意見書対応の重要性◆ 第3弾

 商標出願の中途受任引き受けます!

 難しそうな案件でも、是非登録しておきたいという思い入れのある商標は、登録の可能性が少しでもありそうなら、きちんと反論しましょう。登録になることが結構あります。

 特許庁から拒絶理由通知をもらうと、ああ、ダメなんだと直ぐにあきらめていませんか。

 おかしいなと思ったら、積極的に意見書を提出して反論すべきです。審査官を説得すれば登録できます。

:拒絶理由通知・拒絶査定の対応にお困りの場合には、気軽に連絡を下さい。

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第3弾として、ケース21~30を紹介します。

             2017-02-22 S.Ogawa

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  ケースNO.          目     次               適用条文

   ケース21:本願商標「Success Pack」

          ×引用商標「サクセス/SUCCESS」ほか4①11

   ケース22:本願商標「IMPALA ILLUSTRATED

             /インパラ・イラストレイテッド」3①3,4①16

   ケース23:本願商標「ACADPLUG/エーキャドプラグ」

       ×引用商標「ACAD……4①11

   ケース24:本願商標「ACTIVECUP/アクティブカップ」

       ×引用商標「ACTIVE他」4①11

  ケース25:本願商標「フルーツパーク」………3①6

   ケース26:本願商標「とっておきの果実」

       ×引用商標「とっておき」……4①11

   ケース27:本願商標「ShareWizard」4①6,4①11

   ケース28:本願商標「山麓の味わい」………3①6

   ケース29:本願商標「Smart CRM Solution

       ×引用商標「CRM visionh」他………4①11

   ケース30:本願商標「四季彩美」×引用商標「四季彩味」4①11

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  ここに挙げたものは、私が実務において、特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書等」の具体例です。

何の訂正もない、生のものです。

指定商品又は指定役務の限定補正により登録になったケースというのは勿論沢山ありますが、ここに挙げたものは、補正をすることなく、あるいは補正をしても抵触する指定商品を含みながら意見書や審判での主張で審査官等の考えを覆したケースです。

 意見書を提出してもあまり通ったことがないと言うような話も聞いた事がありますが、審査官の拒絶理由に納得がいかなければ積極的に反論すべきです。そして、ここに掲げたように、各事例ごとの主張の仕方によっては審査官等の考えを覆すことが出来るのです。参考にしていただければ幸いです。ここに挙げたものはその後全て登録番号が付され商標権が成立しております。

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ケース21 本願商標「Success Pack」×引用商標「サクセス/SUCCESS」ほか

1.出願番号  平成10年商標登録願第82237号

2.商  標   「Success Pack」

3.商品区分  第9類:電子応用機械器具及びその部品ほか

4.適用条文    商標法第4条第1項第11号

5.拒絶理由 「Success Pack」は「サクセス/SUCCESS」に類似する。

6.意見書における反論

(1) 拒絶理由通知書において、本願商標は、

 1.登録第4020936号の商標「SUCCESS」(引用商標1)

 2.登録第4092722号の商標「サクセス/SUCCESS」(引用商標2)

 3.登録第4309839号の商標「サクセス」(引用商標3)

 4.登録第4317430号の商標「サクセス/SUCCESS」(引用商標4)

と類似であり、指定商品も同一又は類似するものであるから、商標法第4条第1項第11号の規定に該当し、登録することはできないと認定された。

 しかしながら、本出願人は、本願商標と引用商標とは、外観,称呼および観念のいずれにおいても類似することのない非類似の商標であると思料するので、斯かる認定に承服できず、以下に意見を申し述べる。 

(2) まず、本願商標は、英文字で「Success Pack」と横書きして成るものであるのに対し、引用商標1は英文字で「Success」と横書きして成り、引用商標2と4は片仮名文字(上段)と英文字(下段)で「サクセス/Success」と二段併記して成り、引用商標3は片仮名文字で「サクセス」と横書きして成るものであるから、本願商標と引用商標1乃至4とは、外観上類似することはない。

(3) また、観念の点についてみると、本願商標の「Success Pack」は、全体として「成功の詰め物」「成功の包み」「出世の包み」等を観念させるものであるのに対し、引用商標1乃至4の「Success」「サクセス」は、単に「成功」とか「出世」とかを観念させるものであるので、両者は観念上も類似することはない。

(4) そこで、以下、称呼の点につき検討する。

 本願商標は、英文字で「Success Pack」と横書きして成り、「Success」と「Pack」との間にやや間隔をあけた態様ではあるが、本願商標は、前述したように、全体として「成功の詰め物」「成功の包み」「出世の包み」等の一つの観念を生じさせるものであり、しかも全体を一連に称呼しても決して称呼しにくいわけではなく、むしろ分断して称呼すべき理由もないことから、単に「サクセス」と称呼されるようなことはなく、常に一連一体に「サクセスパック」とのみ称呼されるものと思料する。

 これに対し、引用商標1乃至4はいずれも、その態様より「サクセス」とのみ称呼されるものであるから、両者は「パック」の称呼の有無により、明らかに聴別でき、称呼上も決して類似することはないと思料する。

 この点に関し、審査官殿は「Pack」の部分に商標の要部はなく、「Success」の部分にこそ本願商標の要部があるから、本願商標からは単に「サクセス」の称呼も生じ得るとして、引用商標を引いてきたのではないかと思料するが、そのような見方は妥当ではないと思料する。本願の指定商品との関係にあっては、「Pack」を要部でないとする理由は見あたらない。

 過去の登録例を見ても、「PACK」や「パック」の文字を有する商標と有しない商標とは、以下の通り、別法人によって多数並存登録されている。

  例えば、

 ①第1511161号「デュエット/DUET」 シャープ㈱第1号証

 ②第2169777号「デュエットパック」    三菱電気㈱第2号証

 ③第1925353号「ソリューション」    三菱電気㈱第3号証

 ④第4118287号「ソリューションパック」 ㈱富士通ビジネスシステム第4号証

 ⑤第1932442号「PICO」        ㈱富士通ゼネラル第5号証

 ⑥第2435010号「PICO PACK」   富士通㈱第6号証

 ⑦第2199010号「RAINBOWPACK」キャノン㈱第7号証

 ⑧第2292866号「レインボー」     松下電器産業㈱第8号証

 ⑨第3090051号「ファクトパック/FACT PACK」石川島播磨重工業第9号証

 ⑩第4191040号「ファクト」    ㈱エクエストリアン10号証

 ⑪第3266918号「WOODY」     松下電器産業㈱11号証

 ⑫第4142455号「WOODYPACK」    ㈱東芝12号証

 この場合、仮に「PACK」や「パック」が要部ではないと判断されていたならば、後願に係る商標は拒絶されていたはずであるのに、現実には登録されているのである。これは「パック」ないし「Pack」も商標の要部であると判断されたからに他ならない。

  然るに本願商標も、「サクセスパック」とのみ称呼されるべきものであり、引用商標の称呼である「サクセス」と類似することはない。

(5) 以上のように、本願商標と引用商標とは、外観および観念上類似しないことは勿論、称呼上も「パック」の称呼の有無によって語感語調を全く異にし、聴者をして決して紛れることはないものと思料する。

 よって、本願商標と引用商標とは非類似の商標であり、本願商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものではないと思料する。

 

ケース22 本願商標:「IMPALA ILLUSTRATED/インパラ・イラストレイテッド」

1.出願番号  平成11年商標登録願第24995号

2.商  標  「IMPALA ILLUSTRATED

         /インパラ・イラストレイテッド」

3.商品区分  第11類:「印刷物」を「雑誌,新聞」に補正。

4.適用条文    商標法第3条1項3号、第4条第1項第16号

5.拒絶理由  指定商品中「書籍、雑誌」に使用するときは、単に商品の

        内容を表示するにすぎない。

6.意見書における反論

(1) 拒絶理由通知書において、本願商標は、商品との関係において「アフリカ産の中型レイヨウの図解入りの」の意を容易に認識させる「IMPALA ILLUSTRATED、インパラ・イラストレイテッド」の文字を書してなるが、これをその指定商品中「書籍、雑誌」に使用するときは、単に商品の内容を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する、と認定された。

 しかしながら、本願商標は、「書籍」の題号として用いた場合には、成る程その内容を表示するものとして理解されるだけで識別力を生じないというおそれはあるが、「雑誌,新聞」等の定期刊行物の題号に使用するときは、単にその内容を表示するというものではなく、自他商品識別力を有する商標として理解され取り引きされるものと思料する。つまり、雑誌・新聞という定期刊行物の性格としては、そのタイトルの関連記事のみならず、種々雑多な記事を掲載するのが通例であるから、取引者・需用者もその様なものとして受け取っており、タイトルを見てそのタイトル通りの記事しか掲載されていないなどと、誰も理解するはずがない。つまり、雑誌新聞等の定期刊行物にあっては、タイトルとその中味が完全一致するとは限らず、むしろ一致しないのが常識であるから、この定期刊行物のタイトルは、通常、内容表示であると理解されることはないのであって、それ故に、本願商標を「雑誌,新聞」等の定期刊行物の題号として用いた場合にも、十分に自他商品識別力を有する商標として機能するものと思料する。

