタン”と言う景勝地と、指定商品「写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,自動販売機」の製造・販売や、指定役務「コンピュータネットワーク上で利用可能な情報・サイトの提供,コンピュータネットワーク上で利用可能な情報・サイトの検索エンジンの提供」というソフトウエア開発事業とは、全く結び付きようがないからである(旭川市のカムイコタンと称される一帯では、現実にコンピュータ関連事業など行われていないし、まさか行うはずもないような山と渓谷で覆われた地帯である)。景勝地「カムイコタン」は、あくまでも景勝地としての認識しかないはずである。

(b-2)

 このように、地域名としてのカムイコタンは、あくまでも、「奇岩、怪石、深淵が多い景勝地(十勝八景の一つ)であり、アイヌ民族の縦穴住居跡がある」ということで知られた地であり、ソフトウェア開発事業やコンピュータメーカー等が集中する地として知られているものではない。この地域には、日高山脈に源をもち、環境庁より日本一の認定(昭和62年以降5回)を受け、また国土庁より水の郷百選にも選ばれた清流「歴舟川」が流れており、カムイコタンは、この清流「暦舟川」の中流にあって、山が迫る渓谷に、広い河畔があるような場所である。この辺は、ニジマス・ヤマメ・イワナなど川魚の宝庫であり、釣りはもちろん、カヌー遊びやキャンプなどのアウトドアライフを思いっきり楽しむ場所であって、夏には清流まつり、秋にはカムイコタン公園まつりといった「清流歴舟川」に関するイベントも開催され、多くの人で賑わう地である。

 つまり、この地域は、大自然を思いっきり満喫する場所であって、工場を造ってコンピュータを製造したり、ソフトウェア開発事業を行うような場所ではない。また、そのようなことができる場所でもない(例えば、インターネットの検索エンジン「yahoo! JAPAN」などで、「カムイコタン」を検索すると、写真入りの案内や説明があり、景勝地カムイコタンの状況が分かるはずである。とても事業用の建物や工場を建築できるような場所ではないことも、はっきりするはずである)。ここは、あくまでも大自然に囲まれた景勝の地であって、アウトドアライフを楽しむ場所である。

  然るに、この商標「カムイコタン」を、商標的使用態様で、本願指定商品や役務に使用しても、あくまでも商標「カムイコタン」に係る「電子応用機械器具」であるとか、商標「カムイコタン」を所有する事業者で運営し・発信しているインターネット上の情報サイト名であるとの認識しか持たれないであろう。

 このことは、北海道カムイコタンの景勝地に一度でも出向き、あるいは出向かないまでも観光案内やインターネットなどでその地域を調べた者にとっては、その地域に、コンピュータ関連事業所やコンピュータ製造工場などが建つはずもない場所であることは、容易に理解できるからであり、また、勝景地「カムイコタン」の地を全く知らない者(地域名として認識のない者も同様)にとっては、これをこの商品の産地だとか、この役務の提供場所だとか、そもそも誤認するはずもないことだからである。

  その様なわけで、例えば、「カムイコタン」と表示した電子機械器具を見て、あるいは、「カムイコタン」と表示したソフトウェアを見て、北海道の景勝地カムイコタンの地で製造し、提供されている商品やサービスであるなどと、一般的に理解するはずもなく、あくまでも「カムイコタン」ブランドの製品、あるいは「カムイコタン」ブランドの提供に係る役務と理解するはずである。

(b-3)

 ところで、今回の拒絶理由通知書における適用条項である、商標法第3条第1項第3号は、「その商品の産地、販売地、品質、…………又はその役務の提供の場所、質、…………を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は、登録を認めない旨の規定である。

 これは、“その商品の産地、販売地”や“その役務の提供の場所”は、商品等を流通に置く場合に何人も使う必要があるので、一私人に独占させないという趣旨の規定と理解するが、この規定は、あくまでも、「その商品」や「その役務」との関係で理解すべきものであって、単に地理的名称であれば、有名であろうとなかろうと、また、どの商品・役務に使おうと使うまいと、全てを拒絶するという趣旨ではないと考える。つまり、商標法3条1項3号にいう「商品の産地、販売地」というためには、必ずしも、その土地が当該商品の産地、販売地として広く知られていることや、その唯一の産地、販売地であることまでは要求するものではないと考えるが(昭和53年 6月28日/東京高等裁判所/第13民事部/判決/昭和52年(行ケ)第184号「ワイキキ」も同旨)、少なくとも、一般需用者をして、その場所で生産販売され、あるいは提供される商品や役務であるかのように誤認させるおそれのある商標であることは、拒絶する上で必要な要件と考える。それ故、その商品や役務と全く関係がなく、将来的にもその商品や役務と関係することがないような商品・役務に関する地域名的な商標の場合には、産地・販売地等を誤認させるというようなおそれはないはずであるので、その登録を認めても何ら差し支えないはずである。

 このことは、御庁の商標審査基準を見ても同様に理解できる。即ち、御庁のこの第3条第1項第3号に関する商標審査基準によれば、「国家名、著名な地理的名称(行政区画名、旧国名及び外国の地理的名称を含む。)、繁華な商店街(外国の著名な繁華街を含む。)、地図等は、原則として、商品の産地若しくは販売地又は役務の提供の場所(取引地を含む。)を表示するものとする。」と規定している。これは、原則として、著名な地理的名称や繁華な商店街の名称は、商品の産地若しくは販売地又は役務の提供の場所(取引地を含む。)を表示したものと誤認するから登録しない、と言うことである。これを逆に解釈すれば、著名な地理的名称や繁華な商店街の名称でなければ、つまり著名でない地理的名称や繁華でない商店街の名称であれば、登録を認める余地があると言うことである(全てではないであろうが)。

 では、それはどのような場合かと言えば、

 その商標が、(ア)著名な地理的名称でも、繁華な商店街の名称でもなく、且つ、(イ)指定商品や指定役務との関係において、そのような場所で製造したり、提供したりすることはありえないような地理的名称の場合には、登録を認める余地があると言うことであろう。なぜなら、このような商標はその指定商品や指定役務との関係において、その商品の産地・販売地やその役務の提供場所の表示であるなどというような誤認は起こさないからである。

  そこで、本願商標を見た場合、なるほど「カムイコタン」は景勝の地として知られているとしても、また、アイヌ民族の縦穴住居跡があるということで知られているとしても、本願の指定商品・役務であるコンピュータ等の製造販売地やソフトウェアの開発・提供地として一般世人に知られている訳ではない(もっとも、そのような事業はなされていないので、知られると言うこと自体あり得ないが)。このような清流「暦舟川」の中流地域で、山が迫る渓谷に河畔があるような大自然に囲まれた地で、電子応用機械器具の製造やソフトウェア開発というような商品や役務との関連付けなど、全く思いも及ばないことである。

 従って、あえて「著名な」とか「繁華な」とかの絞りをかけた商標審査基準に照らしてみても、指定商品や役務との関連を充分に考慮しないで、本願商標「カムイコタン」をその商品の産地販売地表示やサービスの提供場所表示として拒絶しようとする今般の審査官の認定は不当であり、納得できるものではない。商品「電子応用機械器具」や役務「インターネット上の検索エンジンの提供」などにあって、「カムイコタン」の商標は充分に自他商品識別力を発揮する商標であると考える。

(b-4)

 そして、過去の判決例をみても、商標法第3条第1項第3号に関しては、上記「カムイコタン」の如き、格別に有名な都市名・地理的名称でもなく、また指定商品や役務と特別に関係しているわけでもないような地理的名称の場合には、その登録を認める余地があると解釈できるものがある。

  例えば、以下の如き、東京高裁の判決例である。

(A)[事件名]   審決取消請求事件

 [裁判年月日等]平成 9年11月11日/東京高等裁判所/判決/平成9年(行ケ)第71号

 [商標]    やんばる/山原

 [裁判結果]  棄却

 [上訴等]   確定

 [裁判官名]  竹田稔 春日民雄 持本健司

 [出典名]   判例時報1640号155頁

 [判例本文掲載頁]二・24巻7091頁

 [要約・要旨]2.〈「やんばる」、「山原」の商標の産地表示〉

「やんばる」あるいは「山原」が、少なくとも本件審決時においては、名護市及びその周辺の著名な観光地を含む沖縄本島地所の通称である旨の主張は正当であり、この地域において焼酎を含む酒類の製造・販売が広く行われている以上、「やんばる」の平仮名及び「山原」の漢字を二段に横書きしてなり、酒類を指定商品とする本願商標は、これをその指定商品に使用するときは、該商品の産地・販売地を表したにすぎず、商標法3条1項3号に該当するとした審決の判断は正当である。

  *思うに、この判決例は、その地域でその商品等の販売が行われていないことが明らかな場合には、その地理的名称であっても商標法3条1項3号に該当しないこともあり得ると言うことを示唆しているのであろう。

  また、以下の如き、判決例もある。

(B)[事件名]   審決取消訴訟事件

 [裁判年月日等]昭和52年12月22日/東京高等裁判所/第6民事部/判決/昭和52年(行ケ)第80号

 [商標]    西陣

         西陣風味

 [裁判結果]  棄却

 [裁判官名]  杉本良吉 舟本信光 小笠原昭夫

 [出典名]   判例タイムズ365号422頁

 [判例本文掲載頁]現・20巻2695の29の100頁

 [要約・要旨]1.〈商標法3条1項3号に規定する地名の意義〉

商標法3条1項3号は必ずしも地名を含む標章をすべて排斥しているわけではないから、登録商標「西陣」を審決が引用し本願商標「西陣風味」と類似対比に用いた点に違法はない。

  *この判決例は、「地名」でも商品や役務等の兼ね合いなどによっては、自他商品識別力を発揮し、登録できる場合があるということを述べていると思われる。

  以上(A)(B)のような判決例の考え方に照らしてみても、本件「カムイコタン」の如き、格別に有名な都市名でも地域名でもなく、また、格別に指定商品や指定役務と馴染みのある地域として一般に知られている訳でもないような地理的名称の場合には、本願の指定商品や役務との関係で充分に識別力を発揮するはずであり、その登録を認めてしかるべきである。

(b-5)

  さらに付言すると、この判決例にも出てくる「西陣」は、京都市上京区の堀川以西、一条通以北の地一帯の称であり(広辞苑)、したがって、北海道旭川市西部にある石狩川上流の峡谷のあたり一帯を表す「カムイコタン」と同様な地域名である。

 そうであれば、今般の審査官のような考え方に従えば、この「西陣」という京都市上京区の一地域を表す地理的名称は、登録されるはずのない商標と言うことになる。

 しかしながら、現実には、「西陣」の文字を含む商標は、以下の通り11件ほど登録されており、このうち「西陣」の文字単独で登録されている商標は、8件も存在している。

 1. 登録0672481 西陣 24類 パチンコ機械等(株)ソフィア 桐生市

 2. 登録0715260 西陣 30  菓子、パン(株)柳苑 京都市上京区

 3. 登録0881483 西陣  16類 印刷物、写真等(株)西陣織工業組合 京都市

 4. 登録0925218 西陣 17類 帯、帯じめ等(株)西陣織工業組合

 5. 登録1107193 西陣 16類 絹織物等 (株)西陣織工業組合

 6. 登録1365853 西陣(図入り)旧24類パチンコ器具等(株)ソフィア

 7. 登録1405074 西陣(図入り)旧16類 織物等(株)西陣織工業組合 *期間満了

 8. 登録4238561 京の酒\西陣 33類日本酒等 佐々木酒造(株)京都市

 9. 登録4272026 西陣 7類 パチンコ関係   (株)ソフィア

 10. 登録4286718 西陣 9類 電子応用機械器具&パチンコ関係ソフィア

 11. 登録4354934 西陣  20類 パチンコ機械設置棚(株)ソフィア

  この中には、京都と全く関係のない桐生市の一企業が取得している商標もある。これは、京都市「西陣」とパチンコ機械類とは全く馴染みがないということで、桐生市の一企業にも「西陣」の登録を認めたものと思われる。また、京都市内ではあるが、一企業に過ぎない(株)柳苑 とか、佐々木酒造(株)にも、「西陣」の登録を認めている。これも、京都市上京区の西陣とは一般的に馴染みのない「菓子、パン」や「日本酒等の酒類」を指定商品としているからであろう(「西陣」といえばやはり織物であろうし、日本酒では京都南部の「伏見」が有名であろう)。

  このように、「西陣」のような地理的名称であっても、指定商品との関係にあって全く馴染みのない地理的名称の場合には、識別標識としての機能を充分に果たし得るということで登録されているのである。

 然るに、本願商標の「カムイコタン」も「西陣」と同様のケースであり、登録を認めてしかるべきである。

(b-6)

 そして、本願商標の登録を認めたとしても、本件はあくまでも第9類や第42類の指定商品や役務との関係で識別標識としての機能を認められ登録された訳であり、したがって、第三者が景勝地“カムイコタン”を表すために「カムイコタン」の文字を使用しても、そもそもそこには商標権の効力は及ばず、何ら公益を害することにはならないから、問題は生じないはずである。

 また、北海道旭川市が地元「カムイコタン」のために、インターネットホームページ上にその宣伝をしたり、様々なイベントを紹介したりしても、それは、あくまでも景勝地「カムイコタン」の宣伝のために、インターネットを媒体にしているだけであって、何不自由なく行うことができるのであるから、この点でも、本願商標を登録することによる不都合などないはずである。

