商標の拒絶理由通知に対する反論(意見書等)の具体例

◆意見書対応の重要性◆

-商標の中途受任引き受けます!

難しそうな案件でも、是非登録しておきたいという思い入れのある商標は、登録の可能性が少しでもありそうなら、きちんと反論しましょう。登録になることが結構あります。

特許庁から拒絶理由通知をもらうと、ああダメなんだと直ぐにあきらめていませんか。

おかしいなと思ったら、積極的に意見書を提出して反論すべきです。審査官を説得すれば登録してくれます。

 

ここに挙げたものは、私が実務において、特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、具体的に反論した「意見書、審判請求書」の具体例です。何の訂正もない、生のものです。

 指定商品又は指定役務の限定補正により登録になったケースというのは勿論沢山ありますが、ここに挙げたものは、補正をすることなく、意見書や審判での主張で審査官等の考えを覆したケースです。今回は、ケース76~80の5件を紹介します。

             2018-07-06 S.Ogawa

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  ケースNO.          目     次               適用条文

ケース76:本願商標「N NAKANO」×「n Nakano」…4①11

ケース77:本願商標「初摘みコーヒー/TOARCO TRAJA FIRST CROP」

           ×「FIRST CROP」 ……4①11

ケース78:本願商標「Assam Sales & Distribution Modulu」9類                        ……審判3①3,4①16

ケース79:本願商標「KEY COFFEE スウィートセレクション」30類、32類          ×「図形+Sweet Selection」 ……審判4①11

ケース80:本願商標「KEY COFFEE 通販倶楽部」30類、35類

           ×「通販倶楽部」 ……4①11

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◎ケース76 本願商標「N NAKANO」×引用商標「n Nakano

1.出願番号  商願2005-81773

2.商  標   「N NAKANO」×「n Nakano」

3.商品区分  第20類  ショーケース及びその他の陳列棚…ほか

4.適用条文    商標法第4条第1項第11号

5.拒絶理由  類似する(「NAKANO」「Nakano」の文字を共通にする)

6.意見書における反論

【意見の内容】

(1) 拒絶理由通知書において、審査官殿は、本願商標は

 1.登録第1371846号(商公昭53-003014)の商標(引用商標1)、

 2.登録第1558535号(商公昭57-015291)の商標(引用商標2)、

 3.登録第2032637号(商公昭62-064815)の商標(引用商標3)及び

 4.登録第4757967号(商願2003-041814)の商標(引用商標4)と、

同一又は類似であって、その商標に係る指定商品と同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当し、登録することはできないと認定された。

 しかしながら、本出願人は、本願商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても紛れることのない非類似の商標であると思料しますので、前記認定には承服できず、以下に意見を申し述べます。

(2) 本願商標は、願書の商標見本からも明らかなように、「Nを図案化した中に機械部品と覚しき図柄を組み込んだ図形部分」とその右側に配した「Nakanoの欧文字部分」とからなるものでありますが、引用商標1~4はいずれも「手書き風に大書したnらしき欧文字」とその下に配した「NAKANOの白抜き欧文字」とからなる商標を含んでなるものであります。

 然るに、審査官殿は、本願商標と引用各商標とは、「Nakano」「NAKANO」の文字及び「ナカノ」の称呼を共通にする商標であるから、互いに類似すると認定し、今般の拒絶理由通知を発したのだと推察いたしますが、この「Nakano/NAKANO」の部分は、日本国内に数多く存在する「ありふれた氏」である「中野」を単に欧文字表記したものであり、それ自体、自他商品識別力を発揮する言葉ではないと考えます。つまり、「NAKANO」「Nakano」の部分からたとえ「ナカノ」の称呼が生じたとしても(称呼自体は識別力のない部分からも生じ得る)、この部分は商標の要部ではなく、自他商品識別機能を発揮しない部分でありますので、この部分の称呼を商取引に際して識別のために用いることはありません。したがって、識別力を生じないこの部分を捉えて、類否判断の基礎とした今般の判断は、妥当性を欠くものと思料いたします。類否判断の対象とならない部分「Nakano/NAKANO」を、類否判断の目安とすることはできません。審査官殿の認定は、誤った商標の要部認定に基づくものであり、到底受け入れることはできません。繰り返しますが、商標の要部でない言葉をとらえ、その部分を抽出して称呼するという手法は、商標の要部認定を誤ったもので到底受け入れることはできません。

 そして、本願商標と引用商標1~4とは、この要部となり得ない「Nakano/NAKANO」の文字部分を除いては、互いに特異な外観を有しますし、看者の受ける印象も大きく異なるものと思いますので、両者は決して類似するものではありません。

(3) そして、このことは、以下の事実からも明らかであります。

 即ち、例えば、中野製薬株式会社所有の今般の引用商標2(登録第1558535号)は、昭和52年10月6日に出願、昭和57年12月24日に商標登録されたものでありますが、実は本出願人は、この引用商標2の出願よりも10年近くも前の昭和43年12月26日に、既に現在の本願商標とほぼ同一の商標を出願し(商願昭43-92857)、商標登録第933999号(昭和46年10月26日登録:第1号証)としてに商標登録を受けております。つまり、本願商標とほぼ同じ商標について、本出願人は既に37年も前に商標登録を受けておりますが、その存在があるにも拘わらず、その後願に係り且つ指定商品もほぼ同一の引用商標2が登録を受けているわけであります。これは本出願人の前記37年前の登録商標と今般の引用商標2とは、互いに類似しないと判断されているからこそ併存されたものであり、これがもし今般の審査官殿のような判断をし、互いに類似の関係にあるとされた場合には、引用商標2の存在そのものが怪しいということになります。

 しかし、現実には本願商標とほぼ同一の商標(第933999号)と引用商標2(登録第1558535号)とは、23年以上も併存しているわけであり、これは両者が類似しないことの何よりの証左であります。

(4) 以上の次第でありますので、本願商標は、引用商標1~4と紛れることのない非類似の商標であり、十分登録適格性を有するものと確信いたします。

 

ケース77 本願商標「初摘みコーヒー/TOARCO TORAJA/FIRST CROP×引用商標植物の図形+FIRST CROP」30

1.出願番号  商願2003-107347(拒絶査定に対する審判事件)

        ( 不服2005-3975)

2.商  標   「初摘みコーヒー/TOARCO TORAJA/FIRST CROP」

3.商品区分  第30類:トラジャ産のコーヒー

4.適用条文    商標法第4条第1項第11号

5.拒絶理由  ファーストクロップの称呼を共通にする類似の商標である。

6.審判における反論(請求の理由)

  【手続の経緯】

 出     願      平成15年12月 3日

 拒絶理由の通知    平成16年 6月18日

     同 発送日    平成16年 6月21日

 出願人名義変更届      平成16年 7月27日

 (東食と共願)

 意  見  書     平成16年 7月29日

 拒 絶 査 定     平成17年 2月 2日

  同 謄本送達      平成17年 2月 7日

  【拒絶査定の要点】

 原査定は、“この商標登録出願は、平成16年6月18日付けで通知した理由によって、拒絶をすべきものと認めます。なお、出願人は、意見書を提出して種々述べていますが、本願商標は「初摘みコーヒー」、図形を挟んでなる「TOARCO TORAJA」及び「FIRST CROP」の文字よりなるものですが、これよりはその商標全体より判断して、その構成中にある「FIRST CROP」の文字より「ファーストクロップ」の称呼をも生じるものと判断するのが相当と認められます。他方、引用に係る商標登録第4199999号商標及び同第4207716号商標からは「ファーストクロップ」の称呼が生ずるものと認められます。そうとすると、本願商標と各引用商標は称呼上類似の商標と判断するのが相当であり、本願商標の指定商品中には各引用商標の指定商品と同一又は類似の商品が含まれているものですから、先の認定を覆すことはできません。”というものであります。

