◆意見書対応の重要性◆ 第4弾
商標の中途受任引き受けます!
難しそうな案件でも、是非登録しておきたいという思い入れのある商標は、登録の可能性が少しでもありそうなら、きちんと反論しましょう。
登録になることが結構あります。
特許庁から拒絶理由通知をもらうと、ああ、ダメなんだと直ぐにあきらめていませんか。
おかしいなと思ったら、積極的に意見書を提出して反論すべきです。審査官を説得すれば登録できます。
:拒絶理由通知・拒絶査定の対応にお困りの場合は、連絡を下さい。対応致します。
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第4弾として、ケース31~40を紹介します。
2017-07-21 S.Ogawa
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ケースNO. 目 次 適用条文
ケース31:本願商標「内面美容」第32類 果汁関係…………3①6
ケース32:本願商標「SuperJ Engine/スーパージェイエンジン」×引用商標「ENGINE」「エンジン」第9類:電子応用機械器具及びその部品 他……4①11
ケース33:本願商標「HAND DRIP CAFE EXQ.エクスキ」…4①16他
ケース34:本願商標「AdMail」
第38類 電子メールによる通信……3①3
ケース35:本願商標「Assam HelpDesk/アッサムヘルプデスク」
第9類…4①16,4①11
ケース36:本願商標「Club Access24/クラブアクセス24」×ACCES/アクセス」
第28類:ゴルフクラブ 他……………4①15
ケース37:本願商標「B3/B-Three」第9類……3①5
ケース38:本願商標「BACKS GROUP」
×引用商標「BUCKS & 雄ジカ図形」…4①11
ケース39:本願商標「BACKS」
×引用商標「BUCKS & 雄ジカ図形」ほか……4①11
ケース40:本願商標「鹿の子茶屋」…… 3①3,4①16
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ここに挙げたものは、私が実務において、特許庁審査官等から受けた拒絶理由通知等に対し、反論した「意見書、審判請求書等」の具体例です。何の訂正もない、生のものです。
指定商品又は指定役務の限定補正により登録になったケースというのは勿論沢山ありますが、ここに挙げたものは、補正をすることなく、あるいは補正をしても抵触する指定商品を含みながら意見書や審判での主張で審査官等の考えを覆したケースです。
意見書を提出してもあまり通ったことがないと言うような話も聞いた事がありますが、審査官の拒絶理由に納得がいかなければ積極的に反論すべきです。そして、ここに掲げたように、各事例ごとの主張の仕方によっては審査官等の考えを覆すことが出来るのです。参考にしていただければ幸いです。ここに挙げたものはその後全て登録番号が付され商標権が成立しております。
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ケース31 本願商標:「内面美容」
1.審判番号 平成11年審判第6437号(商願平8-67398号)
2.商 標 「内面美容」
3.商品区分 第32類:清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース等
4.適用条文 商標法第3条第1項第6号
5.拒絶理由 「内面美容食品」「内面美容の一環として健康食品~」等の
文章が新聞記事にあり。商品の品質、特徴等を簡潔に表す
宣伝文句と理解されるに過ぎない。
6.審判における反論(請求の理由)
Ⅰ.審判請求書
(1)手続の経緯
出 願 平成 8年 6月19日
拒絶理由の通知 平成10年10月30日(起案日:平成10年10月14日)
(第1回目) *根拠条文:商標法第3条第1項第6号。
*理由:全体として「体の内側(体内)から美しくする」
程の意味合いを認識させるものであるから、
商品の品質、特徴等を簡潔に表す宣伝文句にすぎない。
意 見 書 平成10年11月13日
拒絶理由の通知 平成11年 1月22日(起案日:平成10年12月24日)
(第2回目) *根拠条文:商標法第4条第1項第11号。
*理由:本願は、登録第3364315号「明力」と類似する。
意 見 書 平成11年 1月29日
拒 絶 査 定 平成11年 3月17日
*平成10年10月14日付で通知した理由(第1回目理由)
同 謄 本 送 達 平成11年 4月 9日
(2)拒絶査定の理由の要点
原査定の拒絶理由は、「本願は、平成10年10月14日付けで通知した理由(第1回目の拒絶理由)によって、拒絶をすべきものと認める。なお、出願人は意見書において種々述べているが、さきの認定を覆すに足りないというものであり、具体的には、本願商標は、「内面美容」の文字を表してなるところ、その指定商品を取り扱う食品業界では、消費者の健康志向より「健康・美容と銘打って商品の宣伝活動を活発に行っていること、かつ「内面美容食品」「内面美容の一環として健康食品~」等の文章が新聞記事(化学工業日報社)に掲載されていることより、全体として「体の内側(体内)から美しくする」ほどの意味合いを認識させるものであるから、これをその指定商品に使用しても需用者・取引者は、該商品の品質、特徴等を簡潔に表す宣伝文句と理解するにすぎず、何人かの業務に係る商品であるかを認識することはできない商標と認める。よって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当するというものである。
(3)本願商標が登録されるべき理由
然るに、本出願人は、前記第1回目の拒絶理由に対しては、平成10年12月9日付けで意見書を提出し、飲料業界の実情や他の登録例等を示しながら、本願商標は拒絶理由には該当しないことを主張したところ、その後、平成11年1月22日(起案日:平成10年12月24日)付けで別の理由に基づく第2回目の拒絶理由通知を発してきたので(この第2回目の拒絶理由は、登録第3364315号の「明力」という商標と類似するとの認定であり、商標法第4条第1項第11号を根拠条文としていたが、これに対しては、類似しない旨の主張を平成11年1月29日付けの意見書で行っている)、第1回目の拒絶理由はクリアーしたものと思っていたところ、今般、この第1回目の拒絶理由に基づいて拒絶査定を行ってきたことに対しては釈然としないものがある。
そこで、ここに審判を請求し、再度のご審理を願う次第である。
① 本願商標の構成
本願商標は、願書に添付した商標見本から明らかなように、漢字で一連に「内面美容」と書した態様からなるものであり、且つ指定商品を第32類の「清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,乳清飲料」とするものである。
② 審査官の認定に対する反論
(a) 然るに本願商標の「内面美容」は、その言葉全体から受ける印象として、審査官も第1回目の拒絶理由通知書で指摘するように、全体として「体の内側(体内)から美しくする」程の意味合いを暗示させるものであることを否定するものではないが、そして、その言葉が化学工業日報社の新聞に掲載されていた事実があったと言うことを積極的に否定するものではないが(実際のところは、新聞の日付等が提示されておらず、不知である)、それはたまたま掲載されていただけのことであろう。
そして仮に、そのような宣伝活動(掲載)の事実があったとしても、ジュース類を取り扱う飲料業界において「内面美容」の言葉が頻繁に使用され、しかも「内面美容」がそのような意味合いの言葉として飲料業界において確立されたものとなっていると言う事実はない。
従って、ジュース類に「内面美容」と付してその商品を販売したからと言って、その商品が直ちに、内面から美しくなるといった品質・効能・特徴等を有するジュース類であるなどと、取引者・需用者が認識するものではなく、商標的使用態様で「内面美容」を使用すれば、あくまで「内面美容」ブランドの商品であると認識するに止まるものと思料する。
(b) 本出願人は先の意見書でも述べたように、飲食品分野において、「深層美容」の言葉を商標として出願したが(第29類、第30類、第32類)、これらの商標は全て、登録第4002143号(第29類)、同第3360540号(第30類)、同第3362730号(第32類)として登録されている(第1号証乃至第3号証の商標公報参照)。即ち、「深層美容」ブランドの乳製品や茶や菓子やパンやジュースなどが存在している訳である。「深層美容」は「人体の深い層、奥深く隠された部分から美しくする」程の意味合いを有するであろうから、「内面美容」(体の内側(体内)から美しくする)と同様な趣旨の言葉と理解することができる。然るに、同様な趣旨の言葉である「深層美容」が登録できて「内面美容」が登録できないとするいわれはないと考える。
(c) しかも本出願人は、美しさをまさに追求すべき、第42類「美容,理容」の役務分野においてすら、「深層美容」は勿論(第4066969号:第4号証参照)、本願商標と同じ「内面美容」の商標を既に登録しているのである(第4136347号:第5号証参照)。
このことは、「深層美容」と同様に、「内面美容」の言葉も、未だ一般的に認知され、確立されている言葉とは言えないとの証左ではないかと思料する。そうだとすれば、飲料の分野においても、美容・理容分野の「内面美容」と同様に、その登録を認めて不都合はないはずである。
このように、「内面美容」の商標は、第42類の美容,理容の分野では既に登録されている(第4136347号:第5号証参照)。
然るに、この第32類の分野において拒絶されるいわれはない。審査官も、第1回目の拒絶理由通知書に対する意見書で納得して頂いたからこそ、別の理由に基づく第2回目の拒絶理由通知を発してきたのではないかと思料するが、一度納得したと思われるものをどういう心境の変化か、拒絶査定の理由に掲げてきたことには納得できないものがある。第2回目の理由で拒絶査定ということであればまだしも、第1回目の理由に戻り拒絶査定というのでは、その間に費やした時間はいったい何であったのか。しかも、第2回目の拒絶理由通知書の引例が成る程と思えるような引例であればまだしも、まるで類似しているとは思われない「明力」という商標を引例に引いてきて、その後にその理由とは全く関係のない第1回目の理由を拒絶査定で挙げてくるというのは、如何なものか。これでは単に余分な時間を費やしていたというにすぎないのではないか。商標の審査は査定時判断であることを考えると、この余分な時間は出願人にとって不利に作用せざるを得ない。殊に、今回のような商標法第3条第1項各号関係を拒絶理由として挙げられたような場合には、時間が経てば経つほど、本出願人が商標として選定し且つ使用している「内面美容」の商標が世に出る機会が多くなり、それを他人が使い出すケースも増えてくる。そして、それを審査官が目に留めるケースも増えてくるであろう。それ故、一定の偏見をもってそれを見られたのでは、本出願人にますます不利とならざるをえない。第1回目の拒絶理由を出して意見書を受け取ってから、その後第2回目の拒絶理由を発して今回の拒絶査定を出すまでの時間は、一旦生まれた偏見をまた持ち出すに十分な時間である。審査官の審査遅延(本願商標は出願してから既に3年近くになろうとする。しかも第2回目の拒絶理由はまるで理由になっていない。)が原因であるにもかかわらず、本出願人が段々不利になっていくというのでは、どうも納得でないものがある。