 そのため、本出願人は、本日付けで手続補正書を提出し、本願の指定商品を「印刷物」から「新聞,雑誌」に限定する補正を行った。

 よって、本願の拒絶の理由は解消したものと思料するが、審査官殿は、「書籍」の題号と「雑誌」の題号とを同一レベルでとらえる誤解をしているようであるので、念のため、以下に意見を申し述べる。

(2) 本願商標は、英文字とカタカナ文字で二段に、「IMPALA ILLUSTRATED/インパラ・イラストレイテッド」と書してなり、その字義より、「レイヨウの図解付きの」の如き意味合いを有するものであるが、その指定商品である「新聞」や「雑誌」等の定期刊行物の性格として、タイトルに沿った内容の記事(各号に必ず記載するであろう中心的記事)も勿論存在するであろうが、それ以外のタイトルとは無関係の記事もふんだんに記載されているとみるのが通例であって、誰もがそう理解するであろう。

 したがって、雑誌・新聞等の題号は、それが一つの観念を生じるとしても、その字義通りの内容しか記載されていないとみるべきではない(つまり、内容表示にすぎないと理解すべきではない)。殊に「雑誌」の場合には、そのタイトルの他に、特集記事の内容その他目玉となる記事の内容を人の購買意欲をそそるように、あるいは購買者に知らせるように、表紙等に表示するのが通例であって、それが雑誌の内容表示であり、題号自体は自他商品識別力を有する商標と見るべきである。つまり、雑誌の題号は、それが特定の観念を有する言葉であったとしても、それは自分の雑誌と他人の雑誌とを区別するための識別標識として採用していると見るのが通常であって、それがそのまま記事の内容であるとは限らない。このことは、日常見られる現象である(例えば、「○○スポーツ」「プロ野球ニュース」という新聞や雑誌でも、スポーツのことだけに限らず、芸能ニュースや一般的なニュースも記事として存在しているし、後者でもプロ野球以外の記事も多く存在している)。

(3) この様な、雑誌・新聞の性格から、御庁の商標法第3条第1項第3号に関する審査基準においても、「書籍」の題号と「雑誌・新聞」等の定期刊行物の題号とは、明確に区別して扱っている。即ち、審査基準においては、「(1)書籍の題号については、題号がただちに特定の内容を表示するものと認められるときは、品質を表示するものとする。(2)新聞、雑誌等の定期刊行物の題号は、原則として、自他商品の識別力があるものとする。」としている。

 そして、この様な考え方によれば、本願商標の「IMPALA ILLUSTRATED、インパラ・イラストレイテッド」は、雑誌・新聞のタイトルとして、十分に識別力を発揮するということができる。

  しかも、雑誌・新聞の題号に用いる商標としては、たとえ両商標の観念が同一であっても、外観・称呼が異なる商標であれば、十分な自他商品識別力を発揮すると言うことで、両者非類似の商標として扱われているのである。例えば、「ディリースポーツ」と「日刊スポーツ」とでは、同一観念の商標であろうが、新聞という定期刊行物の題号としては、両者十分に識別できる存在(出所が別の商標)として併存し機能している。これは、雑誌・新聞等のタイトルとして、同じ観念の商標であっても、文字の種類や称呼が異なれば、これを見、称呼する取引者・需用者は、両者を混同することはないとの経験則から、雑誌・新聞等のタイトルにあっては、商標の観念を原則として考慮しない扱いがなされているのだと思料する。

 このように、雑誌、新聞等の定期刊行物の題号は、その定期刊行物の特定の内容を表す内容表示と理解されるのではなく、十分に自他商品識別力のある商標として理解されている。

(4) このことは、過去の商標登録例を見ても容易に理解できる。即ち、その商標の意味だけを考えれば、本願商標と同じように「ILLUSTRATED」の文字を含み特定の観念を生じさせるような商標でも、「新聞,雑誌」等の定期刊行物を指定商品とする出願においては、単なる内容表示として拒絶されることはなく、自他商品識別力を有する商標として扱われ、数多く登録されているのである。

 例えば、

①商標登録第1828152号

 「Badminton Illustrated/バドミントン・イラストレーテッド」:雑誌、新聞第1号証

②商標登録第1828153号

 「Boxing Illustrated/ボクシング・イラストレーテッド」:雑誌、新聞第2号証

③商標登録第1828154号

 「TrackField Illustrated/陸上競技・イラストレーテッド」雑誌、新聞第3号証

④商標登録第1828156号

 「Baseball Illustrated/ベースボール・イラストレーテッド」:雑誌、新聞第4証

⑤商標登録第1828157号

 「Swimming Illustrated/スイミング・イラストレーテッド」:雑誌、新聞第5号証

⑥商標登録第1828159号

 「Softball Illustrated/ソフトボール・イラストレーテッド」:雑誌、新聞第6号証

⑦商標登録第2321948号

 「billiards Illustrated/ビリヤードイラストレーテッド」:雑誌、新聞第7号証

⑧商標登録第2686877号

 「SPORTS ILLUSTRATED」:雑誌、新聞、双書第8号証

⑨商標登録第3275243号

 「TECHNOLOGY ILLUSTRATED/テクノロジーイラストレイテッド」:雑誌第9号証

⑩商標登録第3275246号

 「SPACE ILLUSTRATED/スペース イラストレイテッド」:雑誌10号証

⑪商標登録第3341266号

 「スノーボードイラストレイテッド/SNOWBOSD ILLUSTRATED」:雑誌,新聞11号証

⑫商標登録第4107448号

 「バスケットボール イラストレーテッド/Basketball Illustrated」:雑誌,新聞12号証

⑬商標登録第4107449号

 「ハンドボール イラストレーテッド/Handball Illustrated」:雑誌,新聞13号証

⑭商標登録第4107450号

 「ランニング イラストレーテッド/Running Illustrated」:雑誌,新聞14号証

⑮商標登録第4121211号

 「ゲートボール イラストレーテッド/Gateballl Illustrated」:新聞,雑誌15号証

等はその例である。

 これらは、その字義からすれば「そのスポーツ(バトミントン、陸上競技、野球など)の図解付きの」ということであろうが、現実には、そのような内容表示と言うことではなく、自他商品識別力を有する商標として登録されているのである。

 本願商標も、今般、「雑誌,新聞」という定期刊行物に指定商品を限定する補正を行ったのであるから、これら①~⑮の商標登録例と同様に、「雑誌、新聞等の定期刊行物の題号については、原則として、自他商品の識別力があるものとする。」との審査基準に準拠し、自他商品識別力を有する商標として、登録されて然るべきである。

(5) 以上のように、本願商標は、商標法第3条第1項第3号にも、また同第4条第1項第16号にも該当することはなくなったものと思料する。

 

ケース23 本願商標「ACADPLUG/エーキャドプラグ」×引用商標「ACAD」

1.出願番号  平成11年商標登録願第33328号

2.商  標   「ACADPLUG/エーキャドプラグ」

3.商品区分  第9類:電子応用機械器具及びその部品ほか

4.適用条文    商標法第4条第1項第11号

5.拒絶理由 「ACADPLUG/エーキャドプラグ」は「ACAD」に

       類似する。

6.意見書における反論

(1) 拒絶理由通知書(発送番号076192)において、本願商標は、

 1.登録第4003038号の商標「ACAD」(以下、引用商標という)

と類似であって、その商標に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号の規定に該当し、登録することはできないと認定された。

 しかしながら、本出願人は、本願商標と引用商標とは、外観,称呼および観念のいずれにおいても類似せず、取引者・需用者に出所の混同を起こさせるおそれのない非類似の商標であると思料するので、斯かる認定に承服できず、以下に意見を申し述べる。 

(2) まず、本願商標は、上段の英文字と下段の片仮名文字で「ACADPLUG/エーキャドプラグ」と二段併記して成るものであるのに対し、引用商標は英文字で単に「ACAD」と横書きして成るものである。

 然るに、両者は、外観上明らかに相違し、類似することはない。

(3) 次に、観念の点についてみると、本願商標の「ACADPLUG/エーキャドプラグ」は、その上段部分においては、「academic」(理論的な、学究的な)や「academy」(学会、学院)の略語である「ACAD.」の文字部分と、「電気機械で、回路を接続し、あるいは切断するために用いる差込み器具(プラグ)」等の意味合いを有する「PLUG」の文字とを結合して、全体として「アカデミックなプラグ」等の意味合いを込めて造った造語である。また、その下段部分は、上段の欧文字部分「ACADPLUG」の読みを表すべく一連に書した片仮名文字である。したがって、本願商標は、全体として「アカデミックなプラグ」などの意味合いを暗示させるものではあるが、あくまでも造語商標であって、格別に特定の観念を生じさせるものではない。