  【本願商標が登録されるべき理由】

 然るに、本出願人は、意見書において、本願商標構成中の「FIRST CROP」は「その年の最初に収穫したトラジャ産コーヒー豆を原料とするコーヒー」を表すためのもので、いわば「初摘み」(即ち、その年の最初に収穫したコーヒー豆)を意味する文字であり、この「FIRST CROP」に識別標識としての機能はない旨述べたにも拘わらず、かかる認定をされたことに対しては、納得できないところがあり、ここに再度ご審理頂きたく、審判を請求する次第であります。

(a)本願商標の構成

 本願商標は、願書の商標登録を受けようとする商標に表示したとおり、大きく横書きした「初摘みコーヒー」の文字を最上段に配置し、その下に「TOARCO TORAJA(+家の図形)」を横書きし、更にその下に「FIRST CROP」と横書きして、全体を三段に構成したもので、第30類「トラジャ産のコーヒー」を指定商品とするものであります。

(b)引用商標の構成

 これに対し、今般の拒絶査定における引用商標は、以下の2件であります。

 1)商標登録第4199999号商標(第1引用例)

 この第1引用例の商標は、「植物の図形」と「FIRST CROP」の欧文字から構成され、第30類「コーヒー及びココア,茶」を指定商品とするものであります。

 2)商標登録第4207716号商標(第2引用商標)

 この第2引用例の商標は、「FIRST CROP」の欧文字から構成され、同じく第30類「コーヒー及びココア,茶」を指定商品とするものであります。

(c)審査官の認定に対する反論

(c-1) 審査官の認定によれば、まず、本願商標は「初摘みコーヒー」、図形を挟んでなる「TOARCO TORAJA」及び「FIRST CROP」の文字よりなるものであるが、これよりはその商標全体より判断して、その構成中にある「FIRST CROP」の文字より「ファーストクロップ」の称呼をも生じるとしております。

 しかしながら、本願商標から、「ファーストクロップ」の称呼が生じることはないと思料します。本願商標の「FIRST CROP」の文字は、「その年の最初に収穫したトラジャ産コーヒー豆を原料とするコーヒー」を表すためのもので、いわば「初摘み」(即ち、その年の最初に収穫したコーヒー豆)を表す品質表示的な英文字表記だからです。

 つまり、本願商標は「初摘みのトラジャ産コーヒー豆を原料とするコーヒー」であることをイメージし、それを強調した商標であって、「FIRST CROP」はまさにこの「初摘み」という品質・原材料を普通に英語表記したものであります。それ故、ここに識別標識としての機能はありません(何ら識別力は生じません)。この「FIRST CROP」は、単に「今年最初の収穫に係るコーヒー豆を用いたコーヒー」という品質を認識させるだけのものであります。

 そして、自他商品識別機能を有する本願商標の要部は、大書した「初摘みコーヒー」と言う奇抜な表記の仕方と共に「TOARCO TORAJA+家の図形」の部分(特に、この「TOARCO」と「家の図形」部分)にこそ存在するものと思料します。

 つまり、本願商標「初摘みコーヒー/TOARCO TORAJA(+家の図形)/FIRST CROP」中の、少なくとも「FIRST CROP」の文字部分は「今年最初の収穫に係るコーヒー豆」を表すにすぎない品質・原材料表示であって識別力は生じませんので、本願商標構成中の「FIRST CROP」の文字部分より、「ファーストクロップ」の称呼が生じることはありません。識別力のない部分のみを捉えて称呼し取引することはあり得ないからです。この意味で、本願商標より「ファーストクロップ」の称呼が生じるとした審査官の判断は誤りであります。

(c-2) 次に、審査官は、2つの引用商標に関して、「FIRST CROP」の文字部分より「ファーストクロップ」の称呼が生ずるとしております。

 しかしながら、前述したように、「FIRST CROP」の文字は、単なる商品の品質・原材料表示にすぎないと考えますので、この部分から単独の「ファーストクロップ」の称呼は生じないものと思料します。然るに、第2引用例の欧文字のみからなる「FIRST CROP」は、誤って登録されたものと思料しますし、また、第1引用例は、植物の図形部分があるからこそ識別力が認められ登録されたものと思料します。

 このように、両引用例に共通する「FIRST CROP」の文字は、コーヒーなどの指定商品との関係にあって単に品質を表示するに過ぎない用語でありますので、商品識別のために、その「FIRST CROP」の部分のみを捉えて称呼し取引することは無いものと思料します。識別力のない部分を称呼して取引しても、何の商品か把握できず、互いに識別できないからであります。それ故、「FIRST CROP」の部分が共通するといっても本願商標と両引用商標とは商標的に類似するものではありません。両商標は互いに紛れることのない非類似の商標であります。

(c-3) そして、この「ファーストクロップ」「FIRST CROP」の文字が品質をあらわす文字であることは、多数の使用例からも理解できます。即ち、たとえば、Yahoo!JAPANなどのインターネット検索エンジンで検索してみると、例えば、以下のような、品質・原材料表示としての使用が多くなされています。

 このことは、この「ファーストクロップ」を商標として用いても、需要者が何人かの業務に係る商品であるかを認識することが出来ない、即ち、自他商品識別標識として機能しない(識別力がない)ことを意味します。

 そして、この使用例としては、以下のようなものがあります。

(a)「…クリーミーな中ほのかな苦味も健在の本格カフェオレ風。飲んだ瞬間から口の中に広がるコーヒーの香りが良く飲みごたえがある。牛乳60%使用。ブラジルで収穫期最初に摘まれたファースト・クロップを厳選使用…」(飲物情報缶>飲み物データベース>ハ行)。…第1号証

(b)「プルカル購入に当たっては細心の注意を払い、ファーストクロップはシアトルズベストに渡し、2回目の良さそうな1ロットをおさえ、ガテマラの雨期前に出航手配した。…ガテマラは、古くからの優良農園……。長い取り引きの信頼関係がガテマラのコーヒー取り引きの歴史であり、…」(生豆の販売)…第2号証とか、

(c)「ファーストクロップ:初摘みの紅茶、清々しいこの季節に頂きたい紅茶です。」(ちょっとブレイク)。…第3号証

(d)「ブラジル手摘み完熟豆 WIND DRY … ブラジル手摘み完熟豆 WIND DRY(棚干し)フルシティロースト(やや深煎り)今回ご紹介するこの豆は、ブラジルのファーストクロップです。この農園の2003年一番摘みです。 ワインで言えばボジョレーヌーボー …」(豆珈房)。

(e)「ブラジル2003年一番摘みのコーヒーが入荷しました。……ほんとに採れたてで、かなり青いので、今回深めに仕上げました。それでも、ファースト・クロップのフレッシュさがよく出ていますので、是非一度お試し下さいね。……」(豆珈房通信)。…第4号証

(f)「(コーンに関し)…02/03クロップでは同CONABの予想では37百万トンとなって増産体制ではあるが新穀(ファーストクロップ)が出回り始めるのは来年2月以降となる。…」「週明けまではセカンドクロップ・コーンの収穫、ファーストクロップ・コーン、大豆の作付けとも改善していく。」(トーメン穀物相場情報)。…第5号証

(g)「…をお楽しみください。4月初旬入荷予定です。ブルーマウンテン ファーストクロップ(初摘みコーヒー)100g \1,680 …」 Copyright (C) 2004tsukashin. All right reserved.(グルメSHOPガイド)。

(h)「 来ました、来ました。遂に今日!

待ち侘びてた『ファースト・クロップ』が届きましたよ!イェー!

・・・さっそく飲んでみようっ。・・・・・・・・・・・・苦い。

あれれ?香りも酸味も、フルーティなのに・・・何故に?