(d) なお、本出願人は「内面美容」の商標を、第42類の他に、第3類:せっけん類,化粧品等(第4136346号)、第10類:医療用機械器具等(第4086204号)、第11類:美容引用・理髪店用機械器具(第4108498号)、第16類:雑誌,新聞(第4133687号)、第25類:被服,ベルト,履物等(第4086205号)においても、既に登録を受けているので、これらの登録公報を第6号証乃至第10号証として添付しておく。
(4)むすび
以上のように、本願商標の「内面美容」は、第42類の美容・理容分野で既に登録されているので、本願の第32類でも十分に自他商品識別機能を発揮し得る商標であるとして登録されるべきものと思料する。
Ⅱ.審判請求理由補充書(請求の理由)
先の平成11年6月16日付本件「審判請求書」において、本願商標と同一の「内面美容」の商標は、第42類、第3類、第10類、第11類、第16類、第25類の商品役務分野において、既に登録されている旨申し述べましたが、その後、第29類の飲食品分野(加工水産物,加工野菜及び加工果実,乳製品,食用たんぱく)においても、別紙第11号証の平成11年審判第2842号「審決」、及び第12号証の「商標登録証」に示すように、第4370047号として商標登録がなされております。
それ故、この第29類とほぼ同様な商品分野である、本願の第30類「コーヒー及びココア,茶,調味料,香辛料,食用香料(精油のものを除く。),食用粉類,食用グルテン,穀物の加工品,ミートパイ,ラビオリ,菓子及びパン,即席菓子のもと,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,アーモンドペースト,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,氷,酒かす」等の飲食品分野においても、この第29類と同様に、商標登録されてしかるべきものと思料します。
よって、速やかに「原査定を取り消す。本願商標は登録すべきものとする。」とのご審決を賜りますようお願い申し上げます。
Ⅲ.審決(当審の判断)
本願商標は、「内面美容」の文字を横書きしてなるところ、これより原査定がいうように、「体の内側(体内)から美しくする」という意味合いを看取する場合があるとしても、指定商品に関し、その効能、品質等を具体的かつ直接的に表示するものとも言い難いものである。
そうとすれば、本願商標は、一種の造語よりなる商標というのが相当である。
また、当審において職権をもって調査するも、該文字が、指定商品を取り扱う業界において、商品の効能、品質等を表示するものとして普通に使用されている事実は発見することができなかった。
してみれば、本願商標は、これをその指定商品について使用しても、自他商品識別標識としての機能を十分に果たすものであり、需用者が何人かの業務に係るものであるかを認識することができないものとすることはできない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当するものではない。
ケース32 本願商標「SuperJ Engine/スーパージェイエンジン」×引用商標1「ENGINE」、2「エンジン」
1.出願番号 商願2000-118213
2.商 標 「SuperJ Engine/スーパージェイエンジン」
3.商品区分 第9類:電子応用機械器具及びその部品 他
4.適用条文 商標法第4条第1項第11号
5.拒絶理由 「SuperJ Engine/スーパージェイエンジン」は
「ENGINE」と「エンジン」に類似する。
6.意見書における反論
(1) 拒絶理由通知書において、本願商標は、登録第4243616号(商願平4-116001)の商標(以下、「引用商標1」という)、及び登録第4356747号(商願平10-80857)の商標(以下、「引用商標2」という)と同一又は類似であって、その商標に係る指定商品と同一又は類似の役務に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当すると認定された。
しかしながら、本出願人は、本願商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても紛れることのない非類似の商標であると考えるので、前記認定には承服できず、以下に意見を申し述べる。
(2) 本願商標は、願書の商標見本から明らかなように、欧文字の「SuperJ Engine」を上段に、片仮名の「スーパージェイ エンジン」を下段にそれぞれ配置して、「SuperJ Engine/スーパージェイ エンジン」と二段併記した態様から成るものである。
これに対し、引用商標1は欧文字で「ENGINE」と書したものであり、引用商標2は片仮名文字で「エンジン」と書したものである。
したがって、本願商標と引用商標1,2とは、外観上類似しないことは明らかである。
(3) また、本願商標の「SuperJ Engine/スーパージェイ エンジン」は、上段欧文字の「SuperJ」と「Engine」、及び下段片仮名文字の「スーパージェイ」と「エンジン」との間にそれぞれやや間隔を開けた態様ではあるが、左右バランス良く配置されたものであって、その態様より、全体として「より優れたジェイのエンジン(機関,発動機)」の如き意味合いを看取させるものである(具体的且つ直接的にどの様な内容のものかは別として)。
これに対し、引用商標1,2は、その態様より、単に「エンジン(機関、発動機)」の観念を生ずるのみである。
よって、本願商標と引用商標1,2とは、観念上も紛れることのない非類似の商標である。
(4) そこで、次に称呼の点につき検討するに、本願商標の「SuperJ Engine/スーパージェイ エンジン」は、二段併記した態様であるが、全体が左右軽重の差なくバランス良く配置され、かつ上述の如く全体として「より優れたジェイのエンジン(機関,発動機)」の如き一つの意味合いを生じさせるものであるので、本願商標は一連に称呼するのが自然であり、取引者・需用者は常に「スーパージェイエンジン」と称呼するものと思料する。
この点に関し、審査官殿は、本願商標の要部は単に「Engine」「エンジン」の部分にあり、「エンジン」とのみ称呼される場合もあるとして、上記2つの商標を引用したのだと思料するが、これは誤った見方である。
拒絶理由通知書を見る限りにおいては、(a)「SuperJ/スーパージェイ」が要部となり得ないので、「Engine/エンジン」が要部だと見たのか、それとも、(b)左右にやや間隔を開けているから「SuperJ/スーパージェイ」と「Engine/エンジン」のそれぞれに要部があり且つ別々に分離して把握できると見て、引用商標1,2の「ENGINE」と「エンジン」を引用してきたのか定かではないが、いずれにしても本願商標を分断して把握する手法は誤ったものであると考える。
即ち、まず第1に、上記(a)の本願商標の「SuperJ/スーパージェイ」の部分は要部とはなり得ないのかという点であるが、本願商標前段の構成は「Super/スーパー」のみでなく、また「J/ジェイ」のみでなく、これらが一体に結合して「SuperJ/スーパージェイ」と書したところに特徴があり、従ってこの結合部分は十分に識別性を備えているものと思料する。つまり、「Super/スーパー」と「J/ジェイ」が結び付くことによって、この部分は一体不可分の構成要素になったのであって、この結合により識別力を有する(即ち、要部を構成し得る)と思料する。
そして、このことは、過去の登録例を見ても理解できる。例えば、本願と同一である第9類の相互に抵触する商品を含む商標権同士において、例えば、
A.登録第4165487号「SUPER DRY」(株式会社明電舎)(第1号証)と、登録第4417733号「DRY」(キャノン株式会社)(第2号証)の商標は併存しているが、これは、「SUPER DRY」を一体不可分の商標と認識し、単なる「DRY」とは異なる!とでも解釈しない限り、説明が付かない。また、
B.登録第2564773号「STAR」(スター精密株式会社(第3号証))と、登録第3226118号「SUPER STAR」(富士写真フイルム株式会社)(第4号証)の商標も併存しているが、これも、「SUPER STAR」を一体不可分の商標と見て、単なる「STAR」とは異なるとでも解釈しない限り説明が付かない。さらに、
C.登録第2625889号「PROJECT」(パイオニア株式会社)(第5号証)と、登録第2699457号「SUPERPROJECT」(コンピューター・アソシエイツ・インターナショナル・インコーポレーテッド:米国法人)(第6号証)の商標も併存しているが、これなども、「SUPERPROJECT」を一体不可分の商標と見て、単なる「PRPJECT」とは異なるものだ!とでも解釈しない限り説明が付かない。
このように、本願の指定商品分野においては、「SUPER」の文字は他の文字と結び付くことによって、その文字を修飾し、その文字と共に一体の識別力ある商標を形成していると理解できるのであるから、本願商標中の「SuperJ/スーパージェイ」の部分も識別力を備えた一体不可分の商標とみるべきである。
このことは又、例えば、同じく第9類を指定商品とする商願平8-128132の商標「SuperH」(日立製作所:平成8年11月15日出願)が、平成10年4月17日に第4136170号(第7号証)として商標登録されている事実からも伺い知ることが出来る。つまり、これなどは、「Engine/エンジン」の文字を含み且つ欧文字と片仮名文字を二段併記した本願商標に比べれば、欧文字で単に「SuperH」と横書きしただけの遥かに簡略な商標であるが、それでも識別力のある商標として登録されているのである。
然るに、この「SuperH」に識別力が認められて、本願商標の「SuperJ/スーパージェイ」の部分に識別力が認められないわけがない。それ故、この「SuperJ/スーパージェイ」の部分に識別力が認められないから「Engine/エンジン」の部分だけで商標を把握する、というような見方は間違いである。
そして第2に、上記(b)の点であるが、本願商標は、なるほど欧文字の「SuperJ」と「Engine」、及び片仮名文字の「スーパージェイ」と「エンジン」との間にそれぞれやや間隔を開けた態様ではある。
しかしながら、この間隔は単にブレスポイントを示したものであって、両者を分断するためのものではない。両者を分断して、それぞれに商標の要部があるとするような把握の仕方をして、例えば、要部は「エンジン」のみにもあるというような見方をしたのでは、「一体どんなエンジン」の意味合いがあるのかを理解することは出来ない。本願商標は、全体が一体に把握されてこそ「より優れたジェイのエンジン(機関,発動機)」という一つの意味合いが生じるのであって、全体として一つの意味合いを観念させるところに特徴がある。一つの意味合いを把握できる場合に、わざわざ分断してその商標を把握するような仕方は通常為されないであろう。
確かに、本願商標は一連に称呼してやや冗長な商標であることは否めない。しかし、ブレスポイントに倣って、「スーパージェイ・エンジン」と称呼すれば、全体として語呂もよく称呼しやすい商標である。また、その様に一連に称呼してこそ一つの意味合いを生じさせる商標である。それ故、取引者・需要者が、本願商標を捉えて、あえて「スーパージェイ」とのみ称呼したり、単に「エンジン」とのみ称呼するようなことはあり得ないはずである。分断して称呼したのでは不自然である。それでは本願商標のまとまった観念を把握できないし、本願商標としての識別力を正確に発揮することはできない。本願商標は全体を一連に「スーパージェイエンジン」とのみ称呼されるはずである。