  また、引用商標は、「academic」(理論的な、学究的な)や「academy」(学会、学院)の略語である「ACAD.」の文字部分をドット「.」を省略して表示したものと思料するが、通常の取引者・需用者間においては、格別馴染んだ言葉でもなく、やはり特定の観念を生じさせることのない商標であると思料する。

 したがって、本願商標と引用商標とは、観念上も類似することのない非類似の商標である。

(4) そこで、以下、称呼の点につき検討する。

 (4-a) 本願商標は、上述のように、上段の英文字部分が「ACADPLUG」というように同書・同大・同間隔で一連に書され、下段の片仮名文字も上段の読みを表すべく、「エーキャドプラグ」と一連に書されたものであるから、この態様より、一連に「エーキャドプラグ」と称呼されると見るのが自然である。

 この点に関し、審査官殿は、本願商標の前段である「PLUG」の文字部分を一般名称的にとらえ、前段である「ACAD」の部分にこそ商標の要部があるとみてこれを抽出し、単に「エーキャド」と称呼される場合もあると判断して、引例の「ACAD」を引用してきたものと思料するが、このように、本願商標の「ACADPLUG」から、その「ACAD」部分のみを抽出して称呼するというのは妥当な見方ではないと思料する。

 本願商標「ACADPLUG」は、あくまでも「ACAD」と「PLUG」とを一体に結合して同書・同大・同間隔に書し、全体として「アカデミックなプラグ」等の意味合いを込めて造った商標であるが、全体として特定の観念を生じない造語商標であるから、前段部分「ACAD」と後段部分「PLUG」とに軽重の差を設けて、前段部分「ACAD」のみを抽出して称呼するようなことはすべきではない本願商標は、その様なことのないように一連一体に結合して表記しているのであり、読みも片仮名で一連に「エーキャドプラグ」と書しているのである。しかも、本願商標は6音構成からなるものであるが、全体として一連に称呼して語呂がよく、決して称呼しにくい訳でもない。それ故、あえて「ACAD」と「PLUG」とを分断して、一方の「ACAD」のみを抽出して、「エーキャド」と単独で称呼すべき場合があるなどと考えるべきではない。本願商標の称呼は、あくまでも一連の「エーキャドプラグ」である。

 これに対し、引用商標「ACAD」は、その態様より「エーシーエーディー」あるいは「エーキャド」と称呼されるものと思料する。

 然るに、本願商標と引用商標とは、引用商標がたとえ「エーキャド」と称呼されたとしても、本願商標は「エーキャドプラグ」とのみ称呼されるものであるから、両者は「プラグ」の称呼の有無により、明らかに聴別でき、称呼上も決して紛れることのない非類似の商標であると思料する。

 (4-b)  ところで、御庁の電子図書館における商標出願・登録情報検索によって過去の商標登録例を検索してみると、「PLUG」「Plug」「プラグ」の文字を含む商標「α+PLUG」「α+Plug」「α+プラグ」と、含まない商標「α」とは、下記の如く、数多く存在しているのが分かる。 

  例えば、

 (1) 2530859号「ニュートラルプラグ」(株式会社エヌピーシー)と、

 (2) 4059360号「ニュートラル」(キャノン株式会社)。

 (3) 2724332号「SMART」(キャノン株式会社)と、

 (4) 4218516号「SmartPlug」(株式会社アクセス)。

 (5) 4218517号「FlexPlug」(株式会社アクセス)と、

 (6) 4351689号「FLEX」(モトローラ・インコーポレイテッド)。

 (7) 2588028号「MID/エム アイ ディー」(三井造船システム技研)と、

 (8) 4137118号「MIDPLUG/ミッドプラグ」(ヤマハ株式会社)。

 (9)  534986号「アイ」(岩崎電気株式会社)と、

 (10)第4103155号「iplug」(ソニー株式会社)。

 (11)第2695564号「HOT PLUG」(アイワ株式会社)と、

 (12)第2722113号「ホット」(株式会社メタテクノ)。

   (*これらを第1号証乃至第12号証として提出する。)

  これらのことから言えることは、これら各商標の出願審査において、担当審査官は、「α+PLUG」「α+Plug」「α+プラグ」の商標を、常にαと一体不可分の商標として取り扱っているということである。

 つまり、担当審査官が、仮に「α+PLUG」「α+Plug」「α+プラグ」の商標のうち、「PLUG」「Plug」「プラグ」の文字部分を識別性のない部分であると判断し、他の文字部分αにこそ商標の識別性がある、などと判断して審査していたならば、これら登録商標のうち、(2)、(4)、(6)、(8)、(10)、(12)の商標は、それぞれ(1)、(3)、(5)、(7)、(9)、(11)の後願であることにより、全て拒絶されていたはずである。

 然るに、拒絶されることなく登録されているということは、「PLUG」「Plug」「プラグ」の文字にも商標としての識別性を十分に認め、あくまでもこの「PLUG」「Plug」「プラグ」の文字を含めた商標全体として1つの不可分一体の商標を構成すると判断し、審査したからに他ならない。

  本願商標と引用商標の関係も、これら(1)と(2)、(3)と(4)、(5)と(6)、(7)と(8)、(9)と(10)、(11)と(12)の各商標の関係と軌を一にするものであって、本願商標の「ACAD」「エーキャド」の部分のみをとらえて、称呼され、観念されるようなことはない。本願商標は、あくまでも、片仮名で読みを振ったように「エーキャドプラグ」とのみ一連に称呼されるべきものであり、それ故に引用商標の称呼である単なる「エーシーエーディー」ないし「エーキャド」とは、類似することはない。

(5) 以上のように、本願商標と引用商標とは、外観および観念上類似しないことは勿論、称呼上も「プラグ」の称呼の有無によって語感語調を全く異にし、聴者をして決して紛れることはないものと思料する。

 よって、本願商標と引用商標とは非類似の商標であり、本願商標は商標法第4条第1項第11号の規定に該当するものではないと思料する。

 

ケース24 本願商標「ACTIVECUP/アクティブカップ」×引用商標「ACTIVE」「アクティブ」

1.出願番号 平成11年商標登録願第70437号

2.商  標  「ACTIVECUP/アクティブカップ」

3.商品区分 第29類:乳製品,豆乳&第32類:清涼飲料,果実飲料他

4.適用条文   商標法第4条第1項第11号

5.拒絶理由 「ACTIVECUP/アクティブカップ」は

       「ACTIVE」「アクティブ」に類似する。

6.意見書における反論

(1) 拒絶理由通知書(発送番号081723)において、審査官殿は、以下の商標を引用し、本願商標は、第29類においては引用商標2,4と類似することにより、第32類においては引用商標1,2,3,4と類似することにより、商標法第4条第1項第11号の規定に該当し、登録を受けることができないと認定された。

(引用商標)

 1.登録第1144138号の商標「ACTIVE/アクティブ」(引用商標1)、

 2.登録第2117121号の商標「アクティブ」(引用商標2)、

 3.登録第2695904号の商標「ACTIVE」(引用商標3)、

 4.登録第4342299号の商標「アクティブ/ACTIVE」(引用商標4)。

 しかしながら、本出願人は、本願商標と引用商標1~4とは、外観,称呼および観念のいずれにおいても類似せず、取引者・需用者に出所の混同を起こさせるおそれのない非類似の商標であると思料するので、斯かる認定に承服できず、以下に意見を申し述べる。 

(2) まず、本願商標は、上段の欧文字と下段の片仮名文字で「ACTIVECUP/アクティブカップ」と二段併記して成るものであるのに対し、引用商標は、上述のとおり、何れも、欧文字の「ACTIVE」と片仮名文字の「アクティブ」で上下二段に構成したり、単に欧文字の「ACTIVE」や片仮名文字の「アクティブ」から成るものである。

  したがって、本願商標と引用商標1乃至4とは、外観上類似することはない。

(3) 次に、観念の点についてみると、本願商標の「ACTIVECUP/アクティブカップ」は、その上段部分においては、活動的なとか、活発なとかの意味を表す「ACTIVE」の文字と、紅茶・コーヒー用のカップや茶わんとか、シャンパン・ぶどう酒・りんご酒などに香料・甘味を混ぜて氷で冷やした飲料、即ち“カップ”とか、優勝杯とかを表す文字とを一体一連に結合して、全体として「活動的な(人の)飲料、活発な(生き生きとした)カップ飲料」等の意味合いを込めて造った造語である。また、その下段部分は、上段の欧文字部分「ACTIVECUP」の読みを表すべく一連に書した片仮名文字である。

 したがって、本願商標は、全体として「活動的な飲料、活発なカップ飲料」などの意味合いを暗示させはするものの、あくまでも分割することのできない一連一体の造語商標であって、格別に特定の観念を生じさせるものではない。

  また、引用商標は、活動的なとか、活発なとかの意味を表す「ACTIVE」の文字やその読みを片仮名文字で表した「アクティブ」から成るもので、字義通り、「活動的な」とか、「活発な」とかの観念を生じさせるものである。