  【むすび】

 以上の次第でありますので、本願商標は、商品の産地、販売地及び役務の提供場所を表示するものではなく、商標法第3条第1項第3号(拒絶理由1)に該当せず、自他商品識別力を有し、充分に登録適格性を備えたものと思料します。

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(参考)ケース62の「審決」

不服2000-20486

   平成11年商標登録願第87575号拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。

 結 論

   原査定を取り消す。

   本願商標は、登録すべきものとする。

 理 由

  1 本願商標

   本願商標は、「カムイコタン」の文字よりなり、第9類及び第42類願書に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成11年9月28日に登録出願されたものである。その後、平成12年10月24日付の手続補正書で、指定役務については、第42類「コンピュータネットワーク上で利用可能な情報・サイトの提供、コンピュータネットワーク上で利用可能な情報・サイトの検索エンジンの提供」と補正されたものである。

  2 原査定の理由(要旨)

   原査定は、「本願商標は、北海道旭川市西部にある石狩川上流の峡谷のあたり一帯を表す「カムイコタン」の文字を書してなるものであるから、これを本願の指定商品(役務)に使用するときは、単にその商品の産地、販売地及び役務の提供の場所を表示するにすぎないものとみとめる。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

            

  3 当審の判断

   本願商標は、「カムイコタン」の文字よりなるものである。そして、当該文字が原査定説示の地域を指す語であるとしても、当該地域は、北海道の景勝地の一として知られるといい得るに止まるものであることから、本願の指定商品及び指定役務との関係においては、その需要者がこれを商品の産地、販売地又は役務の提供の場所を表示するものとして理解し、認識するとは認め難いものである。

   また、「カムイコタン」の文字が、本願の指定商品及び指定役務について、その産地・販売地あるいは役務の提供の場所等を表示するものとして、取引上普通に使用されている事実は見当たらない。

   そうすると、本願商標は、その指定商品及び指定役務について、その産地・販売地及び役務の提供の場所を表示するものということはできず、これをその指定商品及び指定役務に使用した場合、自他商品・役務の識別標識としての機能を果たし得るものと判断するのが相当である。

   したがって、本願商標を商標法第3条第1項第3号に該当するものとした原査定は、取消しを免れない。

   その他、本願について拒絶の理由を発見しない。

   よって、結論のとおり審決する。

     平成16年10月26日

              審判長  特許庁審判官 涌井  幸一

                   特許庁審判官 富田  領一郎

                   特許庁審判官 堀内  真一

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ケース63 本願商標「メディアバッグ」16×引用商標「MEDIA」「メディア」

1.出願番号  商願2004-60517

2.商  標   「メディアバッグ」

3.商品区分  第16類:紙袋,その他の紙製包装用容器,封筒

4.適用条文    商標法第4条第1項第11号

5.拒絶理由  登録商標「MEDIA」や「メディア」と類似する。

6.意見書における反論

(1)拒絶理由通知書において、本願商標は、以下の1乃至5の商標と同一又は類似であって、その商標登録に係る指定商品と同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当すると認定された。

  1.登録第1383988号(商公昭53-017054引用商標1

  2.登録第1793329号(商公昭59-096685引用商標2

  3.登録第2070941号(商公昭63-007034引用商標3

  4.登録第2070942号(商公昭63-007035引用商標4

  5.登録第2122286号(商公昭63-060269引用商標5

 しかしながら、本出願人は、本願商標と引用各商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても紛れることのない非類似の商標であると考えるので、前記認定には承服できず、以下に意見を申し述べる。

(2)まず、本願商標は、願書の商標見本から明らかなように、片仮名の標準文字で「メディアバッグ」(類似群18C04、類似群25B01)と一連に書してなるものである。

 これに対し、引用商標1乃至5は全て株式会社メディア(中央区銀座)の商標登録に係るもので、引用商標1は欧文字で「MEDIA」(類似群25B01)と書し、引用商標2は欧文字と平仮名で「D.MのMEDIA」(類似群25B01)と書してなるものである。また、引用商標3と5は、片仮名で「メディア」(3が類似群18C04、5が類似群25B01)と書してなるものであり、引用商標4はやや図案化した欧文字で「MEDIA」(類似群18C04)と書してなるものである。

 したがって、本願商標と引用商標1乃至5とは、外観上類似しないことは明らかである。

(3)次に、観念の点についてみると、本願商標の「メディアバッグ」は、英語の「media」(媒体。手段。特にコミュニケーションの媒体。)に通じる「メディア」の片仮名文字と、英語の「bag」(袋。鞄(かばん)。)に通じる「バッグ」の片仮名文字とを結合して一体に表したもので、前後を分離して認識することの出来ない一連一体の造語商標である。然るに、全体からは「媒体袋」とか、「媒体鞄」というような意味合いを連想させるものの、具体的な意味内容ははっきりせず、特定の観念を生じさせることはない。つまり、本願商標は、単なる「メディア」でもなく、単なる「バッグ」でもなく、あくまでもこれらが一体となった結合商標であって、全体として特定の観念を生じさせることにない造語商標である。

 これに対し、引用商標1、3、4、5の「MEDIA」や「メディア」は文字通り、「媒体。手段。特にコミュニケーションの媒体。」等の意味を有し、また、引用商標2の「D.MのMEDIA」は「D.Mの媒体」(具体的にはD.Mの意味がはっきりしないが)等の意味を有するものである。

  したがって、本願商標と引用各商標とは、観念上も類似することはない。

(4)そこで、以下、称呼の点につき検討する。

 本願商標の「メディアバッグ」は、上述のように、英語の「media」に通じる「メディア」の片仮名文字と、英語の「bag」に通じる「バッグ」の片仮名文字とからなるものであるが、あくまでも「メディア」と「バッグ」の両者を一体に結合して同書同大同間隔に左右バランス良く配置した商標である。そして、「媒体袋」とか、「媒体鞄」とかいうような意味合いを連想させるものであるが、具体的には特定の観念を生じさせない結合商標である。しかもまた、前段部分の「メディア」と後段部分の「バッグ」には、外観的にも観念的にも軽重の差はなく、また、称呼的にも比較的短い5音構成から成るもので、一連に称呼して冗長にならず、語呂もよく称呼し易い商標である。それ故、本願商標はその構成全体をもって不可分一体の商標と把握すべきもので、常に一連に「メディアバッグ」と称呼すべきものである。

 この点に関し、審査官殿は、本願商標の前後を分断して、前段の「メディア」のみから単独の称呼・観念が生ずるとして、引用商標1~5を引いてきたものと思料するが、それは結合商標である本願商標を誤って把握したものであり、到底納得できるものではない。一連一体の本願商標から、「メディア」の部分のみを抽出するのはおかしな手法である。しかも、「バッグ」の文字自体も指定商品との関係にあって商標の要部を構成する文字であり、この文字が有るのと無いのとでは、別異の印象を与えるため、称呼上決して紛れることはないと思料する。

 このことは、別法人による以下の商標登録の併存例からも言い得ることである。

 即ち、

 A.登録第1677760「JUNBO BAG/ジャンボバッグ」(類似群25B01)(イズミコーポレーション株式会社)第1号証と、

 B.登録第2698958「ジャンボ」(類似群25B01)(三菱鉛筆株式会社)第2号証、及び、

 C.登録第2698959「JUMBO」(類似群25B01)(三菱鉛筆株式会社)第3号証。

 D.登録第4575937「ルックバッグ」(類似群18C04)(福助工業株式会社)第4号証と、

 E.登録第4710997「ルック」(類似群18C0425B01)(株式会社サクラクレパス)第5号証。

 F.登録第2130661「スッキリバッグ」(類似群18C04)(スルガ株式会社)第6号証と、

 G.登録第4779672「スッキリ」(類似群18C04)(ユニ.チャーム株式会社)第7号証。

 H.登録第4127401「ウインバッグ/WINBAG」(類似群25B01)(キョクヨーシグマ株式会社)第8号証と、

 I.登録第4784743「WIN」(類似群25B01)(旭陽産業株式会社)第9号証。

 J.登録第4335018「GET」(類似群25B01)(キャノン株式会社)第10号証と、

 K.登録第4739947「getbag/ゲットバッグ」(類似群25B01)(株式会社ユニオンキャップ)第11号証。

 もし仮に、審査官殿の見解に従うのであれば、上記Aの「「JUNBO BAG/ジャンボバッグ」からは「ジャンボ」の称呼が生じると言うことになり、それより後願の「ジャンボ」と称呼される、B「ジャンボ」やC「JUMBO」が登録されるはずがない。同様に上記Dの「ルックバッグ」から「ルック」の称呼が生じるとしたら、それより後願のE「ルック」は登録されるはずがない。同様に上記Fの「スッキリバッグ」から「スッキリ」の称呼が生じるとしたら、それより後願のG「スッキリ」は登録されるはずがない。同様に上記Hの「ウイン/WIN」から「ウイン」の称呼が生じるとしたら、それより後願のI「WIN」は登録されるはずがない。また、Kの「getbag/ゲットバッグ」から「ゲット」の称呼が生じるとしたら、それより先願のJ「GET」の存在によって、この後願のKの「getbag/ゲットバッグ」は登録されるはずがない。

  しかしながら、これらの商標はいずれも登録され、互いに併存している。本願商標「メディアバッグ」と、引用各商標「MEDIA」ないし「メディア」の関係も同様であろう。引用商標1~5の存在にも関わらず、本願商標は登録されて然るべきである。

(5) 以上のように、本願商標と引用各商標とは、外観・観念のみならず、称呼上も紛れることのない非類似の商標である。

ケース64 本願商標:「ペロイドケアー」 

1.出願番号  商願2002-32831(不服2003-10080)

2.商  標  「ペロイドケアー」

3.商品区分  第44類:美容,理容

4.適用条文    商標法第3条1項3号、第4条第1項第16号

5.拒絶理由 「泥を使用して行う美容」等、単に役務の質を表示するにすぎない。

6.不服審判における反論(請求の理由)

  【手続の経緯】

 出     願       平成14年 4月22日

 拒絶理由の通知       平成15年 1月22日

     同 発送日       平成15年 1月29日

  意  見  書       平成15年 2月13日

  拒 絶 査 定       平成15年 5月21日

   同 謄本送達       平成15年 5月23日

  【拒絶査定の要点】

  原査定の拒絶理由は、“この商標登録出願は、平成15年 1月22日付けで通知した理由によって、拒絶をすべきものと認めます。追って出願人は意見書において種々述べていますが、本願商標は「ペロイドケアー」の文字を書してなり、その構成中の「ケアー」の文字は美容の業界においては「美容ケア商品、ヘアーケアー、ボディケアー」等のように普通に使用されている語と認められます。またエステティックサロンにおいては、「泥エステ」のように泥を使用した「美顔泥パック、全身泥パック」等のエステコース(http://www.seiunkaku.or.jp/esthetique2.html)があることからも、「泥」の意味合いのある「ペロイド」と組み合わせてなる本願商標は役務の質(内容)を表示し、またそれ以外の役務に使用したときは役務の質(内容)の誤認を起こさせるとして拒絶すべきとした先の認定を覆すことは出来ません。なお、登録第4593228号「HERBALCARE/ハーバルケアー」の登録例を出していますが、本願とは事例を異にするため採用することは出来ません。”というものであります。

 つまり、この拒絶理由は、要するに、本願商標「ペロイドケアー」は、エステティックサロン等で「治療に用いられる泥」の意味合いを持つ「ペロイド」の文字と、美容業界において「美容ケア商品、ボディケアー」等のように普通に使用されている「世話、保護」等の意味合いを持つ「ケアー」の文字からなるもので、これを「泥を使用して行う美容」等の役務に使用するときは、単に役務の質(内容)を表示し(商標法第3条第1項第3号に該当)、それ以外の役務に使用したときは役務の質(内容)の誤認を起こさせる(同第4条第1項第16号に該当)というものであります。

  【本願商標が登録されるべき理由】

  然るに、本出願人は先の意見書において、本願商標は、あくまでも特定の具体的観念を生じない造語商標であって、美容業界において、この言葉が役務の質(内容)表示として普通に使用されている事実はないということを指摘したにもかかわらず、かかる拒絶の認定をされたことに対しては納得できないところがあり、ここに再度ご審理を頂きたく、審判を請求する次第であります。

(a)本願商標の構成

 本願商標は、願書の商標登録を受けようとする商標の欄の記載から明らかなように、片仮名文字で「ペロイドケアー」と横書きした態様からなり、指定役務を第44類「美容,理容」とするものであります。

(b)審査官の認定に対する反論

(b-1)

  審査官が指摘するように、本願商標「ペロイドケアー」は、それを前後に分解してそれぞれの言葉の意味を考えれば、成る程、「ペロイド」の文字が「泥」等の意味を有し、「ケアー」の文字が「世話、保護」等の意味を有することは事実であります。しかし、本願商標は、これらの各文字を同書・同大・同間隔で一体に結合した結合商標であり、全体としてみれば、特定の観念を具体的に生じさせることのない造語商標であり、役務の質(内容)を表すものではありません。

 本出願人は、上記した意味合いの言葉が2つ結合されている以上、全体として「泥によるケアー(世話、保護)」等の意味合いを間接的に表示ないし暗示する商標であることを決して否定するものではありません。しかし、そのことをもって、この結合商標が役務の質を普通に表す言葉であるとは言い得ないと思料します。「ペロイドケアー」は、美容,理容の役務の質(内容)表示として、普通に使用され、且つ一般的に確立された言葉とはなっておりません