以上のように、本願商標は、常に「スーパージェイエンジン」と称呼されるものであり、単なる「エンジン」の称呼しか生じない引用商標1及び2と称呼上類似するものではない。
(5) 以上述べたように、本願商標は、引用商標1,2と、外観、称呼及び観念のいずれにおいても紛れることのない非類似の商標であり、商標法第4条第1項第11号の規定に該当するものではない。
ケース33 本願商標:「HAND DRIP CAFE /EXQ./エクスキ」
1.出願番号 商願2001-27584
2.商 標 「HAND DRIP CAFE /EXQ./エクスキ」
3.商品区分 第16、21,30,42類
4.適用条文 商標法第4条第1項第16号
5.拒絶理由 本願商標は、その構成中に「コーヒー」を意味するCAFE(Eの上
にはアクサン-テギュが付されている)の文字を有してなるものであるから、これを本願指定商品中の「コーヒー」以外の第30類に属する商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがある。
6.意見書における反論
(1)拒絶理由通知書において、審査官殿は、本願の拒絶理由として、以下の2つの点を示された。
「1.この商標登録出願に係る商標は、その構成中に「コーヒー」を意味するCAFE(Eの上にはアクサン-テギュが付されている)の文字を有してなるものですから、これを本願指定商品中の「コーヒー」以外の第30類に属する商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものと認めます。したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法第4条第1項第16号に該当します。
2.この商標登録出願に係る商標は、第4452468号登録商標(以下、引用商標という)と同一又は類似であって、その商標に係る指定商品(指定役務)と同一又は類似の商品(役務)について使用するものですから、商標法第4条第1項第11号に該当します。」
これに対し、本出願人は、以下のとおり意見を申し述べます。
(2)拒絶理由2について
本願商標の商標構成態様は、「EXQ.」の文字を中央に大きく描き、その上に欧文字で小さく「HAND DRIP CAFE(Eの上にはアクサン-テギュ)」と書し、且つ「EXQ.」の下には小さく「[エクスキ]」と書した三段構成であるのに対し、引用商標は、「EXQ」の欧文字を上段に、「イクスキ」の片仮名文字を下段に書した二段構成から成るものであります。したがって、これら両者は「EXQ」の文字を共通にし、且つ称呼も「エクスキ」と「イクスキ」でありますので、互いに類似する標章であることは認めます。
しかしながら、本出願人は、その指定商品中より、引用商標の指定商品(具体的には引例の第14類「貴金属製食器類」)と同一又は類似する指定商品の第21類「食器類(貴金属製のものを除く。)」(類似群19A03)を削除する補正を行いましたので(本日付け提出の手続補正書参照)、両商標の指定商品同士は抵触する可能性が全く無くなりました。
よって、本願商標は商標法第4条第1項第11号には該当しなくなったものであり、拒絶理由2は解消したものと思料します。
(3)拒絶理由1について
そこで、次に、拒絶理由1について意見を申し述べます。
(3-1)
審査官殿のご指摘によれば、本願商標は、その構成中に「コーヒー」を意味するCAFE(Eの上にはアクサン-テギュが付されている。以下同じ。)の文字を有してなるものであるから、これを本願指定商品中の「コーヒー」以外の第30類に属する商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがある、ということであります。
しかしながら、本願商標は、「CAFE」の文字を中心に置いて殊更に「CAFE」を強調するような態様ではなく、中心に置いた文字はあくまでも欧文字で大書した「EXQ.」であります。そして、その下には読みを表す小さな[エクスキ]の文字を書し、「HAND DRIP CAFE」は、中央の「EXQ.」の上に小さく書したいわば説明書きであります。つまり、「HAND DRIP CAFE」は「ハンドドリップスタイルにこだわったCAFE(喫茶店)あるいはコーヒー」であることを謳ったものであります。
本出願人は、本願商標の指定対象として、この第30類その他の指定商品以外にも、第42類の指定役務「飲食物の提供」を指定しております。そのことからも容易に理解できると思いますが、本願商標「EXQ.」は、喫茶店での使用(店名としての使用)を想定しております。上段の説明書き「HAND DRIP CAFE」は、「ネルドリップによる一杯だてのハンドドリップスタイルのコーヒーにこだわったカフェ(喫茶店)」ということを表示したものです。この「CAFE」の文字は、フランス語として捉えれば「コーヒー」ですが、「喫茶店」という意味もあります(広辞苑で「カフェ」を引くと「喫茶店」を意味しておりますし、日本で「カフェ」といえば一般的には「喫茶店」を指称すると思います)。
すなわち、本出願人は、新しいタイプのカフェ「ハンドドリップカフェ~EXQ.(エクスキ)」を昨年(平成13年)6月11日(月)、日本橋本町にオープンいたしましたが、「HAND DRIP CAFE」は「本物のコーヒーにこだわった喫茶店」を強調するために表記したもので、ネルドリップによる一杯だてのハンドドリップスタイル<Cafe>に、毎日工場直送の新鮮なレギュラーコーヒーを販売する<Shop>を併設した、本当においしいコーヒーを楽しんでもらうための新しい業態のカフェを志向したものです。つまり、「コーヒーマシーン抽出」が前提のカフェが増化する中、その味やサービスに満足できない、飽き足らない顧客のために「本物のコーヒー」にこだわり、これを追求した喫茶店です。現在、コーヒーのいれ方は多種多様になっていますが、最もおいしいと言われる抽出方法はネルドリップです。「EXQ.」では手作りの良さを追求し、かつ安定した味のコーヒーを提供するため、ネルドリップ抽出器具を特別に開発し、1杯1杯丁寧にネルドリップで抽出したコーヒーを提供する。そんなこだわりの喫茶店を表すために、「HAND DRIP CAFE」(ハンドドリップスタイルのコーヒーを提供するカフェ)の文字を店名とともに「EXQ.」の上に表記したものです。
このように喫茶店名(若しくは喫茶店におけるコーヒー抽出方法)としての本願商標を想定するならば、「HAND DRIP CAFE」の文字が商標中にあるからといって、「コーヒー」に商品を限定しなければならない理由はないはずです。まして、商品の品質の誤認が生じるなどということはあり得ないはずであります。なぜなら、「コーヒー」しか提供しない喫茶店など常識的にあり得ないからであります。逆に言うと、喫茶店名に「HAND DRIP CAFE」の文字があるからといって、コーヒー以外のものは何も提供しない喫茶店だなどと誰も思うはずがないということであります。この文字があってもせいぜい「ハンドドリップで入れるコーヒーにこだわりのある喫茶店」程度のことしか、需用者は想定しないと思われます。したがって、審査官殿が主張する品質の誤認など、実際の取引の場においては起こり得るはずはないものと思われます。
(3-2)
このことは、過去の商標登録例を見ても言い得ることです。つまり、審査官殿の主張が正しいとすれば、「CAFE」の文字を含む商標は、第30類(旧29類)を指定する場合において、その指定商品は全て「コーヒー」でなければならないということになるのでありましょうが、実際にはコーヒー以外の商品を指定しても、以下の如く多数登録されております。
1.登録2156943 ¢CAFE NA SOMBRA\カフェ・ナ・ソンブラ
…第1号証
2.登録2666819 SINCE\¢CAFE SWISSINN\1979
…第2号証
3.登録2694595 カフェクリエイター\¢CAFE CREATOR
…第3号証
4.登録2711997 カフェ・ド・ラ・ペ\¢Cafe de la Paix
…第4号証
5.登録3250446 ¢Cafe\no\Bar …第5号証
6.登録4058586 FREDS\CAFE …第6号証
7.登録4215206 ¢Cafe\commeca …第7号証
8.登録4232108 ¢Cafe\FIORENTE\カフェ フィオレンテ
…第8号証
9.登録4259571 ¢CAFE LOLITA\カフェ ロリータ …第9号証
10.登録4259694 ¢Ucc Cafe Cafe …第10号証
11.登録4419064 §theisland\cafe …第11号証
12.登録4441586 ¢Cafe\CASTEL …第12号証
13.登録4503221 ¢Cafe\commeca …第13号証
14.登録4527701 ¢Q.E.D.cafe …第14号証
また、第30類(旧29類)では無くても、他の商品区分(第28,29,31,32)に属する飲食料品や嗜好品等を指定商品とするもので、「CAFE」の文字を含む商標は、やはり以下のとおり多数存在しています(これらはほんの一部です)。
1.登録2268942 ¢CAFE\DE\PARIS …第15号証
2.登録2363832 ¢LesPres∞RESTAURANT\CAFE
…第16号証
3.登録2426308 ¢CAFE∞LeCoq∞キャフェ・ル・コック
…第17号証
4.登録2445151 §PiraRuCu\CAFE\THECARIBBE
ANCAFE&RESTAURANT …第18号証
5.登録2450760 ¢CAFE\LeCoq\キャフェ・ル・コック
…第19号証
6.登録2552233 ¢CAFE\dela\PAIX …第20号証
7.登録2590372 ¢CAFE\dela\PAIX …第21号証
8.登録2624481 The River ¢Cafe …第22号証
9.登録2697530 ¢CAFE QUICK …第23号証
10.登録2711428 ¢MON CAFE …第24号証
11. 登録3208602 ¢Cafe de Flore …第25号証
12. 登録3337070 ¢CAFE~\TASSE …第26号証
13. 登録4274287 ¢KonditoreiーCafe\GLUCKSーS
CHWEIN∞Seit1987 …第27号証
14. 登録4311640 オープンカフェ\¢OPEN CAFE …第28号証
15. 登録4468428 ビクトリーカフェ\¢VICTORY CAFE
…第29号証
16.登録4523030 §Cafe\LA\SHOWER
\カフェ・ラ・シャワー…第30号証
(3-3)
この様に、「CAFE」の文字を含んでいても、指定商品を「コーヒー」に限定されることなく登録された例は多数にのぼります。本願商標もこれら多くの登録商標と軌を一にするものであり、登録適格なものと思料します。
したがって、本願商標は、その構成中に「コーヒー」「喫茶店」を意味する「CAFE」の文字を有してなるものですが、これを本願指定商品中の「コーヒー」以外の第30類に属する商品に使用しても、前記多くの登録例と同様に、商品の品質について誤認を生じさせるおそれは全くないものと考えます。それ故、本願商標は、商標法第4条第1項第16号に該当することはないものと思料します。