煎りの浅い豆と同じ甘酸っぱい味と、炭焼きみたいな微かな苦味がいっしょにあるって・・・なんか面白いなぁ(笑)。

ブレンドじゃあないよな、最初に甘味がきて、その後、後味がほろ苦い。やっぱり豆が新鮮だと違うもんなんだねぇ~。

ファースト・クロップ』ってのは、その年最初にとれた完熟の豆を現地で精製して空輸でお届け、ってシロモンなんだけどね

普通の豆とどう違う?と聞かれると困るくらいの微妙な違いだな、強いて云うなら値段が違うくらい(笑)。

…コーヒー大好きなんだ、私(笑)。」(雑貨のページ)…第6号証などであります。

 このように、コーヒー関係で「ファーストクロップ」と言えば、「収穫期に最初に摘まれたコーヒー豆」を意味し、商品の品質・原材料を表すものでありますので、この「ファーストクロップ」「FIRST CROP」が、識別標識として機能するとは思えないと共に、そのような品質等を表示するにすぎない用語に独占権を認めるべきではないと考えます。

(c-4) そして、本出願人のキーコーヒー株式会社は、この「初摘みのトラジャ産コーヒー豆」を「トアルコトラジャ・ファーストクロップ(初摘み)」として、今から14年前の1991年頃より販売を開始して現在に至っており、その販売状況は、以下の通りであります。

 「トアルコトラジャ・ファーストクロップ販売状況」

発売年  限定数     価 格  内容量    備 考

1991年豆 2,000セット   10,000円 500g×2   サダン織テーブルクロス付

1992年豆 2,000セット   10,000円 200g×2   オリジナルカップ付

1993年豆 2,000セット   10,000円 200g×2   オリジナルカップ付

1994年豆 2,000セット    8,000円 200g×2   オリジナルカップ付

1995年豆 2,500セット   10,000円 200g×2   オリジナルカップ付

1996年豆 2,500セット   10,000円 200g×2   オリジナルカップ付

1997年豆 2,500セット   10,000円 200g×2   オリジナルカップ付

1998年豆 3,000セット    8,000円 200g×2   ビロード袋入り

1999年豆 4,000セット    8,000円 200g×2   ビロード袋入り

2000年豆 5,000セット    8,000円 200g×2   ビロード袋入り

2001年豆 5,000セット    8,000円 200g×2   ビロード袋入り

2002年豆 4,000セット    8,000円 200g×2   ビロード袋入り

    DO 5,000セット    6,000円 8g×10P×4

2003年豆 5,000セット    8,000円 200g×2   ビロード袋入り

    DO 3,500セット    5,000円 8g×8P×4

2004年豆 5,000セット    8,000円 200g×2   ビロード袋入り

    DO 3,500セット    5,000円 8g×8P×4

 然るに、本出願人は、「トアルコトラジャ・ファーストクロップ(初摘み)」の使用によって、需要者が引用商標の商品と間違えて購入してしまったとか、品質の誤認が生じたとか言うようなクレームは、今日に至るまでも全く受けておりませんし、引用商標の権利者からも、上記14年間の「ファーストクロップ」「FIRST CROP」の使用に関して、何らのクレームも受けておりません。

 これは、「ファーストクロップ」「FIRST CROP」が商品の品質・原材料表示にすぎず、自他商品識別標識としては機能していないことの、何よりの証左であります。

  【むすび】

 以上のように、本願商標と引用商標とで共通する「FIRST CROP」の部分は、「初摘み」ないし「初摘みのコーヒー豆」というような意味合いの言葉であって、指定商品との関係で識別力のない言葉であると思料しますし、本願商標と引用商標とは他の部分である商標の要部に共通するところはなく、むしろ全く異なったものでありますので、両者は十分に識別できるものと思料します。

 それ故、本願商標と引用商標とは非類似の商標であり、本願商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものではないと考えます。

 よって、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しないものと思料しますので、請求の主旨の通り、原査定を取り消す、本願の商標は登録をすべきものである、との審決を求める次第であります。

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(参考)ケース77の「審決」

不服2005- 3975

   商願2003-107347拒絶査定不服審判事件について、次のとおり

  審決する。

 結 論

   原査定を取り消す。

   本願商標は、登録すべきものとする。

 理 由

  1 本願商標

   本願商標は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、第30類「トラジャ産

  のコーヒー」を指定商品として、平成15年12月3日に登録出願されたも

  のである。

  2 引用商標

   原査定において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとし

  て、本願の拒絶理由に引用した登録商標は、以下の(1)及び(2)のとお

  りである。

  (1)登録第4199999号商標は、別掲(2)のとおりの構成よりなり

  、平成8年12月19日登録出願、第30類に属する「コーヒー及びココア

  ,茶」を指定商品として、同10年10月16日設定登録されたものである。

  (2)登録第4207716号商標は、「FIRST CROP」の欧文字

  よりなり、平成8年12月19日登録出願、第30類に属する「コーヒー及

  びココア,茶」を指定商品として、同10年11月6日設定登録されたもの

  である。

  (以下、(1)及び(2)を一括して、「引用商標」という。)

  3 当審の判断

   本願商標は、別掲(1)のとおりの構成よりなるところ、本願商標中の「

  FIRST CROP」(the first crop)の文字(語)は

  、「初物」の意味を有する英語である(「研究社 新和英大辞典」2120

  頁、株式会社研究社2003年7月発行)。

   そして、本願商標に係る指定商品を取り扱う業界において、「FIRST

   CROP」の文字(語)及びその表音表記である「ファーストクロップ」

  の語が上記の意味を有する語として使用されている、以下の(1)ないし(

  3)の事実が認められる。

  (1)「缶缶辞典」のウエブサイトの「パラダイスマウンテン100%コー

  ヒー」の項(http://www.cancanziten.com/?can=1845)において、「FIR

  ST CROP(ファーストクロップとは?) 収穫期の最初の一週間に摘

  まれた豆で、・・・(後略)・・・。」の記載がある。

  (2)「飲物情報缶」のウエブサイトの「飲み物データーベース>ハ行」の

  項(http://drink.vis.ne.jp/nomimono_flame.htm)において「PASSO

   PRESSO 初摘みコーヒーカフェラッテ 甘みは標準・・・(中略)

  ・・・「ブラジルで収穫期最初に摘まれたファースト・クロップを厳選使用

  ・・・(後略)・・・」」の記載がある。

  (3)「サンエバー株式会社」のウエブサイトの「RSW農園ブルーマウン

  テン・ファーストクロップ(初摘み)を毎年入荷」の項(http://www.sunev

  er.co.jp/sunever/coffee.php)において「毎年、一番に収穫された初摘み

  のコーヒーは世界でもごくわずかなファンしか味わえない逸品です。」の記

  載がある。

   これらの事実よりすれば、本願商標中の「FIRST CROP」の文字

  の部分は、本願の指定商品との関係においては、その商品が「初物」である

  ことを表示するにすぎないものというべきであるから、自他商品識別標識と

  しての機能を有していないか、自他商品識別標識としての機能を有している

  としても、極めて弱いものであるというのが相当である。

   してみれば、本願商標からは、「ファーストクロップ」の称呼を生じない

  というべきでる。

   したがって、本願商標から「ファーストクロップ」の称呼をも生ずるとし

  、そのうえで、本願商標と引用商標とが称呼上類似するものであるとして、

  本願商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとした原査定は、取消し

  を免れない。

   その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。

   よって、結論のとおり審決する

        平成18年 5月 8日

                 審判長  特許庁審判官 高野  義三

                      特許庁審判官 井岡  賢一

                      特許庁審判官 岡田  美加

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ケース78 本願商標:「Assam Sales & Distribution Module」 ……3①3、4①16