 ご指摘のインターネットホームページを見ましても、「ペロイドケアー」なる言葉は一つも使われておりません。「アジアンエステ」として、「泥エステ」が載っているのみであります。そして、この「泥エステ」の効用として、「皮膚呼吸を活発にさせ、汗の出を良くし皮膚病の予防になります。」とか、「お肌の美容だけでなく、仕事の疲れ、ストレス解消にも最適です。」との説明があるのみです。

  また、YAHOO!JAPANなどのインターネット検索エンジンで「ペロイドケア(ー)」を検索してみましても、この言葉と一致する情報は一つもありません

 試しに上記「泥エステ」を同様に検索してみたところ、こちらは629件の使用例が検索されました。

 したがって、審査官のいう「泥を使用して行う美容」を表すために使われる一般的な言葉は「泥エステ」であって、決して「ペロイドケアー」ではないと思料します。「ペロイドケアー」は、本出願人が考えた造語であり、特定の具体的な観念を直接的に生じさることのない商標であります。決して、役務の質(内容)を表示する言葉ではありません。

 「ペロイドケアー」が、ある一つの役務の内容を表す言葉として美容・理容業界において確立され通用していればまだしも、そのような事実が全くない以上、本願商標を以て、単に役務の質(内容)を表すものだと言うことはできないと考えます。

  よって、本願商標「ペロイドケアー」は、商標的使用態様で指定役務に用いた場合、十分に自他役務識別標識として機能するものと考えます。

(b-2)

  ところで、本出願人は、先の意見書において、美容・理容を含む役務区分において、(A)登録第4593228号「HERBALCARE/ハーバルケア」(平成14年8月9日登録、長瀬産業株式会社)なる商標が存在している事実を指摘し、本願商標もこれと同様に登録されるべだと主張しましたが、これに対し、審査官は、事例を異にするからその主張は採用できないと認定しました。

 しかしながら、この登録商標の前半部の「HERBAL/ハーバル」の文字は「草の」の意味合いであり、後半の「CARE/ケア」は「世話、保護」の意味合いであります。また、エステティック業界においては、例えば「バリ式薬草エステ」のように、薬草を使用したエステコースを「薬草エステ」と称しております。

  一方、前述のとおり、本願商標の前半部の「ペロイド」の文字は「泥」の意味合いであり、後半の「ケアー」は「世話、保護」の意味合いであります。また、エステティック業界において、「泥エステ」のように泥を使用した「美顔泥パック、全身泥パック」等のエステコースが存在しております。

 それ故、この登録商標と本願商標とは、状況的には全く同じであり、この「HERBALCARE/ハーバルケア」が登録できて、本願商標の「ペロイドケアー」が登録できないとされる謂われはありません。「HERBALCARE/ハーバルケア」の登録例を“事例を異にするから採用できない”とした審査官の認定には納得できません。

 「泥を使用して行う美容」を表す言葉として、「泥エステ」は確立された言葉として存在しておりますが、「ペロイドケアー」は確立された言葉として存在しておりませんし、インターネット等で調べても使用例は全く見当たりませんので、これを単なる役務の質(内容)表示として片付けることは出来ないと思います。本願商標「ペロイドケアー」は、あくまでも本出願人が熟慮して選定した造語であって、十分に識別力を備えたものであると考えます。

(b-3)

  また、本出願人は、この美容,理容の役務分野において、以下のような商標を既に登録しております。

(B)登録第4078825号「アロマケアー」(H09.11.07登録、株式会社メソテス)

(C)登録第4643550号「ハーブケアー」(H15.02.07登録、株式会社メソテス)

  美容業界においては、(B)を構成する「アロマ(aroma)」は、「アロマセラピー(aromatherapy)」(花・香草などの香りをかいでストレスを軽減し、心身の健康をはかる療法。芳香療法。)として、普通に使用されている言葉ですし、(C)を構成する「ハーブ(herb)」は、「薬草、香味料とする草の総称。」であり、「薬草エステ」と関係する言葉です。

  このような美容業界における使用状況及びその言葉の意味からして、前記審査官のような考え方を採れば、これら(B)(C)の商標は、これを「花・香草などの香りをかいでストレスを軽減し、心身の健康をはかる美容トリートメント」や「薬草を使用して行う美容トリートメント」の役務にそれぞれ使用するときは、単に役務の質(内容)を表示し、それ以外の役務に使用するときは役務の質(内容)の誤認を起こさせるということで、登録できないということになるのでありましょうが、実際には、これら2つの商標は何の問題もなく登録されております。よって、本願商標の「ペロイドケアー」も同様に登録されて然るべきものと思います。

(b-4)

 ところで又、本出願人は、前記したとおり、「ペロイドケアー」の文字が「泥によるケアー(世話、保護)」等の意味合いを間接的に表示ないし暗示することを決して否定するものではありません。

 しかし、そのことが直ちに、本願商標が、役務の質(内容)を表すにすぎない、即ち、役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章にすぎない、と言うことを意味するものではないと思います。

 「泥によるケアー(世話、保護)」を暗示するとは言っても、それでは一体、具体的にはどの様な役務を指すのか、泥をどの様に用いてどこをどの様にケアーするのか等、具体的な役務の中味(質・内容)が特定できません。具体的に中身が特定できてこそ、役務の質(内容)の表示といえるのであって、漠然と物事を暗示したのでは、商標法第3条第1項第3号にいう「質」の表示とは言えないと考えます。

 商標法第3条第1項第3号の商標審査基準によれば、“指定役務の「質」、「効能」、「用途」等を間接的に表示する商標は、本号の規定に該当しないものとする。”と明確にうたっています。この基準に照らし合わせてみても、今般の審査官の認定には納得できません。同書・同大・同間隔で一連一体にバランス良く横書きした本願商標「ペロイドケアー」は、全体としてみれば、特定の観念を具体的に生じさせることのない造語商標であり、十分に自他商品役務識別標識として機能するものと思います。

  【むすび】

 以上述べたように、本願商標「ペロイドケアー」は、エステティックサロン等で「治療に用いられる泥」の意味合いを持つ「ペロイド」の文字と、美容業界において「美容ケア商品、ボディケアー」等のように普通に使用されている「世話、保護」等の意味合いを持つ「ケアー」の文字からなるものではありますが、全体としてみれば、特定の観念を具体的に生じさせることのない造語商標であり、役務の質(内容)を表すものではないと考えます。

  そして、役務の質(内容)の表示として、「薬草を使用して行う美容」を表す「薬草エステ」というエステコースがある中で、商標「HERBALCARE/ハーバルケア」や「ハーブケアー」が登録されていることからすれば、「泥を使用して行う美容」を表す言葉として一般的な「泥エステ」がある中で、「ペロイドケアー」が登録されても、少しも不自然ではないと思います。

 また、「アロマセラピー」と言う芳香療法がある中で「アロマケアー」が登録されていることからすれば、一般的な「泥エステ」がある中で「ペロイドケアー」が登録されても、少しも不自然ではないと思います。

  それ故、本願商標「ペロイドケアー」は、商品の品質を普通に用いられる方法で表示するものでも、商品の誤認を生じさせるものでもなく、十分に登録適格性を備えたものと思料します。

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(参考)ケース64の「審決」 

不服2003-10080

    商願2002-32831拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審

  決する。

 結 論

   原査定を取り消す。

   本願商標は、登録すべきものとする。

 理 由

  1 本願商標

   本願商標は、「ペロイドケアー」の文字を標準文字で書してなり、第44

  類「美容,理容」を指定役務として、平成14年4月22日に登録出願され

  たものである。

  2 原査定の理由

   原査定は、「本願商標は、『ペロイドケアー』の文字を書してなるところ

  、この『ペロイド』の文字は『天然の地質学的過程によって生じた物質(泥

  )』の意味合いで『治療に用いられる泥』の意味合いであり、『ケアー』の

  文字は『世話、保護』の意味合いで、『美容ケア、エステケア商品』等のよ

  うに普通に使用されている事実が見受けられる。そうとすると、『泥パック

  』の美用法も存在することから、これを本願指定役務中、例えば前記意味合

  いに照応する『泥を使用して行う美容』等の役務に使用するときは、単に役

  務の質(内容)、提供の用に供するものを表示するにすぎないものと認める

  。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記役務

  以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるの

  で、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶

  したものである。

  3 当審の判断

   本願商標は、前記したとおり、「ペロイドケアー」の文字を書してなると

  ころ、該文字は、「ペロイド」と「ケアー」の文字とを一連に同じ書体、同

  じ大きさで表してなり、視覚的にまとまりよく一体のものとして把握し得る

  ものである。

   そして、構成中の「ペロイド」の文字が、「治療に用いられる泥」等の意

  味を有し、かつ、「ケアー」の文字が「世話」等の意味を有するとしても、

  かかる構成にあっては、本願の指定役務との関係において、役務の質等を直

  接的、かつ、具体的に表示するものとも認められないところであるから、本

  願商標は、構成文字全体をもって一種の造語として認識されるとみるのが相

  当である。

   また、当審において調査するも、本願商標を構成する文字が、その指定役

  務を取り扱う業界において、役務の質等を表示するものとして、取引上普通

  に使用されている事実も発見することができない。

   してみれば、本願商標は、これをその指定役務に使用しても、役務の質等

  を表示したものとは認識し得ず、自他役務の識別標識としての機能を果たし

  得るものであり、かつ、役務の質の誤認を生じさせるおそれもないものであ

  る。

   したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項

  第16号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は妥当ではなく、取消し

  を免れない。

   その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。

   よって、結論のとおり審決する。

        平成17年 2月 4日

                 審判長  特許庁審判官 柴田  昭夫

                      特許庁審判官 鈴木  新五

                      特許庁審判官 末武  久佳

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ケース65 本願商標:「CelluliteVanish/セルライトヴァニッシュ」 

1.出願番号  商願2002-21552(不服2003-4966)

2.商  標  「CelluliteVanish/セルライトヴァニッシュ」

3.商品区分  第11類:業務用の痩身用機械器具,その他の美容院用又は理髪店用        の機械器具(いすを除く。)

4.適用条文    商標法第3条1項3号、第4条第1項第16号

5.拒絶理由  単にその商品の品質を表示するにすぎない。

6.不服審判における反論(請求の理由)

  【手続の経緯】

 出     願       平成14年 3月19日

 拒絶理由の通知       平成14年12月16日

     同 発送日       平成14年12月17日

  意  見  書       平成15年 1月20日

  拒 絶 査 定       平成15年 2月26日

   同 謄本送達       平成15年 2月27日

  【拒絶査定の要点】

  原査定は、“この商標登録出願は、平成14年12月16日付けで通知した理由によって、拒絶をすべきものと認めます。なお、出願人は、意見書において種々述べていますが、本願商標は欧文字と片仮名文字で上下二段に「CelluliteVanish/セルライトヴァニッシュ」と書してなるところ、全体として、先の拒絶理由に述べた如く「脂肪が消滅する」の意を表すに止まり、さきの認定を覆すことはできません。また、出願人は、本願商標は特定の具体的観念を生じさせることはないもので、一連一体にバランス良く二段並記した商標として認識されるべき旨主張してますが、上記認定に影響を与えるものとは認められません。”というものであり、

 平成14年12月16日付けの拒絶の理由は、“本願商標は、「CelluliteVanish」及び「セルライトヴァニッシュ」の文字を普通に用いられる方法で二段に書してなるところ、その構成中の「Cellulite」及び「セルライト」の文字部分は、「脂肪、体内に余分な脂肪が溜まり発生する細胞」の意味で一般に使われており、「Vanish」及び「ヴァニッシュ」の文字部分は、「消滅する、見えなくなる」等の意味を有するものであるから、全体としては「脂肪が消滅する」程度の意味合いを看取させるにすぎず、近年、足痩せ専門エステサロンでセルライト除去、消滅用の機械機具が使用されている実情をも考慮すれば、これを本願指定商品中、例えば、「セルライト消滅用の業務用美容機械機具」に使用しても、単にその商品の品質を表示するにすぎないものと認めます。したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがありますので、商標法第4条第1項第16号に該当します。”というものであります。

  【本願商標が登録されるべき理由】

  然るに、本出願人は先の意見書において、本願商標は、あくまでも「Cellulite/セルライト」の文字と「Vanish/ヴァニッシュ」の文字とを結合して、上下の各文字部分を軽重差なく同書、同大、同間隔にバランス良く配置した造語商標であって、この構成態様より、特定の具体的観念を生じさせることはない旨指摘したにもかかわらず、かかる拒絶の認定をされたことに対しては納得できないところがあり、ここに再度ご審理を頂きたく、審判を請求する次第であります。

(a)本願商標の構成

  本願商標は、願書の商標登録を受けようとする商標の欄の記載から明らかなように、英文字と片仮名文字で上下二段に「CelluliteVanish/セルライトヴァニッシュ」と書した態様からなるもので、指定商品を第11類の「業務用の痩身用機械器具,その他の美容院用又は理髪店用の機械器具(いすを除く。)」とするものであります。

(b)審査官の認定に対する反論

(b-1)

  審査官が指摘するように、本願商標の「CelluliteVanish/セルライトヴァニッシュ」は、成る程、「Celluliteh/セルライト」の文字が「脂肪、体内に余分な脂肪が溜まり発生する細胞」等の意味を、また「Vanish/ヴァニッシュ」の文字が「消滅する、見えなくなる」等の意味を、それぞれ有することは事実であります。しかし、本願商標は、これらの文字を一体に結合した結合商標であり、全体としてみれば、具体的に特定の観念を生じさせることのない造語商標であります。