ケース34 本願商標:「AdMail」
1.出願番号 商願2000-9611
2.商 標 「AdMail」
3.商品区分 第38類:電子メールによる通信
4.適用条文 商標法第3条第1項第3号(6条1項2項も含む)
5.拒絶理由 本願商標は「電子メールによる広告」の意味合いを認識させるにとどまる。
6.意見書における反論
(1)発送番号073872の拒絶理由通知書の拒絶理由(1)において、本願商標は、「広告、宣伝、広告物」を意味する「Ad」(「advertisement」の略)の文字と、「コンピュータ等を利用した郵便物、電子メール」を意味する「Mail」の文字とを「AdMail」と書してなるので、これよりは「電子メールによる広告」の意味合いを認識させるにとどまり、これをその指定役務に使用しても、単に提供する役務の質(内容)を表示するにすぎず、商標法第3条第1項第3号に該当すると認定されました。
しかしながら、本願商標の「AdMail」は、特定の観念を生じない造語であって、役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章ではなく、十分に識別力を有るものと思料しますので、斯かる認定に承服できず、以下に意見を申し述べます。
(1-A)まず、本願商標の構成態様は、願書に明示したように、欧文字で「AdMail」と一連に書した態様から成るものでありますが、出願人の主観的な意図を申し上げれば、この前半部分の「Ad」の文字は、「あて先,住所」等を意味する「address」の語頭二文字と、「有利,好都合,便利,役立つ」等を意味する「advantage」の語頭二文字との、双方から採用したものであって、審査官殿の指摘するように、決して、広告を意味する「advertisement」の「ad」ではありません。
つまり、本出願人は、本願商標の「AdMail」を、「AddressMail」と、「AdvantageMail」の両方の意味合いを込めて作ったもので、「AdvertisementMail」を表示しようとしたものではありません。「AdMail」と表すことによって、あくまでも、「事前に登録された会員のアドレスにのみ送信する便利で役に立つ(アドバンテージな)電子メール通信」というような意味合いを込めて作ったものであります。
このようなことを申し上げると、欧文字だけからなる「AdMail」の態様から、その様な出願人の主観的意図が取引者・需用者に分かるわけはないではないかとの反論を受けそうですが、かといって、審査官殿の言うように、「広告」を意味する「advertisement」の略の「Ad」を語頭部分に用いているとも断言できないわけであります。つまり、本願商標の「Ad」は、「アドレス」の「ad」かも知れないし、「アドバンテージ」の「ad」かも知れないわけです。例えば、広辞苑で「アド」を引いてみても、「アドレスの略。」と言う説明と、「ad アメリカ(advertisementの略)広告。」という説明の2つがあります。
このように、出願人の主観的な意図を正確に本願商標に反映できなかったことは残念ですが、本願商標は結局のところ、客観的に見れば意味のはっきりしない「Ad」と、電子メール等を意味する「Mail」の文字が結合して成り立っているわけですから、全体として確立された特定の意味など生じないはずであります。ましてや、「電子メールによる広告」などという意味合いを生じさせるものではありません。
それ故、本願商標が特定の観念を生じさせ、しかもそれが役務の質を表示していると言う今回の判断は、誤った認識に基づくものと考えます。
(1-B)過去の登録例を見てみましても、例えば、第35類の広告関係を指定役務とする商標として、
a.登録商標第3043980号「アドネット」(H07.05.31:(株)明通)(第1号証)、
b.登録商標第3353064号「アドフォン」(H09.10.24:(株)スーパーステージ)(第2号証)、などが存在します。
しかし、審査官殿のような上記考え方を採れば、この商標は両方とも登録に成り得なかったはずであります。
つまり、審査官殿の考え方に従えば、第1号証の「アドネット」は、「広告、宣伝、広告物」を意味する「ad」(「advertisement」の略)の片仮名表記と、「情報通信ネットワーク」の略である「net」の片仮名表記とを「アドネット」と書してなるので、これよりは「情報通信ネットワークを用いた広告」の意味合いを認識させるにとどまり、これをその指定役務に使用しても、単に提供する役務の質(内容)を表示するにすぎないから、拒絶されるべきであるということになるのでありましょうし、また、第2号証の「アドフォン」は、同じく「広告、宣伝、広告物」を意味する「ad」(「advertisement」の略)の片仮名表記と、「テレフォン」を略して呼ぶときに使う「フォン」の文字から成るもので、これよりは「電話による広告」の意味合いを認識させるにとどまり、これをその指定役務に使用しても、単に提供する役務の質(内容)を表示するにすぎないと言うことになるのでありましょう。従って、審査官殿の考え方に従えば、これらは拒絶されてもおかしくないわけです。
しかし、現実には双方とも登録されております。これは、「アドネット」も、「アドフォン」も、特定の観念を生じない造語商標と判断されたからだと思います。
然るに、「アドネット」や「アドフォン」が登録できて、本願商標の「AdMail」が登録できないというのは釈然としません。本願商標もやはり特定の観念を生じさせない造語商標なのですから、これら「アドネット」や「アドフォン」と同様に登録されてしかるべきと考えます。
(1-C)以上のように、本願商標は、あくまでも特定の観念を生じさせない造語商標であって、役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章ではありませんので、十分に識別力を有し、商標法第3条第1項第3号の規定に該当するものではないと思料します。
尚、本出願人は、上記出願人の主観的な意図をはっきりさせると共に(客観的には余り関係ありませんが)、指定役務の内容及び範囲を明確にするために、本日付けで手続補正書を提出し、指定役務を第35類の「広告」とは全く関係のない、第38類の「電子メールによる通信」に補正しました。
(2)次に、発送番号073875の拒絶理由通知書の拒絶理由(2)の指定役務が不明確であると指摘された点につきましては、上述したように、本日付け提出の手続補正書によって、指定役務を「第38類 電子メールによる通信」に補正しましたので、明確になったものと思料します。
それ故、本出願は、商標法第6条第1項及び第2項の要件をも具備したものと思料します。
ケース35 本願商標「ASSAM HelpDesk/アッサムヘルプデスク
1.出願番号 商願2001-086005
2.商 標 「Assam HelpDesk/アッサムヘルプデスク」
3.商品区分 第9類
4.適用条文 商標法第4条第1項第16号、第4条第1項第11号
5.拒絶理由
(1)その構成中にコンピュータやソフトウェアの使い方等の相談、質問に応答するサービスを認識させる「HelpDesk」の文字を有してなるものであるから、これを本願の指定商品中、上記に照応する商品(例えば「ヘルプディスクの運用管理に用いるコンピュータプログラムを記憶させた記録媒体」)以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせる(4①16)。
(2)登録第2138861号の登録商標「アッサム/ASSUM」と類似する(4①11)。
6.意見書における反論
(1)第2回目の拒絶理由通知書において、審査官殿は、以下1,2のような拒絶理由通知を発せられたが、本出願人は、斯かる認定に承服できないので、以下に意見を申し述べます。
1.この商標登録出願に係る商標は、その構成中にコンピュータやソフトウェアの使い方等の相談、質問に応答するサービスを認識させる「HelpDesk」の文字を有してなるものであるから、これを本願の指定商品中、上記に照応する商品(例えば「ヘルプディスクの運用管理に用いるコンピュータプログラムを記憶させた記録媒体」)以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものと認める。
したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。
2. この商標登録出願に係る商標は、登録第2138861号(商公昭63-081357)の登録商標(以下、引用商標という)と同一又は類似であって、その商標に係る指定商品)と同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2) まず、審査官殿は、本願商標を構成する「HelpDesk」の文字について、コンピュータやソフトウェアの使い方等の相談、質問に応答するサービスを認識させる言葉であるとして、これを指定商品中、例えば、「ヘルプディスクの運用管理に用いるコンピュータプログラムを記憶させた記録媒体」以外の商品に使用するときは、あくまでも、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあると認定しております。
しかしながら、「HelpDesk」の文字は、「コンピュータシステムのサポートを行う組織や窓口」(一種の“団体”のイメージ)という意味に使われておりますので、コンピュータとは関連があるものの、「ヘルプデスクの運用管理に用いるコンピュータプログラム」を普通に認識させるとまでは言えないと思料します(この点は、先の平成14年8月26日付け意見書でも述べたとおりであります)。つまり、ここでいう「HelpDesk」の言葉の意味合いとしては、せいぜい「コンピュータシステムのサポート組織・窓口」(一種の“団体”)ぐらいの意味でしかないと思料します。
このことは、例えば、
(イ)「Help desk Builder」(第3279425号、H09.04.11登録、日本電気)や、
(ロ)「ClearHelpdesk」(第4205117号、H10.10.30登録、米国法人)
などの登録商標の指定商品が、「ヘルプデスクの運用管理に用いるコンピュータプログラム」などに限定されておらず、電子応用機械器具及びその部品やその他の第9類に属する一般的な指定商品を指定して登録されている事実からも理解できます。
つまり、仮に、この「HelpDesk」が品質を表示する用語であるとするならば、指定商品には、例えば「ヘルプデスクの運用管理に用いる……」という限定がなければおかしいでありましょうが、これら過去の登録例(イ),(ロ)を見ても(過去とは言ってもそれほど遠い過去ではない)、その様な限定は付されておりません。この「HelpDesk」でも他の文字との結合によって、十分に識別機能を発揮する商標であると考えます。
したがって、本願商標の「HelpDesk」を品質表示用語と捉え、例えば、「ヘルプディスクの運用管理に用いるコンピュータプログラムを記憶させた記録媒体」以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるとの認定は妥当ではないと考えます。よって、本願商標は、その指定商品を限定せずとも、商標法第4条第1項第16号に該当することはないと考えます。