1.出願番号  商願2004-25060(不服2005-1503)

2.商  標  「Assam Sales & Distribution Module」

3.商品区分  第9類:電子計算機用プログラムほか

4.適用条文    商標法第3条1項3号、第4条第1項第16号

5.拒絶理由 「例えば『アッサム州で販売・流通しているモジュール』等の意味合いを理解させるにとどまる。」

6.不服審判における反論(請求の理由)

  【手続の経緯】

 出     願      平成16年 3月17日

 拒絶理由の通知    平成16年 9月 8日

     同 発送日    平成16年 9月 9日

 意  見  書     平成16年10月 5日

 拒 絶 査 定     平成17年 1月 6日

  同 謄本送達      平成17年 1月12日

  【拒絶査定の要点】

 原査定は、“この商標登録出願は、平成16年9月8日付けで通知した理由によって、拒絶をすべきものと認めます。追って、出願人は意見書において種々述べていますが、先の認定を覆すことはできません。なお、出願人は登録例を挙げて種々主張していますが、その事例は商標の具体的構成において本願商標とは事案を異にしますから、本願商標については前記認定を相当とするもので、その主張は採用することができません。”というものであり、具体的には、平成16年9月8日付(発送日:平成16年9月9日)の拒絶理由通知書に示すとおり、

“この商標登録出願に係る商標は、インド東部の州である「Assam」の文字と、「販売」等の意味を有する欧文字の複数形「Sales」の文字、「and」を意味する「&」の記号と、「流通」等の意味を有する「Distribution」の文字と、「独立して扱えるソフトウェアやハードウェアのまとまり」の意味を有する「Module」の文字を「Assam Sales & Distribution Module」と普通に用いられる方法で書してなるところ、「imidas 2004(発行所 株式会社集英社)」の「インドのソフトウエア産業」という項目や、2004.5.4付 共同通信の「(略)インドのソフトウエア輸出は六年前に比べ約六倍の百億ドル規模に急増。世界のソフト市場の一大中心地となった。(略)」の記事より、インドはコンピュータソフトウエアの一大中心地であることが窺えます。そうしますと、本願商標はこれらより、例えば「アッサム州で販売・流通しているモジュール」等の意味合いを理解させるにとどまり、これを本願指定商品中上記文字に相応する商品に使用しても単に商品の産地、販売地、品質を表示するにすぎないものと認めます。したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがありますので、商標法第4条第1項第16号に該当します。”というものであります。

  【本願商標が登録されるべき理由】

 然るに、本出願人は、意見書において、本願商標は、単に商品の産地、販売地、品質を表示するものではなく、十分に自他商品識別力を発揮する商標であり、登録適格性を有する旨主張したにもかかわらず、かかる認定をされたことに対しては納得できないところがあり、ここに再度ご審理頂きたく、審判を請求する次第であります。

(a)本願商標の構成

 本願商標は、願書の商標登録を受けようとする商標に表示したとおり、英文字で一連に「Assam Sales & Distribution Module」と書した態様からなり、指定商品を第9類「自動販売機,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,電気通信機械器具,電子計算機用プログラム,その他の電子応用機械器具及びその部品,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物」とするものであります。

(b)審査官の認定に対する反論

(b-1)

 審査官によれば、本願商標は、その態様より、例えば「アッサム州で販売・流通しているモジュール」等の意味合いを理解させるにとどまり、これを本願指定商品中上記文字に相応する商品に使用しても単に商品の産地、販売地、品質を表示するにすぎないとしております。

 しかしながら、商標が単に商品の産地、販売地、品質を表示すると言えるためには、需要者又は取引者によって、当該指定商品が当該商標の表示する土地において生産され又は販売されているであろうと一般的に認識されることを要すると思われるところ、本願商標の「Assam Sales & Distribution Module」は、需要者又は取引者によって、「アッサム州で販売・流通しているモジュール」と一般に認識されることはないため、商品の産地、販売地、品質を表示するものではないと考えます。

 即ち、本願商標中の「Assam」部分は、審査官の認定の如く、インド東部の地名であり、また、インドはコンピュータソフトウエア産業において近年成長を遂げている国であることは事実でありましょう。しかし一方で、インドのアッサム地方といえば、世界的に著名な紅茶葉の産地であり、このことこそが一般に広く知られた事実ではないかと思います。この「Assam/アッサム」はインド北東部の州ですが、ここは中国、ブータン、ミャンマー、バングラディシュに周りを囲まれた山岳地帯が大半であるようです。そして、工業はといえば、せいぜい農産物加工、精油であって、最近では原油の産出で知られる地域という程度の認識であります。したがって、インドが近年コンピュータソフトウエア産業で成長を遂げている国であったとしても、そのことが直ちに「アッサム州」と結びつくものではありません。「アッサム州」はあくまでも、紅茶葉の産地として世界的に著名な地域名であって、決してソフトウェアで有名というのではありません。そうだとすれば、一般に、「アッサム」州といえば、需要者又は取引者は、「広大な紅茶葉の農園が数々広がる農園地帯(或いは山岳地帯)」を連想するものと思われます。

 これに対して、「コンピュータソフトウエア等のIT産業が盛んな地帯」を思い浮かべるとき、一般に需要者又は取引者が連想するのは、IT産業が時代の最先端を行く産業である点に鑑みても、むしろ農園地帯や山岳地帯とは正反対の、ハイテク企業の集結するいわゆる「都市部」、或いは米国シリコンバレーに代表されるような「IT関連企業集積地域」であります。

 然るに、一般的に、需要者又は取引者が、紅茶の著名な産地である「アッサム」或いは「Assam」の文字から、「コンピュータソフトウエアを販売・流通している地域の名称」と認識することはないと考えます。

 インドがソフトウエア産業において、一定の地位を占めている事実がある程度広く知られているとしても、アッサム州は紅茶葉の産地としてあまりにも有名であり、両者の周知度の差たるや著しく、「Assam」の文字から需要者・取引者が連想するものは、「有名な紅茶葉の産地」ではあっても、「ソフトウエア(IT)産業が盛んな地域」ではないと考えます。

(b-2)

 そして、このことは、例えば、本出願人が、同じく第9類を指定商品として、以下に示す「Assam」の文字を含む商標を多数登録している事実からも伺い知ることが出来ます(以下のA~K参照)。

(A)登録4173443 Assam Whois

(B)登録4209005 Assam Internet Applets

(C)登録4393720 Assam WebBench

(D)登録4573808 Assam WebGuard

(E)登録4609731 Assam HelpDesk/アッサムヘルプデスク

(F)登録4655383 Assam anyWarp

(G)登録4749066 Assam PortalTemplate

(H)登録4750800 Assam Reliability

(I)登録4756351 Assam Catalog Server

(J)登録4806601 Assam Messsaging Toolkit

(K)登録4806484 Assam Warehouse Module

 即ち、審査官の見解のように、「Assam」の文字が本願指定商品の属する分野において産地・販売地と認識されるのであれば、直接に「販売」や「流通」を意味する「Sales」や「Disutribution」等の文字の有無に関わらず、「Assam」の文字を有するだけで、直ちに商品の産地表示と認識されることになるでしょう。

 例えば(B)の「Assam InternetApplets」であれば「アッサム州で生産・販売されているインターネットアプレット(ブラウザ上で動作する特殊なプログラム)」程度の、(D)の「Assam WebGuard」は「アッサム州で生産・販売されているインターネットの監視ソフト」程度の、(G)の「Assam PortalTemplate」は「アッサム州で生産・販売されているインターネットの入り口サイトのテンプレート」程度の意味合いを生じることになります。また、(I)の「Assam CatalogServer」は「アッサム州で生産・販売されているカタログを管理するサーバー」程度の、(J)の「AssamMessagingToolkit」は「アッサム州で生産・販売されている伝達道具一式ソフト」程度の、(K)の「AssamWarehouseModule」は「アッサム州で生産・販売されている登録情報検索プログラム」程度の意味合いを生じるということになるのでしょう。