 したがって、本願商標と引用商標とは、観念上も類似することのない非類似の商標である。

(4) そこで、以下、称呼の点につき検討する。

 (4-a) 本願商標は、上述のように、上段の欧文字部分が「ACTIVECUP」というように同書・同大・同間隔で一連に書され、下段の片仮名文字も上段の読みを表すべく、「アクティブカップ」と一連に書されたものであるから、この態様より、一連に「アクティブカップ」とのみ称呼されると見るのが自然である。

 この点に関し、審査官殿は、本願商標の後段である「CUP」の文字部分を品質表示的にとらえ、前段である「ACTIVE」の部分にこそ商標の要部があるとみてこれを抽出し、単に「アクティブ」と称呼される場合もあると判断し、引例の「ACTIVE」ないし「アクティブ」を引用してきたものと思料するが、このように、本願商標の「ACTIVECUP」から、その「ACTIVE」の部分のみを抽出して称呼するというのは妥当な見方ではない。

 本願商標「ACTIVECUP」は、あくまでも「ACTIVE」と「CUP」とを一体に結合して同書・同大・同間隔に書し、全体として「活動的な(人の)飲料、活発な(生き生きとした)カップ飲料」等の意味合いを込めて造った商標であるが、全体として特定の観念を生じさせない一連一体の造語商標であるから、前段部分「ACTIVE」と後段部分「CUP」とに軽重の差を設けて、前段部分「ACTIVE」のみを抽出して称呼するようなことはすべきではない。本願商標は、その様なことのないように一連一体に結合して表記しているのであり、読みも片仮名で一連に「アクティブカップ」と書しているのである。しかも、本願商標は6音構成からなるものであるが、全体として一連に称呼して語呂がよく、決して称呼しにくい訳でもない。それ故、あえて「ACTIVE」と「CUP」とを分断して、一方の「ACTIVE」のみを抽出して、「アクティブ」と単独で称呼すべき場合があるなどと考えるべきではない。本願商標の称呼は、あくまでも一連の「アクティブカップ」のみである。

 これに対し、引用商標1乃至4はいずれも、その態様より「アクティブ」とのみ称呼されるものであるから、両者は「カップ」の称呼の有無により、明らかに聴別でき、称呼上も決して類似することはないものと思料する。

(4-b) ところで、過去の商標登録例を見ると、同一又は類似の指定商品群において、「CUP」や「カップ」の文字を有する商標と有しない商標とは、以下の通り、別法人によって多数並存登録されているのが分かる。

  例えば、

 (1)  919621号「ライト/LITE」(サッポロビール㈱)と、

 (2) 2034803号「ライトカップ/LIGHTCUP」(㈱ロッテ)。

 (3) 2700970号「GOLDEN CUP/ゴールデンカップ」(日米珈琲㈱)と、

 (4) 2708466号「ゴルデン/GOLDEN」(エーザイ㈱)。

 (5) 2076630号「FANCY」(明治乳業㈱)と、

 (6) 2467493号「FANCYCUP/ファンシーカップ」(鐘紡㈱)。

 (7) 1519487号「パワー」(森永乳業㈱)と、

 (8) 2476782号「パワーカップ/POWER CUP」(明星食品㈱)。

 (9) 2423840号「パワーカップ/POWER CUP」(明星食品㈱)と、

 (10)第2700033号「POWER」(パワーブルーイングカンパニーリミテッッド)。

 (11)第3181369号「STAR」(サッポロビール㈱)と、

 (12)第4180396号「STARCUP」(ユニリバー エヌ ヴィ)。

   (*これらを第1号証乃至第12号証として提出する。)

 この場合、仮に「CUP」や「カップ」が商標の要部ではないと判断されていたならば、後願に係る商標は拒絶されていたはずであるのに、現実には登録されているのである。これは「CUP」ないし「カップ」も品質表示などではなく商標の要部であると判断されたからに他ならない。

 つまり、これらの商標が存在しているのは、「CUP」「カップ」の文字にも商標としての識別性を十分に認め、あくまでもこの「CUP」「カップ」の文字を含めた商標全体として1つの不可分一体の商標を構成すると判断し、審査したからに他ならない。(*「CUP」「カップ」の文字が、もし仮に品質表示であるとするならば、この文字を用いた登録商標の指定商品は、「カップ入りの」というように表示されていなければならないはずであるのに、現実にはそうなっていない。このことも、「CUP」「カップ」が品質表示とされていないことの証左である。)

  本願商標と引用商標の関係も、これら(1)と(2)、(3)と(4)、(5)と(6)、(7)と(8)、(9)と(10)、(11)と(12)の各商標の関係と軌を一にするものであって、本願商標の「ACTIVE」「アクティブ」の部分のみをとらえて、称呼され、観念されるようなことはない。本願商標は、あくまでも、片仮名で読みを振ったように「アクティブカップ」とのみ一連に称呼されるべきものであり、それ故に引用商標の称呼である単なる「アクティブ」とは、類似することはない。

(5) 以上のように、本願商標と引用商標とは、外観および観念上類似しないことは勿論、称呼上も「カップ」の称呼の有無によって語感語調を全く異にし、聴者をして決して紛れることはないものと思料する。

 よって、本願商標と引用商標とは非類似の商標であり、本願商標は商標法第4条第1項第11号の規定に該当するものではないと思料する。

 

ケース25 本願商標:「フルーツパーク」 

1.出願番号  商願2000-20811

2.商  標   「フルーツパーク」

3.商品区分  第30類:菓子及びパン

4.適用条文    商標法第3条第1項第6号

5.拒絶理由  識別力がない。

6.意見書における反論

(1)拒絶理由通知書において、審査官殿は、「本願商標は『フルーツパーク』の文字を書してなるものであるが、この文字は、『観光用に作られた果樹園』を指称する語として、広く使用されていることからすると、これをその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需用者は、前述の理解に止まり、何人かの業務に係る商品であると認識することができないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する」と、認定されました。

 しかしながら、本出願人は、本願商標の「フルーツパーク」は十分に自他商品識別標識として機能する商標であると思料しますので、上記認定には承服できず、以下に意見を申し述べます。

(2)本願商標の「フルーツパーク」は、その字義からすると、成る程、審査官殿ご指摘の通り「観光用に作られた果樹園」を指称させるものかも知れません。

 しかしながら、その言葉の意味が、単に、「観光用に作られた果樹園」だからといって、「フルーツパーク」が「菓子」や「パン」の識別標識として機能しないとするのは、如何にも短絡的に過ぎると思料します。

 本願の指定商品「菓子及びパン」は、一般的に、果樹園で栽培されるわけでも、また果樹園で製造されるわけでもないことから、本願の「フルーツパーク」の文字が、上記本願の指定商品である「菓子及びパン」と直接に結びついて、その製造場所を指称するようなことはないはずであります。つまり、本願商標の「フルーツパーク」を、店舗等で販売する「菓子」や「パン」に付して使用した場合には、観光果樹園製の菓子・パンと理解されるはずもなく、十分に識別標識としての機能を発揮するはずであります。

(3)商標の観念は、商標自体が客観的に有する意味を言うのではなく、商標を見又は称呼することにより、その商標を付した商品の需用者又は取引者が思い浮かべるであろうその商標の意味を言う(昭和49年11月14日/東京高裁/第6民事部/判決/昭和48年(行ケ)第61号)ものと理解しますが、「菓子」や「パン」に付された「フルーツパーク」の文字を見て、取引者・需用者は、このパンや菓子を観光用の果樹園で作られたものであると連想するはずはないものと考えます。

 なぜならば、通常の果樹園は、たとえ観光用のものであっても、そこで栽培したブドウや梨、あるいはリンゴやミカン等の味覚を観光客に自らもぎ取って楽しんでもらうというスタイルが通例であって、その果樹園でパンを売ったり、菓子を売ったりするようなことはほとんどないからであります。

 したがって、「菓子及びパン」に「フルーツパーク」という商標を付した場合、観光果樹園で製造の菓子やパンであると一般的に理解されるようなことはなく、あくまでも「フルーツパーク」という商標の「菓子及びパン」であると理解するものと思料します。その意味で本願商標「フルーツパーク」は、十分に出所表示機能を果たし得る商標であると考えます。

(4)そして、このように「フルーツパーク」が十分に自他商品識別力を発揮する商標であることは、過去の登録例(昭和62年や平成3年の他に、最近では、平成9年や平成10年の登録例あり)からも言い得ることであります。

 つまり、本願指定商品の「菓子及びパン」の分野と同じ食品の分野においても、あるいは飲料等の分野においても、「フルーツパーク」の商標は、以下の通り、自他商品識別力を有するものとして登録されております。

a.第1983486号(S62/09/21登録)「フルーツパーク」

  第32類「果実、加工果実」積水化成品工業(株)

b.第2334871号(H03/09/30登録)「フルーツパーク」

  第31類「調味料、香辛料、食用油脂、乳製品」森永乳業(株)

c.第3360102号(H09/11/21登録)「FRUITS PARK/フルーツ  パーク/フルーツ公園」第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味  酒」(有)万葉の森

d.第4119703号(H10/03/06登録)「フルーツパーク」

  第32類「果汁入り清涼飲料,果実飲料」全国農協直販(株)