(3) 次に、審査官殿は、第2138861号登録商標「アッサム/ASSUM」(日本電子計算株式会社)を引用して、本願商標「Assam HelpDesk/アッサムヘルプデスク」は、この引用商標と同一又は類似であって、その商標に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当すると認定しております。
しかし、この認定は、「HelpDesk」が品質表示であって、自他商品識別力がない、ということを前提とする認定であり、その前提自体がおかしい以上、その様な認定に納得することはできません。上述したとおり、「HelpDesk」の文字自体は、コンピュータプログラムは勿論、その他の第9類に属する商品との関係にあって、その品質を普通に表示する用語ではありませんので、本願商標の「Assam」の文字のみを抽出して、引用商標「ASSUM」との類否を論じるような比較の仕方は、適当ではないと考えます。
本願商標は、先の意見書でも述べたように、「Assam HelpDesk」という商標として、左右に分断できない1つの造語商標であり、これら全体が一体となったところに造語商標としての意味があります。つまり、本願商標は、“コンピュータ用プログラムを含む電子応用機械器具及びその部品”(第9類)等の本願指定商品との関係にあって、単に「インドのアッサム州産」だとか、或いは単に「ヘルプディスクの運用管理に用いるコンピュータプログラムを記憶させた記録媒体」だとかの観念を生じさせるものではありません。その様な左右を分断する本願商標把握の仕方は誤りであります。常に一体不可分の商標と捉えるべきであります。
先の意見書でも述べましたが、本出願人は、「Assam」の文字を含む登録商標を以下のとおり所有しております。
A.「Assam Whois」(第4173443号、H10.7.31登録)、
B.「Assam Internet Applets」(第4209005号、H10.11.6登録)、
C.「Assam WebBench」(第4393720号、H12.6.23登録)、
D.「Assam WebGuard」(第4573808号、H14.5.31登録)。
本願商標の「Assam HelpDesk」は、この一連の「Assamシリーズ」に加えるべき一商標であって、同じ商品を指定し、使用するものである以上、取引者・需用者を同じくするものであります。その様な取引状況の中にあって、本願商標だけを今までの「Assamシリーズ」とは別の物であるなどと取引者・需用者が認識するはずはありません。同じ出願人が、同じ「Assam○○○」の商標を用いていて、何か今までの「Assamシリーズ」とは別の意味を持つ商標だなどと、誰が認識するでありましょうか。今までの上記A.B.C.Dの「Assam」シリーズと同一のコンセプトに基づく仲間の商標と認識するのが自然でありましょう。ましてや、「Assam」と「HelpDesk」とを分断して把握するような取引者・需用者はいないでありましょう。全体を一つの商標として捉え、片仮名文字で読みをあらわしたように、「アッサムヘルプデスク」と一連にのみ称呼するはずであります。そう称呼してこそ、「Assamシリーズ」の中の一シリーズものであるとの認識を持つことができます。単なる、「アッサム」や「ヘルプデスク」と称呼したのでは、何のことか分かりません。一連に「アッサムヘルプデスク」と称呼してこそ、本願商標は自他商品識別力を発揮し、商標としての価値を持ちます。その様な意味を持つ商標であるからこそ、今までのAssamシリーズと同一の取引者・需用者は、本願商標を一体不可分の商標と認識し、一連に称呼するものと思います。
したがって、本願商標「Assam HelpDesk/アッサムヘルプデスク」は、引用商標の「アッサム/ASSUM」と類似することはなく、商標法第4条第1項第11号に該当することはないと考えます。
ケース36 本願商標「「Club Access24/クラブ・アクセス24」×引用商標「ACCESS/アクセス」
1.異議番号 異議2001-90201(商標登録第4441150号)
2.商 標 「Club Access24/クラブ・アクセス24」
3.商品区分 第28類:ゴルフクラブ 他
4.適用条文 商標法第4条第1項第15号
5.異議理由 「Club Access24/クラブ・アクセス24」は
異議申立人の「ACCESS/アクセス」と出所混同を来す。
6.意見書における反論
(1)取消理由通知書の中で、審判官殿は、本件の指定商品中、第28類の「キャディーバッグ・ゴルフクラブ・ゴルフクラブ用カバー・グリーンマーカー・ティー・ゴルフ手袋・ゴルフボール・その他のゴルフ用具,その他の運動用具」について、本件商標の登録を取り消すべきものとの認定をしております。
そして、その理由として、
(a)異議申立人であるブリジストンスポーツ株式会社の商標「ACCESS」「アクセス」(以下「引用商標」という)の周知・著名性を認め、一方で、
(b)本件商標「Club Access24/クラブ・アクセス24」の「Club/クラブ」の部分をゴルフクラブをあらわすものとし、また「24」の数字を品番やサイズ等をあらわすに過ぎないものとして、「Access/アクセス」の部分が注目されて取引されると認定し、
本件商標は、異議申立人の「ACCESS/アクセス」と出所の混同を来すと結論付け、商標法第4条第1項第15号に該当するとしております。
しかしながら、このような判断は誤った周知・著名性の認定に基づくもので、しかも本件商標の構成を良く理解せずに行ったものであって、到底納得することは出来ません。以下に意見を申し述べます。
(2)商標法第4条第1項第15号の判断時点について
今回審判官殿が拒絶の根拠として挙げた商標法第4条第1項第15号は、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生じるおそれのある出願商標を排除する規定でありますが、この15号の規定は、査定時にこれに該当していることを前提とし、且つ商標登録出願時点においても該当していた場合に適用される規定であります。換言すれば、査定時に15号に該当しても、出願時に該当していなければ適用されない規定であります(商標法第4条第3項)。
(3)「ACCESS」「アクセス」の周知・著名性の有無について
取消理由通知書の中で、審判官殿は、『申立人の提出した証拠によれば、申立人は、主に商品「ゴルフクラブ、ゴルフボール、キャディバック」について「アクセス」及び「ACCESS」の文字からなる商標(引用商標)を使用しており、これらの商品については、雑誌、テレビを通じて広告、宣伝をし、北海道、東京、石川など広範な地域において販売をした結果、引用商標は、本件商標の登録出願の時には我が国の取引者、需要者の間で周知、著名に至っていたものと認められ、その事実は本件商標の査定時においても継続していたものと推認することができる。』としております。
しかしながら、テレビを通じて宣伝広告がなされたのは、甲第8号証及び甲第9号証によれば、2000年(H12)4月1日から5月31日までの2カ月間であり、これは本件商標出願日の1999年(H11)10月19日よりも半年も後のことであります。従って、出願時点における周知・著名性を立証する材料として、甲第8号証及び甲第9号証のテレビCMは証拠能力を欠くものであります(前記した商標法第4条第3項)。査定時の周知・著名性の立証であれば兎も角、出願時の周知・著名性の立証にテレビ広告の事実を証拠とすることは出来ません。テレビでの宣伝広告をも証拠として本件出願時点における引用商標の周知著名性を認定している審判官殿の判断は明らかに誤解であります。
そして、このような時期的な点に注意して提出された証拠を見てみますと、出願時点の周知著名性を立証するための証拠として証拠能力を有すると思われるものは、甲第12号証の雑誌「パーゴルフ」の一部(同号証の1~9,11~13)と、甲第13号証の雑誌「ゴルフダイジェスト」の一部(同号証の1~19)のみであります。他の証拠は上記テレビ放送を含め、全て本件商標の出願時点(1999年10月19日)よりも後に発行された雑誌等の証拠であり、査定時ならば兎も角、少なくとも出願時点における周知著名性の証拠としては証拠能力がありません。
即ち、甲第4号証の「ゴルフ用品カタログ」は2001年1月頃発行、甲第5号証の雑誌「ALBA」は2001年3月8日発行、甲第6号証の雑誌「ゴルフダイジェスト」は2001年3月20日発行、甲第7号証の雑誌「Golf Classic」は2001年4月号であり、また、甲第8号証の電通発行に基づくテレビコマーシャルは2000年4月16日~同5月14日であり、甲第9号証の株式会社アイアンドエス・ビービーディーオー発行の証明に基づくテレビコマーシャルは2000年4月1日~同5月31日であります。また、甲第10号証の日経産業新聞は2000年7月27日発行であり、この中の『スイングが遅いゴルファー対象の「アクセスブランド」でも、アイアンの「HD635」が好調だった。』との記載は、これをもって周知著名性を立証するような性質のものではなく、これは単にアクセスブランドの中でアイアン「HD635」の売れ行きが99年は好調だったということを端的にあらわしているに過ぎないもので、それ以上のものではないと考えます。むしろ、この記事の中には、「上級者向けブランドのツアーステージV3000が業界のトップ級に育った」との記載があり、こちらこそが有名なのではなかろうかと考えます。なお、甲第11号証には取扱店リストなるものがありますが、いつの時点のものかが不明であります(これは、ごく最近のものではないかと思われます)。しかも、「ACCESS取扱店リスト」とありますが、「ACCESS」の何の商品を取り扱っている店舗なのか全く不明であります。さらに、甲第14号証の雑誌「Golf Classic」は2000年4月1日発行、甲第15号証の雑誌「Choice」は2000年5月号、甲第16号証の雑誌「Forbes」は2000年6月号のものであります。
このように見てくると、提出された証拠のうち、本件商標の出願時点における引用商標の周知・著名性を立証する証拠能力ある証拠は、甲第12号証の雑誌「パーゴルフ」の一部(同号証の1~9,11~13)と甲第13号証の雑誌「ゴルフダイジェスト」の一部(同号証の1~19)のみであり、他の証拠は全て本件商標出願以降のものであります。特に、宣伝広告能力の優れたテレビCM(甲第8,9号証)なども、出願時点における周知著名の証拠にはなり得ません。しかも、前記甲第12,13号証で掲げているのは、圧倒的に「ゴルフクラブ」の宣伝であり、偶に「ゴルフボール」が載せられておりますが、ご指摘の「キャディーバック」についての広告は全くありません。「キャディーバック」の掲載は、本件商標の出願日より1年以上も後の2001年1月頃発行の「ゴルフ用品カタログ」(甲第4号証)だけであります。
以上の次第でありますので、取消理由通知書の中で、『申立人の提出した証拠によれば、申立人は、主に商品「ゴルフクラブ、ゴルフボール、キャディバック」について「アクセス」及び「ACCESS」の文字からなる商標(引用商標)を使用しており、該商品については、雑誌、テレビを通じて広告、宣伝をし、北海道、東京、石川など広範な地域において販売をした結果、引用商標は、本件商標の登録出願の時には我が国の取引者、需要者の間で周知、著名に至っていたものと認められ』るとした認定は、明らかに誤りであります(特に、テレビでの宣伝広告によって、引用商標は、既に本件商標出願時点において周知・著名になっていたというのは全くの間違いです)。