 本出願人は、上記した意味合いの言葉が2つ結合した以上、全体として「脂肪が消滅する」程度の意味合いを間接的に表示ないし暗示する商標であることを決して否定するものではありませんが、そのことをもって、この結合商標が品質を普通に表す言葉であるとは言い得ないと思料します。CelluliteVanish」も、「セルライトヴァニッシュ」も、美容機械器具等の品質・内容表示として、普通に使用され、且つ一般的に確立された言葉ではありません

 つまり、本願商標の「CelluliteVanish/セルライトヴァニッシュ」は、あくまでも「Cellulite」の文字と「Vanish」の文字、あるいは「セルライト」の文字と「ヴァニッシュ」の文字とを結合して、上下二段にし、且つ上下の各文字部分を、左右軽重差なく同書、同大、同間隔にバランス良く配置した造語商標と理解すべきで、全体として特定の具体的観念を生じさせることはありません。

  それ故、本願商標は、全体として、十分に自他商品識別力を備えているものと思料します。

(b-2)

 そして、たとえ近年、足痩せ専門エステサロンでセルライト除去、消滅用の機械器具が使用されている実情があったとしても、この「CelluliteVanish/セルライトヴァニッシュ」がその様な機械器具の品質表示用語として普通に用いられ、普及している事実がない以上、単なる品質表示用語として片付けることは出来ないと考えます。

 取引者・需用者が、例えば、業務用の痩身用機械器具に商標的使用態様で「CelluliteVanish/セルライトヴァニッシュ」と書いてある文字を見て、これを商品の品質表示であるなどと思うはずがありません。一般的には、やはり「CelluliteVanish/セルライトヴァニッシュ」という商標名の製品であると理解するはずであります。

 それ故、本願商標「CelluliteVanish/セルライトヴァニッシュ」は、全体として十分に自他商品識別標識として機能し得る商標であり、十分に登録適格性を有するものと思料しますので、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとした審査官の認定には納得できません。

(b-3)

 ところで、本出願人は、前述したとおり、「CelluliteVanish/セルライトヴァニッシュ」の文字が「脂肪が消滅すること」を間接的に表示ないし暗示することを決して否定するものではありません。しかし、そのことが直ちに、本願商標が、商品の品質表示にすぎない(即ち、品質を普通に用いられる方法で表示する標章にすぎない)と言うことを意味するものではないということであります。

 商標法第3条第1項第3号の商標審査基準によれば、“指定商品の「品質」、「効能」、「用途」等を間接的に表示する商標は、本号の規定に該当しないものとする。”と明確にうたっています。この基準に照らし合わせてみても、今般の審査官の認定には納得できません。同書、同大、同間隔で一連一体にバランス良く二段並記した本願商標は、全体としてみれば、具体的に特定の観念を生じさせることのない造語商標でありますので、十分に自他商品識別標識として機能するものと思います。

  【むすび】

 以上の通りでありますので、本願商標「CelluliteVanish/セルライトヴァニッシュ」は、商品の品質を普通に用いられる方法で表示するものでも、商品の誤認を生じさせるものでもなく、十分に登録適格性を備えたものと思料します。

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(参考)ケース65の「審決」

不服2003- 4966

   商願2002- 21552拒絶査定不服審判事件について、次のとおり

  審決する。

 結 論

   原査定を取り消す。

   本願商標は、登録すべきものとする。

 理 由

  1.本願商標

   本願商標は、「CelluliteVanish」及び「セルライトヴァ

  ニッシュ」の文字を二段に書してなり、第11類「業務用の痩身用機械器具

  ,その他の美容院用又は理髪店用の機械器具(いすを除く。)」を指定商品

  として、平成14年3月19日に登録出願されたものである。

  2.原査定の拒絶の理由の要旨

   原査定は、本願商標は、構成中の「Cellulite」及び「セルライ

  ト」の文字部分は、「脂肪、体内に余分な脂肪が溜まり発生する細胞」の意

  味で一般に使われており、「Vanish」及び「ヴァニッシュ」の文字部

  分は、「消滅する、見えなくなる」等の意味を有するものであるから、全体

  としては「脂肪が消滅する」程度の意味合いを看取させるにすぎず、近年、

  足痩せ専門エステサロンでセルライト除去、消滅用の機械機具が使用されて

  いる実情をも考慮すれば、これを本願指定商品中、例えば、「セルライト消

  滅用の業務用美容機械機具」に使用しても、単にその商品の品質を表示する

  にすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第

  3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を

  生じさせるおそれがあるので、商標法第4条第1項第16号に該当する旨認

  定、判断し、本願を拒絶したものである。

  3.当審の判断

   本願商標は、上記のとおりの構成よりなるところ、これが原査定説示の如

  き意味合いを暗示するとしても、本願の指定商品の品質・用途等を具体的に

  表示するものとは認識し得ないものであり、寧ろ、特定の意味合いを有しな

  い一種の造語を表したものというのが相当である。

   また、当審において、職権をもって調査したが、「CelluliteV

  anish」及び「セルライトヴァニッシュ」の文字が、本願の指定商品を

  取り扱う業界において、商品の品質等を表示するものとして取引上、普通に

  使用されている事実を発見することはできなかった。

   してみれば、本願商標をその指定商品について使用しても、これに接する

  取引者、需要者は、商品の品質等を表示したものと認識することはないもの

  とみるのが相当であるから、本願商標は、自他商品の識別標識としての機能

  を十分に果たし得るものと言わなければならず、また、これを本願指定商品

  のいずれについて使用しても、商品の品質について誤認を生じさせるおそれ

  があるということはできない。

   したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1

  項第16号のいずれにも該当するものではないから、これを理由として本願

  を拒絶した原査定は取消しを免れない。

   その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。

   よって、結論のとおり審決する。

        平成17年 2月28日

                 審判長  特許庁審判官 小林  

                      特許庁審判官 岩崎  良子

                      特許庁審判官 青木  博文

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ケース66 本願商標「MINI+/ミニプラス」×引用商標「Minipla」

1.出願番号  商願2004-72189

2.商  標   「MINI+/ミニプラス」

3.商品区分  第16類  雑誌,新聞

4.適用条文    商標法第4条第1項第11号

5.拒絶理由  登録第4452477号商標「Minipla」と類似する。

6.意見書における反論

(1) 拒絶理由通知書において、本願商標は、「登録第4452477(商願2000-033167)の登録商標(以下、引用商標という)と同一又は類似であって、その商標に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。」との認定を受けました。

 しかしながら、本出願人は、本願商標と引用商標とは、外観,称呼および観念のいずれにおいても類似せず、取引者・需用者をして決して出所の混同を来すことにない商標であると思料しますので、斯かる認定には承服できず、以下に意見を申し述べます。

(2)  本願商標は、願書の商標見本からも明らかなように、上段を欧文字「MINI」とプラスの記号「+」とで「MINI+」と書し、また下段をその読みを表すべく片仮名文字で「ミニプラス」と書した二段併記の態様「MINI+/ミニプラス」からなるものでありますが、引用商標は、欧文字で、単に「Minipla」と一連に書した態様からなるものであります。

 したがって、本願商標と引用商標とは、外観上類似しないことは明らかであります。

(3)  また、本願商標の「MINI+/ミニプラス」は、「miniをプラスする」、即ち「小型のものを加える」と言うような意味合いを暗示させるものでありますが、指定商品「雑誌,新聞」との関係において、具体的に特定の観念を生じさせることのない造語商標であります。一方、引用商標の「Minipla」も、格別の観念を生じさせることのない造語商標でありますので、両者は、観念上比較すべくもなく、互いに非類似の商標であります。

(4)  そこで、次に、称呼の点につき検討します。

 本願商標は、前述のように、上段部分が「MINI+」となっていて、下段がその読みを表すべく「ミニプラス」と片仮名表記された態様であるところ、本願商標からは常に「ミニプラス」の称呼が生じるものと思料しますが、引用商標は「Minipla」の態様よりなるため、これより「ミニプラ」の称呼が生じるものと思料します。

  そこで、本願商標の称呼「ミニプラス」と引用商標の称呼「ミニプラ」を対比します。

 まず、本願商標の称呼「ミニプラス」は、全体を一連に称呼した場合に、欧文字「MINI」と記号「+」という特殊な構成態様とも相俟って、「ミニ・プラス」と2音節に区切って発音される傾向にあるとともに、前段の語頭音「ミ」と後段の語頭音「プ」の文字がそれぞれ強く発音される傾向にあると思料します。

 これに対し、引用商標の称呼「ミニプラ」は、一連に称呼したときに「ミ・ニ・プ・ラ」と4音節に区切って発音される傾向にあるとともに、各文字一つ一つが明瞭に強く発音される傾向にあるものと思料します。

 しかも、この違いは全体が5音ないし4音という比較的短い音構成における違いであり、従ってこの違いが全体の称呼に与える影響は極めて大きく、称呼上別意の印象を与えるに十分な差異であると考えます。

 即ち、取引者・需要者が両商標を称呼して取引する場合、本願商標の「ミニ・プラス」と引用商標の「ミ・ニ・プ・ラ」とは、語感語調を全く異にするため、明瞭に識別できるものと思料します。

  ところで、審査官殿は、本願商標の称呼「ミニプラス」と引用商標の称呼「ミニプラ」とは「ス」が有るか無いかの違いしかないため、両者は称呼上紛らわしいと判断して今般の拒絶理由通知を発したものと推察しますが、本願商標と引用商標の称呼上の差異は、単に「ス」の有無の違いだけでかたずけられる問題ではありません。

 即ち、この「ス」の有無によって、片や「プラス」(加える)という誰でもなじみの単語を構成するのに対し、「ス」のない方は単なる意味不明な「プラ」という音であり、両者は確立された意味を持つ単語であるかないかの違い、またそれによる意味発生の有無の違いにより、さらには、この「ス」の有無による、音節位置やアクセント位置の違いにより、これに接する取引者・需要者は両者を称呼上明瞭に識別できるものと思料します。

(5)  このように、本願商標と引用商標とは、外観及び観念上類似することはないとともに、称呼上も、本願商標が「ミニ・プラス」と2音節に区切って、しかも「ミ」と「プ」にアクセントをもって称呼されるのに対し、引用商標は「ミ・ニ・プ・ラ」と4音節に区切って称呼され、且つ各音がそれぞれアクセントをもって明瞭に発音される傾向にある点において、全く異なるものと思料します。そして、このような音節の区切り位置やアクセント位置の違い等により、両者は語感語調を異にしますが、比較的短い音構成にあってこの語感語調の違いは大きく、両者を一連に称呼したとき聴者をして決して紛れるようなことはないと思料します。

 よって、本願商標と引用商標とは非類似の商標であり、本願商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものではないと考えます。

 

ケース67 本願商標:「Designer’s DeskTop」 

1.出願番号  商願2003-98164(不服2004-15119

2.商  標  「Designer’s DeskTop」

3.商品区分  第9類:電子計算機用プログラム、その他の電子応用機械器具           およびその部品  ほか

4.適用条文    商標法第3条1項6号、第4条第1項第16号

5.拒絶理由 「個性的なデスクトップコンピュータ」「OSを起動したときに個性的な基本の画面となるコンピュータプログラム」等の意味合いを理解させるにとどまる。

6.不服審判における反論(請求の理由)

  【手続の経緯】

 出     願       平成15年11月 6日

 拒絶理由の通知       平成16年 3月23日

     同 発送日       平成16年 3月23日

  意  見  書       平成16年 4月 9日

  拒 絶 査 定       平成16年 6月24日

   同 謄本送達       平成16年 6月25日

  【拒絶査定の要点】

 原査定の拒絶理由は、“この商標登録出願は、平成16年3月16日付けで通知した理由によって、拒絶をすべきものと認めます。出願人は、意見書において種々述べていますが、さきの認定を覆すことはできません。”というものであります。

 つまり、この拒絶の理由は、具体的には“本願商標は、ファッションに関して、デザイナーの個性を前面に打ち出した「デザイナーズブランド」の語や、建築に関して、建築デザイナーが個性的な間取りやデザインをした集合住宅の「デザイナーズマンション」の語があることから、「デスクトップコンピュータ」や「ウィンドウズやMacのOSを起動したときの基本の画面」等の意味を有する 「DeskTop」の前に「Designer’s」の文字を配した「Designer’s DeskTop」の文字を普通に用いられる方法で書してなるところ、これを本願指定商品中「電子計算機用プログラム、その他の電子応用機械器具およびその部品」に使用するときは、例えば「個性的なデスクトップコンピュータ」「OSを起動したときに個性的な基本の画面となるコンピュータプログラム」等の意味合いを理解させるにとどまり、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものであり、商標法第3条第1項第6号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、商標法第4条第1項第16号に該当する。”というものであります。

  【本願商標が登録されるべき理由】

  然るに、本出願人は先の意見書において、本願商標は、指定商品との関係において、十分に自他商品識別標識として機能し得る商標であることを、過去の多くの商標登録例を示しながら説明したにも拘わらず、かかる拒絶の認定をされたことに対しては納得できないところがあり、ここに再度ご審理を頂きたく、審判を請求する次第であります。

(a)本願商標の構成

 本願商標は、願書に表示した商標見本からも明らかなように、英文字で「Designer’s DeskTop」と横書きした態様からなるもので、指定商品を第9類「自動販売機,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,電気通信機械器具,電子計算機用プログラム,その他の電子応用機械器具及びその部品,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物」とするものであります。

(b)審査官の認定に対する反論

(b-1)