  このうち特に、a.の第1983486号(S62/09/21登録)「フルーツパーク」などは、果樹園と直接結びつく第32類の「果実、加工果実」を指定商品とするものであります。

 また、d.の第4119703号(H10/03/06登録)「フルーツパーク」 などは、本出願人の登録に係る商標でありますが、これなども、「フルーツパーク」の字義からすれば、本願の指定商品である「菓子及びパン」よりも、むしろ結び付きが近いように思われる第32類の「果汁入り清涼飲料,果実飲料」に係る商標であります。

 然るに、このような商標が登録できて、本願商標が拒絶されるいわれはありません。

 

ケース26 本願商標「とっておきの果実」×引用商標「とっておき」

1.出願番号  商願2000-43143

2.商  標   「とっておきの果実」(標準文字)

3.商品区分  第30類:加工果実,冷凍果実,果実入り乳製品

4.適用条文    商標法第4条第1項第11号

5.拒絶理由  登録第18561674428069号商標「とっておき」と類似する。

6.意見書における反論

(1)拒絶理由通知書において、本願商標は下記の登録商標と類似であって、その商標登録に係る指定商品と同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当し登録できないと認定された。

 しかしながら、本出願人は、本願商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても紛れることのない非類似の商標であると考えるので、前記認定には承服できず、以下に意見を申し述べる。

  1.登録第1856167号「とっておき」引用商標1

 2.登録第4428069号「とっておき」引用商標2

(2)本願商標は、願書の商標登録を受けようとする商標に表示したとおり、平仮名文字と漢字で一連に「とっておきの果実」(標準文字)と書した態様からなり、指定商品を第29類「加工果実,冷凍果実,果実入り乳製品」とするものである。

 これに対し、引用商標1は、平仮名文字で「とっておき」と書した態様からなり、昭和34年法第31類「調味料、その他本類に属する商品」を指定商品とし、引用商標2は、同じく平仮名文字で「とっておき」(標準文字)と書した態様からなり、第29類「食肉,……,加工野菜及び加工果実,」を指定商品とするものである。

  然るに、これら引用商標1,2は、本願商標と指定商品が同一又は類似するものであることは認めるにしても、本願商標の「とっておきの果実」と両引用商標の「とっておき」とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても類似することのない非類似の商標であり、本願商標は決して商標法第4条第1項第11号に該当るものではないと思料する。

(3)即ち、まず外観において、本願商標は前述のように平仮名文字と漢字で一連に「とっておきの果実」と書してなるのに対し、両引用商標は単に平仮名文字で「とっておき」と書してなるものであるから、外観上明らかに相違し、両者類似することはない。

(4)また、観念において、本願商標は「後日の用意にと大切にしまっておくこと。また、そのもの。」(広辞苑)を意味する「とっておきの」の文字と、「くだもの。水菓子。」(広辞苑)を意味する「果実」の文字とを結合して一連一体に書したものであり、従って、その態様より、全体として、まさに、後日の用意にと大切にしまっておくような「取って置きの果実」、「後日のための大切なくだもの」等の観念を生じさせるものである。

 つまり、本願商標中の「果実」の文字は、指定商品第29類「加工果実,冷凍果実,果実入り乳製品」との関係にあって、その原材料名を表す文字ではあったとしても、本願商標はその「果実」の文字のみから成るものではなく、あくまで「とっておきの」の文字と一体となった「とっておきの果実」が全体として上記した特定の観念を生じさせるものであり、「とっておき」の部分、あるいは「とっておきの」の部分が単独で識別され且つ観念されるようなことはない。本願商標は、あくまで「とっておきの果実」で1つの商標であり、分断されて認識されるものではない。

  これに対し、両引用商標は、単に「とっておき」の文字からなるものであり、あくまでも「後日の用意にと大切にしまっておくこと。また、そのもの。」(広辞苑)を意味する言葉でしかない。これでは、一体何がとっておきなのか定かではなく、ましてや本願商標の前記「取って置きの果実」の観念を生じさせるものではない。

 よって、本願商標と引用両商標とは、観念上も紛れることのない、非類似の商標である。

(5)そこで、次に称呼の点につき検討するに、本願商標「とっておきの果実」は、全体が一連に書され、かつ上述の如く全体として一つの意味合いを生じさせるものであるから、常に一連に称呼するのが自然であり、「トッテオキノカジツ」とのみ称呼されるものと思料する。

 この点、審査官殿は、本願商標中の「果実」の部分は、指定商品との関係にあって、要部を構成せず、従って「とっておきの」のみに識別力を生じ、単に「トッテオキノ」の称呼も生じるとみて今般の拒絶理由通知を発したのではないかと推察するが、その認定はおかしい。

  例えば、

 A.登録商標「こだわり」(第2425890号、明治乳業:第1号証の1)が存在するが、その後の出願に係る「こだわりの果実」も登録されている(第4189328号、全国農協直販:第1号証の2)(これらは29C01の類似群を共通にしている)。また、

 B.登録商標「楽園」(第3108338号、サントリー:第2号証の1)が存在するが、その後の出願に係る「楽園の果実」も登録されている(第4131932号、キッコーマン:第2号証の2)(これらは29C01,32F04の類似群を共通にしている)。さらに、

 C.登録商標「伝説の野菜」(第2665786号、スカイ・フード:第3号証の1)というのが存在するが、その後の出願に係る「伝説」も登録されている(第4191237号、ヱスビー食品:第3号証の2)(これらは32D04,32F04の類似群を共通にしている)。

  これらは、いかにも商品の原材料表示(「果実」「野菜」)と見える言葉を含む商標であるが、他の言葉(「こだわりの」「楽園の」「伝説の」)と結びつくことによって、分断できない一つの商標と認識され登録されているのである。つまり、上記ABCの存在は、「こだわりの果実」「楽園の果実」「伝説の野菜」が全体として観察され分断できない商標と認識されなかったならば、説明がつかない。

 本願商標「とっておきの果実」と両引用商標「とっておき」の関係も、まさしくこれらの関係と同様であろう。殊に、Aの「こだわり」と「こだわりの果実」との関係などは、その意味合いも含めて本願商標のケースと似たようなケースである。よって、これらが登録できて、本願商標が登録できないとされるいわれはない。

 このように、本願商標は、1.前段と後段を分けることなくあくまで一連に書した態様であること、2.全体としてまとまった特定の意味合いを観念させるものであり、分断して発音すべき理由がないこと、3.「とっておきの」の部分も「果実」(カジツ)の部分も軽重の差なく称呼できること、4.全体として一連に称呼して語呂がよく称呼しやすいこと、それ故、一連に称呼するのが自然であると考えられること、5.現に果実等を原材料に用い得る分野においても、原材料を表す言葉「果実」等と他の言葉「とっておき」等との結合商標である場合には、あくまで全体として一つの商標と捉えて登録されているのが実状であること、等の理由から、本願商標はあくまでも「とっておきの果実」と一連一体にのみ称呼されるものと思料する。

 そこで、本願商標の称呼である「トッテオキノカジツ」と引用商標の称呼である「トッテオキ」とを対比すると、「ノカジツ」の称呼の有無によって、両者は音数及び語感語調が全く異なり明確に識別できると考えるので、両者は称呼上も相紛れることのない非類似の商標であると考える。

(6) 以上のように、本願商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても、紛れることのない非類似の商標である。

 

ケース27 本願商標:「ShareWizard」

1.出願番号  商願2000-46174

2.商  標   「ShareWizard」

3.商品区分  第9類:電子機械器具及びその部品

4.適用条文    商標法第4条1項6号、第4条第1項第11号

5.拒絶理由  ① 本願商標は、その構成中に、「ある機能を使用するときに必要な設定作業を対話的に案内してくれる機能」を意味する「Wizard」の文字を有してなるものであるから、これを本願指定商品中、例えば「上記機能に関する電子計算機用プログラムを記憶させた記録媒体,当該記録媒体を搭載(内蔵)した機器」等、上記文字に照応する商品以外に使用するときは、その商品の品質について誤認を生じさせるおそれがある(4①6)。

 ② 本願商標は、第4368030号「SHARE」に類似する(4①11)。

6.意見書における反論

(1) 拒絶理由通知書の理由①において、本願商標は、その構成中に、「ある機能を使用するときに必要な設定作業を対話的に案内してくれる機能」を意味する「Wizard」の文字を有してなるものであるから、これを本願指定商品中、例えば「上記機能に関する電子計算機用プログラムを記憶させた記録媒体,当該記録媒体を搭載(内蔵)した機器」等、上記文字に照応する商品以外に使用するときは、その商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当すると認定された。

 しかしながら、成る程「Wizard」の文字には、“対話形式によるソフトウェアのガイド機能”の如き意味合いがあるのかもしれないが、本願商標の如く、他のある文字と「Wizard」の文字とが連結された一連一体の商標の場合にあっては、「Wizard」の文字を商品の品質表示用語と見るべきではない。