ところで、本件出願日以前の証拠である甲第12号証の雑誌「パーゴルフ」の一部(同号証の1~9,11~13)と甲第13号証の雑誌「ゴルフダイジェスト」の一部(同号証の1~19)を証拠として採用したとしても、周知著名の立証として十分であるか甚だ疑問であります。この雑誌による宣伝広告の開始は本件商標出願の僅か1年前に当たる1997年11月25日からのことであり、商品「ゴルフクラブ」に限ってみても、本件出願日までの僅か1年間の雑誌による広告のみで、商標法第4条第1項第15号を適用して他人の出願商標(全体としては非類似の商標)を拒絶する程の周知・著名性を獲得したとは、到底思えません。まして、ゴルフクラブ以外のゴルフボールとか、キャディーバッグとか、更にはそれ以外のゴルフ用具やその他の運動具に至るまで、誤認混同を起こさせるほどの周知著名性を引用商標が獲得していたとは、到底思われません。
1999年暮れの時点では、まだ十分に取引者・需用者に「ACCESS」が浸透していなかったからこそ、異議申立人は、その翌年である2000年の春になって、今までにないような多額の予算を費やしてテレビによるコマーシャルをおこない、更にはゴルフ雑誌以外の一般雑誌への広告掲載に踏み切ったのではないかと推察されます。
(4)本件商標の構成態様について
本件商標の構成は、前述のように、二段に「Club Access24/クラブ・アクセス24」と表記してなるものでありますが、審判官殿は、本件商標のこの態様に対し、「Club/クラブ」はゴルフクラブの略称を表し、数字の「24」は品番・サイズ等を表すものであるから、取引者・需用者は本件商標の「ACCESS」及び「アクセス」の文字に注目して取り引きし、引用商標「ACCESS」「アクセス」と出所の混同を起こすおそれがあると判断しております。
しかしながら、この判断は、分断すべきでない商標を予見をもって短絡的に分断した結果起こった誤解であります。
本件商標は、ゴルフクラブの「クラブ」や、品番・サイズ等の「24」から成るものではなく、同じ目的の人たちが作った団体を指称する「クラブ」と、そのクラブへの「アクセス」が「24」時間可能であることを意味する「アクセス24」の文字から成るものです。そして、本件商標は、この態様より、「クラブへのアクセスが24時間可能」(「クラブアクセス24時間」)とか、「24時間アクセス可能なクラブ」とか、「いつでもアクセス可能なクラブ」とかを端的にイメージさせようとしたものであります。
そして、取引者・需要者も本件商標の構成態様「Club Access24/クラブ・アクセス24」を見て、「クラブへのアクセスが24時間可能」(「クラブアクセス24時間」)とかを観念し、素直に「クラブアクセスニジュウヨン」と一連に称呼するものと思われます。全体として特定の観念をイメージさせる商標は、全体を一体のものとして把握するのが自然であり、本件商標は一連一体に把握してこそ特定の観念を生じさせるものでありますので、各単語を分断するような不自然な把握の仕方はなされるはずはありません。
そして、本願商標は、上段の「Club」と「Access」の単語間にやや間隙を開け、下段の「クラブ」と「アクセス」の間に中黒「・」を介した構成ではありますが、このような態様を有することを理由に、両者を分断して別々に把握するような捉え方や、「Club/クラブ」や「24」に商標の要部を認めず「Access/アクセス」の部分のみを抽出するような捉え方をすべきではありません。このような態様の商標でも、全体が軽重の差なくバランス良く配置されており、しかも全体として特定のイメージを観念させるようなものは、一体不可分の商標と捉えるのが自然であります。なお、例えば、左右の文字間に間隔を開けて配されたものでも一体の商標として把握されている商標は、例示するまでもなく枚挙にいとまがありません。
本件商標は、全体として一個不可分の観念を生じさせる1つの商標であり、全体としてとらえて十分に自他商品等識別力を発揮するものでありますし、全体を称呼して決して冗長でなく、むしろ一気に称呼して語呂良く一連に「クラブアクセスニジュウヨン」(クラブアクセス24時間)と称呼・観念できる態様のものでありますので、あくまでも一連一体の商標と把握すべきです。
審判官殿は、このように1つの本件商標から、無理矢理に「Access/アクセス」の部分を抽出して要部と把握し、一方で、引用商標の「ACCESS」「アクセス」は周知著名であると把握して(この認定は前述したとおり大いに疑問です)、出所の混同が生じるという認定をしておりますが、そもそも「ACCESS」「アクセス」の言葉は、コンピュータ等にアクセスするというような意味で普通一般に使われている言葉であり、異議申立人が初めて作ったような造語ではありません。
本件商標は、その普通一般に存在する既成語である「Access/アクセス」の文字を用い、他の既成語である「Club/クラブ」及び「24」の文字と組み合わせて、一つの商標を構成したものであります(その意味で、本件商標は違和感なく全体を1つの商標と把握できるはずです)。例えば、「SONY/ソニー」とか、「Panasonic/パナソニック」とか、あるいは「DoCoMo/ドコモ」とかのように、元々が造語であればまだしも、この「ACCESS」「アクセス」の言葉は、日本でも広く使用されて馴染みのある既成語なのでありますから、譬え引用商標が周知著名であったとしても、本件商標「Club Access24/クラブ・アクセス24」を見た取引者・需用者は、その中から「Access」「アクセス」のみを抽出するような見方をするはずもなく、本件商標は引用商標の単なる「ACCESS」ないし「アクセス」と出所の誤認混同を来すようなことはあり得ないことであります。
(5)結語
以上の通り、商標法第4条第1項第15号は、①本件商標査定時に該当していても、出願時に該当していなければ適用されない規定であり(商標法第4条第3項)、②また、引用商標の「ACCESS」「アクセス」は、本件商標査定時は兎も角としても、出願時において周知著名性があったというのは甚だ疑問であり(出願時点における周知著名性の判断資料は甲第8,9号証の一部のみである)、③更に、本件商標は、同じ目的の人たちが作った団体を指称する「クラブ」と、そのクラブへの「アクセス」が「24」時間可能であることを意味する「アクセス24」の文字から成るものであって、常に「クラブアクセスニジュウヨン」と一連に称呼され、且つ「クラブへのアクセスが24時間可能」(「クラブアクセス24時間」)と観念されるものでありますので、これらを総合的に勘案すれば、本件商標は引用商標と出所の混同を起こすおそれはないと思料します。
そして、仮に、引用商標の「ACCESS」「アクセス」がゴルフクラブについて本件出願時点で周知著名だったとしても、既成語でしかない「Access」「アクセス」を含む本件商標は、あくまでも全体として1つの観念をイメージさせ一連に称呼されるとみるのが自然でありますので、本件商標は常に一体不可分の商標として称呼・観念され、「Access/アクセス」の文字のみが注目されて把握されるようなことはないと考えます。
従って、本件商標「Club Access24/クラブ・アクセス24」は、異議申立人の所有する単なる「ACCESS/アクセス」の商標と本件出願時点において誤認混同を起こすようなことはなく、査定時の他に、出願時における周知・著名性を要求する商標法第4条第1項第15号の規定に該当するものではないと考えます。
よって、再度御審理いただき、本件の異議申立は理由がないとの決定を賜りますようお願い申し上げます。
※→結局、本件からは「クラブアクセスニジュウヨン」或いは「クラブアクセス」の称呼のみが生じ、単なる「アクセス」の称呼は生じないと認定された。また、「ACCESS/アクセス」の著名性も否定。
ケース37 本願商標:「B3/B-Three」
1.出願番号 商願2001-106713
2.商 標 「B3/B-Three」
3.商品区分 第9類:電子計算機用プログラムその他の電子応用機械器具及びその部品等
4.適用条文 商標法第3条第1項第5号
5.拒絶理由 本願商標は、各種商品の品番・規格等を表示するための記号・符号として一般に採択使用される欧文字一字と数字との組み合わせの一類型と認められる「B3」の文字とそれを英語読み風に表記したにすぎない「B-Three」よりなるものであるから、これをもってしては、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ない。
6.意見書における反論
(1)この拒絶の理由は、『本願商標は、各種商品の品番・規格等を表示するための記号・符号として一般に採択使用される欧文字一字と数字との組み合わせの一類型と認められる「B3」の文字とそれを英語読み風に表記したにすぎない「B-Three」よりなるものであるから、これをもってしては、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものと認める。したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法第3条第1項第5号に該当する』というものでありますが、本出願人は、本願商標は「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標」(商標法第3条第1項第5号)ではなく、その指定商品との関係においては、十分に自他商品識別標識としての機能を果たし得るもので、登録適格性を備えているものと思料します。
即ち、本願商標は、審査官殿ご指摘のように、成る程、欧文字一字と数字との組み合わせからなる「B3」の文字と、それを英語読み風に表記した「B-Three」の文字とからものであることは事実であります。
しかしながら、本願の指定商品、例えば、「電子計算機用プログラムその他の電子応用機械器具及びその部品」等との関係にあって、これら「B3」「B-Three」は、その商品の品番・規格等を表示するための記号・符号として一般的に採択使用されているような事実はありません。それ故、例えば、これを指定商品のパッケージなどに付して商標的使用態様で使用した場合、これを見た取引者・需用者は、この「B3/B-Three」を自他商品を区別するための標識(商標)と理解し、「ビースリー」と称呼して取り引きにあたるはずであり、他の同種の商品と十分に区別できるものと思料します。その意味で、本願商標は、「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章」ではなく、自他商品識別機能を備えた商標であると思料します。
(2) このことは例えば、本願商標と同じ第9類の指定商品を含む以下のような商標が登録されている事実からも、伺い知ることができます。
(a)「M-ONE」(登録4053930、H9.9.5登録、(株)アポロン)
(b)「T-One」(登録4446539、H13.1.19登録、ドイチェ テレコム…)
(c)「e-one」(登録4432891、H12.11.17登録、(株)ソーテック)
(d)「e-two」(登録4461867、H13.3.23登録、(株)ソーテック)
(e)「e-three」(登録4469513、H13.4.20登録、(株)ソーテック)