 審査官殿は、ファッションに関する、デザイナーの個性を前面に打ち出した「デザイナーズブランド」の語や、建築に関する、建築デザイナーが個性的な間取りやデザインをした集合住宅の「デザイナーズマンション」の語を引き合いに出して、本願商標の「Designer’s DeskTop」(デザイナーズデスクトップ)を本願指定商品中「電子計算機用プログラム、その他の電子応用機械器具およびその部品」に使用するときは、例えば「個性的なデスクトップコンピュータ」「OSを起動したときに個性的な基本の画面となるコンピュータプログラム」等の意味合いを理解させるにとどまると認定しております。

 しかしながら、本出願人は、そのようなことはないと考えます。

 これら「デザイナーズブランド」や「デザイナーズマンション」は、ヤフーJAPANなどのインターネット検索エンジンで検索してみますと、そのような使用例が多く存在していて、一つの意味合いをあらわす言葉として確立されていることが理解できますが、本願商標の「Designer’s DeskTop(デザイナーズデスクトップ)」については、そのような使用例は全く見当たりません。

 デザイナーのグループ名としてこの言葉を含む例はありましたが、審査官の指摘するような「個性的なデスクトップコンピュータ」や「OSを起動したときに個性的な基本の画面となるコンピュータプログラム」等の意味合いを表すための「デザイナーズディスクトップ」の使用例は全く見当たりません。

  それ故、ファッション関係や建築関係で用いられている「デザイナーズ」の意味合いが、そのままコンピュータ関係の分野にあてはまるとは到底言い得ないと考えます。

(b-2)

 本願商標は、「Designer’s」と「DeskTop」とを結合して一体とした一種の造語商標でありますが、この「Designer’s DeskTop」が、上記審査官が指摘するような意味合いを有する言葉として普通に使用され、且つ市場において広く普及されているような事実は全くありません。

 それ故、これを品質表示用語やそれに類する記述的用語であって識別力のない言葉だというようなことは安易に言えないのではないかと考えます。

 前段と後段それぞれに意味を持つ言葉同士を組み合わせて本願商標が成り立っていることからすれば、全体として何らかの意味合いを表すことはむしろ当然のことでありますが、そうだからといって、本願商標が品質表示等の記述的表示であって識別機能を持たない、などと決めつけることは出来ないと考えます。

 本願商標は、上述のように、指定商品との関係で具体的にその商品の特定の品質等を表示する言葉として機能している訳ではありませんので、十分に自他商品識別標識として機能し得るものと考えます。それ故、「デザイナーズ」の言葉が、指定商品「電子計算機用プログラム、その他の電子応用機械器具およびその部品」との関係にあって、品質その他の識別力のない表示にすぎないと見るのは、短絡的にすぎると考えます。

(b-3)

 この点に関して、過去の商標登録例をみると、本願と同一の商品分野において、「DESKTOP」「DeskTop」「デスクトップ」を用いた商標が、以下のように多数登録されております。

 例えば、

A.登録第4061057 「MECHANICAL DESKTOP」

B.登録第4605112 「SchoolDeskTop」

C.登録第4280618 「KNOWLEDGEDESKTOP」

D.登録第4612027 「キッズデスクトップ」

E.登録第4612028 「こどもデスクトップ」

F.登録第4361416 「EMPLOYEE DESKTOP」などです。

 もし仮に、審査官のような考え方に従うのであれば、上記Aの「ACTIVE DESKTOP」は「機能的なデスクトップコンピュータ」程度の意味合いを、また、Bの「SchoolDeskTop」は「学校用のデスクトップコンピュータ」程度の意味合いをそれぞれ認識させ、識別力がないと言うことになるのでありましょう。また、Cの「KNOWLEDGEDESKTOP」は「情報量の多いデスクトップコンピュータ」程度の、D,Eの「キッズデスクトップ」及び「子供デスクトップ」は「子供用のデスクトップコンピュータ」程度の、更には、Fの「EMPLOYEE DESKTOP」は「従業員用のデスクトップコンピュータ」程度の、それぞれ意味合いを認識させるということになり、審査官のような考え方を採れば、これも識別力はないと言うことになるのでありましょう。

 しかし現実には、その様な認定はなされずに、全て登録されております。これは、これらの審査を担当した審査官が、これらA~Fの商標を十分に識別機能を備えた商標であると認定したからに他なりません。本願商標「Designer’s DeskTop」とて同様であると考えます。これら「MECHANICAL DESKTOP」「SchoolDeskTop」「キッズデスクトップ」「EMPLOYEE DESKTOP」等が登録できて、本願商標「Designer’s DeskTop」が登録できないとされる謂われは全くありません。コンピュータ等の分野では、「Designer’s」の言葉が特別の意味を持つと言うことはありません。少なくとも、「School」や「キッズ」や「EMPLOYEE」と同様なはずであります。

  本願商標「Designer’s DeskTop」は、そのまま素直に理解すれば、「デザイナーのデスクトップパソコン」あるいは「デザイナーのOS起動時のパソコン基本画面」程の意味合いを有するのかも知れません。しかし、指定商品中の「電子計算機用プログラム、その他の電子応用機械器具およびその部品」との関係にあって、その商品の具体的な特定の品質等を表示すると言うことはありません。

 ましてや、「デザイナーズマンション」の「デザイナーズ」をもじって、「個性的なデスクトップコンピュータ」を表すだとか、「OSを起動したときに個性的な基本の画面となるコンピュータプログラム」等の意味合いを表すだとかということは全く考えられません。

 本願商標は十分に自他商品識別標識として機能するものであり、指定商品「電子計算機用プログラム、その他の電子応用機械器具およびその部品」に本願商標「Designer’s DeskTop」を使用した場合には、素直に、「Designer’s DeskTop」ブランドの「コンピュータプログラム」ないし「コンピュータ」と理解できるものと思います。

  【むすび】

 以上述べたように、本願商標の「Designer’s DeskTop」は、「デザイナーの」程の意味合いを有する「Designer’s」と「デスクトップパソコン」あるいは「OSを起動したときに表示されるパソコンの基本画面」を意味する「DeskTop」の文字とを組み合わせたものでありますので、全体の言葉の意味として「デザイナーのデスクトップパソコン」あるいは「デザイナーのOSを起動したときに表示されるパソコンの基本画面」程の意味合いを持つものと思います。しかし、それは単に言葉の構成から受けるイメージであって、指定商品との関係において、特定の具体的観念を生じさせることはなく、単なる商品の品質等記述的表示にすぎないということはできないと考えます。

 これは、「DeskTop」「デスクトップ」等の文字を含む過去の上記A~Fの商標登録例からも明らかであります。

 本願商標もこれら多くの登録例と同様に、十分に自他商品識別力を備えたものであり、登録されて然るべきであります。

  よって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号にも、同第4条第1項第16号にも該当しないものと思料しますので、請求の主旨の通り、「原査定を取り消す。この出願の商標は登録をすべきものとする。」との審決を求める次第であります。

(参考)ケース67の「審決」

不服2004-15119

   商願2003- 98164拒絶査定不服審判事件について、次のとおり

  審決する。

 結 論

   原査定を取り消す。

   本願商標は、登録すべきものとする。

 理 由

  1 本願商標

   本願商標は、「Designer’s DeskTop」の文字を横書き

  してなり、第9類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品として、平

  成15年11月6日に登録出願されたものである。

  2 原査定の拒絶の理由の要点

   原査定は、「本願商標は、ファッションに関して、デザイナーの個性を前

  面に打ち出した「デザイナーズブランド」の語や、建築に関して、建築デザ

  イナーが個性的な間取りやデザインをした集合住宅の「デザイナーズマンシ

  ョン」の語があることから、「デスクトップコンピュータ」や「ウィンドウ

  ズやMacのOSを起動したときの基本の画面」等の意味を有する「Des

  kTop」の前に「Designer’s」の文字を配した「Design

  er’s DeskTop」の文字を普通に用いられる方法で書してなると

  ころ、これを本願指定商品中「電子計算機用プログラム,その他の電子応用

  機械器具及びその部品」に使用するときは、例えば「個性的なデスクトップ

  コンピュータ」「OSを起動したときに個性的な基本の画面となるコンピュ

  ータプログラム」等の意味合いを理解させるにとどまり、需要者が何人かの

  業務に係る商品であることを認識することができないものと認める。したが

  って、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当し、前記商品以外の商

  品に使用するときは商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、商標

  法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したも

  のである。

  3 当審の判断

   本願商標は、前記のとおりの構成よりなるところ、その構成中の「Des

  igner’s」の文字が、「デザイナーの」の意味を表し、「DeskT

  op」の文字が「机の上、机上用、パソコンの初期画面」等の意味を有する

  語であるとしても、これらを組み合わせた本願商標の構成全体から具体的な

  商品の品質等を認識させるものとは言い得ないものであり、むしろ特定の意

  味合いを看取し得ない一種の造語よりなるものというのが相当である。

   また、「Designer’s DeskTop」の文字が、その指定商

  品の品質等を表示するものとして取引上普通に使用されている事実も見出す

  こともできない。

   してみれば、本願商標は、その指定商品のいずれの商品についても、商品

  の品質等を表示するものでなく、自他商品の識別標識としての機能を果たす

  ものであって、需要者をして何人かの業務に係るものであるかを認識するこ

  とができない商標ということはできない。

   また、これをその指定商品中のいずれの商品に使用しても、商品の品質に

  ついて誤認を生じさせるおそれもないものである。

   したがって、本願商標を商標法第3条第1項第6号及び同法第4条第1項

  第16号に該当するとして拒絶した原査定は、妥当ではなく、取り消すべき

  ものである。

   その他、政令で定める期間内に、本願を拒絶すべき理由を発見しない。

   よって、結論のとおり審決する。

        平成17年 3月18日

                 審判長  特許庁審判官 小林  

                      特許庁審判官 岩崎  良子

                      特許庁審判官 池田  光治

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ケース68 本願商標:「ToningBath/トーニングバス」 

1.出願番号  商願2003-54276(不服2004-6712

2.商  標  「ToningBath/トーニングバス

3.商品区分  第3類:せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類

4.適用条文    商標法第3条1項3号、第4条第1項第16号

5.拒絶理由 「単に、商品の品質、用途を表示したものと理解されるにとどま       り、自他商品識別標識としての機能を有しない。」

6.不服審判における反論(請求の理由)

  【手続の経緯】

 出     願       平成15年 6月30日

 拒絶理由の通知       平成16年 1月14日

     同 発送日       平成16年 1月15日

  意  見  書       平成16年 2月16日

  拒 絶 査 定       平成16年 2月27日

   同 謄本送達       平成16年 3月 3日

  【拒絶査定の要点】

 原査定の拒絶理由は、“ この商標登録出願は、平成16年1月14日付けで通知した理由によって、拒絶をすべきものと認めます。

 おって、出願人は意見書において種々述べていますが、今日では指定商品「化粧品」との関係においては「トーニング」及び「TONIG」の文字は識別力がないとされていますし、また、「バス」及び「BATH」の文字の部分は商品の用途を表す語として浴用製品である(昭和45審判4222号)ことを表しますから、これを一連に書したとしても本件については出願人の意見は採用することができません。したがって、さきの認定を覆すことはできません。”というものであります。

 つまり、この拒絶の理由は、“ 「ToningBath」の文字を普通に用いられる方法で表示してなるところ、その構成中の「Toning」の文字部分は「活力を与える」程の意味合いを、また、「Bath」の文字部分は、指定商品との関係においては、「浴用及び浴室用の商品」等の意味を有し、一般に「バスオイル」「バスソルト」「浴用石けん 浴室用洗剤」のように、また、「トーニング」の語も「トーニング バスオイル」「トーニング シャワー&バス ジェル 」「メーカー ポールシェリー 商品名 バスオイル(トーニング)」「バスオイル トーニング (ボディケア)」のように使用されているものであるから、全体としても「活力を与える風呂用の商品」の意味合いを容易に看取させ、この商標登録出願に係る商標を指定商品中前記文字に照応する商品、たとえば、「バスオイル、バスソルト」等に使用するときは、単に、商品の品質、用途を表示したものと理解されるに止まり、自他商品の識別標識としての機能を有しない。したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記文字に照応する商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、商標法第4条第1項第16号に該当する。”(拒絶理由通知書)というものであります。

  【本願商標が登録されるべき理由】

  然るに、本出願人は先の意見書において、本願商標は、「Toning/トーニング」と「Bath/バス」が結合して一体となった商標であり、言葉の意味として、「活力を与える浴室、浴槽、入浴」程の意味合いを有するが、この文字が、一般的に、第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」の品質・用途表示として流通し機能しているわけではないこと、及び、「浴槽」などを指定商品とする場合ならばまだしも、本願のような第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」を指定商品とする場合においては、格別にその品質や用途等を表示するものではないこと、等を指摘して拒絶の理由には該当しないことを述べたにもかかわらず、かかる拒絶の認定をされたことに対しては納得できないところがあり、ここに再度ご審理を頂きたく、審判を請求する次第であります。

(a)本願商標の構成

 本願商標は、願書に表示した商標見本からも明らかなように、英文字と片仮名文字で「ToningBath/トーニングバス」と二段併記した態様からなるもので、指定商品を第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」とするものであります。

(b)審査官の認定に対する反論

(b-1)

  審査官は、上記本願商標の構成態様に関し、「Bath」の文字部分は、指定商品との関係においては、「浴用及び浴室用の商品」を意味し、一般に「バスオイル」「バスソルト」「浴用石けん 浴室用洗剤」のように使用されているとしていますが、ここで言う「Bath」はあくまでも「浴槽、浴室」「入浴、(浴用の)湯」を意味し、「浴用及び浴室用の商品」を意味するものではないことは、さきの意見書でも述べたとおりであります。