  本願商標にあって「Wizard」の文字は、「魔術師、手品師、名人、達人」等の意味を有する単語であるから、前段の「分け前、割り当て」等を意味する「Share」の文字と結びついて、全体として「割り当て名人」の如き特定の観念を生じさせるものである。このように本願商標は、全体を一体に把握して初めて一つの特定の観念を生じさせるものであって、前段と後段とを分断して把握したのでは意味がない。それ故、これに接する取引者・需用者は、本願商標を分断して称呼するようなことはないと思料する。

  過去の登録例を見ても、現行第9類を指定商品とする登録商標のうち、「Wizard」の付く登録商標は多数存在するが、やはり、「Wizard」は審査官の言うような品質表示と扱われるようなことはなく、他の文字と一体となって一つの識別力ある商標を構成するものとして扱われている。

  例えば、以下の例は、第9類において、「Wizard」の文字を含む商標であるが、これらの商標は全て、審査官の指摘するような限定を指定商品に付することなく登録されたものである。つまり「必要な設定作業を対話的に案内してくれる機能に関する電子計算機用プログラムを記憶させた記録媒体,当該記録媒体を搭載(内蔵)した機器」等の限定又はこれに類する限定は、これらの登録商標に係る指定商品には全く付されていない。

 a.第3263684号(H09.02.24登録)「NetWizard」(第1号証)、

 b.第3331092号(H09.07.11登録)「SuperWizard/スーパーウィザード」(第2号証)、

 c.第4085055号(H09.11.21登録)「ViewWizard」(第3号証)、

 d.第4142953号(H10.05.08登録)「CutWizard/カットウィザード」(第4号証)、

 e.第4183373号(H10.09.04登録)「ScanWizard」(第5号証)、

 f.第4243819号(H11.02.26登録)「PANORAMA WIZARD」(第6号証)、

 g.第4365086号(H12.03.03登録)「ServerWizard」(第7号証)、

 h.第4392087号(H12.06.16登録)「BusWizard」(第8号証)、

 i.第4446430号(H13.01.19登録)「ReplicationWizard」(第9号証)。

 もし、審査官が言うように、「Wizard」の文字が直ち対話形式のガイド機能を有するソフトウェア等の意味合いを起こさせ、商品の品質を表示するものに過ぎないとすれば、「Wizard」の文字を含む商標に係る指定商品は、「ある機能を使用するときに必要な設定作業を対話的に案内してくれる機能を備えた○○○○」とでも記載しなければ登録にならないということになるのであろうが、実際には、その様な限定を付さなくとも第1号証~第9号証のように数多く登録されている。

 しかも、これらの登録例は、何十年も前の話というのではなく、ごく最近(5年以内、最近では今年)の登録例であって、決して時代の変遷により意味合いが変更されてきたという理屈で片付けられるような時間的なずれはない。

 本願商標に係る指定商品にのみ、審査官の指摘するような限定を指定商品に付さなければならないという理由は全くないであろう。

  よって、本願の指定商品は、この記載のままでも、今までの登録商標と同様に商品の品質について誤認のおそれはなく、商標法第4条第1項第16号に該当することはないものと思料する。

(2) 次に、拒絶理由通知書の理由②において、本願商標は、登録第4368030号商標「SHARE」(以下、引用商標という)と同一又は類似であって、その商標に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当すると述べている。

 しかしながら、本願商標はあくまでも「ShareWizard」という一連一体の商標であって、「Share」のみを要部として把握できるようなものではないから、前記審査官の認定には承服できず、以下に意見を申し述べる。

  まず、本願商標は、英語で「分け前、割り当て」等を意味する「Share」の文字と、同じく「魔術師、手品師、名人、達人」等を意味する「Wizard」の文字とを連結して一体一連に構成した態様であるから、「ShareWizard」全体で、「割り当て名人」とか「割り当ての魔術師」とかの特定の観念を生じさせるものである。

 それ故、本願商標は、この特定の観念をイメージさせるために常に一連一体に把握すべき商標であって、前段の「Share」と後段の「Wizard」とを分断して別々に把握すべきものではないと考える。別々に称呼・観念したのでは、「割り当て名人」という特定の観念が生じ得ず、従って、そのような分断の仕方は取引者・需用者がするはずはないし、出願人も予定してはいない。

  しかも、本願商標は、前段の「Share」と後段の「Wizard」とが軽重の差なく、且つ間隔を開けることなく一連に配置されているので、一連に「シェアウィザード」と称呼するのが自然であって、わざわざ前段と後段を分断して称呼するようなことはない。

  このように、本願商標は、常に「ShareWizard」と一体に把握し、称呼観念すべき商標である。

  これに対し、引用商標は、あくまでも英語の「SHARE」からなるものであって、単に「分け前、割り当て」等の観念を生じ、単に「シェア」の称呼を生じるものである。

 従って、本願商標の「ShareWizard」は、引用商標「SHARE」とは、外観、称呼及び観念において、紛れることのない非類似の商標であると考える。

  このことは、例えば、日本ビクター株式会社の登録商標第1727816号「PANORAMA/パノラマ」(昭和59年11月27日登録)(第10号証)が存在するにも拘わらず、その後の出願に係り且つ指定商品を同一又は類似とするキャノン株式会社の「PANORAMA WIZARD」(平成11年2月26日登録:前記第6号証)が登録されている事実からも伺い知ることができる。

 つまり、審査官のような見方をもし仮にしたならば、「PANORAMA WIZARD」は「PANORAMA/パノラマ」の存在によって拒絶されていなければならないはずなのに、現実には登録されているのである。

  これは、「PANORAMA WIZARD」の商標を一体の商標として把握したからに他ならない。本願商標とて同様であろう。常に、一体のものとして把握すべきものである。

 以上のような次第であるので、本願商標と引用商標とは、外観および観念上類似しないことは勿論、称呼上も語感語調を全く異にし、聴者をして決して紛れることはないものと思料する。

 よって、本願商標と引用商標とは非類似の商標であり、本願商標は商標法第4条第1項第11号の規定に該当するものではないと考える。

(3)以上のように、本願商標は、商標法第4条第1項第16号の規定に該当するものでも、商標法第4条第1項第11号の規定に該当するものでもないと考えます。

 

ケース28 本願商標:「山麓の味わい」

1.出願番号  商願2000-74446

2.商  標   「山麓の味わい」

3.商品区分  第29類:乳製品

4.適用条文    商標法第3条第1項第6号

5.拒絶理由  単に商品の品質を暗示させる、販売促進用のキャッチフレーズの一類型であるから、自他商品力がない。

6.意見書における反論

(1)拒絶理由通知書において、審査官殿は、「本願商標は、『山麓の味わい』の文字を普通に用いられる方法で書してなるところ、近時、本願指定商品との関係の深い食品業界において、商品の品質の多様化の一として、『自然に育まれた原材料を活かした食感の食品』であることをその特徴とする商品の製品化が図られている実情がみられることよりすれば、全体として『自然に育まれた原材料を活かした食感』の意味合いを端的に表したと看取させるにすぎないものであるから、このようなものを出願人が本願指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、単に商品の品質を暗示させる、販売促進用のキャッチフレーズの一類型であると理解するに止まり、何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものと認めるから、この商標登録出願に係る商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する」と、認定されました。

 しかしながら、本出願人は、本願商標の「山麓の味わい」は充分に自他商品識別標識として機能する商標であると思料しますので、上記認定には承服できず、以下に意見を申し述べます。

(2)本願商標の「山麓の味わい」は、審査官殿のご指摘によれば、全体として「自然に育まれた原材料を活かした食感」の意味合いを端的に表したと看取させるにすぎないとのことでありますが、仮にそのような意味合いを端的に表すとしたら、「自然の味わい」とか「自然の食感」とでも表現するのが普通でありましょう。

 「山麓の味わい」は、言い換えれば、「山のふもとの味わい」、「山すその味わい」と言うことであって、その意味合いを具体的に考えてみても、一体どのような味わいを指すものなのか、端的に言い得ないものと思料します。ましてや、「自然に育まれた原材料を活かした食感」の意味合いと直接に結びつくものではないと考えます。「山麓の味わい」は、もっと漠然としたものであって“一体どのような味わいが山麓の味わいなのか”明確に言うことはできないはずであります。それが何故に、「自然に育まれた原材料を活かした食感」の意味を表すに過ぎないと言いきれるのか甚だ疑問であります。つまり、「山麓の味わい」は一定の品質を端的に表示するような言葉ではないはずであります。

 ただ、審査官殿の言われるように、本出願人は、本願商標の選定に際し、取引者・需用者が自然の良いイメージを思い浮かべるようにネーミングしたことも事実であります。しかし、これはむしろ当然のことであります。飲食物に対して、人工的な体に悪いイメージを思い浮かべるようなネーミングを誰もするはずがありません。しかし、そのような自然の良いイメージを思い浮かべるからと言って、これが直ちに品質を端的に表すものだと言うことにはなりません。単に間接的に表示するに過ぎません(例えば、商標法第3条第1項第3号の商標審査基準では、「品質を間接的に表示する商標は、本号の規定に該当しないものとする」としております)。