そして、そのような意味合いからすれば、審査官のような考え方をとれば、例えば、これら(B)、(D)、(G)、(I)、(J)、(K)などは単に指定商品の産地・販売地・品質表示ということになり、或いは拒絶と言うことになるのでありましょうが、現実にはその様な認定はなされず、これらの商標全てが登録されております。これは、これらの商標中の「Assam」の部分が、第9類の指定商品との関係にあって、その産地・販売地等と認識されていないからに他なりません。本願商標も同様でありましょう。

(b-3)

 商標が単に商品の産地、販売地、品質を表示すると言えるためには、上述のように、商標中に単に地名が含まれていることのみでは足りず、需要者又は取引者によって、当該指定商品が当該商標の表示する土地において生産され又は販売されているであろうと一般に認識されることを要すると考えます。たとえ商標中に地名が含まれている場合であっても、当該指定商品が当該商標の表示する土地において生産され、販売されていると認識されない場合には、当該商標は単にその商品の産地・販売地等を表示するものとは言えないと考えます。このことは、御庁の電子図書館において、指定商品の区分を問わず、地名を含む登録商標(他に要部となるような構成要素がない場合も含む)が多数存在することによっても裏付けられます。

 然るに、本願商標についても、上記(A)~(K)の登録商標ないし登録査定商標と同様に、商標中の紅茶で有名な地名表示部分である「Assam」部分をもって、ソフトウエア等の商品の産地等表示と理解されるようなことはないと考えます。つまり、世界的に著名な紅茶の産地であるアッサム州においてコンピュータソフトウエアが生産・販売・流通していると一般に認識されるようなことはないと考えます。

(b-4)

 本願商標は、本出願人が過去に取得した、上記(A)~(K)の登録商標である「Assam」シリーズの一貫として出願した商標であり、同じ商品を指定し、使用するものである以上、取引者・需要者を同じくするはずであります。その様な取引状況の中にあって、本願商標だけが格別に「アッサム州で販売・流通しているモジュール」と認識され、今までの「Assamシリーズ」とは別のものであるなどと、取引者・需要者が認識するはずはありません。同じ出願人が、同じ「Assam○○○」の商標を用いていて、何か今までの「Assamシリーズ」とは別の意味を持つ商標だなどと、誰が認識するでありましょうか。今までの上記(A)~(K)の「Assam」シリーズと同一のコンセプトに基づく仲間の商標と認識するのが自然でありましょう。本願商標は、上記(A)~(K)の登録商標と同様、指定商品との関係にあって、あくまでも全体として具体的な特定の観念を生じさることのない一つの造語商標であると考えます。これら(A)~(K)の商標が登録できて、本願商標が登録できないとされる謂われは全くありません。同様に登録されて然るべきであります。

  【むすび】

 以上の通りでありますので、本願商標は、商品の産地、販売地、品質を普通に用いられる方法で表示するものでも、商品の誤認を生じさせるものでもなく、十分に登録適格性を備えたものと思料します。

 よって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号にも、同第4条第1項第16号にも該当しないものと思料しますので、請求の主旨の通り、原査定を取り消す、本願の商標は登録をすべきものである、との審決を求める次第であります。

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(参考)ケース78の「審決」

 不服2005- 1503

  商願2004- 25060拒絶査定不服審判事件について、次のとおり

  審決する。

 結 論

   原査定を取り消す。

   本願商標は、登録すべきものとする。

 理 由

  1.本願商標

   本願商標は、「Assam Sales & Distribution

   Module」の文字を普通に用いられる方法で書してなり、第9類に属

  する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成16年3月17日に登

  録出願されたものである。

  2.原査定の拒絶の理由の要点

   原査定は、「本願商標は、インド東部の州である『Assam』の文字と

  、『販売』等の意味を有する欧文字の複数形『Sales』の文字、『an

  d』を意味する『&』の記号と、『流通』等の意味を有する『Distri

  bution』の文字と、『独立して扱えるソフトウェアやハードウェアの

  まとまり』の意味を有する『Module』の文字を『Assam Sal

  es & Distribution Module』と普通に用いられる

  方法で書してなるところ、『imidas 2004(発行所 株式会社集

  英社)』の『インドのソフトウエア産業』という項目や、2004.5.4付 共同

  通信の『(略)インドのソフトウエア輸出は六年前に比べ約六倍の百億ドル

  規模に急増。世界のソフト市場の一大中心地となった。(略)』の記事より

  、インドはコンピュータソフトウエアの一大中心地であることが窺える。そ

  うすると、本願商標はこれらより、例えば『アッサム州で販売・流通してい

  るモジュール』等の意味合いを理解させるにとどまり、これを本願指定商品

  中上記文字に相応する商品に使用しても単に商品の産地、販売地、品質を表

  示するにすぎないものと認められる。したがって、本願商標は、商標法第3

  条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品

  質の誤認を生じさせるおそれがあり、同法第4条第1項第16号に該当する

  。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

  3.当審の判断

   本願商標は、前記のとおり、「Assam Sales & Distr

  ibution Module」の文字よりなるところ、その構成中「As

  sam」の文字(語)は、紅茶の産地として知られていると認められる。

   そして、本願商標を構成する文字が、原審で示したそれぞれの意味を有す

  るものとしても、本願商標の全体の文字から原審説示の意味合いが直ちに理

  解されるとは認め難いところである。

   そして、本願の指定商品において、「Assam Sales & Di

  stribution Module」の文字が、その商品の販売地、品質

  を具体的に表示するものとして一般に理解され、或いは、取引者・需要者間

  において、取引上普通に使用されている事実も認められないところである。

   そうとすれば、本願商標は、これをその指定商品に使用した場合、取引者

  ・需要者は、全体として特定の品質等の意味合いを看取し得ないものと認識

  し把握するとみるのが相当であって、自他商品の識別力を有しないものとい

  うことはできない。

   また、本願商標は、これをその指定商品中のいずれの商品に使用したとし

  ても、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるということもでき

  ない。

   したがって、本願商標を商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項

  第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当なものとはいえず

  、取消しを免れない。

   その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。

   よって、結論のとおり審決する。

        平成18年 5月 8日

                 審判長  特許庁審判官 小林  薫

                      特許庁審判官 寺光  幸子

                      特許庁審判官 長柄  豊

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ケース79 本願商標:「KEY COFFEE スウィートセレクション」

1.出願番号  商願2003-106478(不服2005-7339)

2.商  標  「KEY COFFEE スウィートセレクショ」

3.商品区分  第30類 茶,コーヒー及びココア

        第32類 清涼飲料,果実飲料,乳清飲料,飲料用野菜ジュース

4.適用条文    商標法第4条第1項第11号

5.拒絶理由  本願商標は「図形+Sweet Selection」と類似する。

6.不服審判における反論(請求の理由)

  【手続の経緯】

 出     願      平成15年12月 1日

 拒絶理由の通知    平成16年 6月16日

     同 発送日    平成16年 6月21日

 意  見  書     平成16年 7月26日

 拒 絶 査 定     平成17年 3月30日

  同 謄本送達      平成17年 3月31日

  【拒絶査定の要点】

 先の拒絶理由通知書において、審査官は、本願商標は以下1,2の登録商標と同一又は類似であって、その商標に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当すると、認定されました。