 審査官ご指摘の「バスオイル」「バスソルト」等の使い方は、商品「オイル」や「ソルト」に対して、「バス+商品名」という使い方であって、「バス用オイル」「バス用ソルト」という意味に使っております。「Bath」「バス」の文字自体が、「浴用及び浴室用の商品」そのものを表しているのではありません。「Toning」が「活力を与える」程の意味合いを有するとしても、「ToningBath」といった場合には、言葉自体の意味として「活力を与えるバス」程の意味を有するのであって、「活力を与えるバス」が「活力を与えるバス用の商品」そのものを意味するものではありません。

  そして又、本願商標の「ToningBath/トーニングバス」が言葉の意味として「活力を与える浴室、浴槽、入浴」等の意味合いを有するとしても、「浴槽」などを指定商品とする場合ならまだしも、本願のような第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」を指定商品とする場合においては、格別にその品質や用途等を表すことにはならないと考えます。例えば、「石けん」や「化粧品」に、「活力を与えるバス(浴室、入浴)」という意味合いの商標「ToningBath/トーニングバス」を用いても、その「石けん」や「化粧品」を、「バス」(「浴室」「浴槽」「入浴」など)と間違えるわけはなく、指定商品との関係において、品質・用途等の誤認など生じるはずもありません。この意味において、審査官の判断は、言葉の意味合いを誤って認識した誤解に基づくものであります。

(b-2)

  ところで、この点に関し審査官は、拒絶査定書において、昭和45審判4222号の審決を引き合いに出し、「バス」及び「BATH」の文字部分は商品の用途を表す語であり、浴用製品であることを表す、と認定しております。

 しかし、この審決例は、本件とは事案を異にするもので、それをもって本件の判断基準となすことは、適正を欠くものと思料します。

 つまり、この審決例は、商願昭43-4900号「バスダイヤ/BATHDIA」(指定商品:化粧品)が、登録第408085号「ダイヤ/DIA」(指定商品:同じく化粧品等)を引例に拒絶されたことに対する不服の審判における審決で、結論的には、請求は成り立たない旨の審決(つまり類似の判断を維持する審決)をした訳ですが、ここで問題となった出願商標は、明らかに単独で識別力を持つ「ダイヤ」「DIA」の文字と、その文字とは観念的に全く結びつきのない「バス」「BATH」の文字とから構成され、且つ2音節に称呼される「バスダイヤ/BATHDIA」の商標を対象とするものでありますので、本願商標のような一体となって一つの意味合い(「活力を与える浴室、浴槽」等)を暗示させる「ToningBath/トーニングバス」とは、事案を全く異にするものであります。

 構成上単に「ダイヤ」の称呼を生じてしまう上記「バスダイヤ/BATHDIA」の商標と、一体として把握されて常に「トーニングバス」と称呼される本願商標の「ToningBath/トーニングバス」とでは、同一レベルで語ることは出来ません。

 本願商標は、「Toning」及び「トーニング」の文字だけからなるものでも、また「Bath」及び「バス」の文字だけからなるものでもなく、あくまでも、これら2つが結合して一体となり、「活力を与える浴室、入浴」程の意味合いを暗示させる造語商標(指定商品との間で特定の具体的観念を生じさせない造語商標)であり、それ故に、この本願商標を指定商品中風呂用の商品、たとえば、「石けん、バスオイル、バスソルト」等に使用しても、単に、商品の品質、用途を表すことにはならず、自他商品識別機能を十分に発揮するものと思料します。

(b-3)

  にもかかわらず、審査官は、前述のように「BATH」の文字は、石けんや化粧品などとの関係にあっても浴用製品という用途表示であって自他商品識別力はない、と認定しております。結局のところ、審査官が言わんとするところは、「ToningBath/トーニングバス」全体としても、「活力を与える風呂用の商品(「石けん」や「化粧品」)」程の意味合いを有するだけであって、識別力はないということなのだろうと思います。

 しかし、冷静に考えた場合、「人体に活力を与える風呂用の石けん」とか、「人体に活力を与える風呂用の化粧品」とは、一体如何なるものなのか、判然としません。

 「石けん」とか「化粧品」における「人体に活力を与える」効能というのは、本当に存在するものなのか、大いに疑問であります。

 飲み薬等の医薬品であれば、あるいは“これは人体を活性化してくれる薬だ”との認識を持つ取引者・需要者がいるのかも知れません。しかし、石けん(たとえ薬用石けんであっても)は、肌の洗浄や滅菌等の効能がせいぜいでありましょうし、また、化粧品(たとえ薬用化粧品であっても)も、身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え又は皮膚もしくは毛髪を健やかに保つ程の効能がせいぜいであります。人体を活性化して活力を与える効能など常識的に考えられません。ましてや他の指定商品「歯磨き」や「香料類」に、そのような効能があるとも考えられません。

 「人体に活力を与える効能」など考えられないとすれば、「ToningBath/トーニングバス」を、第3類の「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」に使用した場合には、その商品の用途・効能等を表すことにはならなず、十分に自他商品識別機能を発揮するものと思います。

(b-4)

  過去の商標登録例をみると、例えば、(A)「TONING BED/トーニングベッド」は、「業務用美容マッサージ器」や「業務用美容機械器具」を指定商品として商標登録されていますが(登録2284758)、これなどは、端的に「活力を与えるベッド状のマッサージ器、同ベット状の美容機械器具」を意味しております。それ故、今般の審査官のような見方をすれば、この(A)は自他商品識別力がないということになるのでありましょうが、実際には識別力が認められて商標登録されているわけであります。これら「業務用美容マッサージ器」や「業務用美容機械器具」に「TONING BED/トーニングベッド」が登録できて、「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」などに「ToningBath/トーニングバス」が登録できないとされる謂われはありません。

(b-5)

  また、過去の商標登録例をみると、本願と同一の指定商品分野において、「BATH」「Bath」の文字を含む商標が多数登録されておりますが、これらの指定商品をみると、必ずしも「浴用の○○○」という具合に限定されているわけではありません。審査官が指摘するように、「BATH」「Bath」の文字が、浴用製品を表す品質・用途表示であるとするならば、当然ながら、「BATH」「Bath」の文字を含む商標は、全て、浴用製品に限定されていなければならないはずでありますが、現実にはそうなっておりません。

  例えば、以下のような商標登録例がありますが、ここに挙げた1~9の登録商標の指定商品は、全て、「浴用の」という限定はなされておりません。

 1. 登録2675882  メイクアップバス\MAKEUPBATH

 2. 登録2722003  アクアバス\AQUABATH

 3. 登録3294101  ATOPIBATH\アトピバス

 4. 登録4060750  AVON HOT BATH

 5. 登録4108991  VITABATH\ヴァイタバス

 6. 登録4237464  ビオレ  Health  Bath

 7. 登録4429286  カクテルバス\COCKTAIL  BATH

 8. 登録4693062  QUICKBATH

 9. 登録4717135  ハウスオブローゼホワイトバス\HOUSE OF ROSE                  WHITE BATH

 審査官のように“指定商品との関係にあって「BATH」「Bath」の文字は品質・用途表示だ”という判断を行うのであれば、これら1~9の指定商品は、全て、「浴用の○○○」という具合に記載されていなければならないはずであります。しかし、現実にはそのようになっておりません。そのような限定がなくとも登録されております。これは、「BATH」「Bath」の文字が、必ずしも「浴用製品」を表すものでないことの、何よりの証左であります。

 これら1~9が登録できて、本願商標「ToningBath/トーニングバス」が登録できないとされる謂われはありません。

(b-6) 

 ところで、本出願人は、前述したように、本願商標「ToningBath/トーニングバス」が「Toning/トーニング」と「Bath/バス」の文字を結合したものであり、全体の言葉の意味として「活力を与えるバス(浴室、浴槽、入浴)」程の意味合いを持つこと、そして、そのことから、商標として使用された場合に、取引者・需要者をしてそのような観念を間接的に表示ないし暗示させるであろうことを、決して否定するものではありません。

 しかし、そのことが直ちに、本願商標が、商品の品質・用途を表すにすぎない、即ち、商品の品質・用途を普通に用いられる方法で表示する標章にすぎない、と言うことを意味するものではないと考えます。本願商標を構成する「ToningBath/トーニングバス」は、現に第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」の品質・用途表示として流通し機能しているわけではありません。

  「活力を与えるバス(浴室、浴槽、入浴)」を間接的に表示ないし暗示するとしても、それでは一体、具体的にはどの様な商品を指すのか、その具体的な商品の中味(品質・用途)が何なのか特定できません。具体的に中身が特定できてこそ、商品の品質・用途表示といえるのであって、漠然と物事を暗示ないし間接的に表示したのでは、商標法第3条第1項第3号にいう「品質・用途」等の表示とは言えないと考えます。

 商標法第3条第1項第3号の商標審査基準によれば、“指定商品の「品質」、「効能」、「用途」等を間接的に表示する商標は、本号の規定に該当しないものとする。”と明確にうたっています。この基準に照らし合わせてみても、今般の審査官の認定には納得できません。同書・同大・同間隔で一連一体にバランス良く横書きした本願商標「ToningBath/トーニングバス」は、全体としてみれば、指定商品との関係で特定の具体的観念を生じさせることのない造語商標であり、十分に自他商品識別標識として機能するものと思料します

  【むすび】

 以上述べたように、本願商標の「ToningBath/トーニングバス」は、「活力を与える」程の意味合いを有する「Toning/トーニング」と「浴室、浴槽、入浴」を意味する「Bath/バス」の文字とを組み合わせたもので、全体の言葉の意味として「活力を与えるバス(浴室、浴槽、入浴)」程の意味合いを持つものではありますが、指定商品との関係において特定の具体的観念を生じさせることはなく、単なる商品の品質、用途表示ということはできないと考えます。

  特に「浴槽」などを指定商品とする場合ならばまだしも、本願のような第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」を指定商品とする場合においては、格別にその品質や用途等を表示するものではないと考えます。

  それ故、本願商標「ToningBath/トーニングバス」は、商品の品質、用途を普通に用いられる方法で表示するものでも、商品の誤認を生じさせるものでもなく、十分に登録適格性を備えたものと思料します。

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(参考)ケース68の「審決」

不服2004- 6712

   商願2003-54276拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審

  決する。

 結 論

   原査定を取り消す。

   本願商標は、登録すべきものとする。

 理 由

  1 本願商標

   本願商標は、「ToningBath」の欧文字と「トーニングバス」の

  片仮名文字とを二段に書してなり、第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,

  香料類」を指定商品として、平成15年6月30日に登録出願されたもので

  ある。

  2 原査定の拒絶の理由(要旨)

   原査定は、「本願商標は、『ToningBath』及び『トーニングバ

  ス』の文字を上下二段に普通に用いられる態様で表示してなるところ、その

  構成中の『Toning』の文字部分は『活力を与える』程の意味合いを、

  また、『Bath』の文字部分は、指定商品との関係においては、『浴用及

  び浴室用の商品』等の意味を有し、全体としても『活力を与える風呂用の商

  品』の意味合いを容易に看取させるから、本願商標を指定商品中前記文字に

  照応する商品、たとえば、『バスオイル、バスソルト』等に使用するときは

  、単に、商品の品質、用途を表示したものと理解されるに止まり、自他商品

  の識別標識としての機能を有しないものと認める。したがって、本願商標は

  、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記文字に照応する商品以外の商品

  に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、商標

  法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したも

  のである。

  3 当審の判断

   本願商標は、前記のとおり「ToningBath」の欧文字と「トーニ

  ングバス」の片仮名文字とを二段に書してなるところ、構成中前半部の「T

  oning」(トーニング)の文字(語)が、たとえ、「活力を与える(こ

  と)」(小学館ランダムハウス英和大辞典(第2版第7刷)「tone」の

  項参照。株式会社小学館発行)の意味を有し、後半部の「Bath」(バス

  )の文字(語)が、「浴室」(小学館ランダムハウス英和大辞典(第2版第

  7刷)株式会社小学館発行)を意味するものであるとしても、これらを結合

  して一連に表した本願商標は、原審説示のような意味合いを認識させるもの

  ではなく、特定の商品の品質、用途を、直接的、かつ、具体的に表したもの

  とはいえないものである。

   また、当審において、職権をもって調査したが、「ToningBath

  」及び「トーニングバス」の文字が、本願の指定商品を取り扱う業界におい

  て、商品の品質、用途を表示するものとして、普通に使用されている事実を

  見出すことができなかった

   してみると、本願商標は、全体として特定の観念を生じない造語を表した

  ものと認識されるものであるから、これをその指定商品に使用しても、自他

  商品の識別標識としての機能を十分に果たし得るものであり、また、商品の

  品質について誤認を生じさせるおそれもないものである。

   したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び第4条第1項第1

  6号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当でなく、取消しを免れ

  ない。

   その他、政令で定める期間内に本願について拒絶をすべき理由を発見しな

  い。

   よって、結論のとおり審決する。

        平成17年 6月28日

                 審判長  特許庁審判官 野本  登美男

                      特許庁審判官 三澤  惠美子

                      特許庁審判官 和田  恵美

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ケース69 本願商標:「ToningBath/トーニングバス」 

1.出願番号  商願2003-55506(不服2004-7343

2.商  標  「ToningBath/トーニングバス

3.商品区分  第5類:入浴剤その他の薬剤

4.適用条文    商標法第3条1項3号、第4条第1項第16号

5.拒絶理由 「単に、商品の品質、用途を表示したものと理解されるにとどま       り、自他商品識別標識としての機能を有しない。」

6.不服審判における反論(請求の理由)