即ち、これら(a)~(e)の登録商標は、全て欧文字一字と数字を英語読み風に表記した態様からなるものであるという点で、本願商標の「B-Three」と同じ態様の商標でありますが、御庁において上記の通り、全て商標登録されております。「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章である」(商標法第3条第1項第5号)などとして拒絶されているわけではありません。これら「M-ONE」とか、「T-One」とか、「e-three」などの商標であっても、指定商品との関係において、十分に自他商品識別力を有すると認定され、登録されております。
然るに、これら「M-ONE」、「T-One」、「e-one」、「e-two」、「e-three」の商標が登録できて、同様に欧文字一字と数字を英語読み風に表記した態様「B-Three」からなり、かつ、同様の指定商品分野を対象とする本願商標が登録できない謂れはありません。
本願商標もこれらの登録商標と同様に、商標法第3条第1項第5号に該当するものではなく、十分に自他商品識別力を有し、登録適格性を備えたものと思料します。
ケース38 本願商標「BACKS GROUP」×引用商標「BUCKS&雄ジカ図形」
1.出願番号 商願2001-109306
2.商 標 「BACKS GROUP」
3.商品区分 第35類、第42類
4.適用条文 商標法第4条第1項第11号 他
5.拒絶理由 登録第4116018号商標「BUCKS & 雄ジカ図形」」と類似する。
6.意見書における反論
Ⅰ. 本日付け提出の手続補正書において、第35類に属さないとされた役務「求人情報の提供」(国際分類版表示第7版)を、第35類から第42類に変更する補正を行うと共に、不明瞭であるとされた「改善案の提供」という表現を指定役務中より削除する補正を行いましたので、発送番号248551に係る拒絶の理由(2)は、解消したものと思料します。因みに、補正後の「受注事務・人事事務・経理事務・総務事務の代行」とは、言い換えれば「会計・総務・人事その他の事務的事項に関する事務処理代行」のことです(なお、このような表現の方が分かりやすいと言うことであれば、補正する用意がありますので、ご指摘下さい)。
なお、第42類が増えた結果不足するとされた出願料15,000円は、本日付け別途提出の手続補正書(手数料補正)において、納付手続を済ませました。
Ⅱ. そこで次に、発送番号248550に係る拒絶の理由(1)について、意見を申し述べます。
(1) この拒絶の理由(1)において審査官殿は、本願商標は、登録第4116018号(商願平6-083945)の商標(以下、引用商標という)と類似であって、その指定役務と同一又は類似の役務に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当すると認定されております。
しかしながら、本出願人は、本願商標と引用商標とは、外観・称呼・観念のいずれにおいても類似することのない非類似の商標であると思料しますので、斯かる認定に承服できません。
(2) まず、本願商標は、本出願人の社名「バックスグループ」を英文字で「BACKS GROUP」と横書きして成るものであるのに対し、引用商標は「左右一対の角を持つ雄ジカの胸から上の部分の正面図形」と「その背景である逆二等辺三角図形」と「雄ジカ図形の直ぐ下側に小さく横書きしたMILWAUKEEの英文字」と、更に「その下側に大きく横書きしたBUCKSの英文字」とから成る文字・図形混在の商標であります。したがって、本願商標と引用商標とは、外観上全く異なるものであります。
(3) また、観念の点についてみると、本願商標の「BACKS GROUP」は、「後援、後ろ盾」を意味する「BACKS」と、「集団、集まり、群れ」を意味する「GROUP」とを結び付けた商標であって、「人材派遣等を通じて企業の活動を後援する団体でありたい、後ろ盾になる団体でありたい。」という願いを込めて選定した本出願人「バックスグループ」の英文字表記であります。そして、この本願商標からは、全体として字義通り、「後援する集団」「後ろ盾になる集団」等のまとまった一つの観念を生じさせるものであります。
これに対し、引用商標の図形部分は「雄ジカ」を観念させ、また、文字部分の「MILWAUKEE」は米国Wisconsin州南東部ミシガン湖畔の港市である「ミルウオーキー」を観念させ、大書した文字部分「BUCKS」(二文字目は「A」ではなく「U」である)は「雄ジカ」を観念させるものであり、この引用商標全体として「ミルウオーキーの雄ジカ」を観念させるものであります。
したっがって、両者は観念上も全く異なるものであります。
(4) そこで、次に、称呼の点につき検討します。
本願商標は、英文字で「BACKS GROUP」と横書きして成り、「BACKS」と「GROUP」との間にやや間隔をあけた態様ではありますが、左右に軽重の差なく同書・同大で全体がバランス良く配置されています。また、前述したように、全体として「後援する集団」「後ろ盾の集団」等の一つの観念を生じさせるものであります。そして、全体を一連に称呼しても決して称呼しにくいわけではなく、むしろ社名商標であることから全体を一連に称呼するのが自然であります。全体を一体に捉え一連に称呼してこそ、社名の意味があります。分断して単に「バックス」とか、「グループ」とか称呼したのでは何のことか分かりません。分断して称呼するのは如何にも不自然であります。それ故、本願商標は、単に「バックス」と称呼されるようなことはなく、常に一連に「バックスグループ」とのみ称呼されるものと思料します。
これに対し、引用商標は「雄ジカ」の図形と「BUCKS」の文字との間に、やや小さいとはいえ「MILWAUKEE」の文字を有することから、基本的には、「ミルウオーキーバックス」と称呼されるものと思料しますが、「雄ジカ」の図形と大書した「BUCKS」の文字から、取引者・需用者は単に雄ジカをイメージして「バックス」と称呼する場合があるかも知れません。
しかしながら、引用商標が「ミルウオーキーバックス」あるいは「バックス」のいずれに称呼されたとしても、本願商標は、上述のように、あくまでも常に一連に「バックスグループ」と称呼されるものであることから、両者は明らかに聴別でき、称呼上も決して類似することはないと思料します。
(5) この点に関し、審査官殿は「GROUP」の部分に商標の要部はなく、「BACKS」の部分にこそ本願商標の要部があるから、本願商標からは単に「バックス」の称呼も生じ得るとして、引用商標を引いてきたのではないかと思料しますが、そのような見方は妥当ではないと考えます。
本願商標の「BACKS GROUP」は全体として捉えて初めて、本出願人の社名をあらわすものであって、単に「BACKS」と把握したのでは何のことか分かりません。また、「BACKS GROUP」を全体として捉えてこそ、「後援する集団」「後ろ盾の集団」等のまとまった一つの観念(企業理念)を生じさせるものであり、全体を一体として把握するのが自然であります。敢えて、分断して「BACKS」の部分のみを要部として抽出すべき理由はありません。
「BACKS」が造語であれば、或いはそのあとに「GROUP」の言葉を付けた場合、「BACKS」という本体があって、そのグループだというような意味合いに取られる危険性があるかも知れませんが、「BACKS」の言葉は造語ではなく、「後援、後ろ盾」を意味する普通の確立された言葉ですので、その様なことはないはずであります。「BACKS」は「GROUP」の単語と結び付いて「後援する集団」「後ろ盾の集団」等の意味合いを生じさせるものであり、一体であります。
それ故、本願商標はあくまでも全体が要部であって、「GROUP」を省略出来ない商標であります。
(6) ところで、過去の商標登録例を見ると、本願と同じ区分である第35類の関係で、東邦シートフレーム株式会社所有の登録第3044209号「TOHO」(図あり)(平成7年5月31日登録)という商標の存在にも拘わらず、その後の出願に係る表示灯株式会社の「TOHO GROUP」が第3152051号として平成8年5月31日に登録された事実があります(役務抵触)。
この場合、仮に「GROUP」が要部ではないと判断されていたならば、後願に係る表示灯株式会社の商標は拒絶されていたはずであるのに、現実には登録されております。これは「GROUP」も商標の要部であると判断し、全体を一体の商標として把握したからに他なりません。
然るに、本願商標のケースもこれと同様に考えるべきで、本願商標は常に「バックスグループ」とのみ称呼すべきものと考えます。それ故、たとえ引用商標が「バックス」と称呼された場合でも、両者は決して類似することはないと考えます。
(7) 以上のように、本願商標と引用商標とは、外観および観念上全く異なるものであって類似することはないと共に、称呼上も「グループ」の称呼の有無によって語感語調を全く異にし、取引者・需用者をして決して紛れることはないものと思料します。
したがって、本願商標と引用商標とは非類似の商標であり、本願商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものではないと思料します。
Ⅲ. 以上の次第ですので、今般の拒絶の理由(1)(2)は全て解消したものと思料します。
ケース39 本願商標「BACKS」×引用商標「BUCKS&雄ジカ図形」ほか
1.出願番号 商願2001-111742
2.商 標 「BACKS」
3.商品区分 第35類
4.適用条文 商標法第4条第1項第11号
5.拒絶理由 登録第4116018号商標「BUCKS & 雄ジカ図形」ほかと類似する。
6.意見書における反論
Ⅰ. 拒絶理由通知書において審査官殿は、本願商標は、登録第4116018号(商願平6-083945)の商標(以下、引用商標1という)、及び登録第4270596号(商願平9-169093)の商標(以下、引用商標2という)と同一又は類似であって、その指定役務と同一又は類似の役務に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当すると認定されました。
しかしながら、本出願人は、引用商標2に対しては、抵触する役務である「35類「輸出入に関する事務の代理又は代行」(35F01)を本願の指定役務中より削除する補正を本日付けで行いましたので、この引用商標2との関係では、明らかに拒絶の理由は解消したものと思料します。
また、本願商標は、引用商標1との関係では相変わらず指定役務が抵触することとなりますが、本願商標とこの引用商標1とは、そもそも外観・称呼及び観念において紛れることのない非類似の商標であると思料しますので、やはり拒絶の理由は存在しないものと思料します。
Ⅱ.そこで、以下、引用商標1との関係で、意見を申し述べます。
(1) まず、本願商標は、本出願人の社名「バックスグループ」の前半部を英文字で「BACKS」と横書きして成るものであるのに対し、引用商標1は、下向き三角形の中央より上部に、これに重なるように牡鹿と思しき動物の頭部を描き、その下部に、「MILWAUKEE」および「BUCKS」の文字を二段に書してなるものであります。したがって、本願商標と引用商標1とは、外観上全く異なるものであります。
(2) 次に、本願商標の「BACKS」は、ラグビーやホッケーなどにおいて、主に守備を受け持つ選手やそのポジションをあらわす言葉であり、「後援」とか、「後ろ盾」、或いは端的に「バックス」(backs)の意味合いを持つものであります。そして、これは、「人材派遣等を通じて企業の活動をバックアップしたい。後ろ盾になりたい。」という願いを込めて選定した本出願人会社名の前半部を構成する文字「バックス」の英文字表記であります。然して、この本願商標からは、全体として字義通り、「バックス」の称呼、及び「後援」「後ろ盾」等の観念を生じるものと思料します。