 1.登録第4331486号(商願平10-082449)(以下引用商標1という)、

 2.登録第4372935号(商願平10-075024)(以下引用商標2という)。

 また、原査定において審査官は、以下のように認定しております。

“この商標登録出願は、平成16年 6月16日付けで通知した理由によって、拒絶をすべきものと認めます。

 おって、出願人は意見書において種々述べていますが、本願商標は「KEYCOFFEE スウィートセレクション」の文字を書してなるものであるところ、一般の商取引において、企業などが自己の商標を採択・使用するに際して、企業の略称ないし商標である代表的出所標識と、その取扱いに係る多数の商品のそれぞれを区別するための識別標識、いわゆる個別商標とを併記して使用する傾向がみられる実情から、本願商標に接する取引者・需要者は、前半の「KEYCOFFEE」の文字を「キーコーヒー株式会社」の代表的出所標識と認識し、後半の「スウィートセレクション」の文字を個別商標として把握し、かつ、全体より生ずる「キーコーヒースウィートセレクション」の称呼がやや冗長であることと相俟って、代表的出所標識部分を省略し、単に個別商標部分をとらえて取引にあたることも少なくないとみるのが相当です。したがって、本願商標は「スウィートセレクション」の称呼をも生ずるものと認められます。他方、引用商標は左端に二重ハート形を備えた図形の中に「Sweet Selection」の文字を書してなるものであるところ、図形と文字とを常に一体不可分のものと見るべき特別の事由もなく、文字部分も単独で識別力を有するものと認められます。してみれば、引用商標は該文字に相応して「スウィートセレクション」の称呼を生ずると認められます。したがって、本願商標と引用商標とは、「スウィートセレクション」の称呼を共通にする称呼上類似の商標であり、かつ、同一又は類似の商品に使用するものですから、さきの認定を覆すことはできません。

 なお、出願人は、既登録例を挙げ、本願商標も同様に登録されるべきである旨主張していますが、本願商標については、上記のとおり判断するのが相当であり、既登録例とは事案を異にするものですから、出願人の主張は採用することができません。”

  【本願商標が登録されるべき理由】

 然るに、本出願人は、先の意見書において、本願商標中の「スウィートセレクション」の文字は、単に甘味精選品という商品の品質を表示するための文字で商品識別の対象とならず、本願商標は、引用各商標と外観・称呼及び観念のいずれにおいても紛れることのない非類似の商標である旨、過去の既登録例を交えて説明したにもかかわらず、今般このような認定をされたことに対しては納得できないところがあり、ここに審判を請求し再度の御審理を願う次第であります。

 (a)本願商標の構成

 本願商標の「KEYCOFFEE スウィートセレクション」は、本出願人キーコーヒー株式会社の著名な略称である「KEYCOFFEE」の英文字と、英語の「sweet」(甘い)に通じる「スウィート」の片仮名文字及び英語の「selection」(選ぶこと)に通じる「セレクション」の片仮名文字とからなり、全体として「キーコーヒー(株式会社)の甘味精選品」という観念を生じさせるもので、「第30類 茶,コーヒー及びココア」及び「第32類 清涼飲料,果実飲料,乳清飲料,飲料用野菜ジュース」を指定商品とするものであります。

 (b)引用商標の構成

 引用商標1及び2は「左端に二重ハート形を備えた枠体図形」の中に英文字で「Sweet Selection」と横書きしてなるもので、第30類「コーヒー及びココア,茶」等を指定商品とするものであります。

 (c)審査官の認定に対する反論

 審査官は、本願商標とこれら引用商標1、2とは、称呼上類似の商標であり、かつ同一又は類似の指定商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号により登録できない、と認定しております。

 しかしながら、本出願人は、本願商標とこれら各引用商標とは、外観・観念上は勿論、称呼上も紛れることのない非類似の商標であると考えます。

 (c-1)

 本願商標は、後半部分の「スウィートセレクション」の片仮名文字が英語の「Sweet Selection」に通じ、「選ばれた甘いもの」とか、「甘味精選品」とかの意味合いを有し、また、引用各商標は、枠中の「Sweet Selection」の文字部分から、同じく「甘味精選品」等の意味合いを認識させるものであり、両者とも、具体的に特定の品質の商品を認識させるとまではいかないまでも、全体が甘美な商品で構成されていること、甘口仕様の商品であること等を容易に認識させるものであり、したがって、この「スウィートセレクション」「Sweet Selection」の言葉自体に自他商品識別力が備わっているとは到底思えません。

 この点に関し、審査官は、拒絶査定の中で、引用商標は左端に二重ハート形を備えた図形の中に「Sweet Selection」の文字を書してなるものであるところ、図形と文字とを常に一体不可分のものと見るべき特別の事由もなく、文字部分も単独で識別力を有するものと認められる故、文字部分より「スイートセレクション」の称呼を生じ、本願商標とは称呼を共通にする称呼類似の商標であるとしております。

 (c-2)

 しかしながら、単独で識別力を有する文字というのは、あくまでもそれ自体に自他商品識別標識としての識別力を備えた文字でなければならないと考えるところ、本件の場合のように、全体が甘美な商品で構成されていることを容易に理解させるだけの文字は、取引者・需要者に一定の品質(酸っぱくもなく、塩辛くもなく、甘美なものである)を認識させるだけのものであり、そのような文字が単独で自分の商品と他人の商品とを識別するための標識として機能するとは到底考えられません。

 本願商標の「スウィートセレクション」とか、引用各商標の「Sweet Selection」の文字部分は、具体的に特定の品質を表示するとまでは言えないとしても、この「スウィートセレクション」等の文字部分を見た取引者・需要者は、その商品が「比較的甘みを持ったものの選定品」「甘味仕様の商品」であると理解するのが自然であり、その意味において、これらの言葉は、かなり具体的に品質を表示していると考えます。つまり、この文字があれば、酸っぱいものや塩からいものを選定した商品だなどとは誰も思わないでしょうし、多少主観的な面はあるにせよ、ある程度甘味を感じるものの選定品であると理解するはずであります。その意味においては、「スウィートセレクション」、「Sweet Selection」ともに品質内容を表示する文字であり、識別標識としての役割は果たし得ないと考えます。

 (c-3)

 識別標識としての役割を果たし得ないとすれば、それは類否判断の対象とはなり得ません。識別力を発揮するのは、あくまでも本願商標の「KEYCOFFEE」という著名な会社の略称であり、或いは引例の「左端に二重ハート形を備えた枠体図形部分」或いは「これと一体となった全体」(この場合には「二重ハートのスウィートセレクション」程度の称呼・観念を生じると思います)であると考えます。成る程、識別力のない部分からも称呼が生じることはあるでしょう。しかし、その部分に識別力がなければ、その称呼によっては自分の商品と他の商品とを識別できないということであります。本願の「KEY COFFEE」の文字や、引例の「二重ハート形図形部分(横長楕円形の左端部分にハート型風図形を線書きにて重ね合わせるように配した構成の幾何図形部分)」があって初めて、出所を表示できるはずであります。「スウィートセレクション」や「Sweet Selection」だけでは、一体どこの「スイートセレクション」なのか全く分かりません。

 審査官は、拒絶査定の中で、“代表的出所標識と個別商標とを併記して使用する傾向が見られる実情もある”としておりますが、「代表的出所標識となる会社の略称と、品質表示用語とを併記して使用する実情がある」こともまた事実であります。本願商標は、まさにその例であります。

 (c-4)

 「スウィートセレクション」や「Sweet Selection」に識別力がないということは、過去の商標登録例からも言い得ることであります。

 例えば、過去の商標登録例をみると、

 (甲) 登録4712463「ROYCE’SWEETSELECTION/ロイズスィートセレクション」(H15.9.26登録、30類 茶,コーヒー等、株式会社ロイズコンフェクト)なる商標が存在しています。