  【手続の経緯】

 出     願       平成15年 7月 3日

 拒絶理由の通知       平成16年 1月21日

     同 発送日       平成16年 1月26日

  意  見  書       平成16年 2月20日

  拒 絶 査 定       平成16年 3月30日

   同 謄本送達       平成16年 3月31日

  【拒絶査定の要点】

 原査定の拒絶理由は、“この商標登録出願は、平成16年1月21日付けで通知した理由によって、拒絶をすべきものと認めます。また、出願人は、意見書において種々述べていますが、第5類においては「Bath」及び「バス」の文字は、浴剤以外の商品に使用することはできませんからさきの認定を覆すことはできません。”というものであります。

 つまり、この拒絶の理由は、具体的には“ 「ToningBath」及び「トーニングバス」の文字を上下二段にして普通に用いられる態様で表示してなるところ、その構成中の「Toning」の文字部分は「活力を与える」程の意味合いを、また、「Bath」の文字部分は、指定商品との関係においては、「浴剤」の意味を有し、一般に「バスオイル」「バスソルト」「浴用石けん 浴室用洗剤」のように使用され、また、「トーニング」の語も「トーニング バスオイル」「トーニング シャワー&バス ジェル 」「メーカー ポールシェリー 商品名 バスオイル(トーニング)」「バスオイル トーニング (ボディケア)」のように使用されていますので、この商標全体としても「活力を与える浴剤」の意味合いを容易に看取しますから、この商標登録出願に係る商標を指定商品中「浴剤」に使用するときは、単に、商品の品質、用途を表示したものと理解されるに止まり、自他商品の識別標識としての機能を有しないものと認めます。したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、「浴剤」以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがありますので、商標法第4条第1項第16号に該当します。”(拒絶理由通知書)というものであります。

  【本願商標が登録されるべき理由】

  然るに、本出願人は先の意見書において、本願商標は、「Toning/トーニング」と「Bath/バス」が結合して一体となった商標であり、言葉の意味として「活力を与える浴室、入浴」程の意味合いを有するが、この文字が、一般的に、第5類「入浴剤その他の薬剤」の品質・用途表示として流通し機能しているわけではないこと、及び、「浴槽」などを指定商品とする場合ならばまだしも、本願のような第5類「入浴剤その他の薬剤」を指定商品とする場合においては、格別にその品質や用途を表示するものではないこと、等を指摘して拒絶の理由には該当しないことを述べたにもかかわらず、かかる拒絶の認定をされたことに対しては納得できないところがあり、ここに再度ご審理を頂きたく、審判を請求する次第であります。

(a)本願商標の構成

 本願商標は、願書に表示した商標見本からも明らかなように、英文字と片仮名文字で「ToningBath/トーニングバス」と二段併記した態様からなるもので、指定商品を第5類「入浴剤その他の薬剤」とするものであります。

(b)審査官の認定に対する反論

(b-1)

  審査官は、上記本願商標の構成態様に関し、「Bath」の文字部分は、指定商品との関係においては、「浴剤」を意味し、一般に「バスオイル」「バスソルト」「浴用石けん 浴室用洗剤」のように使用されているとしていますが、ここで言う「Bath」はあくまでも「浴室」を意味し、「浴剤」自体を意味するものでないことは、さきの意見書でも述べたとおりであります。

 審査官ご指摘の「バスオイル」「バスソルト」等の使い方は、商品「オイル」や「ソルト」に対して、「バス+商品名」という使い方であって、「バス用オイル」「バス用ソルト」という意味に使っております。「Bath」「バス」の文字自体が、「浴剤」そのものを表しているのではありません。「Toning」が「活力を与える」程の意味合いを有するとしても、「ToningBath」といった場合には、言葉自体の意味として「活力を与えるバス(浴室、入浴)」程の意味を有するのであって、「活力を与える浴剤」自体を意味するものではありません。

  そして又、本出願人は、本願商標の「ToningBath/トーニングバス」が言葉の意味として「活力を与えるバス(浴室、入浴)」の意味を有するとしても、「浴槽」などを指定商品とする場合ならばまだしも、本願のような第5類「入浴剤その他の薬剤」を指定商品とする場合においては、格別にその品質や用途等を表すことにはならないと考えます。例えば、「浴剤」に、「活力を与えるバス(浴室、入浴)」という言葉の意味合いの商標「ToningBath/トーニングバス」を用いても、その「浴剤」を、「バス」(「浴室」「浴槽」「入浴」など)と間違えるわけはなく、指定商品との関係において、品質・用途等の誤認など生じるはずもありません。この意味において、審査官の判断は、言葉の意味合いを誤って認識した誤解に基づくものであります。

(b-2)

  また、審査官は、拒絶査定書において、“第5類においては「Bath」及び「バス」の文字は、浴剤以外の商品に使用することはできません。”と認定しております。

 しかし、後に述べるように、「Bath」「バス」の文字を用いたからといって、必ずしも指定商品が「浴剤」に限定されるわけではなく、現に「浴剤」に限定せずとも登録されている例は多く存在します。

 しかも、本願商標は、「Toning」及び「トーニング」の文字だけからなるものでも、また「Bath」及び「バス」の文字だけからなるものでもなく、あくまでも、これら2つが結合して一体となり、「活力を与える浴室、入浴」程の一つのまとまった意味合いを暗示させる造語商標となっております。

 それ故に、この本願商標を指定商品中「入浴剤」に使用しても、単に、商品の品質・用途を表すことにはならず、自他商品識別機能を十分に発揮するものと思料します。

(b-3)

  ところで、審査官は、前述のように、「ToningBath/トーニングバス」を「活力を与える浴剤」の意味に理解し、それを「浴剤」に使用しても識別力は生じないと認定しました。

 しかし、冷静に考えた場合、「活力与える浴剤」とは、一体如何なるものなのか、ここでいう「活力を与える」とは具体的には何を意味するのか。つまり、「入浴剤」(例え薬用入浴剤であっても)における「活力を与える」(「生命力を与える」)効能というのは、具体的に何を表すのか、判然としません。

 飲み薬等の医薬品であれば、あるいは“これは人体を活性化し、生命力を保つ薬だ”との認識を持つ取引者・需要者がいるのかも知れません。しかし、入浴剤は、たとえ薬用入浴剤であっても、所詮、その香りや成分によって、疲れをいやしたり、皮膚等の荒れを改善したりすることが基本であります。お湯と浴剤との相乗効果で、ものによって、せいぜい、1)保湿効果で敏感肌・ニキビ・カサカサ肌を生き生きとさせたり、2)アレルギー性皮膚炎を改善させたり、3)血行を促進して冷え性を改善させたり、4)発汗作用を促したり、5)血行を促進して肩こりを解消させたり、というような効能を発揮するだけであります。

 それ故、“活力を与える”といった具体的には何のことか分からない抽象的な効果をとらえて、商品の品質・用途表示だなどとは、到底言い得ないと思料します

  つまり、具体的に中身が特定できてこそ、商品の品質・用途表示といえるのであって、漠然と物事を暗示ないし間接的に表示したのでは、商標法第3条第1項第3号にいう「品質・用途」等の表示とは言えないと考えます。

 商標法第3条第1項第3号の商標審査基準によれば、“指定商品の「品質」、「効能」、「用途」等を間接的に表示する商標は、本号の規定に該当しないものとする。”と明確にうたっています。この基準に照らし合わせてみても、今般の審査官の認定には納得できません。同書・同大・同間隔で一連一体にバランス良く横書きした本願商標「ToningBath/トーニングバス」は、全体としてみれば「活力を与える浴室、入浴」を暗示ないし間接的に表示しておりますが、指定商品との関係では特定の具体的観念を生じさせない造語商標であります。

 よって、本願商標「ToningBath/トーニングバス」を、第5類の「入浴剤その他の薬剤」に使用したとしても、その商品の品質・用途等を表すことにはならず、十分に自他商品識別機能を発揮するものと思います。

(b-4)

  過去の商標登録例をみると、例えば、(A)「TONING BED/トーニングベッド」は、「業務用美容マッサージ器」や「業務用美容機械器具」を指定商品として商標登録されていますが(登録2284758)、これなどは、端的に「活力を与えるベッド状のマッサージ器、同ベット状の美容機械器具」を意味しております。それ故、今般の審査官のような見方をすれば、この(A)は自他商品識別力がないということになるのでありましょうが、実際には識別力が認められて商標登録されているわけであります。これら「業務用美容マッサージ器」や「業務用美容機械器具」に「TONING BED/トーニングベッド」が登録できて、「入浴剤その他の薬剤」に「ToningBath/トーニングバス」が登録できないとされる謂われはありません。

(b-5)

  また、過去の商標登録例をみると、本願と同一の指定商品分野(第5類)において、「BATH」「Bath」の文字を含む商標がいくつも登録されておりますが、これらの指定商品は、必ずしも「浴剤」に限定されているわけではありません。審査官が指摘するように、「BATH」「Bath」の文字が、第5類においては「浴剤」を表す品質・用途表示であるとするならば、当然ながら「BATH」「Bath」の文字を含む商標は、全て、「浴剤」に限定されていなければならないはずでありますが、現実にはそうなっておりません。

  例えば、以下(1)~(5)の商標登録例は、「浴剤」に限定されている訳ではなく、「薬剤」という概念で登録されております。

 (1)登録3279451  バイタバス\VITABATH          薬剤

 (2)登録3279452  ビタバス\VITABATH              薬剤

 (3)登録4215083  ビオレ Health  Bath         薬剤

 (4)登録4399212  Healing Bath\ヒーリングバス   薬剤

 (5)登録4437324  ホットインバス\HOT IN BATH      薬剤ほか

 審査官のように“指定商品との関係にあって「BATH」「Bath」の文字は品質・用途表示だ”という判断を行うのであれば、これら(1)~(5)の指定商品は、全て、「浴剤」という具合に記載されていなければならないはずでありますが、現実にはそのよう限定はありません。

 これは、「BATH」「Bath」の文字が、必ずしも「浴剤」のみを表すものでないことの、何よりの証左であります。

 これら(1)~(5)が「薬剤」を指定して登録できて、本願商標「ToningBath/トーニングバス」が同じ「薬剤」を指定して登録できないとされる謂われはありません。

  【むすび】

 以上述べたように、本願商標の「ToningBath/トーニングバス」は、「活力を与える」程の意味合いを有する「Toning/トーニング」と「浴室、入浴」を意味する「Bath/バス」の文字とを組み合わせたもので、全体の言葉の意味として「活力を与えるバス(浴室、入浴)」程の意味合いを持つものではありますが、指定商品との関係において特定の具体的観念を生じさせることはなく、単なる商品の品質、用途表示ということはできないと考えます。

  特に「浴槽」などを指定商品とする場合ならばまだしも、本願のような第5類「入浴剤その他の薬剤」を指定商品とする場合においては、格別にその品質や用途等を表示するものではないと考えます。

  それ故、本願商標「ToningBath/トーニングバス」は、商品の品質、用途を普通に用いられる方法で表示するものでも、商品の誤認を生じさせるものでもなく、十分に登録適格性を備えたものと確信します。

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(参考)ケース69の「審決」

不服2004- 7343

   商願2003-55506拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審

  決する。

 結 論

   原査定を取り消す。

   本願商標は、登録すべきものとする。

 理 由

  1 本願商標

   本願商標は、「ToningBath」の欧文字と「トーニングバス」の

  片仮名文字とを二段に書してなり、第5類「入浴剤その他の薬剤」を指定商

  品として、平成15年7月3日に登録出願されたものである。

  2 原査定の拒絶の理由(要旨)

   原査定は、「本願商標は、『ToningBath』及び『トーニングバ

  ス』の文字を上下二段に普通に用いられる態様で表示してなるところ、その

  構成中の『Toning』の文字部分は『活力を与える』程の意味合いを、

  また、『Bath』の文字部分は、指定商品との関係においては、『浴剤』

  の意味を有し、全体としても『活力を与える浴剤』の意味合いを容易に看取

  させるから、本願商標を指定商品中『浴剤』に使用するときは、単に、商品

  の品質、用途を表示したものと理解されるに止まり、自他商品の識別標識と

  しての機能を有しないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3

  条第1項第3号に該当し、『浴剤』以外の商品に使用するときは、商品の品

  質の誤認を生じさせるおそれがあるので、商標法第4条第1項第16号に該

  当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

  3 当審の判断

   本願商標は、前記のとおり「ToningBath」の欧文字と「トーニ

  ングバス」の片仮名文字とを二段に書してなるところ、構成中前半部の「T

  oning」(トーニング)の文字(語)が、たとえ、「活力を与える(こ

  と)」(小学館ランダムハウス英和大辞典(第2版第7刷)「tone」の

  項参照。株式会社小学館発行)の意味を有し、後半部の「Bath」(バス

  )の文字(語)が、「浴室」(小学館ランダムハウス英和大辞典(第2版第

  7刷)株式会社小学館発行)を意味するものであるとしても、これらを結合

  して一連に表した本願商標は、原審説示のような意味合いを認識させるもの

  ではなく、特定の商品の品質、用途を、直接的、かつ、具体的に表したもの

  とはいえないものである。

   また、当審において、職権をもって調査したが、「ToningBath

  」及び「トーニングバス」の文字が、本願の指定商品を取り扱う業界におい

  て、商品の品質、用途を表示するものとして、普通に使用されている事実を

  見出すことができなかった。

   してみると、本願商標は、全体として特定の観念を生じない造語を表した

  ものと認識されるものであるから、これをその指定商品に使用しても、自他

  商品の識別標識としての機能を十分に果たし得るものであり、また、商品の

  品質について誤認を生じさせるおそれもないものである。

   したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び第4条第1項第1

  6号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当でなく、取消しを免れ

  ない。

   その他、政令で定める期間内に本願について拒絶をすべき理由を発見しな

  い。

   よって、結論のとおり審決する。

        平成17年 6月28日

                 審判長  特許庁審判官 野本  登美男

                      特許庁審判官 三澤  惠美子

                      特許庁審判官 和田  恵美

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ケース70 本願商標:「ADSYS」×引用商標:「ハドシス」「HADSYS」ほか