(3)審査官殿は、拒絶理由通知書の中で、本願商標を「単に商品の品質を暗示させる、販売促進用のキャッチフレーズの一類型であると理解するに止まる」というようなことを述べておられますが、新鮮な品質を暗示させ、良いイメージを需用者に植え付け、販売を促進できるような商標を選定することは、商品を製造し販売する者にとって、むしろ当然のことであります。そのような姿勢で商標を考えるのが普通であります。そのような良好なイメージを暗示させるとしたら、そのネーミングはむしろ成功であるにもかかわらず、そのことを以て、単にキャッチフレーズに過ぎないから拒絶するというのでは、如何にも短絡的に過ぎると考えます。本願商標は、一種の熟語を構成するものであって、人の注意を引くように工夫した宣伝文句(キャッチフレーズ)ではありません。キャッチフレーズであれば、もっと人目を引くような文句を考えるはずであります。

 あくまでも本願商標「山麓の味わい」は、全体として一つの熟語を構成するもので、自他商品識別力を発揮する商標であります。例えば、牛乳のパッケージに大きく「山麓の味わい」と付して販売すれば、これを扱い購買する取引者・需用者は「山麓の味わいブランド」の牛乳と認識し、取り引きするものと思料します。単なるキャッチフレーズと認識するようなことはないと考えます。

 以上のように、本願商標「山麓の味わい」は、あくまでも自然のイメージを暗示する、即ち間接的に表示するだけであって、直接的にある一定の品質を表示するような性質のものではありません。まして、キャッチフレーズでもありません。したがって、本願商標は充分に自他商品識別力を発揮し得る商標であると思料します。

(4)ところで、過去の商標登録例を見ても、例えば、(A)登録第4273744号「自然な味わい」(平成11年5月21日登録:サッポロビール株式会社:第32類「ビール,果実飲料,乳清飲料他」、第3条第2項の適用無し)や、(B)登録第4365165号「さわやか高原の味」(平成12年3月3日登録:カゴメ株式会社:第29類「乳酸菌飲料,その他の乳製品他」、標準文字)などが、登録されています。

 審査官殿のような考え方に従えば、「自然な味わい」などは、正しく「自然に育まれた原材料を活かした食感」を表すもので、識別力がないと言うことになるのでありましょうが、実際には登録されております。

 また、「さわやか高原の味」なども、審査官殿のような考え方に従えば、正しく「さわやかな高原の自然に育まれた原材料を活かした味」を表すもので識別力がないと言うことになるのでありましょうが、これも登録されております。

 つまり、これらの商標は、「単に商品の品質を暗示させる、販売促進用のキャッチフレーズの一類型である」というような判断は下されていないわけであり、充分に識別力を備えた商標として登録されているのであります。

 然るに、このような商標「自然な味わい」や「さわやか高原の味」が登録できて、本願商標「山麓の味わい」が登録できないというのは、到底納得できないものであります。

 

ケース29 本願商標:「Smart CRM Solution」×引用商標「CRM」

1.出願番号  商願2000-57968

2.商  標   「Smart CRM Solution」

3.商品区分  第42類:顧客関係管理を行う電子計算機用プログラムの設計等

4.適用条文    商標法第4条第1項第11号

5.拒絶理由  「CRM」の商標と類似する。

6.意見書における反論

(1)拒絶理由通知書において、本願商標は、

 1.登録第4268725号(商願平10-007983)の商標(引用商標1)、または

 2.商願平11-078390号の商標(引用商標2)

と同一又は類似であって、その商標に係る指定商品(指定役務)と同一又は類似の商品(役務)について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当し登録を受けることは出来ない、と認定されました。

  しかしながら、本願商標と引用商標1,2とは、外観・称呼及び観念の何れにおいても類似することのない非類似の商標であると思料しますので、斯かる認定に承服できず、以下に意見を申し述べます。

  なお、本出願人は、指定役務をより明確にすると共に、商標の構成文字の一部が意味する役務の概念と整合させるため、本日付けで手続補正書を提出し、指定役務を第42類「顧客関係管理を行う電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守,電子計算機を用いて行う顧客関係処理システムの構築・導入に関する助言,顧客関係管理を行う電子計算機用プログラムの設計・保守に関する助言」に改める補正を行いました。

(2)まず、本願商標と引用商標1,2の構成態様を見ると、本願商標は、願書の商標見本からも明らかなように、欧文字で「Smart CRM Solution」と横書きした態様からなるものであり、これに対し、引用商標1は欧文字で「CRMvision」と横書きしてなり、また、引用商標2は、「六角図形」の真ん中に「CRM」と大きく表し、かつその下にやや小さく「CONFERENCE &\EXPOSITION」と二段に書し、更に図形の内側外周に「eCRM」「SALES」「TECHNOLOGY」「IMPLEMENTATION」「MARKETING」「CUSTOMER\INTERACTION」の欧文字を配して成るものであります。

  そこで、この商標態様を分析してみますと、本願商標と引用商標1,2に共通する文字として、「CRM」の欧文字が存在します。そのため審査官殿は、この共通する「CRM」の欧文字を商標の要部と認定して今般の拒絶理由通知を発してきたのだと思料しますが、この「CRM」はビジネスにおける顧客管理コンピュータソフトの開発などの電子計算機用プログラムの設計・作成等の役務分野においては、「Customer Relationship Management」(顧客関係管理)の略として使われております。従って、本願商標の指定する役務分野においては、「CRM」単独では商標の要部とはなり得ない言葉であり、それ故、この部分を抽出して類否判断を行うことは妥当ではないと考えます。

 つまり、「CRM」の文字は、電子計算機用プログラムにあって、そのプログラムがどの様な内容のものであるかを示す一種の品質表示的、内容表示的な言葉でしかないわけであります。このことは、用語事典等を繙いてみれば明かであります。例えば、

 A.日経BP社発行の「日経BPデジタル大事典 2000-2001年版」第1078頁(2000年3月20日第3版発行)(第1号証)によれば、「CRM」は「Customer Relationship Management」(顧客関係管理)の略で、「顧客と接する機会のあるすべての部門で顧客情報とコンタクト履歴を共有・管理し、どのような問い合わせがあっても常に最適な対応ができるようにしようという概念。」と説明しています。また、

 B.株式会社I&E神蔵研究所発行の「要点チェック式インターネット用語事典」第771頁(2000年9月15日第1版発行)(第2号証)によれば、「CRM(Customer Relationship Management)とは、企業収益の向上を目的として、顧客生涯価値(LTD:Life Time Value)の最大化を尺度とし、顧客とのリレーションシップの形成、維持を行うあらゆる企業活動(製品開発、マーケティング、営業活動、サービスなど)を統合的に管理する概念」で、ポイントは、「顧客の属性情報(性別、年齢、趣味など)に加えて、顧客が、企業との接点(店舗、コール・センターや営業担当者、さらにインターネットなど)で発信したいろいろな情報を一元的に管理し、企業全体で共有し、一貫性のある顧客への対応を通じて、顧客と企業との間に深い信頼関係を構築、維持することが可能」であると説明しています。

  したがって、「CRM」の欧文字を、顧客関係管理を行う電子計算機用プログラムの開発等の役務に用いた場合には、単にその役務がCRMの分野に関係するソフトの開発役務であることを表すに過ぎません。何ら出所を表示することはなく、自他役務の識別力を発揮する文字ではありません。つまり、「CRM」の文字は、あくまでも、本願指定役務との関係にあって、単に顧客関係管理を行うソフトウェアの開発役務を意味する内容表示でしかなく、「CRM」単独で自他商品識別力を発揮し、出所を表示するような機能を備えてはおりません。

(3)以上の前提の下に、本願商標と引用商標1,2との外観、称呼、観念を観察しますと、まず、外観の点では、上述の如く商標の構成態様が全く異なり、類似するものでなことは明かであります。

 また、観念の点についても、本願商標は、上記態様より、「精密で高感度なCRM(顧客関係管理)の解決策」の如き意味合いを暗示させる商標であるのに対し、引用商標1は「CRM(顧客関係管理)の見方、理想像」の如き意味合いを暗示させ、また、引用商標2は「CRM(顧客関係管理)/協議と説明」の他に、「eCRM」や「顧客とのふれあい」、「説得の議論」、「技術」、「実行」、「マーケティング」などの意味合いの言葉をちりばめたものでありますので(結局まとまった観念は生じません)、本願商標と引用商標1及び2とは、観念上も類似するものではありません。

(4)そこで、次に称呼の点につき検討しますと、本願商標及び引用商標1,2から、識別力のない「CRM」の文字を単独で抽出すべきでないことは先に述べたとおりでありますので、本願商標は、一連に「スマートシーアールエムソリューション」と称呼すべきものと思料します。また、本願商標は、称呼的にやや冗長なところがありますので、短縮される場合には、「スマートシーアールエム」とか、「シーアールエムソリューション」程度の称呼は発生する可能性があります。