 これなどは、その構成中に、「SWEETSELECTION」「スィートセレクション」の文字を含むものでありますが、先願である今般の引用に係る引用商標1,2の存在によっても拒絶されてはいません(拒絶理由通知を受けた形跡もありません)。もしこの部分に商標の要部、即ち識別力が認められていたら、本願への引用と同じ引用商標1,2の存在によって、この登録第4712463号商標「ROYCE’SWEETSELECTION/ロイズスィートセレクション」は当然に拒絶されていたはずであります。しかし、実際には登録されております。これは、この「SWEETSELECTION」「スィートセレクション」の言葉に商標としての識別性を認めず、識別力を発揮する部分は「ROYCE’」「ロイズ」にあると判断したからに他なりません(つまり「ロイズの甘味精選品」程度に理解したものと思います)。よって、この「ROYCE’SWEETSELECTION/ロイズスィートセレクション」が登録できて、本願商標「KEYCOFFEE スウィートセレクション」が登録できないとされる謂われは全くありません。

 (c-5)

 また、過去の商標登録例をみると、以下(A),(B)のような商標の併存登録が認められます。指定商品は同じく第30類のコーヒー等であります。

(A)登録4402643「ブルボン/スィートコレクション」(H11.8.27出願、H12.7.21登録、株式会社ブルボン)

(B)登録4712462「ROYCE’SWEETCOLLECTION/ロイズスィートコレクション」(H15.2.17出願、H15.9.26登録、株式会社ロイズコンフェクト)

 これらは、「~COLLECTION」「~コレクション」であって、「~セレクション」「~SELECTION」ではありませんが、「スィート」「SWEET」の文字と結合して、一つの意味合いを生じさせることは同じであり、全体としては「甘味コレクション(甘味収集品)」というような品質表示的な意味合いを生じる点で、本願と引用商標1,2との関係に共通するところがあります。

 然るに、この「スィートコレクション」「SWEETCOLLECTION」の部分が、識別力を発生し商標の要部を構成する文字であるとしたならば、後願に係る(B)の出願は、先願である(A)の存在によって拒絶されていたはずでありますが、実際には登録されております。

 これは、結局、「スィートコレクション」や「SWEETCOLLECTION」の部分は、商品の品質表示的な意味合いの言葉であって、識別力がなく商標の要部を構成しないと判断したからに他なりません。つまり、識別力を図る部分である商標の要部は「ブルボン」と「ROYCE’/ロイズ」であって両者は類似しないと判断されたものと思われます。

 同じことは、本願商標と引用商標1,2との間にも言えることだと思います。

(A)の「ブルボン/スィートコレクション」があって、(B)の「ROYCE’SWEETCOLLECTION/ロイズスィートコレクション」が登録されたのと同様に、引用商標1,2の「二重ハート図形枠+Sweet Selection」があっても、本願商標「KEYCOFFEE スウィートセレクション」は登録されて然るべきであります。

 (c-6)

 ところで、これらの商標既登録例の存在に対し、審査官は、拒絶査定の中で、“出願人は、既登録例を挙げ、本願商標も同様に登録されるべきである旨主張していますが、本願商標については、上記のとおり判断するのが相当であり、既登録例とは事案を異にするものですから、出願人の主張は採用することができません。”というようなことを述べております。

 しかしながら、同じ類似商品群を指定商品とし、構成中に「SWEETSELECTION」「スィートセレクション」の文字を含む商標の登録例が、本願商標を審査する上で全く参考にならない訳がありません。また、同じような意味合いと商標の構成態様を持つ登録併存例が、本願商標を審査する上で全く参考にならない訳がありません。単に「事案を異にする」といったような定型文でかたずけられる問題ではありません。その様なことを言ったのでは、何のための商標審査か分かりません。今までの審査実務に束縛されることはないとしても、それなりの理由があってこれら併存登録例が存在する訳ですから、この事実を全く無視して審査するのは如何かと思います。全く考慮することがないとしたら、それは商標の審査を自ら否定するに等しいと考えます。しかも、ずいぶん昔の話であるならば時代の変遷によって類否の状況も変わってくるということも言えるでしょうが、これら、(甲)や(B)の登録はまだ7ヶ月も経たない昨年9月の話であります。この商品分野において、「スィートセレクション」や「スィートコレクション」の文字はごく最近においても品質表示的な文字と扱われていたということを十分肝に銘ずるべきであります。

 そして、本願商標と引用商標1,2の関係も、これら登録商標同士の関係等と軌を一にするものであって、本願商標は同様に登録されて然るべきと考えます。

  【むすび】

 以上のように、本願商標の片仮名文字部分である「スウィートセレクション」と引用商標1,2の英文字部分である「Sweet Selection」は、共に「甘味精選品」などを意味する品質表示用語であって、飲料を主する指定商品にこれらの商標を付して使用した場合には、その商品が比較的甘口のものから構成されているものであることを表示するにすぎず、何ら識別標識としての役割を果たさないものと考えます。

 そして、このようなことからして、本願商標の要部は「スウィートセレクション」以外の部分、即ち「KEYCOFFEE」の文字部分にあり、一方、引用商標1,2の要部も「Sweet Selection」以外の部分、即ち「左端に二重ハート形を備えた枠体図形の部分」にあるということになると思います。

 そうであれば、この部分(商標の要部)に特徴があることによって、両者は十分に識別可能な非類似の商標であります。

 よって、本願商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものではなく、十分に登録適格性を有するものと考えますので、請求の趣旨の通り、「原査定を取り消す、本願商標は登録をすべきものである」との審決を求める次第であります。

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(参考)ケース79の「審決」

不服2005- 7339

   商願2003-106478拒絶査定不服審判事件について、次のとおり

  審決する。

 結 論

   原査定を取り消す。

   本願商標は、登録すべきものとする。

 理 由

  1 本願商標

   本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第30類及び第32類に属す

  る願書記載とおりの商品を指定商品として、平成15年12月1日に登録出

  願されたものである。

  2 引用商標 

   原査定において、本願の拒絶の理由に引用した登録第4331486号商

  標は、別掲のとおりの構成よりなり、平成10年9月24日登録出願、商標

  登録原簿に記載の商品を指定商品として、同11年11月5日に設定登録さ

  れたものである。

   同じく、登録第4372935号商標は、別掲のとおりの構成よりなり、

  平成10年9月1日登録出願、商標登録原簿に記載の商品を指定商品として

  、同12年4月7日に設定登録されたものである。

   以下、これらを「引用各商標」という。

  3 当審の判断

   引用各商標は、前記2のとおりの構成よりなるところ、該構成中の「Sw

  eet Selection」の文字部分は、全体として「甘味精製品」程

  の意味合いを認識させるにすぎないものであるから、該文字部分は、その指

  定商品との関係においては、自他商品の識別力がないか、極めて弱いものと

  いうべきである。

   そうすると、引用各商標に接する取引者、需要者は、「Sweet Se

  lection」の文字部分をもって取引に当たるということはできない。

   このことは、本願商標中の「スウィートセレクション」の文字部分につい

  ても同様である。

   したがって、引用各商標より、「スウィートセレクション」の称呼を生ず

  るとし、そのうえで、本願商標と称呼上類似するものとして、本願商標を商

  標法第4条第1項第11号に該当するとした原査定は、取消しを免れない。

   その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。

   よって、結論のとおり審決する。

        平成18年 9月26日

                 審判長  特許庁審判官 小川  有三

                      特許庁審判官 小松  孝

                      特許庁審判官 大森  健司

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ケース80 本願商標「KEYCOFFEE通販倶楽部」×引用商標「通販倶楽部」

1.出願番号  商願2006-23914

2.商  標   「KEY COFFEE 通販倶楽部」×「通販倶楽部」

3.商品区分  第30類、第35類

4.適用条文    商標法第4条第1項第11号

5.拒絶理由  類似する。

6.意見書における反論

【意見の内容】

(1)拒絶理由通知書において、本願商標は、下記の登録商標と同一又は類似であって、その商標に係る指定商品(指定役務)と同一又は類似の商品(役務)について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当すると、認定された。