一方、引用商標1は、「BUCKS」の文字が比較的大きく書されているとはいえ(あくまでも、BACKSではなく、牡鹿を意味するBUCKSである)、「MILWAUKEE」および上部の牡鹿と思しき動物の図形を含めて全体的にまとまりよく配置されておりますので、これを一体のものとして把握し得るばかりでなく、その構成文字に相応して生ずる「ミルウォーキーバックス」の称呼もよどみなく称呼し得るものと思料します。
また、この「MILWAUKEE BUCKS」、「ミルウォーキー・バックス」は、米国NBA所属のチームの一であって、引用商標1はそのチームマーク(エンブレム)として使用されているものであり、わが国においては一定程度知られておりますので、この引用商標1からは、米国NBA所属の「ミルウォーキー・バックス」というプロバスケットボールチームを容易に観念させるものであります(このチームマーク(エンブレム)は、「ミルウォーキー・バックス」のインターネットホームページなどでも使用されています)。
このように、本願商標が、「バックス」の称呼、及び「後援」「後ろ盾」等の観念を生じさせるものであるのに対し、引用商標1は、わが国において一定程度知られた米国NBA所属のプロバスケットボールチーム「ミルウォーキー・バックス」のチームマーク(エンブレム)でありますので、これに接する取引者・需用者は、「ミルウォーキー・バックス」という全米プロバスケットチームを想起観念し、これを一体的に把握するとともに、「ミルウォーキーバックス」の一連の称呼をもって取引に当たるものと思料します。
したがって、両者は、称呼・観念においても紛れることのない非類似の商標であると考えます。
(3)ところで、この引用商標1を、上述のように、
A.米国NBAのチームの一である「MILWAUKEE BUCKS」、「ミルウォーキー・バックス」を想起させる商標であって、一体のものとして把握すべきものであること。
B.取引者・需用者は単に「ミルウォーキーバックス」の一連の称呼をもって取引に資するとみるべきものであること。
と判断することは、過去の御庁における審決においても認められた判断であります。
即ち、平成10年審判第4125号(平成13年3月14日審決:原隆審判長)の拒絶査定不服審判においては、本件の引用商標1と同一の商標が出願商標(商願平7-130713号)であったという意味でちょうど逆の立場になりますが、「バックス」の称呼を生ずる引用商標に対して、この商願平7-130713号商標は、あくまでも米国NBAのチームの一である「ミルウォーキー・バックス」を想起させ、「ミルウォーキーバックス」の一連の称呼しか生じないから引用商標とは非類似であると認定し、その登録を認めた経緯があります。
つまり、本件の引用商標1と全く同じ構成態様、即ち“下向き三角形の中央より上部に、これに重なるように牡鹿と思しき動物の頭部を描き、その下部に、「MILWAUKEE」および「BUCKS」の文字を二段に書してなる”態様の商標を、A.米国NBAのチームの一である「ミルウォーキー・バックス」を想起させるとし、また、B.「ミルウォーキーバックス」の一連の称呼しか生じないとして、引用商標の単なる称呼「バックス」の商標とは類似しないと判断して査定を取り消した審決が存在したということであります(しかも、これはつい昨年の審決です:平成13年3月14日審決)。
それ故、本件においても、この審決における判断と同様に、引用商標1の商標からは「ミルウォーキーバックス」という一連の称呼しか生じないと認定されるべきであります。
上記審決時においては、原査定及び審判において提出された証拠のほか、審判官が職権で調査した事実も判断材料とされており、十分に審理を尽くした上での判断だと思われます。斯かる審決での判断は十分に尊重されるべきものであります。
(4) このように、本願商標と引用商標1とは、外観および観念上全く異なるものであって類似することはないとともに、称呼上も単なる「バックス」と「ミルウォーキーバックス」の差異があって語感語調を全く異にし、取引者・需用者をして決して紛れることはないものと思料します。
よって、本願商標と引用商標1とは非類似の商標であり、本願商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものではないと思料します。
Ⅲ. 以上の次第ですので、今般の拒絶の理由はすべて解消したものと思料します。
ケース40 本願商標:「鹿の子茶屋」
1.出願番号 商願2001-57564
2.商 標 「鹿の子茶屋」
3.商品区分 第30類:コーヒー及びココア,茶,調味料,米,食用粉類,
穀物の加工品,サンドイッチ,たこ焼き,肉まんじゅう,
ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,
ラビオリ,菓子及びパン,即席菓子のもと,
アイスクリームのもと,シャーベットのもと,
アーモンドペースト,イーストパウダー,こうじ,酵母,
ベーキングパウダー,氷
4.適用条文 商標法第3条第1項第3号,同第4条第1項第16号
5.拒絶理由 本願商標は、「鹿の子」菓子に使用しても、単に商品の品質、
販売場所を表示したにすぎず、前記商品以外の商品に使用
するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがある。
6.意見書における反論
(1)拒絶理由通知書において、本願商標は「鹿の子茶屋」の文字を書してなり、その構成中の「鹿の子」の文字部分は「和菓子の一種で、求肥またはようかんであんを包んで丸め、その周囲に密煮した小豆をつけたもの」等の意味を有し、また、「茶屋」の文字部分は「客に茶菓や食事を販売・提供する店」(講談社 日本語大辞典 第二版参照)等の意味を有するので、これを本願指定商品中「鹿の子」菓子に使用しても、単に商品の品質、販売場所を表示したにすぎないものであると認められ、したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、商標法第4条第1項第16号に該当する旨、認定された。
しかしながら、本出願人は斯かる認定に承服できないので、以下に意見を申し述べる。
(2)本願商標は、審査官殿が指摘するように、成るほど、「和菓子の一種で、求肥またはようかんであんを包んで丸め、その周囲に密煮した小豆をつけたもの」等の意味を有する「鹿の子」の文字と、「客に茶菓や食事を販売・提供する店」等の意味を有する「茶屋」の文字から成るものであります。
しかしながら、それらの文字を結合して成る本願商標「鹿の子茶屋」は、必ずしも、「鹿の子」商品のみを販売する場所等を意味するものではありません。つまり、「鹿の子」の文字があるからといって、商品が「鹿の子」に限られるというわけではありません。
本願商標は、これらの文字を結合することによって、「鹿の子茶屋」という一つの固有名詞(結合商標)を形成するものであって、ある特定の「鹿の子茶屋」という名前の「茶屋」を表すものであります。
つまり、「鹿の子」を中心的に提供する茶屋であることを否定するものではありませんが、その茶屋としての性格上、これだけの商品に限定されるものではないということであります。本願の指定商品として挙げたように、「コーヒー,ココア,茶」等もあれば、「サンドイッチ,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ホットドッグ」等もあるわけです。また、「鹿の子」に限らず、他の「菓子及びパン」等も当然想定されるわけです。
それ故に、本願商標を本願指定商品に用いても、茶屋として当然に想定される商品であり、単に品質を表示したり、品質の誤認を生じたりするようなことは決してないと考えます。
(3)過去の商標登録例を見ると、例えば、以下の様な登録商標が存在しています。
1.登録1795124「おにぎり茶屋」(株式会社マスヤ)-第30類 菓子、パン…第1号証
2.登録3015796「甘酒茶屋」(日本盛株式会社)-第30類 菓子及びパン…第2号証
3.登録3024164「だんご茶屋」(有限会社津曲食品)-第30類 コ―ヒ―及びココア,コ―ヒ―豆,茶,調味料,香辛料,米,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン,穀物の加工品,サンドイッチ,すし,ピザ,べんとう,ミ―トパイ,ラビオリ,菓子及びパン,即席菓子のもと,アイスクリ―ムのもと,
シャ―ベットのもと,ア―モンドペ―スト,イ―ストパウダ―,こうじ,酵母,ベ―キングパウダ―,氷,酒かす…第3号証
4.登録4301667「いちご茶屋」(株式会社ショコラティエ・サンク)-第30類 菓子,パン…第4号証
5.登録4293847「わさび茶屋」(春日井製菓株式会社)-第30類 菓子及びパン…第5号証
これらの商標は、すべて別会社の登録に係るものですが、それぞれ「おにぎり」、「甘酒」、「だんご」、「いちご」、「わさび」という商品名を表す文字に「茶屋」の文字を結合して商標を構成したものである点で、本願商標の「鹿の子茶屋」(「商品名+茶屋」)と軌を一にするものであります。しかし、これらの登録商標は、品質表示や販売場所表示、あるいは品質の誤認が生じるというような理由で、拒絶されているわけではありません。十分に識別機能を有する商標として登録されております。
然るに、これらの商標が登録できて、本件商標だけが拒絶されるというのは到底納得できません。本願のような商標であっても、特定の茶屋の名前(つまり特定の出所)を表すものと見れば、「茶屋」としての性格上、誰しも「鹿の子」しか取り扱わないなどと思うはずがありません。「茶」もあれば、「コーヒー」もある。「ケーキ」もあれば、「他の和菓子」もある。あるいは軽食に「スパゲッティー」もあれば、「おにぎり」もあるというように、いろいろな商品を想定するのがむしろ普通であります。審査官殿は「鹿の子」の文字にとらわれたが故に、品質表示に過ぎないだとか、品質の誤認が生じるおそれがあるだとかの誤認を生じたのではないかと思いますが、この文字に「茶屋」の文字を結合した時点で、取り扱う商品は、茶屋で通常取り扱う商品全般に拡がったと見るべきであります。たとえ拡がったとしても、商品の誤認など生じるはずもありません。茶屋(喫茶店)で取り扱う商品を考えれば、商品を限定して考えることの方がむしろ不自然であります。そのことは、上記過去の登録例が何よりの証左となると考えます。
(4)以上の次第でありますので、本願商標は十分に識別力を有し、登録適格なものと思料します。
( *この件は、登録査定となったが、使用しなくなったので登録料は未納とした。)
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*以上参考までに実例を挙げて見ました。これらは、全てこの意見書により、審査官の考えを変えさせ、登録にもっていったケースです。
審査官も考え違いをしている場合がありますし、取引の実情から全く懸け離れたような判断を下す場合もあります。従って、納得できなければこのように積極的に反論すべきです。審査官も正当な理由があると認めれば(「なるほどな」と思わせれば)、考えを改めるはずです。
なお、この中には審判のケース、即ち、審査官の認定は不当であったとして審判官がその判断を覆し、登録を認めたケースも含まれています。
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