 これに対し、引用商標1は、前記態様より、一連に「シーアールエムビジョン」の称呼のみ生じるものと思料します。

 また、引用商標2は、上述の如く、「六角図形」の真ん中に「CRM」と大きく表し、かつその下にやや小さく「CONFERENCE &\EXPOSITION」と二段に書し、更に図形の内側外周に「eCRM」「SALES」「TECHNOLOGY」「IMPLEMENTATION」「MARKETING」「CUSTOMER\INTERACTION」の文字をちりばめていますが、これらの文字構成は全て説明文に過ぎません。

 そして、中央に大書された「CRM」の文字からは単独で「シーアールエム」の称呼が生じるかも知れませんが、もしそうだとしても、これはあくまでも単独では識別力のない部分、即ち質又は内容等を表示したに過ぎない部分と理解され、類否判断の対象とすべき称呼とはならないと考えます。類否判断の対象となるのはあくまでも商標の要部であるからです。

 そして又、この引用商標2は、大書された「CRM」の他にこれといって特定の文字をとらえて称呼するような文字は見つかりません。六角図形との兼ね合いで商標登録適格性を備えているとされることも考えられなくもありませんが、基本的にはありふれた図形と、役務の質、或いは記述的説明を表した文字からなるもので、本願指定役務との関係においてはありふれた文字及び図形の組み合わせにすぎないものであり、このようなものを出願人が本願指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者は、何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものと考えます。なお、この引用商標2は、別の理由であるようですが、平成13年4月20日付けで拒絶査定を受けており(第3号証の商願平11-78390出願情報参照)、本願商標の引例としてはふさわしくありません。

  以上の次第ですので、本願商標は引用商標1,2と称呼的にも類似するものではないと考えます。

(5)このように、本願商標と引用商標1,2とは、外観および観念上類似することはないと共に、称呼上も、共通する「CRM」の文字が識別力のない文字であるためにそれが単独で称呼されることはなく(単独で称呼されても識別標識として機能しないため)、したがって、本願商標は「スマートシーアールエムソリューション」(又は「スマートシーアールエム」「シーアールエムソリューション」)と一連に称呼され、一方、引用商標1も一連に「シーアールエムビジョン」と称呼され、引用商標2は確定した称呼が生じにくいため(尤も拒絶査定を受けている)、これらは、語感語調を全く異にし、聴者をして決して紛れることはないものと思料します。

 よって、本願商標と引用商標1,2とは非類似の商標であり、本願商標は商標法第4条第1項第11号の規定に該当するものではないと考えます。

 

ケース30 本願商標:「四季彩美」×引用商標「四季彩味」

1.出願番号  商願平11-92090

2.商  標   「四季彩美」

3.商品区分  第29類:乳製品等

4.適用条文    商標法第4条第1項第11号

5.拒絶理由  「四季彩味」と類似する。

6.意見書における反論

(1) 拒絶理由通知書(発送番号121312)において、本願商標は、商願平11-055739号の商標と同一又は類似であって、指定商品も同一又は類似するものであるから、商標法第4条第1項第11号の規定に該当し、登録を受けることができないと認定された。

 しかしながら、本出願人は、本願商標と引用商標とは、外観,称呼および観念のいずれにおいても類似せず、取引者・需用者に出所の混同を起こさせるおそれのない非類似の商標であると思料するので、斯かる認定に承服できず、以下に意見を申し述べる。 

(2) まず、本願商標は、漢字のゴシック体で「四季彩美」と横書きしてなるものであるのに対し、引用商標は、漢字の標準文字で「四季彩味」と横書きしてなるものである。したがって、両者は、語尾音の「美」と「味」の違いがあり、外観上類似するものではないと思料する。

(3) 次に、観念の点についてみると、本願商標の「四季彩美」と引用商標の「四季彩味」とは、共に特定の観念を生じさせる四字熟語として確立されたものではなく、あくまでも4つの漢字を組み合わせて造った造語商標である。したがって、両商標は、ある特定の観念を直接的には生じさせるものではない。

 そして、その造語商標を構成する文字の意味合いからして、本願商標の「四季彩美」は「春・夏・秋・冬の四季を彩る美しさ」(視覚的なもの)を間接的に暗示させるものであり、一方、引用商標の「四季彩味」は「春・夏・秋・冬の四季を彩る味」(味覚的なもの)を間接的に暗示させるものである。

  つまり、両商標は、直接的には明確な観念を生ぜず、観念上も類似することはないと共に、間接的には、本願商標は視覚的なもの(beauty、美しさ)をイメージさせ、引用商標は味覚的なもの(tasteflavor、味、におい等)をイメージさせるものであって、全く違った印象を与えるものである

 したがって、本願商標と引用商標とは、観念上も類似することのない非類似の商標である。

(4) そこで、以下、称呼の点につき検討するに、本願商標は、上述のように、一連に「四季彩美」と書してなるものであるから、この態様より「シキサイビ」と称呼されるのに対し、引用商標は「四季彩味」の態様より、「シキサイミ」と称呼されるものである。

  したがって、両商標の称呼上の差異は、語尾音の「ビ」と「ミ」の1音であって、他の音構成を共通にしている。しかしながら、両商標における「ビ」と「ミ」の違いは、以下の理由により、両者を区別するに十分な差異であると思料する。

 即ち、

 ① 語尾音における「ビ」と「ミ」の1音相違とは言っても、全体の称呼が4音という比較的短い音構成の中における相違であって、称呼全体に占めるこの「ビ」と「ミ」の比重は、決して小さくない。

 ② また、「ビ」の音は濁音であって濁って発声される音であるのに対し、「ミ」の音は清音であって濁らずに澄んで発声される音であるので、両者はその音質を異にする。

 ③ しかも、この「ビ」と「ミ」は、語尾音とはいっても、比較的明瞭に強く発声される音であるので、「ビ」と「ミ」の音質の差異が、比較的短い音構成と相俟って、両者の称呼全体に及ぼす影響は決して小さくない。

 以上のことから、これら両商標をそれぞれ一連に称呼した場合、語感語調を異にし、充分に聴別可能なものと考える。

 ところで審査官殿は、両商標に共通する「四季彩」の文字部分が特異であって、「美」と「味」の差異を凌駕しているとの認識の下に、両商標は類似すると判断しているのかもしれないが、「四季彩」の文字自体は決して特異なものではない。なぜなら、「四季彩」という文字自体は、引用商標において初めて用いられたものでも、引用商標のみにおいて使用されているものでもなく、他にも幾つか存在している。

 例えば、第30類においては、以下の商標が別人により登録されている。即ち、

 1. 登録第3318276号  四季彩華     …関尾 憲司

 2. 登録第4147600号  四季彩時記   …株式会社さえき

 3. 登録第4194744号  四季彩    …株式会社森田あられ

 4. 登録第4332065号  四季彩庵翠月有限会社吹田象屋

 5. 登録第4344035号   …ファンダースコーポレーション㈱

などである(これらを第1号証乃至第5号証として提出する)。

  したがって、「四季彩」という文字自体が共通するということを以て、両商標が類似するということは言えない。もし、「四季彩」が特別に顕著な言葉であってこの言葉を共通にするものは全て類似するということにでもなれば、この言葉を含む上記15の商標は、並行して登録されることはなかったであろう。したがって、やはり「四季彩」という文字の共通性にのみにとらわれることなく、あくまでも「美」と「味」を含めた全体としての商標の類否を判断するという態度が妥当なはずである。

 然るに、本願商標「四季彩美」(シキサイビ)と引用商標「四季彩味」(シキサイミ)とは、商標全体の中における視覚的な美しさをイメージさせる「美」(ビ)と、味覚的な“あじ”をイメージさせる「味」(ミ)の差異があり、この差異が両商標の称呼全体に及ぼす影響は大きいものと思料する。それ故、これらは互いに称呼上紛れることのない非類似の商標であると考える。

(5) 以上のように、本願商標と引用商標とは、外観および観念上類似しないことは勿論、称呼上も比較的短い音構成におけるアクセントのある濁音「ビ」と清音「ミ」の称呼の差異によって、全体から受けるイメージと共に、称呼全体の語感語調を全く異にし、聴者をして決して紛れることのない非類似の商標であると思料する。

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*以上参考までに実例を挙げて見ました。これらは、全てこの意見書により、審査官の考えを変えさせ、登録にもっていったケースです。

  審査官も考え違いをしている場合がありますし、取引の実情から全く懸け離れたような判断を下す場合もあります。従って、納得できなければこのように積極的に反論すべきです。審査官も正当な理由があると認めれば(「なるほどな」と思わせれば)、考えを改めるはずです。                                      

 なお、この中には審判のケース、即ち、審査官の認定は不当であったとして審判官がその判断を覆し、登録を認めたケースも含まれています。

 

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