                 記

 区 分   引用No

 第16類     1

 第30類     3

 第35類     2、  4

 引用No  引用商標一覧

    1  登録第4002271号(商願平 7-088390)「通販倶楽部」

    2  登録第4125306号(商願平 8-016713)「通販倶楽部」

    3  登録第4354150号(商願平10-102066)「通販倶楽部」

    4  登録第4438567号(商願平11-078375)「8989通販倶楽部」

 しかしながら、本出願人は、本願商標と引用商標1,2,3,4とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても紛れることのない非類似の商標であると考えますので、前記認定には承服できず、以下に意見を申し述べます。

(2)本願商標は、願書の商標見本から明らかなように、欧文字の「KEYCOFFEE」と漢字の「通販倶楽部」とを結合して、横一列に「KEYCOFFEE通販倶楽部」と書してなり、第16類、第30類及び第35類の商品又は役務を指定するものであります。 これに対し、引用商標はいずれも「通販倶楽部」の文字を要部とするもので、本願と同一又は類似の商品・役務を指定商品又は役務とするものであります。

 したがって、引例はいずれも本願商標の要部の一部である「KEYCOFFEE」文字を構成中に持たず、両者は外観上類似しないこと、明らかであります。

(3)次に観念についてみますと、本願商標は、「KEYCOFFEE通販倶楽部」の態様からなるところ、「KEYCOFFEE」の文字はコーヒーの製造販売で有名な本出願人の「キーコーヒー株式会社」を、また「通販倶楽部」の文字は、「商品の通販を行うための組織・団体」を表すもので、全体として、「キーコーヒー株式会社で運営する通販のための組織・団体」等の「特定の通販組織・団体」を観念させるものであります。

 これに対し、各引用商標の「通販倶楽部」は、単に「商品の通販を行うための組織・団体」を観念させるだけで、「特定の通販組織・団体」を観念させるものではありません。

 したがって、両者は、観念上も類似するものではありません。

(4)次に、称呼の点につき検討します。

 前述のように、本願商標からは、「KEYCOFFEE通販倶楽部」という組織・団体を観念させるため、本願商標からは唯一「キーコーヒーツウハンクラブ」の称呼が生じるものと思料します。

 即ち、本願商標は、全体として一つの観念を有する「KEYCOFFEE通販倶楽部」の構成態様からなるところ、本願商標を見た取引者・需要者は、これを敢えて前後に分断して、一方の「キーコーヒー」のみ、或いは「ツウハンクラブ」のみを称呼するとは思えません。一つのまとまった観念を生ずる以上、その観念を表す称呼としては、唯一、「キーコーヒーツウハンクラブ」しか称呼はないはずであります。単に「キーコーヒー」や「ツウハンクラブ」では「KEYCOFFEE通販倶楽部という組織・団体」を認識することはできません。その意味からも短縮した称呼はあり得ません。

 これに対し、引用各商標は、その構成態様から単に「ツウハンクラブ」と称呼されるだけであります。

 したがって、前段の「キーコーヒー」の有無の違いにより、両者は称呼上も紛れることのない非類似の商標であると考えます。

(5)ところで、インターネットのGoogleやYahoo!JAPANなどで「通販倶楽部」を検索してみますと、数多くの「通販倶楽部」の使用例が検索できます。中には、単に「通販倶楽部」とした例も2,3見受けられますが(その場合でも概ね画面を見れば、取り扱い会社名が表示されていて、どこの通販かは認識できるようになっております)、ほとんどのホームページは「通販倶楽部」の文字の前に、何らかの文字を付加して、何処の通販かを明示し、或いは何の通販かを明示すると共に取扱会社名等も表示して、「特定の組織・団体の通販」であることを明確にしております。これによって、他の通販倶楽部(運営サイト)との識別を図っているのだと思われます。

 例えば、次のような「通販倶楽部」のサイトが容易に発見できます。

 「東急ハンズ通販倶楽部」、「ファッション通販倶楽部」、「化粧品通販倶楽部」、「トータルサービス通販倶楽部」、「生活家電通販倶楽部」、「通販倶楽部ジュリエッタ」、「幸喜通販倶楽部」、「ダイエット通販倶楽部」、「ターフィー通販倶楽部」、「カンタベリー通販倶楽部」、「あしあと通販倶楽部」、「健康通販倶楽部」、「ペティエ通販倶楽部」、「カタログ通販倶楽部」、「モモトラ通販倶楽部」、「ムーヴィン通販倶楽部」、「バッグ通販倶楽部」、「海外通販倶楽部」、「ベッド通販倶楽部」、「赤ちゃん通販倶楽部」、「AKIBA通販倶楽部」、「ジュエリー通販倶楽部」、「お助け商品の通販倶楽部」等々。

 これは、「通販倶楽部」の文字のみでは何処の通販倶楽部か分からない、即ち通販倶楽部の運営主体の区別が付かないということで、他の文字を加えて「一つのある特定の通販組織・団体」を表すようにしているのだと思います。

 このような状況を考えると、「通販倶楽部」自体は、もはや通販業界において、識別標識として機能していないと思われます。他の文字と一体となって初めて一つの組織を表す言葉となって識別力を生じるのだと思われます(*即ち、通販市場の認識は、「通販倶楽部」=「通信販売を行うための組織・団体」程度でしかないと思われます)。

 したがって、本願商標の「KEYCOFFEE通販倶楽部」も、「通販倶楽部」だけを抽出したのでは何処の通販倶楽部なのか分からず、それ故、そのような抽出の仕方は通常しないと考えます。本願商標はこれ全体として一つの組織、団体等を表す言葉と理解すべきで、そのような理解をすれば、これを前後分断して「通販倶楽部」のみを抽出するような要部認定は妥当性を欠くこと、明かであります。それでは何処の通販倶楽部か分からなくなります。全体を一体として把握して初めて「KEYCOFFEE通販倶楽部」という組織・団体を認識できるはずでありますので、一体として捉えて初めて意味を為します。

 そして、このように、通販業界において「KEYCOFFEE通販倶楽部」が一つの組織・団体を観念させる言葉であるとすれば、その取り扱いに係る第16類の「カタログ,雑誌」等や第30類の「茶、コーヒー」等の商品についても、また第35類の「広告代理」等の役務についても、同様に分離できない一体の商標として把握されるべきものと考えます。

 したがって、一つの組織・団体を表示する言葉であることを無視し、前後を分断して本願商標を意味のないものとして把握し、後半の「通販倶楽部」のみを抽出して引用商標の「通販倶楽部」と比較している審査官殿の判断手法は、妥当なものとは思えません。

(6)以上の次第ですので、本願商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても紛れることのない非類似の商標であると考えます。

 審査官殿は、対比観察の結果、両者を類似すると判断したのでしょうが、前述のように“本願の「KEYCOFFEE通販倶楽部」は、全体として、一つの称呼・観念を持つ言葉であり、前段と後段とを分離して後段の「通販倶楽部」のみを抽出することができない以上、引用商標の単なる「通販倶楽部」とは異なります。本願の「KEYCOFFEE通販倶楽部」と引例の「通販倶楽部」とは、互いに非類似の商標とみるべきであります。

 

※これらは、全てこの意見書により審査官の考えを変えさせ、あるいは審判請求により登録にもっていったケースです。

 

 審査官も考え違いをしている場合がありますし、取引の実情から全く懸け離れたような判断を下す場合もあります。

 従って、納得できなければこのように積極的に反論すべきです。審査官も正当な理由があると認めれば(「なるほどな」と思わせれば)、考えを改めるはずです。                                         2018-2-19 S.Ogawa

 

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