1.出願番号  商願2003-29119(拒絶査定に対する審判事件)

        ( 不服2004-1233

2.商  標   「ADSYS」

3.商品区分  第9類:電子計算機用プログラム ほか

4.適用条文    商標法第4条第1項第11号

5.拒絶理由  「ADSYS」は「ハドシス」や「HADSYS」に類似する。

6.審判における反論(請求の理由)

  【手続の経緯】

 出     願       平成15年 4月10日

 拒絶理由の通知       平成15年 9月 2日

     同 発送日       平成15年 9月 4日

  意  見  書        平成15年 9月19日

  拒 絶 査 定        平成15年12月17日

   同 謄本送達       平成15年12月19日

  【拒絶査定の要点】

  原査定は、『この商標登録出願は、平成15年 9月 2日付けで通知した理由によって、拒絶をすべきものと認めます。なお、出願人は、意見書において種々述べていますが、本願商標から「アドシス」、引用各商標から「ハドシス」の称呼が生じるものです。そこで、両称呼を比較すると、両者は、4音中3音を共通にし、異なるところは、語頭における「ア」と「ハ」の音にありますが、「ハ(ha)」の子音「h」は、無声摩擦音で比較的弱く発音され、母音「a」に吸収されて「ア」音に近似したものとなり、両称呼を一連に称呼するときには、語調語感が近似し、互いに聴別しがたいものと認めます。したがって、本願商標は、引用各商標と称呼上類似の商標であり、かつ本願商標の指定商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品を含有するものですから、さきの認定を覆すことはできません。また、出願人の添付の既登録例は、本件とは事案を異にしますから、それをもって本件の判断基準となすことは必ずしも適切ではありませんから、その主張は採用できません。』というものであります。

  【本願商標が登録されるべき理由】

  然るに、本出願人は、先の意見書において、本願商標は、引用各商標と外観・称呼及び観念のいずれにおいても紛れることのない非類似の商標である旨、過去の既登録例を交えて主張したにもかかわらず、今般このような認定をされたことに関しては納得できないところがあり、ここに審判を請求し再度の御審理を願う次第であります。

 (a)本願商標の構成

  本願商標は、願書の商標登録を受けようとする商標に表示したとおり、欧文字で「ADSYS」と書した態様からなり、指定商品を第9類「写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,電気通信機械器具,電子計算機用プログラム,その他の電子応用機械器具及びその部品,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物」とするものであります。

 (b)引用商標の構成

 先の意見書で引用された引用商標(8件)は、以下の通りであります。

  1 登録第2604543号(商公平 5-018055)「ハドシス」              24

 2 登録第2614396号(商公平 5-027317)「株式会社ハドシス」      10

 3 登録第2614397号(商公平 5-027318)「HADSYS Inc.」 10

 4 登録第2641007号(商公平 5-058748)「株式会社ハドシス」      11

 5 登録第2641008号(商公平 5-058749)「HADSYS Inc.」 11

 6 登録第2657787号(商公平 5-078049)「図形+HADSYS」    10

 7 登録第2657789号(商公平 5-078051)「図形+HADSYS」    10

 8 登録第2701273号(商公平 6-015813)「図形+HADSYS」    11

 (c)審査官の認定に対する反論

  審査官は、これら1~8を引用し、本願商標「ADSYS」は、引用各商標と称呼上類似の商標であり、かつ本願商標の指定商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品を含有するものであるから、登録できないと認定しております。

 しかしながら、本出願人は、本願商標とこれら各引用商標とは、外観・観念上は勿論、称呼上も紛れることのない非類似の商標であると考えます。

 (c-1) まず、本願商標は、上述のように、同書・同大・同間隔の欧文字で「ADSYS」と一連に書した態様から成るものでありますので、これより「アドシス」の称呼を生じるものと思います。

 これに対し、引用各商標は、審査官の指摘するように、上記態様の「ハドシス」ないし「HADSYS」の部分より、いずれも「ハドシス」の称呼を生じるものと思います。

 審査官は、本願商標の称呼「アドシス」と引用各商標の称呼「ハドシス」とは、「ア」と「ハ」の1音相違しかないため、両者は称呼上紛らわしいと判断しておりますが、全体が長い称呼であればまだしも、4音という短い音構成からなる商標同士の比較において、1音の違いは決して小さな差異ではないと考えます。しかも、その相違する音の位置が、取引者・需要者をしてもっとも注意を引きやすい語頭音における差異であり、さらには、この語頭音はこれら両商標を自然に称呼して分かるとおり、アクセントのある位置、即ち強く発音される音となっております。

  したがって、これら両商標は、称呼上彼此混同を起こすようなことはなく、互いに非類似の商標であると考えます。

 (c-2) 審査官は、拒絶理由通知書の中で“4音中3音を共通にし”として、如何にも差異はわずかであるかの如き言い回しをしておりますが、わずか4音という短い音構成にあって、語頭のしかも強く発音される1音の相違は決して小さな相違ではないと考えます。

 また、審査官は、“異なるところは、語頭における「ア」と「ハ」の音にありますが、「ハ(ha)」の子音「h」は、無声摩擦音で比較的弱く発音され、母音「a」に吸収されて「ア」音に近似したものとなり、両称呼を一連に称呼するときには、語調語感が近似し、互いに聴別しがたい”としておりますが、そうともいえないと思います。

 意見書でも述べたように、両者は、母音(a)を共通にするものの、本願商標語頭音の「ア」は共鳴の形の開放音ではっきり澄んだ音であるのに対し、引用商標語頭音の「ハ」は声帯を半開きにして出す摩擦音で官能的感覚の丸い音であり、音感音質を異にするものと考えます。

 なお、引例の「ハドシス」、「HADSYS」は、権利者の社名(株式会社ハドシス)の略称であり、いわばハウスマーク的なものでありますので、この指定商品を扱う取引者・需用者が、「ハ」と「ア」を発声し間違えたり、聞き間違えたりするとは到底思えません。

 以上のような状況を総合的に考察すると、取引者・需用者間において、本願商標「アドシス」と引用商標「ハドシス」とは、称呼上彼此混同を起こすことのない非類似の商標であると考えます。

 (c-3) そして、このことは、過去の商標登録例をみても言えることであります。

 即ち、過去の商標登録例をみると、例えば、以下(A)、(B)の登録商標が併存しております。

 (A)登録第2252706号の1「AdSis」 S34年法第9類   …第1号証

                           株式会社アライヘルメット

 (B)登録第2711395号 「HADSYS」 S34年法第9類   …第2号証

                       株式会社ハドシス

  これらの商標は、共に昭和34年法第9類の商品を指定するもので互いに同一又は類似の商品を含んでおりますが、前者(A)の称呼が「アドシス」であるのに対し、後者(B)の称呼が「ハドシス」であるにもかかわらず、互いに類似と判断されることなく、それぞれ別法人により登録されております。

 然るに、同じ称呼の関係にある本願商標「アドシス」と引用各商標「ハドシス」が併存できないとされる謂われはありません。

 先願にかかる(A)登録第2252706号の1「AdSis」(第1号証)の存在にも拘わらず、後願に係る(B)登録第2711395号「HADSYS」(第2号証)が登録されたのと同様に、先願にかかる引用商標「ハドシス」、「株式会社ハドシス」、「HADSYS Inc.」、「図形+HADSYS」が存在したとしても、本願商標「ADSYS」は当然に登録されて然るべきであります。

  この点に関して、審査官は、拒絶査定の中で“出願人の添付の既登録例は、本件とは事案を異にしますから、それをもって本件の判断基準となすことは必ずしも適切ではありません”としておりますが、全く別の称呼を生ずる商標同士を引き合いに出したわけではありません。これら併存登録商標の称呼は、「アドシス」と「ハドシス」であることは誰の目にも明らかであり、本願商標の称呼「アドシス」と審査官が引用した商標の称呼「ハドシス」と全く同じ関係であります。これを登録した審査官は、1音相違であっても、本出願人が主張したような点、即ち「全体が短い音構成であること」,「相違音は語頭音でしかも強音であること」,「相違音は澄んだ音と摩擦音の違があること」等々を十分に配慮して類否判断を行い、非類似の結論を出したものと思います。それ故、この既登録例の存在が本願商標を審査する上で全く参考にならない訳がないと考えます。その様なことを言ったのでは、何のための商標審査か分かりません。今までの審査実務に束縛されることはないにしても、それなりの理由があって、これらの既登録例が存在しているわけですから、この事実を全く参考にならないとして無視するのはどうかと思います。全く考慮することがないとしたら、それは商標の審査を自ら否定するようなものであると考えます。

  【むすび】

 以上の次第でありますので、本願商標と引用各商標とは、外観および観念上類似しないことは勿論、称呼上も、短い音構成の語頭音における共鳴の形の開放音ではっきり澄んだ強音の「ア」と、声帯を半開きにして出す摩擦音の丸い音の強音である「ハ」の違いによって、語感語調を異にし、聴者をして決して紛れることはないものと思料します。

 それ故、本願商標と引用商標1~8とは非類似の商標であり、本願商標は商標法第4条第1項第11号の規定に該当するものではないと考えます。

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(参考)ケース70の「審決」

不服2004- 1233

   商願2003-29119拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審

  決する。

 結 論

   原査定を取り消す。

   本願商標は、登録すべきものとする。

 理 由

  1 本願商標

   本願商標は、「ADSYS」の欧文字を書してなり、第9類に属する願書

  記載のとおりの商品を指定商品として、平成15年4月10日に登録出願さ

  れたものである。

  2 引用商標

   原査定において、本願商標の拒絶の理由に引用した登録第2604543

  号商標(第24類)は、「ハドシス」の文字を書してなるものである。同じ

  く、登録第2614396号商標(第10類)及び登録第2641007号

  商標(第11類)は、「株式会社ハドシス」の文字を書してなるものである

  。同じく、登録第2614397号商標(第10類)、登録第264100

  8号商標(第11類)、登録第2657787号商標(第10類)、登録第

  2657789号商標(第10類)及び登録第2701273号商標(第1

  1類)は、別掲のとおりの構成よりなるものである。

  3 当審の判断

   原査定で引用の登録第2604543号商標、登録第2614396号商

  標、登録第2614397号商標、登録第2641007号商標、登録第2

  641008号商標、登録第2657787号商標及び登録第265778

  9号商標の商標権は、商標登録原簿の記載によれば、存続期間満了により、

  いずれも商標権の抹消の登録がなされているものである。したがって、これ

  らの引用商標を根拠とする拒絶の理由は解消した。

   つぎに、原査定で引用の登録第2701273号商標(以下「引用商標」

  という。)は、前記のとおりの構成よりなるところ、その構成中「HADS

  YS」の文字は、他の文字に比してひときわ顕著に表されており、図形部分

  とも構成上独立して看取されるものであるから、該文字部分のみも独立して

  自他商品の識別機能を有するものといわなければならない。

   してみると、引用商標からは、その構成中の「HADSYS」の文字部分

  に相応して「ハドシス」の称呼をも生ずるものである。

   一方、本願商標は、前記のとおりの構成よりなるところ、その構成文字に

  相応して「アドシス」の称呼を生ずるものと認められる。

   そこで、本願商標より生ずる「アドシス」の称呼と引用商標より生ずる「

  ハドシス」の称呼を比較すると、両称呼は、称呼における識別上重要な要素

  をしめる語頭にあって、「ア」と「ハ」の音質を異にして明瞭に聴取し得る

  音の差異を有するものであるから、この差異が両称呼全体に及ぼす影響は大

  きく、それぞれを一連に称呼した場合には、語調語感が異なるものとなって

  十分に聴別し得るものといわなければならない。

   また、本願商標と引用商標とは、外観においては、前記のとおりの構成よ

  りなるものであるから、明らかに区別し得るものであり、観念についても、

  特定の観念を生じない造語であるから、比較すべくもないものである。

   してみれば、本願商標と引用商標とは、外観、称呼、観念のいずれにおい

  ても非類似の商標といわざるを得ない。

   したがって、本願商標を商標法第4条第1項第11号に該当するとして拒

  絶した原査定は妥当でなく、取消しを免れない。

   その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。

   よって、結論のとおり審決する。

      平成17年 9月 1日

                 審判長  特許庁審判官 小林  

                      特許庁審判官 寺光  幸子

                      特許庁審判官 井出  英一郎

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これらは、全てこの意見書により審査官の考えを変えさせ、あるいは審判請求により登録にもっていったケースです。

  審査官も考え違いをしている場合がありますし、取引の実情から全く懸け離れたような判断を下す場合もあります。

 従って、納得できなければこのように積極的に反論すべきです。審査官も正当な理由があると認めれば(「なるほどな」と思わせれば)、考えを改めるはずです。                                      

 なお、この中には審判のケース、即ち、審査官の認定は不当であったとして審判官がその判断を覆し、登録を認めたケースも多数含まれています。

                      2018-2-16 S.Ogawa

 

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